司馬遼太郎のレビュー一覧
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「油小路の決闘」新撰組から離脱した伊藤甲子太郎(かしたろう)派の7人vsその抹殺を狙う新撰組40人の大乱闘を篠原泰之進を中心に描く。現代人と違った死生観・武士のダンディズムについて思う。
当時沖田総司よりも腕がまさると云われていた服部武雄の死に様がすさまじい。民家の門柱を背に腰に提灯を差して足元を照らしながら長物で敵を切りまくり、足元に死体を築き上げ、そのために動きがとれなくなって長槍でしとめられたという。こういうエピソードって頭で考えてるだけだと出てこないなぁ。
甲子太郎派の7人は、敵が40人以上待ち伏せしている事を分かった上で、油小路に晒された甲子太郎の死体を引き取りに出かけるのだが、 -
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かつて徳川幕府を倒した日本で最強の薩摩軍が、この西南戦争では十分な戦略がなく、政府軍に対して優勢を保つことができない。戦略としてあるのは、西郷をたて東京に向かう途中で各地域の士族が同調し雪だるま式に軍勢を拡大して、最終的に太政官を倒すことである。しかし、現実としては熊本城に拘り、軍の配置も非効率となっていることが指摘されている。戊辰戦争と西南戦争の違いは驚くべきものである。
薩摩軍の士族個人個人は非常に精強であり戦に慣れている反面、政府軍はまだ徴兵されて間もない兵士であり戦にはなれていない。ただ、武器・補充体制・全体の戦略という観点で政府軍が優位に立った。
戦争における優劣を決めるにあたり -
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明治10年西南戦争が勃発する前夜の状況を事細かに描写している。この戦争のきっかけとなる、西郷暗殺計画と火薬庫破りに関しては太政官側の動機がいまいち曖昧であり、そのこと自体の真偽も確かでない。ただ、どのようなきっかけにせよ、この時代の薩摩と中央政府を巡る関係から西南戦争が発生する危険性は非常に高く防ぐことは難しかったのではないかと推測される。西郷隆盛は薩摩士族にとって大きな存在であったが、それ以上に反政府の気運は強く、西郷の意思に沿わずともその西郷を表に立てることで得られる心理的な高揚感から戦争に突入した。
ただ、冷静になって考えれば新しい政府を作ることが非常に難しいことで、人心を掌握して多く -
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忍者、新選組、古代史とおいしいモノがつまった、巨匠・司馬遼太郎氏による「呪術もの」「奇譚もの」的短編集です。
本書の「壬生狂言の夜」が、司馬御大が初めて手がけた新選組もの、らしいです。ここから「燃えよ剣」などにつながって行ったんですねー。
表題作の「果心居士の幻術」は、室町~安土桃山時代の怪人兼幻術師兼忍者と言われている、果心居士の話です。
好きなんですよ、この手の人物。
役小角や道鏡や、そしてこの果心居士。
怪しいけど、なんか惹かれてしまう。
中でも「八咫烏」は、司馬御大の作品としては異色な印象を受けました。
古代、神武東征の時代が舞台。出雲神話を軸に展開されています。
八咫烏は神武を