司馬遼太郎のレビュー一覧

  • 胡蝶の夢(二)

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    幕末海軍の教師団にポンペという軍医のいることを知った松本良順は、あらゆる圧力を断ち切って長崎に走る。やがて佐渡から語学の天才である弟子の伊之助を呼びよせた良順は、ポンペを師に迎え、まったく独力で医学伝習所を開講し、あわせて付属病院を建てる。ひろく庶民に門戸をひらいたこの病院は、身分で閉ざされた社会に、錐でもみ込むように西欧の平等思想を浸透させてゆく。

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    2015年02月22日
  • 胡蝶の夢(一)

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    内容(「BOOK」データベースより)

    黒船来航で沸き立つ幕末。それまでの漢方医学一辺倒から、にわかに蘭学が求められるようになった時代を背景に、江戸幕府という巨大組織の中で浮上していった奥御医師の蘭学者、松本良順。悪魔のような記憶力とひきかえに、生まれついてのはみ出し者として短い一生を閉じるほかなかった彼の弟子、島倉伊之助。変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していった男たち。

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    2015年02月22日
  • 花神(下)

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    大村益次郎の生涯を描いた『花神』。大村益次郎の偉大さをじっくり読むことが出来てとても良かった。明治維新を完成させる最大の功労者だったと思う。靖国神社にある大村益次郎銅像を東京に行った際には、必ず見学に行きたい。

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    2015年02月17日
  • 人斬り以蔵

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    表題の「人斬り以蔵」こと、岡田以蔵を見出だした土佐勤王党の武市半平太、目当てで本書を選んだ。

    中短編、八編 収録。
    そのなかでも、「お お、大砲」と「美濃浪人」が良かった。

    「お お、大砲」の中書新次郎と平山玄覚房との"奇縁さ"には、ほくそ笑んでしまう。
    両者とも縁があってもその後は、それっきりの付き合いで、思い出の中で思い返す程度に留めているのが、却って清々しい気分にさせてくれる。

    「美濃浪人」の井上聞多(井上馨)と所郁太郎も、奇妙な縁がある。
    医者の郁太郎は、二度も聞多の瀕死を救ったのだ。

    この美濃出身の志士、所郁太郎は無名であり、経歴、正体不明の人物である。

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    2015年02月15日
  • 花神(中)

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    長州、極めてアクティブな藩に属したことが、村田蔵六の運命と日本の歴史に重大な変化をもたらしてゆく。攘夷という大狂気を発して蛤御門の変に破れて壊滅寸前の長州に再び幕軍が迫っている。桂小五郎の推挙で軍務大臣に抜擢された村田蔵六は百姓兵たちに新式銃を持たせて四方から押し寄せる幕軍と対峙し、自らは石州口の戦いを指揮して撃破する。

    村田蔵六の力量を見抜いた桂小五郎の人物鑑定眼がまず凄い。村田蔵六の力量が長州藩に勝利をもたらした。近代兵制を翻訳していたので、それを幕軍に先駆けて導入させた功績は素晴らしい。実際に軍団指揮をさせるとことごとく勝利に導いた。石州口の戦いを読んでいると武士の世を終わらせて新しい

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    2015年02月07日
  • 項羽と劉邦(中)

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    これまで長い時間をかけて、上巻、中巻と読み進めてきたが、ここにきてやっと大好きだと、もっと知りたいと思えるキャラクターに出会った。
    彼の名は「紀信」という。
    周りの人間、もちろん味方や同郷の者を罵倒し、批判する。劉邦もその例外ではない。
    しかしながら、彼は劉邦だけを愛し、劉邦のために劉邦となる道を選んだ。
    究極のツンデレがここにはある。

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    2015年02月04日
  • 街道をゆく 40

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     この本を読むのは2度目となった。再読した要因は複数ある。数日前に台湾を旅行で訪れたこと、早稲田大学・江正殷氏の「台湾を知る」を受講した後であったこと、台湾のひまわり学生運動を調べた後であったこと、KANOや天空からの招待状が上映中であることと数をあげればきりがない。とにもかくにも台湾の歴史的背景を、ここでいったん整理しようと思い立ったのである。
     本書は台湾の全貌を知りたい人にとってのバイブルといっていい。週刊朝日誌上で連載が開始されたのが1993.7.2とある。いまから20年以上も前となり、やたら「グローバル化」が唱えられる現代社会では、時代の趨勢が移り変わっているように思われるが、今から

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    2015年02月02日
  • 世に棲む日日(三)

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    巻(三)は戦略的攘夷のため、狂人となった高杉晋作の幕府への挑発から始まります。まずは御殿山の英国公使館焼き討ち。この焼き討ちには井上聞多(馨)や伊藤俊輔(博文)も参加します。そして吉田松陰の遺骨を白昼堂々と掘り出し改葬する御成橋事件。いずれも幕府は長州に処罰をくだせず。京都では孝明天皇の行幸に随行する馬上の将軍家茂に「征夷大将軍!」と叫ぶが、行幸中であったため、ともの幕臣は晋作を捕らえることが出来なかった。さらに晋作は将軍暗殺を企てるが、事前に発覚して失敗。その後晋作は長州随一の美人である妻のお雅も家に置いて東行と称し山に籠る。この間に長州藩は攘夷を実行するために、下関で外国船に砲撃を開始する

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    2015年01月28日
  • 花神(上)

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    周防の村医から倒幕軍総司令官になり、明治に我が国の近代兵制創始者となった大村益次郎の生涯を描いた作品。初めて読んだが、とても面白かった。適塾の緒方洪庵や福沢諭吉が登場する。適塾で蘭学の修養を深め、その蘭学の才で宇和島藩で士分に取り立てられ、幕府の教授にまで登りつめる。さらに長州藩に取り立てられ、師匠の緒方洪庵が亡くなったところで上巻は終了。明治維新回天はこの人の活躍を見逃せないので、今後も楽しみです。

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    2015年01月27日
  • 翔ぶが如く(十)

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    この本を読むまで西郷隆盛を誤解していた。
    大久保利通についても同様。
    幕末から維新を知る上で、この本を読まないということはありえない。
    しかし、太平洋戦争の日本軍のとった行動心理と、西南戦争における薩摩藩の因果関係はどのようなものがあるのか気になった。同じ感覚を覚えた。太平洋戦争の際には、薩摩の桐野のような爽快さはないのかもしれないが。

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    2015年01月27日
  • 項羽と劉邦(中)

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    上巻より中巻の方が話が進み、面白かった!有名な鴻門の会も出てくるし。にしても項羽と劉邦は人間性が対極である。勇猛果敢だけれど若さゆえ突っ走りがちな項羽、知恵が回るけれど臆病、怖がりすぎな劉邦。敗走する際に我が子を何度も馬車から突き落とすって、その子らの親だろ!と。こんな臆病で怖がりな劉邦がこの後、どうやって漢帝国の開祖になるのか続きが楽しみ。因みに劉邦に降ってきた韓信、なかなかイケメンです!(笑)

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    2015年01月11日
  • 世に棲む日日(三)

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    高杉晋作は革命を成し遂げるために生まれてきたと実感した。蛤御門の変や禁門の変で松下村塾の人達が亡くなるなかで、その場に居合わせなかったのは、天の差配だろう。高杉晋作はあちら此方と動きまわるが、井上聞多の大活躍ぶりや山県有朋の台頭など明治日本で権力を握った人達の動きなどもなかなか面白い。

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    2015年01月07日
  • 花神(上)

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    主人公である村田蔵六と彼を取り巻く人々の様子が生き生きと描かれている。適塾の師である緒方洪庵、シーボルトの娘イネ、イネの保護者である二宮敬作、適塾の後輩にあたる福沢諭吉など。各人物の気質、性格と蔵六との関係が細やかに説明されていてとても面白い。

    特に印象的だったのは宇和島藩時代のエピソード。藩主伊達宗城の命で蒸気機関を造った嘉蔵と接するくだりだ。

    身分の低いちょうちん張りの男が、何の知識もないところから、自分の経験と想像力だけで蒸気機関のもとになるカラクリを造った。それを目にした蔵六がこう思う。以下引用する。


    “蔵六がむしょうに腹が立ってきたのは、これに驚嘆したあとだった。嘉蔵がヨーロ

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    2014年12月31日
  • 殉死

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    小説らしからぬ小説。事実の積み重ねに重きを置いているように見え、まるで伝記みたい。だが、旅順攻略の際に児玉登場などあるので、やっぱり創作が入った小説なのだろう。
    読後いろいろ疑問がある。あまりにも乃木は本書で無能呼ばわりされているが、そんなにも無能な乃木がなぜ三軍を率いるほどの大役を任され、また任され続けたのか。たぶん結構な人数が不思議に思うのではないだろうか。長州出身で縁故があったとか明治帝の寵愛だけでは説明が苦しいように見える。もはや50歳代の老将軍にとって縁故は関係ないだろうし、国家存亡に際して明治帝の意向で指揮官が簡単に決まるような明治国家でないことは司馬遼太郎が一番知ってることではな

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    2017年04月20日
  • 菜の花の沖(五)

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    ネタバレ

    小説部分の少ない巻。コサックによるシベリア東進や、ピュートル大帝・エカテリーナ二世のロシア近代化。アダム・ラクスマン、レザノフと続いた日本への交易要求・樺太襲撃等々、本小説の後半のクライマックスである、ゴローニン事件につながっていく出来事を体系的に解説。司馬さんには『ロシアについて―北方の原形』という著作もあり、ダブる内容もありますが、いずれもロシア国家の性質を理解するのに優良な著作。

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    2014年11月23日
  • 馬上少年過ぐ

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    司馬遼太郎氏の短編集。短編とはいっても、一つ一つ重厚でとても丁寧に書かれている。
    他の長編のダイジェスト版のようになっている小説もあり、長編に取り組んでみたいが敷居が高いと思う人は、こういう短編集から読んでみるのもいいかもしれない(といってもやはり長編がおススメだが)。
    室町時代から江戸時代まで、必ずしも一番活躍したわけではない歴史の脇役に焦点があたっていて興味深い。本当に面白くて、寝食を忘れて読んだ。

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    2014年11月10日
  • 菜の花の沖(六)

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    2014.11.12
    いい作品だった。
    嘉兵衛の生き方に魅了された。

    外交とは真剣勝負であり、結局は個人の信頼関係が大事。そして、その積み重ねなのだ。

    仕事も全く一緒だね。

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    2014年11月12日
  • 菜の花の沖(五)

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    2014.11.6
    ロシアと日本の話。司馬遼太郎の戦争観、国家観が表れている。
    嘉兵衛の蝦夷での活躍は凄まじかったのだろう。船と海を愛した好漢。ロシアとの出会い、次の展開が楽しみだ。

    幕末前、この時期は商品経済の勃興という矛盾、鎖国という矛盾が露呈し始めていた。この矛盾が幕末、明治維新の原動力になったのか。

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    2014年11月06日
  • ロシアについて 北方の原形

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    江戸も中期に及んでようやく存在を意識し、駆引きを初めて250年ほどのロシアについて、示唆に富んだエッセイにより学ぶ。欧州人はロシア平原でロシアを感じるのに対し、我々日本人はシベリアでロシアを感じる。よって本著では、ウラル山脈以東における民族の栄華と零落としてモンゴル、そして清王朝についても詳しい。他民族に対して、日中蒙は軽視する傾向にあるが、露は親切に対応すると評価される。北方四島の返還について、そもそも領土問題について、外交レベルの主張はあっても国民運動にしたてることの無意味さがおぼろげに見えてきた。

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    2014年11月02日
  • 菜の花の沖(三)

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    2014.10.15
    当時は未知の地であったろう、蝦夷。圧政を強いられていて蝦夷を救いたいという役人のあつい思い。貧窮している幕府財政も原因であろうが、蝦夷を直轄地とすることになった。船を手に入れたことで、より自由になり、自分の意思で動き始めた嘉兵衛。政治にも関わることとなるのだが、それは次の話。雄大なロマンを感じさせる。

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    2014年10月17日