司馬遼太郎のレビュー一覧
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この人の著作は、小説よりもこういう作品のほうこそ味があって面白い。
私にとっては紀行文にハマるようになったきっかけでもある。
本書は同シリーズ三作目。単体としても面白いのだけど、先に一巻・二巻を読んでおいた方がより楽しめるかとも思う。というのも、『街道をゆく』シリーズの原点は一番最初「湖西のみち」での"日本人はどこから来たのだろう?"という問いにあるから。
「湖西のみち」や「韓のみち」で、現代日本人に繋がるひとつの流れである半島からの古代渡来人についての考察が様々に述べられていたのに対して、本書は明らかにそれらとは異質な民俗的要素を持っていた人々が居たと思われる、南九州や -
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「街道をゆく」のかなり最後の方の1冊。つまり、司馬遼太郎さんの最晩年の本。
いや、実にわくわく面白かった。傑作。
もう、本当にほぼジャンル分け不能な本です。
一応は、「街道をゆく」ですから、旅行記なんですが。
他の「街道をゆく」もそうなんですけど、実は半分以上は、司馬さんの歴史解説エッセイとでも言うべき内容。
ただ、司馬さんの語り口のきっかけになっているのは、現場を踏んだ、現場を踏んで考えた、ということですから、そういう意味では旅行エッセイ…。
三浦半島についてなんですが、実は「伊豆、鎌倉、そして三浦半島」とでも言うべき内容。
そして、半分以上は、平安時代から鎌倉時代にかけての、「武士台 -
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ネタバレ沼沢に囲まれた田園地帯で古代的雰囲気(古代だけど)のなかで、ハングレの劉邦は仲間にかつぎ上げられて反乱を起こす。
前後して、年若の項羽も上海よりずっと南の方でやはり反乱を起こす。
大抵、中国の王朝は反乱が起きて倒壊するが、この史実が記念すべき処女革命。
項羽は超絶無比に強かったけど、冴えない劉邦に日を追って追い越されて四面楚歌。
江南の滸で果てる。
司馬先生の作品領域で唯一の中華史長編。
中華史でもその後の漢民族にとっての性格基礎や民俗、教育概念に影響を与えた劉邦の重要性は大きい。
現代中国人のほとんどは自らを漢族と呼ぶが、劉邦の建国した帝国を漢というくらいだから。
太古の中国農村に劉 -
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司馬さんの歴史小説とは違い、無名の人を描いています。
少なくとも、秀吉とか家康とか竜馬とか正岡子規とか、そういう教科書に載っている人ではありません。
そうなんだけど、司馬さんらしいのは、根っこに「正岡子規という風景」があります。
正岡忠三郎さんは、子規の縁戚でもあり、系図で言うと子孫です。そして、恐らくは青春期に文学を嗜好しながらも、子規の係累であることへの遠慮なのか反発なのか、まったく文学創作活動をしないまま亡くなりました。そんな忠三郎さんが、子規の遺稿などを几帳面に整理整頓していました。
「タカジ」さんは獄中で子規の本を耽読しました。そして子規の詩歌を愛し抜きました。そして、忠三郎さんとの -
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40を過ぎてから読んで良かったなあ、という本でした。
実に不思議な小説。1981年に発表された本です。中公文庫さんで、上下巻。
小説、というか、「エッセイ風私小説」とでも言いますか。
司馬遼太郎さんと言えば、「乱世の、(戦国か幕末の)英雄を描く歴史小説」な訳ですが、この本は違います。
要は、執筆当時の現代劇。司馬遼太郎さんが、簡単に言うと自分のお友達を書いた本。
お友達と自分との交流と、お友達の生涯履歴を振りかえる。
実在の人物です。つまり、実話です。
というか、司馬さんはどうやら。
ご自分のお友達をふたり、書きたかったんだと思います。
なんというか、そのふたりの佇まいというか、ヒトとしての味 -
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司馬遼太郎さんが、1971年から1972年にかけて連載した、旅行エッセイ。「街道をゆく」第2巻。
ちょうど「韓国現代史」という本を読み終えた後だったので。1971年と言えば、まだまだ軍事政権の圧に揺れながら、経済成長を胎動している韓国だったんだなあ、と思いながら読みました。
司馬さんは、当然リアルタイム目線で1971年当時の韓国を見ながら、韓国と日本の遥か遠い歴史の風景を見つめています。
ところが読むほうは、2015年の感覚で、1971年当時という歴史の風景の中で、更に茫然たる歴史を眺めている司馬さんを眺めることになります。
この入れ子構造がなかなか楽しめました。
司馬さんのお話は、いつも通 -
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堯・瞬・夏・殷・周・秦・漢・三国・晋・南北朝・隋・唐・五代・宋・元・明・清・中華民国・中華人民共和国。
ぎょう・しゅん・か・いん・しゅう・しん・かん・さんごく・しん・なんぼくちょう・ずい・とう・ごだい・そう・げん・みん・しん・ちゅうかみんこく・ちゅうかじんみんきょうわこく。
今年95歳になる祖母が、「こうやって自分は中国の歴史を覚えた」という、呪文のようなお経のような、丸暗記文句です。
祖母がこれを覚えたのは女学校の時代のはずなので、その頃には「中華民国」で終わってたんでしょうけれど。
この判じ文句で言うと、かなり前半。秦と漢の間の激動の時期が物語の舞台です。
漢の初代皇帝になった劉邦。日本で -
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司馬さんの小説なんですが、半分は現代のお話。
そして、日本と朝鮮、戦争や民族意識という、デリケートなところに司馬さんの掌がそっと迫る一篇です。
短編集。と、言っても、3編しか入っていません。中編集とでも言いますか。
どれも相変わらず俯瞰的で皮肉めいて同時に人間臭くて、司馬遼節とでも言いますか。僕は大変に面白かったです。
ですが、まあ、何と言っても表題作が素晴らしかったです。
エッセイのような中編小説なんですが。
1590年代、つまり関ヶ原の戦いの直前に、豊臣秀吉さんによる朝鮮出兵がありました。
今から振り返ると、イマイチ良くワカラナイ無謀な出兵だった訳ですが、秀吉さんは本気で朝鮮半島そし -
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毎夜寝る前の30分ほど読んでいましたが、この本を読むと不思議に神経が休まり、安眠に導いてくれるのです。
500ページ以上のボリュームがありますが、司馬遼太郎の豊穣な世界に改めて酔うことの出来る一冊です。
以下興味を持った箇所の一部です。
『裾野の水』
「かつて『箱根の坂』という作品を書いたとき・・・富士の描写については自分の臆病さがつらくなるほどで、できるだけそれに触れることを避けた。実をいうと、西にいる者にとっては、富士ほどわかりにくい山はない」
『概念! この激烈な』
「私には、物事を悲観的に見たがる傾向はない。しかし朝鮮・韓国人と日本人の集団対集団の間柄については、楽観的気持ちを持ち