司馬遼太郎のレビュー一覧
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司馬さんの歴史小説とは違い、無名の人を描いています。
少なくとも、秀吉とか家康とか竜馬とか正岡子規とか、そういう教科書に載っている人ではありません。
そうなんだけど、司馬さんらしいのは、根っこに「正岡子規という風景」があります。
正岡忠三郎さんは、子規の縁戚でもあり、系図で言うと子孫です。そして、恐らくは青春期に文学を嗜好しながらも、子規の係累であることへの遠慮なのか反発なのか、まったく文学創作活動をしないまま亡くなりました。そんな忠三郎さんが、子規の遺稿などを几帳面に整理整頓していました。
「タカジ」さんは獄中で子規の本を耽読しました。そして子規の詩歌を愛し抜きました。そして、忠三郎さんとの -
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40を過ぎてから読んで良かったなあ、という本でした。
実に不思議な小説。1981年に発表された本です。中公文庫さんで、上下巻。
小説、というか、「エッセイ風私小説」とでも言いますか。
司馬遼太郎さんと言えば、「乱世の、(戦国か幕末の)英雄を描く歴史小説」な訳ですが、この本は違います。
要は、執筆当時の現代劇。司馬遼太郎さんが、簡単に言うと自分のお友達を書いた本。
お友達と自分との交流と、お友達の生涯履歴を振りかえる。
実在の人物です。つまり、実話です。
というか、司馬さんはどうやら。
ご自分のお友達をふたり、書きたかったんだと思います。
なんというか、そのふたりの佇まいというか、ヒトとしての味 -
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司馬遼太郎さんが、1971年から1972年にかけて連載した、旅行エッセイ。「街道をゆく」第2巻。
ちょうど「韓国現代史」という本を読み終えた後だったので。1971年と言えば、まだまだ軍事政権の圧に揺れながら、経済成長を胎動している韓国だったんだなあ、と思いながら読みました。
司馬さんは、当然リアルタイム目線で1971年当時の韓国を見ながら、韓国と日本の遥か遠い歴史の風景を見つめています。
ところが読むほうは、2015年の感覚で、1971年当時という歴史の風景の中で、更に茫然たる歴史を眺めている司馬さんを眺めることになります。
この入れ子構造がなかなか楽しめました。
司馬さんのお話は、いつも通 -
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堯・瞬・夏・殷・周・秦・漢・三国・晋・南北朝・隋・唐・五代・宋・元・明・清・中華民国・中華人民共和国。
ぎょう・しゅん・か・いん・しゅう・しん・かん・さんごく・しん・なんぼくちょう・ずい・とう・ごだい・そう・げん・みん・しん・ちゅうかみんこく・ちゅうかじんみんきょうわこく。
今年95歳になる祖母が、「こうやって自分は中国の歴史を覚えた」という、呪文のようなお経のような、丸暗記文句です。
祖母がこれを覚えたのは女学校の時代のはずなので、その頃には「中華民国」で終わってたんでしょうけれど。
この判じ文句で言うと、かなり前半。秦と漢の間の激動の時期が物語の舞台です。
漢の初代皇帝になった劉邦。日本で -
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司馬さんの小説なんですが、半分は現代のお話。
そして、日本と朝鮮、戦争や民族意識という、デリケートなところに司馬さんの掌がそっと迫る一篇です。
短編集。と、言っても、3編しか入っていません。中編集とでも言いますか。
どれも相変わらず俯瞰的で皮肉めいて同時に人間臭くて、司馬遼節とでも言いますか。僕は大変に面白かったです。
ですが、まあ、何と言っても表題作が素晴らしかったです。
エッセイのような中編小説なんですが。
1590年代、つまり関ヶ原の戦いの直前に、豊臣秀吉さんによる朝鮮出兵がありました。
今から振り返ると、イマイチ良くワカラナイ無謀な出兵だった訳ですが、秀吉さんは本気で朝鮮半島そし -
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毎夜寝る前の30分ほど読んでいましたが、この本を読むと不思議に神経が休まり、安眠に導いてくれるのです。
500ページ以上のボリュームがありますが、司馬遼太郎の豊穣な世界に改めて酔うことの出来る一冊です。
以下興味を持った箇所の一部です。
『裾野の水』
「かつて『箱根の坂』という作品を書いたとき・・・富士の描写については自分の臆病さがつらくなるほどで、できるだけそれに触れることを避けた。実をいうと、西にいる者にとっては、富士ほどわかりにくい山はない」
『概念! この激烈な』
「私には、物事を悲観的に見たがる傾向はない。しかし朝鮮・韓国人と日本人の集団対集団の間柄については、楽観的気持ちを持ち -
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もう、何年前になるだろうか?歴史系小説が好きになったきっかけの本。最近、歴史年表が気になっていて本書も再読してみる。再読してもやはり面白く、特に後半はグググッっと引き付けられる。
織田、秀吉、家康に使えてきた山内豊一の話。機転の利く妻の協力もあり、最後は四国の大名にまでなる。
織田、秀吉、家康と歴史の流れもわかるので、日本史初心者にも良い書物なのではないだろうか。
【感心】
「関ヶ原の勝利の一因は、山内対馬守夫人と細川越中守夫人に多くを負っている」
現代にも通じるところがあるな
議場が合戦、決まれば実行するだけ
男が自分の技能に自信を持ったときの美しさと言うのは格別なものだが、自分の