司馬遼太郎のレビュー一覧
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下巻は江藤VS大久保の様相を呈してくる。
江藤は征韓論を軸に明治政府の転覆を狙うが、欧州帰りの大久保に阻まれる。この、明治政府の二大頭脳が凄まじい戦いを展開する・・・というより、大久保があまりにも老獪で、江藤がだんだん可哀想になってくる。江藤は正義や論理、法律を何よりも重視し、正義は勝つのだと純粋に信じていたようだ。しかし大久保は正義を曲げても、非情な手段を取ってでも自分の信念を通す男だった。その大久保の前では江藤は子供のようであり、下野し佐賀の乱を起こし戦いに敗れる。
僕がこの小説ですごいと思ったのは、江藤が佐賀の乱で敗れ鹿児島や高知に逃げていた時も、正義を通す男としての誇りを失わなかった事 -
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日本史で北条早雲の名前は知ってはいたが、それ以上はいったいどういう人物なのかまったく知らなかったので興味深く読むことができた。
北条早雲はその前半生に関して資料が少なく、どうやら本書でも伊勢新九郎と名乗っていた北条早雲の前半生はこうであったろうという司馬遼太郎氏の創作になっているようである。
本書を読んで、北条早雲は中年以降になってやっと歴史に登場してきた大器晩成型の人物だということがわかった。婚姻も遅い。城持ちとなっても驕ることがなかったことや、これまでにないほど租税を減免し領国経営に手腕を発揮したことなどその先駆性に驚かされた。
そのため、日本史上最初の戦国大名と呼べる人物が北条早 -
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オランダの医師ボンベから見た日本が、当時の日本を多角的に見せてくれている。写生ずきな日本人の指摘を後に、カメラぶら下げて歩くところまで司馬さんらしい観察眼を加えているあたり、楽しい。ボンベが賭けた大仕事の階級性を取っ払った病院建設が、明治から進む開明の奔りになったり事は忘れがちだった。当時の世界情勢の中で、オランダは影を薄めていくが、江戸期においていかに大切な国であったかも改めて思う。良順そして語学の天才的な伊之助が、どうなっていくのか・・・
当時流行していて伊之助がかぶった韮山笠を検索してしまうほど、読んでいてあれこれ知識が放り込まれてくる。 -
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奥医師良順と弟子の伊之助。江戸幕府が揺るぎなく続いた形ばかりの上下関係、それに波風たてまいとほどほどに身を置く良順と、才能ありながらも商人、武士といった身分になんの縛り、というより社会のルールを解さない伊之助。この二人を通して、社会制度などが実感できる。周囲に不快な気にさせつ伊之助を庇う良順の人柄に惹かれる。幕末の怱怱たる志士たちの名が時折現れ、江川太郎左衛門が何度とも出来てきて、感激です。 司馬遼太郎さんの豊富な知識、ご本人は本当はもっと作品のなかに投げ込みたいところを、寄り道にならない程度に抑えながら解説しているあたり、とても楽しい。
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ネタバレ大村益次郎の物語。
中巻は、長州の雇士から、桂小五郎の強い推薦により長州軍務大臣となり、第2次長州征伐で大村氏自ら指揮をとり、ことごとく勝つところまで。
大村氏が時代に必要とされ表舞台に出るまで、長州の狂騒とその維新における役割など、面白い。
特に士農工商の封建社会の崩壊が、システムではなく、ソフトの面で、しかも思想が世に出たのち、遍く社会に浸透していく長州藩の様子、それを日本社会から見たときの歴史上担う役割が興味深い。
革命とはこのように起こるのだな、と。
戦闘部分は、戦争とはこういうものか、となるほどと思いながら読んだ。大村氏の言う戦略と戦術の違い、いかに少数で長州が幕軍に勝ってい