司馬遼太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「やべーいつ挫折するんだろう!」と恐る恐る読み始めてみたけど、ところがぎっちょん。
最初はどんな牛歩戦術かと思ったけど、後半になればなるほど面白い。
6巻あたりから面白くなってくるので、それまではひたすら耐えるのみ。
どんな鎮台兵かと。
結局のところテーマは「士族の総決算」ということであって、その最たるものが西南の役であり、象徴が西郷を筆頭とする薩摩士族であり、ということなのだろう。
そのピークに向かって、征韓論から徐々に徐々に歩を進めていく感じ。
時折余談にそれながら、何度も同じ話をしながら。
ちょっとした登山のよう。
が、終わりは周知の通りなので、達成感やら爽快感のようなものはない。
それどころか、わかってんのに100%勝算のない反乱を起こしたり(神風連の乱)、鹿児島へ帰る一心で絶望的な包囲を突破したり(可愛岳突囲)、小気味のよさより気持ち悪さが先に立つ。
「もういいんじゃね?」とその度ごとに思うのだけど、まあ諦めの悪いこと。
気持ち悪いと思うのは、そこまで何を賭けているのかが見えないから。多分。
英雄的な武勇に見られる士族の矜持を出しきらせること。
それを圧倒的な火力と兵站で潰し、士族の息の根を止めること。
これをやり切った政府(太政官っていうか大久保)は称賛するべきなのだろうけど、かといって手放しで感心するほど、単純な感情は持ちえない。
なぜなら政治も戦場も、それを表す場としては露わに過ぎるから。
中身が事実かどうかはさておき、考えさせられることは多い。
ただし、フィクションで出してきた女性は不要。 -
Posted by ブクログ
長宗我部盛親が主人公です。
物語は秀吉の死から、大阪夏の陣まで。
盛親は、家康の勝利を読んでいましたが、
元親の死や家督相続により、どうにもならず流れるまま西軍につきます。
天運に任せて生きますが、京都での謹慎生活の中で、
一念発起し大坂の陣に臨みます。
盛親の人物像がとても良かったです。
盛親はその立場から、孤独を感じていたのかな、と思いました。
しかしながら、盛親は色々な人物にいとおしく想われています。
桑名弥次兵衛、林豪、雲兵衛、田鶴、お里、等々。
大名としては、野望のある人物が適格かもしれませんが、
盛親は欲がなく自然体でした。
どこか儚げな雰囲気を帯びているように感じます。
桑名弥次兵衛との関係の描かれかたが好きでした。
京都の蟄居先に、人目を忍んで訪問したシーン、
盛親と刃を交えることになった時の弥次兵衛の反応など。
好きな作品でした。 -
Posted by ブクログ
『平戸の人桂庄助の形影にしたがいつつ、韃靼国へゆき、ついには...』司馬遼太郎氏が、あとがきに書いています。作中人物への作者の乗り移り度は氏の作品中でも1,2ではないでしょうか。私も本当に旅させてもらいました。17世紀の平戸、遼東、モンゴル、蘇州、杭州、そして北京へと。大中国史の中で、明から清への大政転を確かにその場にいて体験してしまった感があるのです。政権が非漢民族に渡ることの意味についても、初めて納得の行く形で考えられました。
女真、満洲、満韃子、東韃。ツングース系のひとびと。アルタイ語。膠着語、辮髪。文化と文明。
庄助が手探りで学んで行く一言一言の解釈に、司馬氏のモンゴル語学科卒ゆえの、真骨頂があります。
実際に遼寧省瀋陽は数回仕事で訪ねています。訪問前に読んでおけば良かったと後悔する、中途半端な現地観察の記憶があります。