司馬遼太郎のレビュー一覧
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司馬遼太郎が江戸時代の商人高田屋嘉兵衛の生涯を描いた長編歴史小説全六巻。日露双方、文化、風土の違いはあれど分かり合える部分も多いのが印象に残る。
江戸時代も後半、蝦夷地の開発が進む中、高田屋嘉兵衛はロシアとの争いに巻き込まれ日本が捕虜としたゴローニンの報復的にロシアに囚われる。
あくまで一商人の嘉兵衛なのだが使命感や大局を見渡す視点など江戸時代の人々の文化的な水準の高さを表象しているように思える。言葉遣いや態度など司馬遼太郎は浄瑠璃の影響を指摘している。
日本が初めて本格的に直面する近代国家の進出。硬直的な幕府の官僚と対象的な嘉兵衛の生き方、態度を現代社会に置き換えてみるとどうなるのだろ -
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江戸期の商人高田屋嘉兵衛の生涯を描いた大作。全六巻中の五巻。いよいよロシアと日本が衝突する時を迎える。
江戸幕府とロシア、それぞれの立場の良く分かる巻。余談がほとんどを占め嘉兵衛はほとんど出てこない。ラクスマン、レザノフ、ゴローニン。日本史で習った人物たちが活き活きと描かれる。
ここまでの四巻では全く出てこなかったロシア。唐突に現れるのも構成なのだろう。当時の日本人の驚きはもっとずっと大きかったことだろう。
現代まで続く日露の国境の問題の原点ともいえる両国の蝦夷地開発の歴史が本作で良く分かる。
残り一巻で結末まで持って行けるのか、まだまだ予断の許されない展開が続く。
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織田信長と明智光秀の両者の人間像の洞察が、客観的、時に批判的によく分析されている。このあたりがジャーナリストであった作者のニュートラルな視点の賜物と思う(作者が織田信長にも明智光秀にもあまり惚れ込んでいないということもあるのかも知れないが)。「この男、ふだんはこうこうこういう男なのだが、どうやらこういう一面も持ち合わせているようだ」というような、突き放した物言いはシンプルだが、これこそ理屈では説明しがたい人間の矛盾した人格の表現にはうってつけな表現なのだろう。史料などから読み解き、どうにも辻褄があわない、理屈にあわないその人物の行為を強引に解釈するのではなく「よくわからない」と書くことで、本来
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下巻はいよいよ本能寺の変から本格的に秀吉が天下統一を果たしていくことになる。
信長という存在がある限り、秀吉の目的は信長を儲けさせる事。そのためなら信長から殴られようが蹴られようが、その目的のために事をなしていく。
ふと信長のやり方よりも自分のやり方のほうが上手くいくと思っても、そこは耐える。主君を裏切ってまで我を張らない。自分のほうが器が大きいと思っても。
それが信長という存在がいなくなる事で解放された時、秀吉の才能が爆発する。後半は秀吉の独り舞台。
天下を取るために、どのように相手に振る舞えばいいか。大名という土台がないだけに自分一人の才能が頼りになる。
不世出の天才の後半は描か -
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当然秀吉の話は知っているが、秀吉が主役の本を読むのは意外と初めてである。
やはり秀吉の魅力は人たらしなところなんだな。ここまでやられては人は嫌な気にはならず秀吉のために、となる。それを本気でありながらしたたかに計算していることもすごい。
信長との関係も面白い。初めは不世出の天才としてどうやってこの主人に役に立ち出世しようかと考える。しかし終盤は天才の限界を感じるほどに自らが成長、器の大きさを示す。
最初から秀吉では天下統一はならなかったろう。信長の苛烈さは最初に国を切り取るのに必要。その後は秀吉の人心掌握での領地拡大であったのだろう。
二人の天才が世に同時に現れ、主従となった奇跡が天下 -
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初読は高校3年生の受験直前。43年ぶりの再読です。今回も読み始めたらやめられず、睡眠時間を削って読みました。
本書は周防の村医から一転して討幕軍の総司令官となった近代兵制の創始者大村益次郎(村田蔵六)の生涯を描きます。
「大革命というものは、まず最初に思想家があらわれて非業の死をとげる。日本では吉田松陰のようなものであろう。ついで戦略家の時代に入る。日本では高杉晋作、西郷隆盛のような存在でこれまた天寿をまっとうしない。3番目に登場するのが、技術者である」
吉田松陰と高杉晋作を主人公にしたのは「世に棲む日々」。一種の技術者を主人公にした本書は、その姉妹作品と言えます。ただ、大村益次郎は「ど