司馬遼太郎のレビュー一覧

  • 翔ぶが如く(十)

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    これほど慕われ続ける人望と器量を備えているものの、ここに登場するやその厭世に虚しくなる。結果として成し得なかった征韓論には、極めて複雑な背景があり、どうあれ退いてくれたことに安堵するけれど、大久保、岩倉を追い詰め、三条を錯乱させた往時には、その威容を誇る。薩摩に帰郷して後は、何ら光彩を放つことなく、もちろんそのための遁世なのだから、そのまま不動でいて欲しかった。革命の象徴から、新たな革命の虚像へ。そして、演じたのか捨て鉢であったのか、木偶の最期を迎えた。敵味方を問わず西郷を担ぎ、共に逝った者たちの情緒は知れても、西南での西郷の機微に触れることはできなかった。

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    2017年10月08日
  • 項羽と劉邦(中)

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    ネタバレ

    劉邦の関中制覇、鴻門の会での項羽への屈従、彭城への進軍、つかの間の勝利と大敗北、滎陽での籠城戦、そして撤退。今巻も事件が頻発し、見所も多い。
    張良や陳平といった軍師の活躍も面白いけれど、巻末に登場する紀信の存在感が心に残る。悪口癖のある、特に取り柄もなさそうな男だけれど実は、この世に誰か一人だけ、好きな人間を持ちたくて仕方がない心を隠している、と描かれる紀信の潜めた感情の熱さ、そしてそれが表現されるときの、自身を焼き尽くすほどの激しさが悲しく、しかし静かに胸に迫る。

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    2017年10月02日
  • 義経(上)

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    軍神と称された幼稚な義経の物語。多くの点において、自らを重ねるところあり、政治感覚の無さ、他者への気持ちのわからなさ、自分を正しいと思う、思い込みの強さ、自らを重ねるようである。

    しかし、痛快な30年弱の人生であっただろう。
    初陣から壇ノ浦まで、古今類を見ない奇跡的な勝利、それはこの時代になかった、
    戦術、策、を用いた初めての戦いであり、またそれにより価値、勝てない戦を勝って、英雄となった。

    鎌倉が恐れること、仲間だと思っていた身内が恐れることを「まったく」分からなかった。
    その純粋さ、つまり「親のかたき討ち」以外には思いを寄せることが出来なかったことが、
    結果、さわやかで痛快な、そして悲

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    2017年09月28日
  • 峠(中)

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    印象的だった箇所

    なにごとかをするということは、結局はなにかに害をあたえるというとだ
    何者かに害をあたえる勇気のない者に善事ができるはずがない
    (207頁)

    あと、継之助と福沢諭吉のやりとりは刺激的で面白い。普段使っている熟語(自由とか権利とか演説とか)を福沢諭吉が苦心して案出したというのも新鮮だった。

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    2017年09月23日
  • 合本 坂の上の雲【文春e-Books】

    購入済み

    合本 坂の上の雲

    文庫本を持っていたが、行方不明になりもう一度読みたいため購入。電子書籍は持ち運びが楽であるため、どこでも読める利点がある。坂の上の雲は明治期の正岡子規以外はあまり知られていない人物に焦点を当てた面白い本である。正岡子規や夏目漱石らと同時代を駆け抜けた伊予の2人の生き様は感銘を受ける。

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    2017年09月11日
  • ロシアについて 北方の原形

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    氏が「菜の花の沖」「坂の上の雲」を書く際に考え続けていたロシアという国の本質について考察した本。現在読んでも全く古さを感じず、この国の本質を考えるヒントを与えてくれる。

    国の成り立ちや侵略された歴史から国家としての性格が形作られていった様子がよく分かる。特にシベリア等の極東開拓の歴史は日本人として知っておくべきだろう。

    ロシアの側から見れば、北方領土とモンゴルをセットにして捉える必要があるなど、北方領土問題を語る前に我々国民もロシアのことをより知る必要があることを再認識した。この問題においては変に国民感情に訴えることは慎まなければならないという、氏の考えには全く同感する。

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    2017年09月05日
  • 空海の風景 上巻 (改版)

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    かなり前に落語の枕で本書のことが語られていたのが頭に残っていた。近年になり四国八十八か所巡礼に別のきっかけから興味を持ち、本書を購入した。著者の他の歴史小説と違い、弘法大師・空海の生立ちを記者の目で見、一歩引いた立場で文章にしたという印象だ。したたかな人間としての空海を読むのは面白い。命を懸けて唐・長安へ行き、わずかな年数で帰国したことは知っていたが、彼の策略であろうことが容易に想像できてしまう。

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    2017年08月27日
  • 空海の風景 下巻 (改版)

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    空海と最澄とのやり取りは緊張感を伴うものだ。読者としては空海に肩入れしており、最澄の密教に対する教えの乞い方は、偶然同じ船団で渡唐した時の差別的扱い等も伏線になり、反感を覚えざるを得ない。最澄なりの考えがあればこそ天台宗が平成の現代でも受け継がれているのだろうが。平安期、日本よりはるかに進んだ世界(長安とそこに居住する外国人のいる文化)を見て帰国した空海の、日本を見る目とそれに伴う孤独もイメージされる、人間・空海への理解が深まる良書で、真言密教にも興味が湧いた。我が住む街も真言宗の寺院が多いな~

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    2017年08月27日
  • 世に棲む日日(三)

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    「長州は長州によって立つ」
    九州での3週間で高杉晋作が掴んだ、「自分のことを自分以上に考えてくれる人などいない、自身がインフルエンサーたるべし」、という感覚は、何にでも応用出来る、励みになる教えだ。
    次巻で、いよいよクライマックスへ。

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    2017年08月24日
  • 酔って候

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    久しぶりに司馬遼太郎。
    しかも短編集。
    舞台は幕末、新選組や江戸幕府直結関係かと思いきや
    全然また違う当時200以上いた藩主の話。
    土佐藩の山内容堂・薩摩藩の島津久光・宇和島藩の伊達宗城・肥前佐賀藩の鍋島閑叟
    山内容堂はもう説明なしで有名すぎるから特にw
    表紙の瓢箪の絵(お酒が入った)然り、まぁとにかく終始お酒が好きで気性が激しすぎ。
    島津久光は自分が一番!って思いこみすぎてほかの人の意見聞いたり聞かなかったり(自分でなんとなくしか考えずに)ふと気が付けば倒幕なう。みたいな。
    伊達宗城は思い付きがすごいというか何で黒船を
    提灯職人に任せるのか謎だったけど結局は出来ちゃったのがすごい。
    しかしこ

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    2017年07月07日
  • 義経(下)

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    機動戦士ガンダム。アムロ・レイ。zガンダム。カミーユ・ビダン。シャア・アズナブル。
    うーん。彼らの原型が、「源九郎義経」だったとは。
    ガンダムファン、必見、必読の作品だと思いました。



    司馬遼太郎さん「義経」(文春文庫、上下)。1968年発表だそうです。

    これは、面白い。

    つまり、司馬遼太郎版の「平家物語」なんですね。

    平清盛の栄華から。
    少年義経の放浪。
    頼朝の挙兵、木曽義仲の挙兵。
    富士川の戦い、宇治川の戦い。木曽義仲の敗死。
    一の谷の戦い、屋島の戦い、壇ノ浦の戦い。義経の絶頂。
    義経と頼朝の対立、腰越状。
    そして、義経の没落まで...。

    いわゆる「源平」の美味しいところをわ

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    2017年06月16日
  • 義経(上)

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    機動戦士ガンダム。アムロ・レイ。zガンダム。カミーユ・ビダン。シャア・アズナブル。
    うーん。彼らの原型が、「源九郎義経」だったとは。
    ガンダムファン、必見、必読の作品だと思いました。



    司馬遼太郎さん「義経」(文春文庫、上下)。1968年発表だそうです。

    これは、面白い。

    つまり、司馬遼太郎版の「平家物語」なんですね。

    平清盛の栄華から。
    少年義経の放浪。
    頼朝の挙兵、木曽義仲の挙兵。
    富士川の戦い、宇治川の戦い。木曽義仲の敗死。
    一の谷の戦い、屋島の戦い、壇ノ浦の戦い。義経の絶頂。
    義経と頼朝の対立、腰越状。
    そして、義経の没落まで...。

    いわゆる「源平」の美味しいところをわ

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    2017年06月16日
  • 花神(上)

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    うーん、これはすごい。技術者としての生き方を極端に振り切るとこうなるのか… しかしそれを見抜いて適所につけた人々のすごさ。司馬遼なので、蔵六の学問のどこがすごかったかとか、どうやって見抜いたか、というところのエピソードは抑制気味で、物足りない気もするけど、そういうとこは抑え気味で余談山盛りが司馬遼だなあ。次は何を読もう。

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    2017年06月13日
  • 花神(下)

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    異端の英雄物語であり、幕末明治の歴史噺であり、悶絶のムズキュンラブストーリー。

    「花神」(上・中・下)まとめた感想メモ。

    司馬遼太郎さんの長編小説。1972年発表。
    主人公は大村益次郎(村田蔵六)。

    大村益次郎さんは、百姓医者の息子。
    百姓医者として勉学するうちに、秀才だったので蘭学、蘭医学を修めているうちに、時代は幕末に。
    いつの間にか、蘭学、蘭語の本を日本語に翻訳できる才能が、時代に物凄く求められる季節に。
    だんだんと、医学から離れて、蘭語の翻訳から軍事造船などの技術者になっていきます。

    大村さんは、長州藩の領民で、幕末に異様な実力主義になった藩の中で、桂小五郎に認められて士分に。

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    2017年06月13日
  • 街道をゆく 40

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    2016年11月に台湾に行った。台湾の事をより知りたくなったので読んだ。
    司馬さんが台湾を訪れたのが1993年くらい。当時の台湾は、民主化から日が浅く、大陸出身でない人間、つまり台湾人が初めて国のトップになってからいくらも経っていない時だった。この紀行は、その当時の、司馬さんの目、つまり外から見た台湾を、教えてくれる。司馬さんの目…というのは、司馬さんが書いたんだから当たり前なんだけど、それこそがこの本の一番の魅力と思う。司馬さんの目から見た台湾、を当時の日本人から見た台湾、と言い換えてもいいかもしれない。なぜなら2016年11月に自分が行った台湾では、この本に書いてあることは(知識不足は大い

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    2017年06月06日
  • ひとびとの跫音 下

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    上巻に続き、おもに忠三郎とタカジの人生が随想風に語られる。透徹した人間観察の中に深い愛情を感じる名著。

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    2017年05月18日
  • ひとびとの跫音 上

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    正岡子規と司馬遼太郎をむすぶひとびとの人生を、愛情を込めた筆致で描いている。著者の曇りのない、落ち着いた人物・人生描写に感服。そこに近代の日本社会の様相もうかがえる。名著。

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    2017年05月07日
  • 世に棲む日日(三)

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    3巻は引き続き高杉晋作中心の世界。彼と伊藤俊輔(博文)、井上聞多(馨)の三人党が、日本を引っ張った長州をいかに引っ張ったかというお話。でも、こんなに脱藩を繰り返しても、藩の中枢に戻ってこれるというのは長州の懐の深さ故なのかなぁ。
    今の山口出身の政治家に感じるものはありませんが、明治を作った長州志士には感じ入るものがあります。

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    2017年04月30日
  • 世に棲む日日(二)

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    吉田松陰が主人公かと思って読んできたのに、この2巻の途中で松陰が死んでしまう。言われてみたら安政の大獄だ。って歴史で学んだ出来事の意味合いを改めて考えてみる。
    松陰亡き後はその門下の高杉晋作を中心に描かれる。2巻ではいかに革命家になっていったか。

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    2017年04月30日
  • 豊臣家の人々

    豊臣秀次の実父の描写の卓越性に

    歴史上の人物描写にかけては天下一品ともいえる司馬遼太郎だが、その刮目さからくる犀利な描写はこの書でも健在であり、とくに第一話の「殺生関白」は痛快だ。これは豊臣秀次に関する物語だが、スタートがその実父より始まっており、この陰の主役を塩田七生氏が主張する如く「歴史における偶発性」というものを実に巧妙かつ芸術的に表現している。

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    2017年03月11日