司馬遼太郎のレビュー一覧
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ネタバレ勝者家康の知略というよりも汚いやり口、徳川安泰のためには手段を選ばない嘘や恐喝の数々がことごとく成功することで読者の家康評を決定づける本編。対して真田幸村をはじめとした豊臣方武将たちの清々しさ、絶望の中でも正々堂々と知略と武力をもって真っ向から立ち向かう様にどうしてもひいき目が生じてしまいます。淀殿や秀頼を代表する愚物に従いつつも後世の名声をのみ欲する勇ましさ。そして終盤の、家康が大阪方に追われ逃げ惑う痛快な展開。真田十勇士をはじめ様々な寓話が生まれるのも道理と思われます。
人の心を操る陰と陽の好例を歴史上の一大事件のなかで鮮やかに描かれており、共感し学ぶことができます。
本編の主人公あるいは -
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気になった箇所は史実を調べたり地図で確認したりして途中の寄り道を楽しみながら全巻読破。
第四巻は語り部である光秀の内なる葛藤がメイン。
光秀は信長の卓抜さを認めながらも有り余る才能と高潔すぎる精神ゆえに対抗心が怖れとなり決定的に溝を深めていく。
読み終わってからもつい考えてしまう。
「もし本能寺の変が起きず信長が天下を取っていたら」、「その政権の中枢で光秀が辣腕を振るっていたら」・・・想像したらキリがない。
歴史に「もしも」はない。しかしその「もしも」をあれこれ想像するのも歴史を楽しむ要素の一つだろう。
したたかに「時代」を掴み乗りこなした鬼才・斎藤道三。
旧体制を破壊し苛烈に「時代」を駆け -
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【あらすじ】
狂躁の季節がきた。
長州藩は既に過激派の高杉晋作をすら乗りこえ藩ぐるみで暴走をかさねてゆく。
元冶元(1864)年七月に、京へ武力乱入し壊滅、八月には英仏米蘭の四カ国艦隊と戦い惨敗…そして反動がくる。
幕府は長州征伐を決意し、その重圧で藩には佐幕政権が成立する。
が、高杉は屈せず、密かに反撃の機会を窺っていた。
【感想】
主役が完全に高杉晋作に移った3巻目。
京での失脚や下関での戦争、蛤御門の変など、これまで勢いづいていた長州藩の落ち目が描かれている。
前巻までは大らかに見られていた長州藩内部も、過激派たちによって幕末らしくどんどん血なまぐさくなっていった。
そんな極限 -
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禅僧より還俗し、油商から美濃の領主に登り詰めた梟雄・斎藤道三。松波庄九郎と呼ばれた若き日を描いた第一巻。
史実に基づいているかは置いといて娯楽小説として抜群の面白さ。庄九郎という規格外な男の立身出世が存分に描かれている。
切れ味鋭い頭脳と自らの才覚を全く疑わない自尊心。そして好機を逃さない実行力。人を道具として利用しながらも風流を愛する文化人。女たちは戸惑い恐れるが次第にその魅力に溺れていく。
間違いなく悪人、しかし小悪党ではなく途方も無いほどの唯一無二の大悪党。
神仏すらも家来と考える高慢な姿は危うさと清々しさが同居する不思議なオーラに溢れている。 -
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【感想】
幕末の錯乱した時代の流れを「長州視点」で見つめた物語。
吉田松蔭が死刑にあい、高杉晋作にバトンタッチ。
高杉晋作の幼少期から紡がれて行く本編は、この男がどういう人間なのかを非常に面白おかしく描かれている。
彼の天真爛漫っぷりは家系によるものなのだと納得。
そのくせ、藩主に対する忠誠心のみはしっかりと刻み込まれていたのだなぁ。
また、上海留学のエピソードも初めて読んだが、彼の攘夷運動の礎はこうしたところでも培われていたのかと納得。
高杉晋作の小説ではやはりこの本が1番面白い!!
【あらすじ】
狂気じみた、凄まじいまでの尊王攘夷運動。
幕末、長州藩は突如、倒幕へと暴走した。
その -
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ネタバレ昭和30年に書かれたとは思えないほど、現代に通ずるものがあった。
それほどに日本社会は進化していないのか、はたまた"サラリーマン社会"の根本は変わらないのか…
さすが司馬遼太郎と言わざるを得ない流れるような文脈で読みやすく、
かつ様々な先人たちの言葉もリソースとして交えられ、スッと入り込む一冊だった。
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■インドの法句経
古代インドの法救という坊さんが釈迦のコトバを編集したもの
⇒当時のインドの社会制度はそれこそ二十世紀後半の日本とは比べ物にならないほどひどい
(社会制度のカケラもない)
貴族の他は乞食同然、というよう -
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あらゆる堀を埋められた大阪城での夏の陣。勝敗はすでに決し、その中で見どころはやはり真田幸村の活躍。華々しく死んで名を残すことだけを目指す武将がほとんどの大阪方の中で、彼だけは勝つことを決してあきらめない。綿密な作戦を練り、それがうまく行かなければ、次の策を練る。疲れることのない彼の精神と徳川方を蹴散らして突進する行動力は痛快だ。
こうした滅びに向かう美を描くことこそが司馬文学の真骨頂。そして、幸村の思考は戦闘のことだけではない。戦闘の合間に自身の娘を今日戦ったばかりの敵将、伊達政宗に託そうとする。そんな大胆な行為を見せる幸村に対して、それに応じる政宗。敵味方の関係を越えた2人の武将のやりとり