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詩人、革命家など鮮烈な個性に慕われつつ、自らは無名の市井人として生きた正岡家の養子忠三郎ら、人生の達人といった風韻をもつひとびとの境涯を描く。「人間が生まれて死んでゆくという情趣」を織りなして、香気ただよう名作。
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Posted by ブクログ
「亡き友人に捧ぐ」 そんな副題が頭に浮かぶくらい、付き合ってきた友達への愛情が溢れ、さらに愛惜感たっぷりの作品になってる気がします。 題名が秀逸すぎます。 読み終わって表題の意味がズシンときました。 いつもそうですが、タイトルがステキすぎる。笑 人がその人生をつかい切ったあと。 不思議とその人の...続きを読む生き様や生きてきた証が。 光るように浮かび上がるように。 作者には見えてしまうんでしょうね。 あ!跫音か。笑 名声や成功があろうがなかろうが。 英雄的な生き方をしようがすまいが。 そう。どんな人にも曲げなかった信念が。 人生を紐解くと、全ての人が、小説になり得る。 いや。この方の手にかかれば、かな? しかし。 上を読んでも、そこまで心が揺れなかったのに。 下に入った途端に掛け算になって、面白さ倍増。 タカジと忠さんが、生き生きと描かれてました!
上巻に続き、おもに忠三郎とタカジの人生が随想風に語られる。透徹した人間観察の中に深い愛情を感じる名著。
司馬さんの歴史小説とは違い、無名の人を描いています。 少なくとも、秀吉とか家康とか竜馬とか正岡子規とか、そういう教科書に載っている人ではありません。 そうなんだけど、司馬さんらしいのは、根っこに「正岡子規という風景」があります。 正岡忠三郎さんは、子規の縁戚でもあり、系図で言うと子孫です。そして、恐...続きを読むらくは青春期に文学を嗜好しながらも、子規の係累であることへの遠慮なのか反発なのか、まったく文学創作活動をしないまま亡くなりました。そんな忠三郎さんが、子規の遺稿などを几帳面に整理整頓していました。 「タカジ」さんは獄中で子規の本を耽読しました。そして子規の詩歌を愛し抜きました。そして、忠三郎さんとの友情を貫きました。 司馬さんは、とにかく正岡子規、という人とその風景が好きでたまらないのですね。 正岡子規の生涯もそこはかとなく振り返りつつ、その保護者であった加藤拓川の人生風景まで筆が伸びていきます。 加藤拓川さんは、正岡子規の親戚であり、そしてなによりこの小説の主人公?である、正岡忠三郎さんの父親なんです。 正岡子規。その保護者である加藤拓川。その実子である正岡忠三郎。忠三郎さんの実母。 子規の姉の正岡律。律は、忠三郎さんの養母でもあります。 忠三郎さんの友人であり、子規に魅せられた詩人である「タカジ」さん。 「タカジ」さんと、忠三郎さんの、妻たち。 それぞれが(正岡子規以外は)教科書に載るような人生ではありません。 ただきっと全員に、司馬さんが「正岡子規の香りを湛えた、純粋で無垢でひたむきで、そして明るい風景」を感じたんですね。 そして、それらの人々の人生は、どれもがそれなりの波乱万丈を湛えています。 繰り返して言いますが、物語娯楽小説ではありません。 「えっと…結局何が言いたいねん」と突っ込みたくなるような、作りながら作り上げる物を探っているような小説です。 そうやって作りながら、はたと茫然し、一服しているような小説です。描く内容、エピソードも、時間軸を行ったり来たり。想い出話を聞きながらお茶を飲んでいる気分です。 そうなんですが、小説の終盤。 忠三郎さんの死が迫り、「タカジ」さんが音頭を取り、「忠三郎が死ぬ前に」と、「子規全集」の編集プロジェクトを始めます。 そのあたりになってくると、薄味の向こう側に静かな大きな川が緩やかに満ちて流れるような、不思議な感動がありました。 司馬さんが言っている通り、結局、そういう「ひとびとの跫音」の最期に「子規全集」があるような、そういう物語なんです。 不思議な読書だったのですが、これはひょっとして司馬さんの本の中でいちばん好きなんじゃないかなあ、と思いました。 なんていうか…ハナから、10代の若い人にウケるように、ベストセラーになるように、そういう作りの本ではありません。 わかりませんけれど、若いうちはこの味わいは分からないのでは… 40歳を過ぎて読んで良かったなあ、と。 また60歳くらいの頃に再読してみたい、と思いました。 ########################### 司馬さんは何度も「タカジ」さんの共産党としての活動は良く知らないし、その政治的活動には関わっていないし、正直興味もない、と述べておられます。 以前に別の文章で司馬さんが、 「右翼は生理的に嫌いです。左翼も好きではありませんが、どこかしら期待を持ってしまうところがあります」 と書いていました。 恐らく狂乱の60年代-70年代には、左翼的な人々から司馬さんは「右翼的である」と非難されたこともあったようです。 何ですが、正直、安倍政権で反知性主義な2016年現在で言うと、この「ひとびとの跫音」ですら、司馬さんじゃなかったら左翼的と呼ばれ、本屋で売られないんじゃないかなあ、と思いました。 僕は司馬さんはマッタク左翼的とは感じませんが、「左翼に対してどこかしら期待を持ってしまう」という言葉を並べる司馬さんの感覚は、大好きです。
上巻に引き続き、正岡忠三郎をめぐるひとびとの人生が、実際の証言や体験、記録、そして作者特有の比喩によって、それぞれの人となりを含めて、実に生き生きと現出させられている。
なんともいえないジャンルの作品。エッセイなのか小説なのか。正岡子規周辺のひとびとの生死を描く。タカジが強烈な個性を出している。英雄ではなくてもこういった人間の話がいくつも折り重なって歴史となっているのでしょう。
正岡子規を取り巻くひとびとを描いた後編。忠三郎さんとタカジの記述が中心だが、タカジの強烈な個性に比して忠三郎さんは自分を抑制して人生を過ごした印象。本当は何をやりたかったのか、不思議な人生だ。
著者が二人の友人、正岡子規の養子であった正岡忠三郎と、詩人のぬやまひろし(通称タカジ)の人生を手繰り寄せるように綴った作品。この二人の男が、ともかく変わった、味のある男で、こう言っては何だけども本当に存在していたのか?もしや全て司馬遼太郎の創作なのでは・・・とも思ってしまう程にアウトサイダー。という...続きを読むかいかにも司馬小説に出てきそうな人となりだった。それはつまり、「時代小説にひょいと出てきそうな人物」という意味で、要するに古風。というか武士のような男たちなのだということ。かな?まあ武士じゃなくて農民かもしれないが。そういえばどことなく儒教的でもあった。この二人の人生を辿りながら正岡子規や陸羯南の人生についても書いている。というよりは、一人の人生を手繰り寄せ手繰り寄せしていると その端っこがちらりと触っている別の人生が一緒に引き寄せられてくるのに似たさりげなさで、かつて日本に生きていた文人や知識人、活動家、ジャーナリストその他あらゆる人たちが登場する。世間は狭いものだ。その狭い世間の上で、無数の人間がどたばた忙しなく動き回っているのだからなおさらである。
この本を読んで楽しめる人って、とっても希少だと感じる。正岡子規がどれほどインパクトがあるのか、ないのか、話しはけっして面白いわけじゃない。「司馬遼太郎」を読み込んでいる人に向けた特別な本、強いて言えば趣味本でこれほどビックネームじゃなければ自主出版本の括りだとおもう。またはわたしがこの本の面白さを...続きを読む理解できないのか(泣
正岡子規の養子である正岡忠三郎とその友人である西沢隆二とその周辺について交流のあった筆者がその生き方、死に方を書いた本。ストーリーを楽しむ本ではなく、その人たちへのレクイエム的本。
子規の養子、正岡忠三郎とその友人であり革命家の西岡隆二の生き方、死に方を語る。子規、加藤拓川から続く明治の人たちの気脈のようなものが感じる。11.3.27
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