司馬遼太郎のレビュー一覧

  • 北斗の人 新装版

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    ネタバレ

    再読。

    北辰一刀流の流祖・千葉周作成政の前半生を描く歴史小説。

    「『剣の要諦はひとことで申してどういうことでございましょうか』
    と門人がよくきく。
    (中略)
    周作は、
    『剣か。瞬息』
    とのみ教えた。剣術の要諦はつきつめてみれば太刀がより早く敵のほうへゆく、つまり太刀行きの迅さ以外にはない。ひどく物理的な表現であり教え方であった。周作は剣を、宗教・哲学といった雲の上から地上の力学にひきずりおろした、といっていい」

    たとえばこの部分によく表れているように、周作は明確な理論と合理性でもって、それまでの剣の常識を破壊していく。その展開は読んでいて小気味よいが、それだけでなく、筆者・司馬遼太郎の文

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    2020年06月15日
  • 国盗り物語(二)

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    斎藤道三という人が魅力的な歴史上の人物なのは、その時代の常識に生きるふつうの人が想像できないことを、創造することのできる数少ない人物だったからであることがよくわかる。飢饉の時に領土の税を減免するかわり、油は自分のところから買わせるようにするとか、決して奇抜な発想ではなく、常識にとらわれないだけで妥当な方法である。こういうことが時代や世界をデザインをするということなのだろう。そしてそれを果たしていく織田信長は、隣国にいた斎藤道三にその才能を見出されなければ、あるいは歴史に出る前に滅ぼされていたかも知れないことを思うと、歴史の不思議さを感じる。

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    2020年06月13日
  • 菜の花の沖(三)

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    大型船「辰悦丸」を入手した嘉兵衛。いよいよ蝦夷地へ。高田屋嘉兵衛の生涯を描く全6巻中の第3巻。

    いよいよ嘉兵衛は辰悦丸を完成させ憧れの蝦夷地へ。そこは松前藩がアイヌ人を搾取する地。一方、ロシアの進出を恐れる江戸幕府。密かに蝦夷地を幕府直轄にすべく調査を開始。嘉兵衛は理想に燃える幕府の官吏たちに心を打たれ協力するが、松前藩との板挟みになる。

    嘉兵衛が利を捨てて蝦夷地の魅力にひかれていく巻。松前に比べ寒村の箱館。東蝦夷地は幕府直轄に。嘉兵衛の新たな挑戦が始まる。

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    2020年06月10日
  • 国盗り物語(二)

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    斎藤道三が加納城の城主となり、そこから美濃の国盗りを成し遂げるまでを描いた、「国盗り物語(ニ)〜斎藤道三 後編〜」。
    本城もやぐらも全て瓦でつくった稲葉山城を設計し、城下町をつくり、楽市楽座をひらき(美濃だけで)…斎藤道三のおこした様々な政治に圧倒されるお話でした。
    そして、尾張の虎 織田信秀との度重なる戦いにも息を呑む思いで読み進めました。
    歴史に疎い私でも知っている、幼少期の織田信長や明智光秀も登場し、これから大人になる彼らがどのような生き様を見せてくれるのか…ワクワクしながら、次の第三巻も読み進めていきたいと思います。

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    2020年06月09日
  • 菜の花の沖(二)

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    高田屋嘉兵衛の生涯を描いた全6巻中の第2巻。中古の船を得た嘉兵衛は船乗りとして日本海を北上、海に躍り出る。

    江戸時代後期、士農工商の身分からは外れた船乗りはコメとは別の貨幣経済の立役者である。身分制度の足枷から抜け出た嘉兵衛、1巻で切ない場面が多かった分、2巻は広い海へ躍り出る開放感が素晴らしい。

    兵庫から瀬戸内海を経て遠路秋田まで。当時の西回り航路を辿る記載が、紀行文的に楽しめる。

    太平洋の黒潮沿いに広まったと思われる海洋民族。日本人のルーツの一つであろう。日本海沿いにもその文化は散らばって残存しているようだ。裏日本ではなく江戸時代は日本海側が北前船の航路で表であったとのこと。

    嘉兵

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    2020年05月30日
  • 菜の花の沖(一)

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    商品経済の発展した江戸時代後期。農耕民族とは違った海洋民族も日本人のルーツの一つ。淡路島に生まれた高田屋嘉兵衛の壮大な冒険が今はじまる。

    司馬遼太郎の代表作の一つだろう。武士など農業が日本の歴史の主たる流れだろう。もう一つ南海道の方には海洋民族として日本人のルーツがある。

    江戸時代も後期となれば鎖国しつつも海運が大きく発達。元々はコメを大阪に回遊するためのものだが、やがて商品経済が発展し幕藩体制を蝕んでいく。

    そんな流れの中、高田屋嘉兵衛という船乗り、商人を主役とした作品。貧家に生まれ厳しい境遇。なんとも切ない出だしから。その分、淡路から海を渡り西宮で樽廻船に乗るあたりから急に展望が開け

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    2020年05月23日
  • 国盗り物語(一)

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    何という面白い小説か。史料に縛られていない、会話が中心のテンポのよい、闊達な人物描写が魅力の一編。活き活きと歴史上の人物が躍動する、こういう司馬さんの作品もまた司馬文学の魅力だなぁ。

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    2022年11月06日
  • 胡蝶の夢(四)

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     ポンペのもとで蘭学・医学を学んだ3人は幕末の瓦解から明治へと時代に翻弄されながらも新しい社会の中で生きて行った。
    司馬凌海(伊之助)明治12年 39歳 肺結核
    松本良順 明治40年 75歳 心臓病
    関寛斎 明治45年 83歳 自死
     
    筆者のあとがき
    「『胡蝶の夢』を書くについての作者の思惑のひとつは江戸身分制社会というものを一個のいきものとして作者自身が肉眼で見たいということだった。それを崩すのは蘭学であった。」
    「社会という巨大な容易に動きようもない無名の生命体の上にとまったかすかな胡蝶(蠅であってもよい)にかれらはすぎないのではないかと思えてきたりもする。」

    『荘子』斉物論第二 

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    2020年05月21日
  • 国盗り物語(一)

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    大河ドラマの影響で学生時代以来の再読。
    当時も面白く読んだ記憶があるが、再読してもやはり面白い。第一巻は庄九郎の成り上がりっぷりが痛快。

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    2020年05月17日
  • 新史 太閤記(上)

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    時代小説の革を被ったビジネス書。
    部下としての仕事と、上司としての仕事と、社長としての仕事。全てが参考になる。
    自分の年齢にあわせて何度でも読み返すべき。
    毎回何かが得られる気がする。

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    2020年05月15日
  • 胡蝶の夢(一)

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    書物を通してのみオランダ語を学んでいた松本良順だがポンペから直接オランダ語で医学の講義を受け始める。初めて話し言葉としてのオランダ語を聴くのだが文法の基礎があったからすぐに慣れていった。現代の語学学習にも通じるところがある。対して伊之助は語学の天才。中国語の学習にもその才を見せる。
    長崎往還の最大の難所とされる日見峠から長崎の町と入り江を見たときは伊之助は感動のために子供のように泣いた。

    ポンペ「日本滞在見聞録」
    「ニューエクスプレス オランダ語」白水社

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    2020年05月13日
  • 国盗り物語(四)

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    全4巻、戦国時代の斎藤道三、織田信長と明智光秀を描いた著名な歴史小説。

    国民的作家司馬遼太郎の代表作の一つ。全4 巻を再読完了。

    前回20年ぐらい前に読んだ時は斎藤道三のあまりのスーパーマンぶりに辟易したが、歴史でなく「小説」として読めばこれ以上ないぐらい楽しく読むことができた。竜馬だって土方歳三だって誤解する人が多いが史実を基に司馬が造形したキャラクターである。

    第3巻と4巻は織田信長編とはいえ、実際の所明智光秀から見た織田信長。天才の傍にいる一般人視点は映画「アマデウス」のようで分かりやすい。光秀の謀反の動機、過程も理解できる気がする。

    司馬遼太郎作品の中でも何より舞台が戦国時代、

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    2020年05月11日
  • 新選組血風録 新装版

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    燃えよ剣と一緒に手に取るのが血風録。
    小学校の時以来読み直したが、いまだからわかる良さや深さがある。短編集で読みやすく、「沖田総司の恋」がはかなく好き。これで薄っぺらい読書感想文書いて提出した小6の自分にびびる。
    人間味溢れる心情が伝わり情景も浮かびやすい。古典物、時代小説が好きな人にはおすすめ

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    2020年05月10日
  • 国盗り物語(二)

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    ネタバレ

    美濃の蝮と言われた斎藤道三の後編。戦国時代のダークヒーロー小説であり、男子の憧れなのではないだろうか。

    人並み外れた智者であり武芸家。また気運がくるまで気長く待ち続け、その気運がくるやそれを一息で掴んでしまう英雄。上に立つべき能力者としての「蝮」である。
    自身曰く善と悪を超越したところに居ると書いてあるが、まさにこの両面を持ち合わせなが「新国」を作り上げた人物である。
    天下第一等の悪人と言われる所以は「破壊者」というところにある。守護職の土岐頼芸を追放し、古くからの商業機構である「座」を美濃においてぶち壊した。魔法のように忠誠の神聖権威にいどみかかり、それを破壊。それを壊す為には「悪」という

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    2020年05月08日
  • 国盗り物語(三)

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    いよいよ織田信長登場。戦国時代を代表する武将。話は一気に進んでいく。

    一、二巻の斎藤道三からストーリーは織田信長が主体となる。とはいえ実際は濃姫と明智十兵衛光秀視点が多い。NHK「麒麟が来る」視聴者としては嬉しい限り。
    斎藤道三が息子の高政に裏切られ殺される。将軍になると自負していた道三が、人生を諦観するところが中年読者として見につまされる。
    道三は信長と正室小見の方の甥明智十兵衛蜜を後継と認めていた。道三の死と共に十兵衛は長い流浪の旅に。
    信長と光秀の両者の話が交互に行われる展開。二人は第三巻でも出会うことはないのが面白い。

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    2020年05月03日
  • 坂の上の雲(五)

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    ネタバレ

    戦略や戦術の型ができると、それをあたかも宗教者が教条を守るように絶対の原理もしくは方法とし、反復して少しも不思議としない。

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    2020年05月01日
  • 国盗り物語(二)

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    油商人から美濃の国主に成り上がる斎藤道三の生涯。その後継者となるのが織田信長と明智光秀。NHK大河ドラマ「麒麟が来る」を機に再読し、名作であることを痛感。

    全四巻。
    斎藤道三 前後編
    織田信長 前後編
    の四巻構成の第二巻。

    斎藤道三が美濃の国守となり、年老いて将軍となる夢を諦めるところまで。
    後編ではライバル尾張の織田信秀(信長の父)が登場する。道三とはまた違った爽やかな魅力的な人物として描かれている。

    本巻の後半でようやく大河ドラマの時系列に追いつく。

    蝮と呼ばれ策謀の限りを尽くしたかのように後世思われているが、既得権益を破壊し楽市楽座や災害時の年貢の減免など領民にはありがたい領主だ

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    2020年04月29日
  • 新装版 最後の伊賀者

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    京都画壇四条派の呉春を題材にした短編(『天明の絵師』)が目当てで読みましたが、それよりも、長沢蘆雪が主人公の作品(『蘆雪を殺す』)が入ってたことにびっくりしました。
    何より、両作とも軽く四、五十年前の作品のはずなのに、つい最近「発見」されたはずの「奇想画の系譜」のイメージにぴったりの人物造形っていうのが凄いです。

    道頓堀の由来が「道頓さん」というのも初めて知って面白かった(『けろりの道頓』)。しかも、構想は太閤だけど、実現は完全に民間有志って、いかにも古き良き「大坂」って感じで素敵。
    前半三作の忍術活劇、夢枕獏かと思わる『外法仏』とバラエティ豊かで一粒で何度もおいしい一冊です。

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    2020年04月26日
  • この国のかたち(五)

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    ▼2020年4月現在、新型コロナ禍に蹂躙されている世界および日本ですが、1年後、5年後、10年後、どう位置づけられるものでしょうか。

    ▼個人的に読んだ本の備忘録的なものを残すように習慣づけてからもう7~8年経ちます。昔の備忘録を読み返すとそれはそれでオモシロイ。将来、何年か先、この文章を読み返して「ああ、コロナ禍あったなあ。日々に追われて忘れてたあ」と、思えることを願って止みません。

    ▼現在の状況の未曾有さに途方にくれつつ、この本の司馬さんの言葉が改めて味わい深い。

    ▼(本文より)ヒトは、無人の曠野に生まれず、その民族やその国家、社会、さらにはその文化の中にうまれてくるのである。さらにい

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    2020年04月18日
  • 街道をゆく 40

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    台湾のアイデンティティとは。

    司馬遼太郎さんの考察と李登輝さんなど台湾の著名人と議論する内容は面白い。

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    2020年03月29日