【感想・ネタバレ】国盗り物語(一)のレビュー

あらすじ

世は戦国の初頭。松波庄九郎は妙覚寺で「知恵第一の法蓮房」と呼ばれたが、発心して還俗した。京の油商奈良屋の莫大な身代を乗っ取り、精力的かつ緻密な踏査によって、美濃ノ国を〈国盗り〉の拠点と定めた! 戦国の革命児斎藤道三が、一介の牢人から美濃国守土岐頼芸の腹心として寵遇されるまでの若き日の策謀と活躍を、独自の史観と人間洞察によって描いた壮大な歴史物語の緒編。

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主人公は松波庄九郎、後の斎藤道三。この方について、私は知りません。

庄九郎、名前が変わります。
法蓮坊→松波庄九郎→奈良屋庄九郎→山崎屋庄九郎→(再び松波庄九郎)→西村勘九郎→長井新九郎

僧侶から油商人ついには武士へと、名前が変わるごとにキャリアアップしています。庄九郎の恐ろしいほどの執念が、野望の青写真をどんどん現実化。この執念、女性に対しても同様です。目をつけた女性は、必ず自分のものにする。これまで読んだ司馬遼太郎作品とは違い、色恋描写が多かったのでちょっとびっくり。肉食系男子の最たるものでした。当時の女性の立ち位置を考えると、悲しいものがあります。

庄九郎、怖いぐらいに弁が立ちます。よく言えば人の気持ちをつかむのが上手い。何事にも抜け目なく完璧かと思いきや・・・・
土岐頼芸の妾であった深芳野のお腹の子が、自分の子であると勘違い?!(いや、腹にいちもつある庄九郎、知らないはずはない)

司馬遼太郎さんの語り口に引き込まれて、あっという間に読み終わりました。

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2025年08月18日

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半分くらい恋愛/官能小説の感がなくもないが、斎藤道三(庄九郎)の人間味が面白く、一気に読めた。戦国作品はほぼ触れてこなかったが、特に理解が難しいところもなく、初めてでも楽しく読むことが出来た。

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2023年11月15日

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緻密な計画に大胆な野望。本巻は、牢人であった松波庄九郎(後の斎藤道三)が様々な手法を用いて次々に身分を乗っ取っていく様を、スピード感ある文章で描き出している。如何なる人物を相手にしても物怖じせず相手の心を掴んでいく過程は、世渡りの上手さを物語っているなと思った。根拠のない自信は何処から湧いてくるのか。庄九郎という人物の人生観に強く興味をそそられた。司馬遼太郎の小説は幕末だけでなく戦国時代も面白い。ここから更にどのような道を辿ってのし上がっていくのかが気になり、次巻も期待の気持ちがいっぱいである。

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2023年08月23日

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斎藤道三のまだ牢人の頃の話が好きです。
特にお万阿とのやり取りが面白くて好きです。
また、登場人物の心中を表現するのに、(あっ)を使っているシーンが多々出てきて大好きです。
普通の人?が使ったらただの語彙量ない文章になるのに、司馬遼太郎だからこそ面白く深みのある(あっ)になるんだと思いました。

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2023年05月26日

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道三編の前半。奈良屋乗っ取りから美濃への進出まで、フィクションを交えながら面白く描かれていて、一気に読んでしまいました。

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2022年10月16日

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 子どもの頃、大河ドラマでみてから、歴史ファンになった。道三の立身(最近の学説では世代にまたがっていたようだが)、信長の天才性、常識人光秀の人間模様が面白い。特に、信長!

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2025年12月07日

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久しぶりに読んだ司馬遼太郎氏の長編小説。やっぱり面白かった。
本書は大ざっぱに前半と後半に分かれており、前半は美濃の斎藤道三の生涯を、後半は織田信長の生涯を追っている。どちらもなかなか興味深かった。
斎藤道三については本書を読むまでは詳しく知らなかったのだが、身分が無い生まれだったために、京都の老舗の油屋の寡婦の婿になることにより財力を得、美濃地方を治めていくストーリー。槍の技術だけでなく芸術に長けて、性格的にも人望が厚く、最後は城まで作った。ただ、彼が治めることが出来たのは美濃だけだった。
道三は娘の濃姫を当時尾張の若殿だった織田信長に嫁がせた。つまり道三は信長にとって義理の父である。道三は明智光秀と織田信長に能力を認め、可愛がった。
第3巻と第4巻は、織田信長の話と言っても、実際にはほとんど明智光秀の話になる。よく知られるように、この二人は切っても切れない縁で繋がっている。役職上は上司と部下であるが、どのようにして光秀が謀反を企てるようになったのか、その過程がとても丁寧にかかれている。ただ天下を取りたかった信長に対して、光秀が欲しかったものは何だったのか。そして本能寺の変を起こした後の光秀の絶望とは。台頭してくる秀吉や家康もよく物語に出てくる。
毎回感心するが、よく調べて書かれているな、ということ。言うまでもないが、司馬遼太郎氏はこういった完成度の高い作品を何十と残しているのがすごい。本著作は室町時代の足利将軍が力を失っていった状況や、皇族を利用しようとした信長の賢さや、当時の中部地方の状況がよくわかり、興味深かった。光秀は真面目で、秀吉のようにうまく立ち回ることが出来ないが、個人的には憎めない人物である。
司馬遼太郎氏の大作はいくつも読んだが、読みつくすことはできない。次は何を読もうか。

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2021年08月17日

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1巻、2巻は斎藤道三の物語。寺を飛び出した一人の男が、やがて京都の油商となり店を乗っ取り、美濃に進出してとうとう守護職を追い出して自分が国王になってしまう。まさに戦国時代の英雄物語である。道三の活躍する数々の戦のストーリーもすごいが、女性を次々と我が物にしていく展開もすさまじい。しかし、2巻の最後、道三編のラストでの、彼に人生を変えられた女性たちとのシーンはしみじみとしていて、それまでの道三のイケイケ物語から急にトーンが変わる。ここに道三の老いの悲しみが見事に表現されている。
司馬遼太郎の戦国物は、史実を細かく追わずに、ストーリー中心にグイグイ引っ張っていくところが魅力的だ。

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2021年01月26日

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司馬遼太郎歴史小説の1つ

斎藤道三前編

斎藤道三の、能力抜群だが格が低いということであれやこれやと芸をこなして成り上がる姿がかっこいい。悪者として言われているが緻密な作戦、時には大胆な行動を起こすことで為すべき時に為して成り上がれるのは見習うものだと思える。

欲しいと思ったときに我慢強くするところは我慢し、手に入れられると思ったら迅速に動ける人間になりたいと感服した。

今作は斎藤道三が牢人から始まり、商人、武士、守護大名へと肩書を変えていく。人生がたくさんあるようでうらやましくも思えるが、やはり野望を抱き、行動を起こすことが自分の人生で大事なものだと感じさせられた1作でした。

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2020年11月22日

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これほどまで感情移入してしまうとは。
庄九郎がとてと魅力的、とくにお万阿とのやりとりがおもしろかった。
とてもフィクションとは思えない、司馬遼太郎の人物像の作り方に脱帽です。

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2020年08月28日

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難しそうだからと敬遠してたけど、真逆だった!
めちゃくちゃ分かりやすくて面白い!

まぁ、ほぼフィクションなんだろうけど、
司馬遼太郎の手に掛かると斎藤道三がこんなにも魅力的なキャラになるとは。

続きが楽しみ♪

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2020年07月10日

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何という面白い小説か。史料に縛られていない、会話が中心のテンポのよい、闊達な人物描写が魅力の一編。活き活きと歴史上の人物が躍動する、こういう司馬さんの作品もまた司馬文学の魅力だなぁ。

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2022年11月06日

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大河ドラマの影響で学生時代以来の再読。
当時も面白く読んだ記憶があるが、再読してもやはり面白い。第一巻は庄九郎の成り上がりっぷりが痛快。

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2020年05月17日

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禅僧より還俗し、油商から美濃の領主に登り詰めた梟雄・斎藤道三。松波庄九郎と呼ばれた若き日を描いた第一巻。
史実に基づいているかは置いといて娯楽小説として抜群の面白さ。庄九郎という規格外な男の立身出世が存分に描かれている。
切れ味鋭い頭脳と自らの才覚を全く疑わない自尊心。そして好機を逃さない実行力。人を道具として利用しながらも風流を愛する文化人。女たちは戸惑い恐れるが次第にその魅力に溺れていく。
間違いなく悪人、しかし小悪党ではなく途方も無いほどの唯一無二の大悪党。
神仏すらも家来と考える高慢な姿は危うさと清々しさが同居する不思議なオーラに溢れている。

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2024年06月08日

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戦国時代の梟雄ともいうべき斎藤道三と弟子たる明智光秀と織田信長を描いた長編。前半は還俗して油屋の亭主となり実験を握り更には武士になるという成り上がりストーリー。
司馬遼太郎先生の作品は余談が多く多彩な史料を使用しているので真実味があるが、実は本書における斎藤道三は虚像。油商人から大名に一代でなったというところが嘘で実は親子二代の業績である事が定説化している。そこは時代小説という事で楽しむべきではある。

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2025年10月17日

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『国盗り物語』(司馬遼太郎)

1. この本を一言で表すと?

常識と権威を破壊し、自らの才覚と情熱だけを武器に時代を切り拓く「変革者の生き方」を学ぶための物語。

2. この本から得られる3つの核心的学び

学び①:過去の成功体験は、未来の足枷になる
本書で引用される「負けた戦法をくりかえす軍人」のように、人間や組織は一度成功した方法に固執しがちです。しかし、時代や環境は常に変化しています。過去のやり方が通用しなくなったとき、それに固執するのは敗北への道です。真の勝者とは、プライドや前例を捨て、大胆にやり方を変える「戦術転換」を断行できる者です。

学び②:常識を疑い、本質だけを追求する
油売りから一国の主となった斎藤道三の生き方は、生まれや身分といった当時の「常識」をものともしない、徹底した合理主義に貫かれています。目標達成のために本当に必要なことは何かをゼロベースで考え、無駄や建前を排除して最短距離で突き進む。この「下克上」の発想こそが、大きなことを成し遂げる原動力となります。

学び③:「激しく生きる」という覚悟が、人生の価値を決める
「生のあるかぎり激しく生きる者のみが、この世を生きた、といえる」。これは、ただ長生きすることや安定を求めるのではなく、自らの目的のために人生を燃焼させることの価値を説いています。何となく日々を過ごすのではなく、自分が何を成し遂げたいのかを常に問い、その実現に全力を注ぐ情熱的な生き方こそが、真に「生きた」と実感できる人生につながります。

3. 明日から実践するアクションプラン

[具体的な行動1] 週に一度、自分の「当たり前」を疑う
普段の仕事や習慣について、「なぜこのやり方をしているんだっけ?」と問い直す時間を5分設ける。もしその前提が崩れたら、どんな新しい方法が可能になるか思考実験してみる。

[具体的な行動2] 会議や議論で「そもそも論」を投げかける
目的が見えにくい議論に陥ったとき、「そもそも、私たちが達成したいことは何でしたっけ?」と本質に立ち返る問いを投げかける。既存のルールや手順ではなく、目的達成への最短ルートを考える癖をつける。

[具体的な行動3] 半年に一度、自分の「情熱」を棚卸しする
「この半年、自分は“激しく”生きてきたか?」と自問する。もし答えがNoなら、何に情熱を注ぎたいのか、そのために明日から何を変えるべきかを考え、小さな行動計画を立てる。

4. 心に残った名言・フレーズ

歴史は、軍人どもが戦術を転換したがらないことを示している。(中略)と同時に、歴史は、戦術転換を断行した軍人が必ず勝つことを示している。

生のあるかぎり激しく生きる者のみが、この世を生きた、といえる者であろう。

5. この本は誰におすすめ?

現状維持の風潮が強い組織で、変革を起こしたいと考えているリーダーやビジネスパーソン

キャリアや人生に停滞感を感じ、新しい一歩を踏み出す情熱と勇気が欲しい人

既成概念にとらわれず、ゼロから新しい価値を創造したい起業家やクリエイター

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2025年06月27日

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戦国時代の初頭、織田信長が世に出る直前の時代。
後に斎藤道三として歴史に名を残す庄九郎が、持ち前の頭脳を活かしながら国主を目指してのし上がっていく物語、その前半。

人心や時世を読み、巧妙に欲しいものを手に入れていくその様には底知れぬ狡猾さを感じました。ページ数も500ページ以上でしたが、テンポ良くのし上がっていくこともあり、すんなり読み進められました。著者の作風も相まってか、女性とのあれこれは多めでしたが…。

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2025年04月07日

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ダークヒーローのピカレスクロマンのようであり、チートキャラのなろう系のようでもあり、島耕作的な出世と女の物語のようでもあり。
そして司馬先生この頃絶好調だったんじゃないかと思わせる筆の乗り方。最高のエンタメ小説!
個人的には島耕作要素はもうちょっと少なめでいいけど、二巻でもまだ続くんだろうな…

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2024年07月18日

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戦国時代は、実力本位の時代というイメージがあるが、実際には、家柄、官位が重んじられ、だから信長は異端だったという事なのだろう。斎藤道三が、美濃を手中に収める過程で当地の名家を継ぐ形で改名を繰り返す様は、現代の感覚では理解し難いが、歌舞伎役者や落語家が名跡を継ぐようなものか?

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2023年09月10日

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斎藤道三という名前は聞き覚えがあったが、具体的な人物像は知らないままであった。

アニメ、ラノベが流行り始めた辺りから日本史の戦国時代を対象としたものが広がり始め、ゲームとしても確立されているため、人物としての名前は知っていてもふんわりとしたものしから知らなかった。

司馬遼太郎の作品は人、それを取り巻く時代の流れを丁寧な描きと共に読むことができるため、物語として純粋に楽しむだけでなく勉強としても読むことができるのではないか。
(実際学生時代『項羽と劉邦』を課題図書として読んだ、、、)

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2023年03月07日

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最初の主人公は斎藤道三。

人の裏の裏をかくといった道三の才能ぶりとともに、時として強引なやり方が後の道三の人生に影響を与えるであろうと示唆するさまが描かれている。そうした司馬の描写は見事である。

所々に解説を加えている司馬らしさも健在。

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2022年03月05日

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松浪庄九郎の成り上がり劇!油商人から美濃一国を
治めていく手腕が痛快。結構色めいたシーンがあり、それも含めて楽しめました。

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2020年08月31日

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司馬遼太郎が描く戦国の世と私が価値観を同じくしているとは、決して言えないが、面白い。ひとまとめに言うと、仏教の教理を言い散らして、スムーズな対話が交わされるなどというのが私には疑問で、僧侶ならともかく、庶民がそういう会話に進んで加わったという設定は不自然に感じた。また、当時の武士として当然であろうが、一夫多妻の実際の状況はあまり好感が持てるものではない。しかし、決闘や合戦や主従のやり取りは、私が堅物なためか、血が騒ぐように爽快な気持ちだった。読む中で、斎藤道三と自分を比べてしまうが、そもそもからして、筋骨隆々たる道三には体は及ぶべくもなく、強烈な自信もない。この頃思うのが風狂と言われた芭蕉に影響を強く受けて、遊びは存分にしているなあということだ。道三のように破竹の勢いで突進していく人生には重ならないだろう。

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2020年08月21日

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めちゃくちゃ面白い

エンタメとしての面白さもあり、歴史が学べ、人生観も身につく

どこが司馬遼太郎の作った虚構か、歴史的事実かわからない

それをまた調べるために、司馬遼太郎と歴史の沼にはまっていく

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2020年07月22日

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日本史、特に戦国時代の歴史にとても疎かったため、少しでも知りたいと思い読み始めた本。
この時代の歴史に興味を持ったキッカケは、大河ドラマ「麒麟が来る」でした…

「麒麟が来る」は明智光秀が主人公のため、ドラマが始まった時点での斎藤道三は既に成り上がった後でした。油売りの成り上がり、斎藤道三がどのように美濃の国盗りに至ったのか、その過程の前半の物語。
歴史というものは、人によっても書物によってもいろいろな解釈があると思います。多少の脚色、そして事実との相違もあるのでしょうが、わたしのような歴史に疎い人間にとっては、そんな細かな部分はどうでもよく、楽しく歴史を学べて、そしてもっと先や奥を知りたくなる、入門としてはもってこいの物語だと思いました。
早速、第二巻を読みたいと思います。

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2020年06月01日

Posted by ブクログ

人生に目的を持とう。目的のために生きよう。
斎藤道三、織田信長の生き方からこんなに学ぶものがあるとは思わなかった。過去から学び、そして実行すること。


乞食になっても、将来に望みをもって生きる

自ら考え、工夫する。戦術転換をしたものが必ず勝つ

野望があるためだ。男の男たる所以は、野望の有無だ。

人の世は明日がわからない。というが、こういう、わけのわかったようなわからぬような、その実、生きるためになんの足しにもならない詠嘆思想はない。あす、何が来るか、ということは、理詰めで考え抜けばわかることだ

小九郎の人生には目的がある。目的があってこその人生だと思っている。生きる意味とは、その目的に向かって進むものだ。

人間の動きというものには、心理の律がある。この律の勘所さえ握ってうまく人の群れをあしらえば、労せずしてこうなるものだ。

事が起こるのではなく、事を起こす

人間、大事をなすには義が肝要

義と信

人生、自分の才能を発見するほどの愉悦はない

人の君主たる者は、家来に物の好きこのみを見せてはならぬ

人間五十年
下天の内にくらぶれば
夢幻のごとくなり
ひとたび生をうけ
滅せぬもののあるべしや

死なうは一定
忍び草には何をしよぞ
一定語りおこすよの

暗夜に霜の降りるが如く静かに自然に引き金をおとせ

自分の先例を真似ない

運はつくるべきものだ

何を好む?

英雄とは、我が食禄を思わず、天下を思うものを言うのだ

人はわが身の生まれついた性分性分で芸をしてゆくしか仕方がございませぬ

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2021年12月21日

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この小説が面白いのは、主人公がいわゆる「いいヤツ」ではなく、どちらかというと「悪いヤツ」だという、ピカレスク小説であることだ。
戦国大名の中でも、斉藤道三というのは、出自がただの僧侶であるというところが相当変わっている。何の権力も仲間もいない一人の男が、本当の裸一貫から始めて、一国の主にまで成り上がっていくというのは、最高に痛快な物語だと思う。
その天下統一の志は、後に信長、秀吉へと引き継がれていくことを考えると、この道三こそはその大事業の先鞭をきった人物であって、それだけに、その器も才能も相当に大きい。

その型破りな思想と智謀から起こるエピソードには面白い場面がたくさんあるのだけれど、特に、最高に良かったのは、次の場面だった。
・絶世の美女の深芳野を、美濃国の地頭である頼芸から奪う場面(1巻p.441)
・内親王である香子に、美濃に来るよう説得する場面(2巻p.39)
・お万阿を助けに行く時、赤兵衛を殴りつける場面(2巻p.299)

この道三とほとんど同年にイタリアで生まれたマキャベリのことが、小説の中で引き合いに出されているのだけれど、その「君主論」で描かれているところの理想の君主に非常に近い資質を持った道三という人物が、遠く離れた日本という国に存在していたということはとても面白い。

斉藤道三や明智光秀は、一般世間的には悪役のイメージのほうが強いキャラクターだけれども、司馬遼太郎氏の視点からは、逆に、この二人にこそとても強い愛着を持っているのだということがよくわかる。その意味で、教科書的な価値観とはまったく違った視点を与えてくる、歴史の醍醐味を存分に含んだ小説だと思う。

(僧房の生活は退屈だった)
しかし無益ではなかった。学んだものは法華経である。内容は愚にもつかぬ経典だが、法華経独特の一種、強烈な文章でつづられている。すべてを断定している。はげしく断定している。天竺語を漢文に訳したシナの訳官の性格、文章癖がそうさせたものか、どうか。それはわからない。(p.125)

「わしはいつも街道にいる。街道にいる者だけが事を成す者だ。街道がたとえ千里あろうとも、わしは一歩は進む。毎刻毎日、星宿が休まずにめぐり働くようにわしはつねに歩いている。将軍への街道が千里あるとすれば、わしはもう一里を歩いた。小なりとも美濃の小地頭になった。」(p.342)

「お万阿、世のこと宇宙のことは、ニ相あってはじめて一体なのだ。これは密教学でいう説だが、宇宙は、金剛界と胎蔵界の二つがあり、それではじめて一つの宇宙になっている。天に日月あり、地に男女がある。万物すべて陰陽があり、陰陽相たたかい、相引きあい、しかも一如になって万物は動いてゆく。宇宙万物にしてすべてしかり。一人の人間の中にも、陰と陽がある。庄九郎と勘九郎はどちらが陰か陽かは知らぬが、とにかく、厳然とこの世に二人存在している。お万阿、疑わしくば美濃へ行ってみるがよい。勘九郎という男はたしかに実在している。」(p.345)

「もし深芳野様を頂戴しましたあかつき、それにかわるものとして、殿のお手もとに美濃一国を差しあげまする。
殿、大志を抱かれませ。この西村勘九郎がこのひと月のうちにみごと殿のために美濃の国主の座を奪ってさしあげまする」(p.444)

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2020年07月15日

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ネタバレ

本当に日本史習ってた?ってくらい歴史に疎いので、斎藤道三ね〜名前は聞いたことある〜くらいの知識で読み始めた。むしろ知識ゼロだからより楽しめてると思う。笑

言葉巧みに皆を魅了し欲しいものはすべて手にしてしまう姿が、武士らしくて魅力的と思いつつ怖いなと思った。それにしても深芳野...一体どうなっちゃうんでしょうか。あと岐阜が国としてこれだけ重要視されてた場所だということも知らなかったなぁ。

司馬遼太郎は読みやすくてイメージがしやすい。さすが歴史小説の大御所(というのも憚られるが)。所々で現れる、もはや司馬さんのコメントでしょこれ、という文章にニヤつきながら読み進めてる。
次巻も楽しみ〜。

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2025年09月08日

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自らの長所を把握し、最大限活用する。
自分の得意なシチュエーション・シナリオに相手を持ち込むこと。
庄九郎の心掛けたところではないか

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2025年01月21日

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戦国の世、牢人から国主へと成り上がっていく松波庄九郎(斎藤道三)と、その娘婿である織田信長の生き様を描いた歴史小説。

言わずとしれた歴史小説の大家司馬遼太郎ですが、読むのはこれが始めて。

第一巻は松波庄九郎(斎藤道三)編の前半ということで、金も権力もない牢人時代から始まって京の油商人となり、美濃攻略への足がかりを築き上げ……、と庄九郎が徐々に成り上がっていく過程が描かれています。
庄九郎の傲慢ともいえる自信と野心、そして一国の国主になる機会を虎視眈々と伺う様はまさに「蝮の道三」。
それでいて、人心掌握術に優れ、他者を屈服させる気迫を兼ね備えた庄九郎は、周囲の人を惹きつける不思議な魅力があり、梟雄斎藤道三とはまた違った面を見せてくれます。

……ただ、悲しいことに、この作品自体がどうしても自分に合わなかった。
一番が文体で、地の文でしばしば作者自身が登場して論考を述べていくスタイルゆえに、作者登場の度に現実に引き戻されて小説の世界に浸れず……、残念。

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2022年06月14日

購入済み

戦国の世

応仁の乱以降の乱世。
まるで見聞きしてきたかのような
筆さばきに感服しました。

乱世の初期は、戦ばかりの
武者の世の中かと思いきや
様々な思惑が関与する時代だったことが
窺える。

今の日本人では決して、此のような
思考には至らないであろう。

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2019年11月20日

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