【感想・ネタバレ】国盗り物語(一)のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年11月15日

半分くらい恋愛/官能小説の感がなくもないが、斎藤道三(庄九郎)の人間味が面白く、一気に読めた。戦国作品はほぼ触れてこなかったが、特に理解が難しいところもなく、初めてでも楽しく読むことが出来た。

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Posted by ブクログ 2023年08月23日

緻密な計画に大胆な野望。本巻は、牢人であった松波庄九郎(後の斎藤道三)が様々な手法を用いて次々に身分を乗っ取っていく様を、スピード感ある文章で描き出している。如何なる人物を相手にしても物怖じせず相手の心を掴んでいく過程は、世渡りの上手さを物語っているなと思った。根拠のない自信は何処から湧いてくるのか...続きを読む。庄九郎という人物の人生観に強く興味をそそられた。司馬遼太郎の小説は幕末だけでなく戦国時代も面白い。ここから更にどのような道を辿ってのし上がっていくのかが気になり、次巻も期待の気持ちがいっぱいである。

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Posted by ブクログ 2023年05月26日

斎藤道三のまだ牢人の頃の話が好きです。
特にお万阿とのやり取りが面白くて好きです。
また、登場人物の心中を表現するのに、(あっ)を使っているシーンが多々出てきて大好きです。
普通の人?が使ったらただの語彙量ない文章になるのに、司馬遼太郎だからこそ面白く深みのある(あっ)になるんだと思いました。

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Posted by ブクログ 2022年10月16日

道三編の前半。奈良屋乗っ取りから美濃への進出まで、フィクションを交えながら面白く描かれていて、一気に読んでしまいました。

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Posted by ブクログ 2021年08月17日

久しぶりに読んだ司馬遼太郎氏の長編小説。やっぱり面白かった。
本書は大ざっぱに前半と後半に分かれており、前半は美濃の斎藤道三の生涯を、後半は織田信長の生涯を追っている。どちらもなかなか興味深かった。
斎藤道三については本書を読むまでは詳しく知らなかったのだが、身分が無い生まれだったために、京都の老舗...続きを読むの油屋の寡婦の婿になることにより財力を得、美濃地方を治めていくストーリー。槍の技術だけでなく芸術に長けて、性格的にも人望が厚く、最後は城まで作った。ただ、彼が治めることが出来たのは美濃だけだった。
道三は娘の濃姫を当時尾張の若殿だった織田信長に嫁がせた。つまり道三は信長にとって義理の父である。道三は明智光秀と織田信長に能力を認め、可愛がった。
第3巻と第4巻は、織田信長の話と言っても、実際にはほとんど明智光秀の話になる。よく知られるように、この二人は切っても切れない縁で繋がっている。役職上は上司と部下であるが、どのようにして光秀が謀反を企てるようになったのか、その過程がとても丁寧にかかれている。ただ天下を取りたかった信長に対して、光秀が欲しかったものは何だったのか。そして本能寺の変を起こした後の光秀の絶望とは。台頭してくる秀吉や家康もよく物語に出てくる。
毎回感心するが、よく調べて書かれているな、ということ。言うまでもないが、司馬遼太郎氏はこういった完成度の高い作品を何十と残しているのがすごい。本著作は室町時代の足利将軍が力を失っていった状況や、皇族を利用しようとした信長の賢さや、当時の中部地方の状況がよくわかり、興味深かった。光秀は真面目で、秀吉のようにうまく立ち回ることが出来ないが、個人的には憎めない人物である。
司馬遼太郎氏の大作はいくつも読んだが、読みつくすことはできない。次は何を読もうか。

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Posted by ブクログ 2021年01月26日

1巻、2巻は斎藤道三の物語。寺を飛び出した一人の男が、やがて京都の油商となり店を乗っ取り、美濃に進出してとうとう守護職を追い出して自分が国王になってしまう。まさに戦国時代の英雄物語である。道三の活躍する数々の戦のストーリーもすごいが、女性を次々と我が物にしていく展開もすさまじい。しかし、2巻の最後、...続きを読む道三編のラストでの、彼に人生を変えられた女性たちとのシーンはしみじみとしていて、それまでの道三のイケイケ物語から急にトーンが変わる。ここに道三の老いの悲しみが見事に表現されている。
司馬遼太郎の戦国物は、史実を細かく追わずに、ストーリー中心にグイグイ引っ張っていくところが魅力的だ。

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Posted by ブクログ 2020年11月22日

司馬遼太郎歴史小説の1つ

斎藤道三前編

斎藤道三の、能力抜群だが格が低いということであれやこれやと芸をこなして成り上がる姿がかっこいい。悪者として言われているが緻密な作戦、時には大胆な行動を起こすことで為すべき時に為して成り上がれるのは見習うものだと思える。

欲しいと思ったときに我慢強くすると...続きを読むころは我慢し、手に入れられると思ったら迅速に動ける人間になりたいと感服した。

今作は斎藤道三が牢人から始まり、商人、武士、守護大名へと肩書を変えていく。人生がたくさんあるようでうらやましくも思えるが、やはり野望を抱き、行動を起こすことが自分の人生で大事なものだと感じさせられた1作でした。

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Posted by ブクログ 2020年08月28日

これほどまで感情移入してしまうとは。
庄九郎がとてと魅力的、とくにお万阿とのやりとりがおもしろかった。
とてもフィクションとは思えない、司馬遼太郎の人物像の作り方に脱帽です。

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Posted by ブクログ 2020年07月10日

難しそうだからと敬遠してたけど、真逆だった!
めちゃくちゃ分かりやすくて面白い!

まぁ、ほぼフィクションなんだろうけど、
司馬遼太郎の手に掛かると斎藤道三がこんなにも魅力的なキャラになるとは。

続きが楽しみ♪

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Posted by ブクログ 2020年05月21日

何という面白い小説か。史料に縛られていない、会話が中心のテンポのよい、闊達な人物描写が魅力の一編。活き活きと歴史上の人物が躍動する、こういう司馬さんの作品もまた司馬文学の魅力だなぁ。

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Posted by ブクログ 2020年05月17日

大河ドラマの影響で学生時代以来の再読。
当時も面白く読んだ記憶があるが、再読してもやはり面白い。第一巻は庄九郎の成り上がりっぷりが痛快。

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Posted by ブクログ 2020年05月16日

司馬遼太郎作品の中では、登場人物に感情移入しやすかった作品。道三が人間としてとても魅力的に描かれている。
信長編は信長というよりほぼ光秀が主人公として物語の軸になっているけれど、最初から最後まで光秀は可哀想な人、という印象。

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Posted by ブクログ 2020年05月14日

久しぶりの歴史小説でしたが、面白く、且つ解りやすい描写で大変読みやすく、勉強にもなりました。
大河ドラマ、麒麟がくるで斎藤道三が好きになり、手に取りましたが、読んで良かったです。
実際の資料なんかがチラと掲載されていて、感動しました。
道三こと庄九郎は、かなりの策士家であり、ドラマでの

上に立つ者...続きを読むは正直でなければならぬ

という言葉が印象的でしたが、とても正直では成り上がれないなということも教わりました。
でも、目標に対しては凄く忠実な人物でもあり、今この現代もある意味乱世のようなものなので、生きていく知恵として拝借したいなと思いました。
二巻に進みます。

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Posted by ブクログ 2020年04月23日

「歴史」小説ではなく歴史「小説」として屈指の出来。美濃一国を奪い取るマムシこと斎藤道三を描いたピカレスク小説の傑作の前編。

大河ドラマ「麒麟がくる」をきっかけに約20年ぶりに再読。司馬遼太郎の作品の中でも人気の高い方だろう。昔読んだ時はのちの斎藤道三、松波庄九郎があまりにハイスペックでスーパーマン...続きを読む的存在、現実味がなく感情移入できなかった。今回あらためて読んで評価は一変した。

歴史として読むのではなく司馬遼太郎という作家が歴史を題材に創作した人物と割り切ればこれほど痛快、魅力的な人物はいない。

鮮やかな手並み手並みで還俗した法蓮坊は松波庄九郎と名乗り、京の豪商油屋の奈良屋を乗っ取り、やがて美濃一国を国盗りの拠点と定め動き出す。

上巻は美濃国主土岐頼芸の腹心として美濃一国を奪うところまで。下巻、その後織田信長編の上下巻の4巻構成。

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Posted by ブクログ 2020年04月21日

戦国時代に油商人から大名にのし上がった斎藤道三が主人公。第1巻では、美濃に足掛かりを構築するまでの過程が、面白おかしく描かれている。一代で戦国大名の地位を築いたその人間力と行動力には驚かされる。なぜ、今までこの本を手に取らなかったのか不思議でならない。大河ドラマ「麒麟がくる」を見始めたのが、斎藤道三...続きを読むを根本から知ろうと思ったきっかけで、NHKには感謝したい。大河ドラマの主人公の明智光秀はまだ登場していないが、どのように描かれるかは今から楽しみ。やはり司馬遼太郎の本は面白い。新型コロナウイルスの感染拡大で、在宅勤務となって2カ月近くが経過したが、読書のペースが急減速したことは想定外だった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年03月20日

斎藤道三始まりのお話。
初歴史小説。
歴史好き初心者の私には読みやすくドンドン読めた。
けど、後に斎藤道三は2代に渡ってると知って複雑な心境…

この小説のように斎藤道三1代説が本当の方が夢がありますよね。

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Posted by ブクログ 2018年02月11日

禅僧より還俗し、油商から美濃の領主に登り詰めた梟雄・斎藤道三。松波庄九郎と呼ばれた若き日を描いた第一巻。
史実に基づいているかは置いといて娯楽小説として抜群の面白さ。庄九郎という規格外な男の立身出世が存分に描かれている。
切れ味鋭い頭脳と自らの才覚を全く疑わない自尊心。そして好機を逃さない実行力。人...続きを読むを道具として利用しながらも風流を愛する文化人。女たちは戸惑い恐れるが次第にその魅力に溺れていく。
間違いなく悪人、しかし小悪党ではなく途方も無いほどの唯一無二の大悪党。
神仏すらも家来と考える高慢な姿は危うさと清々しさが同居する不思議なオーラに溢れている。

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Posted by ブクログ 2023年09月10日

戦国時代は、実力本位の時代というイメージがあるが、実際には、家柄、官位が重んじられ、だから信長は異端だったという事なのだろう。斎藤道三が、美濃を手中に収める過程で当地の名家を継ぐ形で改名を繰り返す様は、現代の感覚では理解し難いが、歌舞伎役者や落語家が名跡を継ぐようなものか?

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Posted by ブクログ 2023年03月07日

斎藤道三という名前は聞き覚えがあったが、具体的な人物像は知らないままであった。

アニメ、ラノベが流行り始めた辺りから日本史の戦国時代を対象としたものが広がり始め、ゲームとしても確立されているため、人物としての名前は知っていてもふんわりとしたものしから知らなかった。

司馬遼太郎の作品は人、それを取...続きを読むり巻く時代の流れを丁寧な描きと共に読むことができるため、物語として純粋に楽しむだけでなく勉強としても読むことができるのではないか。
(実際学生時代『項羽と劉邦』を課題図書として読んだ、、、)

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Posted by ブクログ 2022年03月05日

最初の主人公は斎藤道三。

人の裏の裏をかくといった道三の才能ぶりとともに、時として強引なやり方が後の道三の人生に影響を与えるであろうと示唆するさまが描かれている。そうした司馬の描写は見事である。

所々に解説を加えている司馬らしさも健在。

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Posted by ブクログ 2020年12月29日

後半出てくる明智光秀目当てに読み始めたので斎藤道三には期待していなかったけどおもしろい。読みやすい。

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Posted by ブクログ 2020年08月31日

松浪庄九郎の成り上がり劇!油商人から美濃一国を
治めていく手腕が痛快。結構色めいたシーンがあり、それも含めて楽しめました。

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Posted by ブクログ 2020年08月21日

司馬遼太郎が描く戦国の世と私が価値観を同じくしているとは、決して言えないが、面白い。ひとまとめに言うと、仏教の教理を言い散らして、スムーズな対話が交わされるなどというのが私には疑問で、僧侶ならともかく、庶民がそういう会話に進んで加わったという設定は不自然に感じた。また、当時の武士として当然であろうが...続きを読む、一夫多妻の実際の状況はあまり好感が持てるものではない。しかし、決闘や合戦や主従のやり取りは、私が堅物なためか、血が騒ぐように爽快な気持ちだった。読む中で、斎藤道三と自分を比べてしまうが、そもそもからして、筋骨隆々たる道三には体は及ぶべくもなく、強烈な自信もない。この頃思うのが風狂と言われた芭蕉に影響を強く受けて、遊びは存分にしているなあということだ。道三のように破竹の勢いで突進していく人生には重ならないだろう。

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Posted by ブクログ 2020年07月22日

めちゃくちゃ面白い

エンタメとしての面白さもあり、歴史が学べ、人生観も身につく

どこが司馬遼太郎の作った虚構か、歴史的事実かわからない

それをまた調べるために、司馬遼太郎と歴史の沼にはまっていく

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Posted by ブクログ 2020年06月01日

日本史、特に戦国時代の歴史にとても疎かったため、少しでも知りたいと思い読み始めた本。
この時代の歴史に興味を持ったキッカケは、大河ドラマ「麒麟が来る」でした…

「麒麟が来る」は明智光秀が主人公のため、ドラマが始まった時点での斎藤道三は既に成り上がった後でした。油売りの成り上がり、斎藤道三がどのよう...続きを読むに美濃の国盗りに至ったのか、その過程の前半の物語。
歴史というものは、人によっても書物によってもいろいろな解釈があると思います。多少の脚色、そして事実との相違もあるのでしょうが、わたしのような歴史に疎い人間にとっては、そんな細かな部分はどうでもよく、楽しく歴史を学べて、そしてもっと先や奥を知りたくなる、入門としてはもってこいの物語だと思いました。
早速、第二巻を読みたいと思います。

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Posted by ブクログ 2020年02月02日

 若い頃の斎藤道三が主人公。浪人だった斎藤道三が、まずは商人の後家に取り入ってその家を半ば乗っ取り、それからさらに美濃国の守護にまで食い込んでゆくあたりが描かれる。どうしても戦国時代の華やかなころに興味が行きがちなので、それより一つ前の時代の斎藤道三にはあまり馴染みがなかったが、実は非常に魅力的な面...続きを読む白い人物であることが、これを読んでわかってきた。真面目な歴史物語でも無く、娯楽ばかりの時代小説でも無く、その間のような感じの物語。

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Posted by ブクログ 2019年06月05日

斎藤道三さんの成りあがりっぷりを描いた歴史小説。
道三さんの冷静さと行動力、そして何よりも知識の豊富さが単なる成りあがりじゃないんだな~と思いました。

人間ってものをキレイごとじゃなくリアルで知っていて、相手を内心バカにしながらも自分の糧として自分の心を抑えて相手の懐に入る潔さがスゴイな。

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Posted by ブクログ 2021年12月21日

人生に目的を持とう。目的のために生きよう。
斎藤道三、織田信長の生き方からこんなに学ぶものがあるとは思わなかった。過去から学び、そして実行すること。


乞食になっても、将来に望みをもって生きる

自ら考え、工夫する。戦術転換をしたものが必ず勝つ

野望があるためだ。男の男たる所以は、野望の有無だ。...続きを読む

人の世は明日がわからない。というが、こういう、わけのわかったようなわからぬような、その実、生きるためになんの足しにもならない詠嘆思想はない。あす、何が来るか、ということは、理詰めで考え抜けばわかることだ

小九郎の人生には目的がある。目的があってこその人生だと思っている。生きる意味とは、その目的に向かって進むものだ。

人間の動きというものには、心理の律がある。この律の勘所さえ握ってうまく人の群れをあしらえば、労せずしてこうなるものだ。

事が起こるのではなく、事を起こす

人間、大事をなすには義が肝要

義と信

人生、自分の才能を発見するほどの愉悦はない

人の君主たる者は、家来に物の好きこのみを見せてはならぬ

人間五十年
下天の内にくらぶれば
夢幻のごとくなり
ひとたび生をうけ
滅せぬもののあるべしや

死なうは一定
忍び草には何をしよぞ
一定語りおこすよの

暗夜に霜の降りるが如く静かに自然に引き金をおとせ

自分の先例を真似ない

運はつくるべきものだ

何を好む?

英雄とは、我が食禄を思わず、天下を思うものを言うのだ

人はわが身の生まれついた性分性分で芸をしてゆくしか仕方がございませぬ

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Posted by ブクログ 2020年07月15日

この小説が面白いのは、主人公がいわゆる「いいヤツ」ではなく、どちらかというと「悪いヤツ」だという、ピカレスク小説であることだ。
戦国大名の中でも、斉藤道三というのは、出自がただの僧侶であるというところが相当変わっている。何の権力も仲間もいない一人の男が、本当の裸一貫から始めて、一国の主にまで成り上が...続きを読むっていくというのは、最高に痛快な物語だと思う。
その天下統一の志は、後に信長、秀吉へと引き継がれていくことを考えると、この道三こそはその大事業の先鞭をきった人物であって、それだけに、その器も才能も相当に大きい。

その型破りな思想と智謀から起こるエピソードには面白い場面がたくさんあるのだけれど、特に、最高に良かったのは、次の場面だった。
・絶世の美女の深芳野を、美濃国の地頭である頼芸から奪う場面(1巻p.441)
・内親王である香子に、美濃に来るよう説得する場面(2巻p.39)
・お万阿を助けに行く時、赤兵衛を殴りつける場面(2巻p.299)

この道三とほとんど同年にイタリアで生まれたマキャベリのことが、小説の中で引き合いに出されているのだけれど、その「君主論」で描かれているところの理想の君主に非常に近い資質を持った道三という人物が、遠く離れた日本という国に存在していたということはとても面白い。

斉藤道三や明智光秀は、一般世間的には悪役のイメージのほうが強いキャラクターだけれども、司馬遼太郎氏の視点からは、逆に、この二人にこそとても強い愛着を持っているのだということがよくわかる。その意味で、教科書的な価値観とはまったく違った視点を与えてくる、歴史の醍醐味を存分に含んだ小説だと思う。

(僧房の生活は退屈だった)
しかし無益ではなかった。学んだものは法華経である。内容は愚にもつかぬ経典だが、法華経独特の一種、強烈な文章でつづられている。すべてを断定している。はげしく断定している。天竺語を漢文に訳したシナの訳官の性格、文章癖がそうさせたものか、どうか。それはわからない。(p.125)

「わしはいつも街道にいる。街道にいる者だけが事を成す者だ。街道がたとえ千里あろうとも、わしは一歩は進む。毎刻毎日、星宿が休まずにめぐり働くようにわしはつねに歩いている。将軍への街道が千里あるとすれば、わしはもう一里を歩いた。小なりとも美濃の小地頭になった。」(p.342)

「お万阿、世のこと宇宙のことは、ニ相あってはじめて一体なのだ。これは密教学でいう説だが、宇宙は、金剛界と胎蔵界の二つがあり、それではじめて一つの宇宙になっている。天に日月あり、地に男女がある。万物すべて陰陽があり、陰陽相たたかい、相引きあい、しかも一如になって万物は動いてゆく。宇宙万物にしてすべてしかり。一人の人間の中にも、陰と陽がある。庄九郎と勘九郎はどちらが陰か陽かは知らぬが、とにかく、厳然とこの世に二人存在している。お万阿、疑わしくば美濃へ行ってみるがよい。勘九郎という男はたしかに実在している。」(p.345)

「もし深芳野様を頂戴しましたあかつき、それにかわるものとして、殿のお手もとに美濃一国を差しあげまする。
殿、大志を抱かれませ。この西村勘九郎がこのひと月のうちにみごと殿のために美濃の国主の座を奪ってさしあげまする」(p.444)

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Posted by ブクログ 2022年06月14日

戦国の世、牢人から国主へと成り上がっていく松波庄九郎(斎藤道三)と、その娘婿である織田信長の生き様を描いた歴史小説。

言わずとしれた歴史小説の大家司馬遼太郎ですが、読むのはこれが始めて。

第一巻は松波庄九郎(斎藤道三)編の前半ということで、金も権力もない牢人時代から始まって京の油商人となり、美濃...続きを読む攻略への足がかりを築き上げ……、と庄九郎が徐々に成り上がっていく過程が描かれています。
庄九郎の傲慢ともいえる自信と野心、そして一国の国主になる機会を虎視眈々と伺う様はまさに「蝮の道三」。
それでいて、人心掌握術に優れ、他者を屈服させる気迫を兼ね備えた庄九郎は、周囲の人を惹きつける不思議な魅力があり、梟雄斎藤道三とはまた違った面を見せてくれます。

……ただ、悲しいことに、この作品自体がどうしても自分に合わなかった。
一番が文体で、地の文でしばしば作者自身が登場して論考を述べていくスタイルゆえに、作者登場の度に現実に引き戻されて小説の世界に浸れず……、残念。

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戦国の世

2019年11月20日

応仁の乱以降の乱世。
まるで見聞きしてきたかのような
筆さばきに感服しました。

乱世の初期は、戦ばかりの
武者の世の中かと思いきや
様々な思惑が関与する時代だったことが
窺える。

今の日本人では決して、此のような
思考には至らないであろう。

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