司馬遼太郎のレビュー一覧

  • 新装版 俄 浪華遊侠伝(上)

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    国民的作家司馬遼太郎は大阪の出身。本書の主役明石家万吉には筆者の祖父の生涯が反映されているという。町人の街大阪から見た明治維新。

    「手掘り日本史」に紹介されていたのを機に本書を手に取る。江戸とは異なり大阪は一部の町奉行のほかはほとんどの町人の街。司馬遼太郎が大阪の出身ということもあり、心地よい関西弁のリズムが楽しめる。大上段に構えた代表的作品に比べれば、どこか肩の力を抜いて筆者自身が楽しんで書いたように思われる。それだけテンポが良い。

    ”どつかれ屋”として名を上げた極道屋の明石家万吉の生涯。上下巻の上巻は西大阪の港一帯の警備を請け負った万吉が長州藩士たちの上京に出くわし維新の動乱に巻き込まれるところまで。

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    2020年03月23日
  • 関ヶ原(中)

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    ひたすら関ヶ原前の政争が描かれている。見せ場はなんといっても「小山評定」。家康の恐るべき智謀はサラリーマンとしては学びたいところである。

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    2020年03月22日
  • 花神(下)

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    解説
    「蔵六というのは不思議な人で、自ら地位や栄達を求めない。」
    まさに自らを世の中に機能化してそれ以上を求めない、私心を捨てている大村益次郎をよく言い表した言葉だと思う。それはP.486の豆腐と国家の話にも現れている。
    時代が彼を押し出したに過ぎないのだろう。適塾に始まり、彼を登用した宇和島藩、幕府、そして長州藩。自分が求められるところに行き、そこで自分を機能化させ、最後には新政府軍の基礎を作るに至った。才能だけでなく、人との出会い、運命とは分からないものだと思った。

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    2020年03月15日
  • 翔ぶが如く(一)

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    久しぶりに読み返したらややイメージが違かった。
    学生時代に結構読んだ司馬遼太郎、今読むとまた含蓄が違う。
    時代が令和になっても面白い。
    情報量が多いので面白かった所は忘れないようにマーキングしておこう。

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    2020年03月07日
  • 酔って候

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    長編だけでない短編も面白い。国民的作家の司馬遼太郎が幕末の賢公たちを描いた短編集。

    表題作は土佐の山内容堂。他に薩摩の島津久光、宇和島の伊達宗城(主役は嘉蔵だが)、肥前の鍋島閑叟の4名。

    宇和島藩の話だけ異色。黒船来航を知った藩主の気まぐれから手先の器用な提灯貼り職人の嘉蔵が蒸気機関の制作を命じられる話。江戸時代の藩の身分差別がなんとも切なくなる。

    いずれも少しだけ日本史に現れる人物ではあるものの、良く考えるとほとんど歴史の流れに影響を与えていないという壮大な皮肉。短編ならではのあっさりした結末。

    司馬遼太郎というと「竜馬がゆく」「坂の上の雲」のような長編の方が有名であろうが短編集もまた面白い。

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    2020年03月05日
  • 国盗り物語(四)

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    ネタバレ

    斎藤道三の娘婿である織田信長と、道三の妻の甥である明智光秀が対峙する完結編。「織田信長後編」となっているが、信長と光秀の双方が物語の主役と言って良いだろう。
    文庫版の「解説」にも記載がある通り、光秀の描写がうまい。本作における光秀は、知識人で真面目な性格であり、そのため信長の苛烈な行動(例えば比叡山の僧や女の殺戮など)を憎み、部下を「道具」として有効に活用とする合理的な性格に怯える人物として描かれている。秀吉の「陽」と対比しながら光秀の「陰」を強調して描くことで、「本能寺の変」に繋がる伏線としている。
    また、信長の人物像も明快で解りやすい。無神論者で合理的精神の持ち主、かつ有能で行動的な人物として描かれている。光秀のこざかしく思える口上に信長がいら立つエピソードを何度か挿入することで、両者は互いの能力を認めつつも性格上は相いれない存在であることを読者の意識に刷り込んでいる。こうした挿話を通して、天下を治めるという目的に向けて信長と光秀はまさに呉越同舟であったことが伝わってくる。そして、ほぼ天下を手中に収めようとした段階で、光秀は苦悩しながらも同じ舟から降りる選択をすることにした。これが司馬遼太郎の描く「本能寺の変」の発生要因だろう。
    道三、信長、光秀という所縁のある3人の差別化を図りながら、巧みに心理描写をしたドラマティックな歴史小説であり、司馬作品の中でも良作と言える。

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    2020年02月28日
  • 街道をゆく 5

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    1970年代のソ連やモンゴルの実態をここまでのレベルで記述した体験記は他に類を見ないのではないかと思う。
    もはや完全に歴史の中に消えてしまった文化や風習を読むだけでも興味深いのに、司馬氏の知識と感性と文章を通して味わうことができるとはものすごく贅沢ですね。

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    2020年02月13日
  • 項羽と劉邦(下)

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    ついに「項羽と劉邦」完結。

    下巻に入っても途中まで全く劉邦に勝つ要素が見受けられなかったのですが、気がついたらあれよあれよと逆転していました。

    結局、劉邦の勝因は何だったのか。やっぱり何もかもを飲み込む寛容さなのかな。項羽は身内以外にはあまりに冷た過ぎた。

    背水の陣や四面楚歌といった有名な故事成語もこのときのものだったんですね。萌えました。

    てか、項羽って31歳だったんだ…若っ!!
    この時代の濃密さを感じます。。

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    2020年01月30日
  • 馬上少年過ぐ

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    7つの短編小説をまとめた本である。

    各章は他の方の記載を拝借します。
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    ・幕末の長岡藩で非凡の才を発揮しつつも時勢を見極められずに散った河井継之助を描いた「英雄児」
    ・英国人殺害事件に関与した海援隊隊士菅野覚兵衛と佐々木栄を中心に幕末の日英関係を描いた「慶応長崎事件」
    ・江戸末期から明治初期を生きた、非凡の才を持った血気盛んな絵師、田崎草雲の生涯「喧嘩草雲」
    ・奥州の覇者正宗が歴史に残した足跡を、彼の持つ非凡な詩歌の才と共に描いた「馬上少年過ぐ」
    ・一介の町医者の身から伊予宇和島の命運を握るまでに栄達し、数奇な人生を送った山田重庵を描いた「重庵の転々」
    ・大阪の陣の後に武士になることを嘱望した大須賀満左衛門の奮闘を描く「城の怪」
    ・賤ヶ岳七本槍の武将として武名を轟かせた脇坂甚内(安治)の生涯を描いた「貂の皮」
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    いずれも、歴史の本流からするとやや道にそれた話であり、文献が十分にない部分で小説を書いていると想定される。
    著者の力を感じる小説。

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    2020年01月25日
  • 世に棲む日日(三)

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    吉田松陰が主役の前半は停滞感があったものの、高杉晋作が主役になってからの長州の波乱は果たして現実にあったことか疑いたくなるほど劇的です。
    この孤高の天才の存在がなければ今の日本はどうなっていたことかと思いながら読みました。
    余談ながら、後に初代内閣総理大臣になり、千円札の肖像にもなった伊藤博文がここまで軽く扱われているのは事実なのか、それとも司馬氏がたまに見せる好き嫌いなのか、最終巻を読めば分かるのかも興味深い。

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    2020年01月24日
  • この国のかたち(一)

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    司馬遼太郎が好きなので、今回は短編集を。
    中世から第二次大戦にかかる日本史を、順不同でつらつらとかきつつも、その主張は明晰で分かりやすい。
    息子にも読んで欲しい本。

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    2020年01月08日
  • 関ヶ原(中)

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    司馬遼太郎がまとめた、関ケ原の戦いを最後にした、石田三成と徳川家康の戦略の立て方をまとめた本。

    中では、上杉景勝が戦を決意したところから、石田三成が大阪で挙兵するまで。

    石田三成の正義を重視し人の気持ちを省みないやりかたと徳川家康の老獪なやり方の対比の表現が心に残る。

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    2020年01月04日
  • 故郷忘じがたく候

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    司馬遼太郎による鹿児島の陶工、沈寿官についてのエッセイ的な小説。
    沈寿官と言えば、鹿児島では有名な陶工として知られています。彼の祖先は、秀吉の朝鮮出兵時に朝鮮から連れてこられた(つまり日本に拉致された)陶工でした。彼等は鹿児島に焼き物の文化を伝え、薩摩焼などの工業製品製造に貢献しました。
    当時の日本は、先進国であった朝鮮から技術を導入しようと躍起になっていた時代だったようで、彼らは或る意味その犠牲者でした。その優秀な製陶技術は、時間の経過とともに日本の文化として取り込まれ、現在に至っています。日本文化成立の立役者であり、現在も子孫達がそれを受け継いでいますが、かつて拉致された朝鮮人としての本国に対する想いは、今も昔も変わらないと思います。
    歴史認識問題が話題になる昨今ですが、この本を読んで、日本にはそういう朝鮮の人達の悲しい歴史があることを認識しなくてはいけないと思いました。

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    2020年01月02日
  • 功名が辻(一)

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    ネタバレ

    妻千代の、一豊をおだて転がし育てる言行。運が強いと暗示をかけ、必要なときには金10枚を潔く出し、駿馬を買うことで噂を買う。2巻も楽しみ。

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    2019年12月15日
  • 酔って候

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    明治維新に活躍した西郷隆盛や坂本龍馬などの志士たち。彼らは低階級の武士身分に属し、そのコンプレックスをモチベーションにして、社会変革を成しとげた。では、彼らの上司である藩主は、維新や志士たちにどのように関わり、どんな考えを持って行動したのか。

    多くの志士たちを排出した薩長土肥の4藩主を主人公にした短編小説集で、司馬遼太郎がそんな疑問に答える。

    表題作は、土佐藩主の山内容堂が主人公。彼は武芸にたしなみ、知識欲も旺盛、自ら行動しないと気がすまず、そして大酒豪。大名ではなく、藩士として生まれていれば、歴史に名を残す志士になったかもしれない。

    そんな彼は時代の変化を感じながらも、大名として、徳川家に忠義を尽くすことを最善と考える。そして、徳川家を残す最高の一手として、大政奉還という奇抜なアイデアを発表。さらに大久保や岩倉との議論にも勝利目前。が、その安心感と美味い酒は一瞬だった。

    この山内容堂をはじめ、維新の藩主たちは時代に翻弄されるだけだった。命ずべき武士たちは勝手に藩を離れて、志士となったり、切腹したり。そのうえ、廃藩置県で領地も大名としての身分も没収。この時代の藩主というのは才能があろうとなかろうと、同じ運命だった。酒でも飲まなきゃ、やってられない。

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    2019年12月12日
  • 新装版 播磨灘物語(4)

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    もし関ヶ原の戦いがたった1日で決着がつかなかった場合の官兵衛がどうなったのか、日本がどうであったのか見てみたい。
    面白かった。

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    2019年12月06日
  • 夏草の賦(下)

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    上巻では若さと勢いで四国を統一してしまった長宗我部元親だが、長宗我部家のピークは過ぎ、下り坂に向かっていた。

    信長の侵入に敗北を覚悟したものの本能寺の変でちょっと一息。しかし、次なる信長の後継者、秀吉によって多くの領土を没収される。さらに秀吉に命じられた九州遠征で大敗北を喫し、長男の信親が戦死、後を追うように最愛の妻も死去。

    これまで努力して広げた領土を失い、期待していた後継者も失う。隠居を目前にしての老人にとって、この仕打はきつい。元親にはこの逆境を乗り越える精神も根気も残ってはいなかった。

    どんなに才能がある人間でも、運と老いには勝てないということか。

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    2019年11月19日
  • 空海の風景 上巻 (改版)

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    日本や中国の古い地名や名前、言葉が出てきて最初は読みにくいが慣れてくると興味深くどんどん読み進められた。
    ただ、多用される「…であったことだろう。」という想像の話を想像と分かるように書かれている文体が気になるのと、同じことが何度も何度も繰り返し言われているような書き方には時々鬱陶しさを感じた。特に自分がどうでもいいなと思った登場人物を何度も何度も同じように深掘りされるとかなりしつこいと思った。薬子ノ乱のくだりなど。元々が雑誌の連載なのでこういうことになっているのだろうが、今読むと気になる。

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    2019年11月18日
  • 花神(中)

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    外国語の専門家として幕府に厚遇されながらも安月給で長州に仕えることを選ぶ。
    後世を知る我々には倒幕側に付くことは正しいと知っているが当時それが正しいと知っていた人がどれほどいたか。

    イネとの不可思議な関係は司馬遼太郎の脚色かとも感じたが、彼女が蔵六の最後を看取ったことを考えると本当に色恋があったのかもしれない。プラトニックだったのかも。

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    2019年08月24日
  • 花神(上)

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    なかなか知られていない大村益次郎が題材。
    萩の町医者だった村田蔵六が医者修行で緒方洪庵の適塾に行ったことが彼の運命を変えてしまう。

    技術者であり続け、目立ちたがることなく、ひたむきに技術を極めようとした村田蔵六に日本人の美学を感じた。

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    2019年08月24日