司馬遼太郎のレビュー一覧
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幕府は長州藩との海戦に敗れ小倉城も陥落しいよいよ窮地に追い込まれてゆく。勝海舟は幕府の使者として長州藩との停戦交渉に厳島へ派遣される。将軍慶喜からはやり方は全て任せると言われ、だったひとりでこの命がけの任務に就いた。
果たして勝の誠意あふれる態度は長州藩の心を捉え、停戦は無事に実った。しかし慶喜は勝が無条件和睦を約束したことを不服に思い、任務を果たした勝をねぎらいもせず無視した。負け戦の停戦であるにも関わらず幕府の対面を保つために懲罰を与えるべきだったとは、それも全てを任せると言っておきながら。まさに「なんと虫のいい…」である。
しかもその上さらに幕府は勝とは別方向で朝廷に働きかけ、勅定という形で長州藩に停戦命令を出した。その高圧的な命令は戦いはいつでも再開するという意思を含んでおり、和睦を約束した勝は長州を裏切ることになってしまった。こんなにひどい話があるだろうか。
使命を果たした勝は、それを喜び合う同僚も従者もいないため厳島の宿でたったひとり、宿の老婆を相手に飲めない酒を呑み、「婆あ、酔った」と管を巻く。この下りが勝の宿命を象徴しているようで、可笑しいながらも物悲しくて仕方なかった。 -
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英雄児
・「おれという人間は、自分の一生というものの大体の算段をつけて生きている。
なるほど、おれの家は小禄だし、おれの家は小藩だが、小藩なだけに将来、藩はおれに頼って来ることになるだろう。
同じ一生を送るにしても、婦女に鉄腸を溶かしてしまうのも一興かもしれぬ。
しかし人間、二通りの生き方はできぬものだ。
おれはおれの算段通りに生きねばならん」
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天明の絵師
・「お前の絵については、わしが認めている。
あるいは器用貧乏で終わるのかもしれないが、一つ間違えば、ひょっとすると画壇の大宝になるかもしれない」
「思いもよらぬことでございます。元来があさはかでございますから。
いっそ、自分の器用を捨てればよろしゅうございましょうか?」
「捨てる?…若いのだな。世に浅いとでも言うか。
つまり、自分を含め、人間というものがわかっていないから、そのように、
わかったような、田舎寺の和尚のようなことを言うのだ。
人間、持って生まれたものを捨てられるはずもなく、また捨てる必要もない。
死ぬまで持ち越して行くものさ」
「先生…」
「旅に出るかね?10年、旅に出るがよいだろう。本来、芸術とは漂泊者のものではないか。
心が刃物のように研げてくる。旅に出れば、自分の心の奥にある、あったとも思えぬ、意外な琴が、意外に鳴り出すこともある。
その琴の音を聴く。聴くことが旅というものだ。その音だけが自分を高めてくれる」
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吉田松陰の志と学ぶ姿勢に圧倒される。その時代の課題感に命を賭して、志を実現するために、学ぶ姿勢が目を見張る。特に命懸けの密航をしてまで外国から学ぼうとする姿が驚異的である。多くの組織が閉鎖的でタコツボ化している現代にもこのような志士が必要であり、自分がそうあれるように学びを怠ってはいけないと強く感じる。
以下、印象的なフレーズ。
・英雄もその志を失えば、その行為は悪漢盗賊とみなされる。
・学問とはこういう時期の透明な気持ちから発するものでなければならない。
・死は好むべきものにあらず、同時に悪むべきものでもない。やるだけのことをやったあと心が安んずるものだが、そこがすなわち死所だ、ということである。
・どんな小さな行動をおこすにしても、死を決意してはじめねばならない。