あらすじ
幕末随一の文明藩、佐賀藩の鍋島閑叟(かんそう)は、若い秀才たちに極端な勉学を強いた。近習・秀島藤之助は、世界最新の高性能大砲の製造を命じられ、頭脳の限り努力する。酷使された才能は斃(たお)れたが、完成したアームストロング砲は、彰義隊を壊滅させ、新時代を開いた。風雲の中に躍動する男達を描く、傑作9編を収録。
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佐賀出身なので表題作のみ読もうと思って借りたが、面白かったので結局全部読んだ。いづれも秀作だが、「大夫殿坂」の動機のばかばかしさに、ふっと笑ってしまった。幕末の動乱期にあっても人間の原理は他愛いもなく面白い。
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久しぶりに司馬遼太郎を読んだが、いつもの簡潔にして濃密な文章、突き放しつつ決して目を逸らさない人物描写は滋味深い。彰義隊のことを知りたいと思い、このところ江戸の治世に殉じた志士の立場からの書物ばかり読んでいて、些か視点が偏っていたところに本書だ。風雲急を告げる幕末の動乱を雲の間から見つめる神のごとき遍在視点に一寸眩暈すら覚えた。
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時は幕末。時代の転換期の渦の中でもがき、必死に生きた人々の9つのストーリー。新撰組に体一つで喧嘩を売った豪傑、ふとしたことから兵を引き連れ「倒幕」の兵を挙げた町旦那、そして、藩主から世界最新の大砲の製造を命ぜられた若い藩士。閉塞した時代の中でそれぞれに考え、思いを抱き、一生懸命に生きた姿が伝わってくるようで、自分もがんばらなあかんと思わしてくれる作品。幕末という時代を考える上でも面白い本ではないだろうか。
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『アームストロング砲』
オーディブルで視聴。ナレーターの磯辺弘さんが個人的に好きなのでテンション上がった。
佐賀藩の藩主・鍋島閑叟は、「葉隠」という代々佐賀藩に伝わる急進的な武士道の心得よりも、近代的な科学技術に重きを置いている。世界を見据えた鍋島は、藩内から若き秀才を集めて欧州の技術を学ばせ、極端な勉学を強いていた。ある時、鍋島は欧州で製造された強力な最新鋭の大砲「アームストロング砲」の噂を聞く。その威力ゆえに暴発が多く、欧州でも実用化に至らない禁忌の武器に強く興味を惹かれた鍋島は、家臣の秀島藤之助に情報を集めるように命じる…
先見の明を持つワンマン藩主鍋島閑叟に酷使されるエリート秀島藤之助の悲劇を描いた社会派サスペンス。幕末の話なのにプロジェクトXっぽい雰囲気が面白い。
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司馬先生の長編にありがちな、時代や地域についてのレクチャーの反復(あれはあれで良いんですが)が省略されており、テンポよく読める短編集です。
『倉敷の若旦那』は実話とは思えないほど荒唐無稽な男の話し。これはぜひ長編に仕上げてほしかった。
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幕末という時代に翻弄された名も残らぬ人々の物語。京での動乱に巻き込まれて命を落とすもの、佐賀藩の洋式軍備に命を削り発狂してしまうもの。必死に生きた人々の息吹を感じながら、暗い時代も感じる悲しさ。先に不安を抱きながらも、明日はよくなるのではと必死に生きたのだろうと感じ、不安がそこまでない現代の有難さを感じつつも、日々を大切に生きる大切さを感じた。
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短編集。
肝付又介という頑固者の薩摩藩士を取り上げた「薩摩淨福寺党」。倉敷の町人の息子に生まれながら、まっすぐな正義感から不正を働いた商人を抹殺し長州へ奔った立石孫一郎を描いた「倉敷の若旦那」など、名も無き者たちの幕末における悲劇を集めたもの。
「斬ってはみたが」「侠客万助珍談」「五条陣屋」なども面白かった。
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幕末の狂気がよかった。無価値の死も時代を煮えつまらせていく薪の一部にはなっている、の表現にしびれる。鍋島氏の佐賀藩はあんなに先進的だったのになぜ今は地味になってしまったのか?
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「愚人なら愚人のままがよい。愚人で国を憂えて妄動すれば、その災害ははかり知れぬ」
「おれは幼少のころから人の不正を憎むことはなはだしく、そのため他人とも無用の争いを重ねてきた。これほどまでに正義を貫いてきたおれを、ひとが邪心を抱いてだますわけがない」
「若旦那のいいところでございますな」
藤吉は、悲しげにいった。
「しかし、御苦労のない育ちでございますからな。人の心がおわかりになれませぬ」
田舎の仕立屋が、乾のような秀才を生むことが子への罪なのである。ときにそれがどのような社会悪を生まないともかぎらない。
人間の現象は、おもわぬ要素が入りくみあって、瞬間という作品をつくる。
(間違っていた。剣はやはり自得する以外にあるまい)
沖田は、はじめてそう決意した。
これらの産業開発のために藩の秀才を選抜して、英語、数学、物理、化学、機械学をまなばせ、かれらに極端な勉学を強いた。
「勉学は合戦とおもえ」
と、閑叟は秀才たちに訓示した。
「これからの世界は英語国民が主役になりましょう」
と口数すくなくいった。閑叟はその一言で蘭学をやめ、藩の洋学を英学にきりかえた。
秀島は、だまっていた。かれは沈黙をもておおるとを威圧した。おおるとは気味がわるくなったのか、秀島に近寄らなくなり、田中儀右衛門のそばにのみ付いて歩くようになった。
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わたしの創作に多大なる影響を与えた本の一冊です。
「歴史」というのは(幕末に限らず)有名人が巻き起こす大事件だけで出来ているわけではなくて、色んなところで色んな人が色んなことをやっている結果……なのでしょう。
短編集ですが、『斬ってはみたが』が、一番強烈に印象に残っています。
こういう話が、実際にいろいろあったのではないか、とすぐに思いました。
大きな出来事の「狭間」で起こる日々の小さな出来事が、もっと知りたくなる一冊でした。
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鍋島さん、すごいけど、すごすぎて引いたw
その集大成が、上野にぽーんと12発飛んで、役目終わり。。
まぁ、もちろん技術はその後につながってるはずだけど、このあっけなさが生々しい。
表題の短編以外もいいの多かったなぁ。
司馬さんの短編は、軽くて、しかし味があって、
軽食として実にすばらしいです。
しかし、「維新後、贈正四位」とか何位とか、
なんちゅーか、くだらんことで決まってる。
ひとつひとつの短編のラストにこれがひとつ書いてあるだけで、
はぁ。。とため息。
①「位」なんてしょーもない値打ちない。所詮世の評価なんてそんなもん。
①'「位」とかどうでもいいから、信じたことを突き抜けるまでやるべし。
②時代の波を読めば、あるいは偶然でも乗れれば、「勝者」になれる。
人生「勝」たなきゃしょうがない。
②'「信じたこと」なんかどうでもいいから、時代の波乗りを上手にやるべし。
上手に踊るべし。
③上記はどうでもよろしい。とにかく自分の能力を高め、世に必要とされる人間になるべし。
④「世に必要とされる」=「ずーっと使用人としてやってく」(大村益次郎コース)だから、つまんないなぁ。
はるか前に竜馬がゆく、
わりと最近に世に棲む日日、花神、アームストロング砲と読んで、
今跳ぶが如くを読み始めた地点では、
こういうまとめになります。
まず①と思うけど、結局②が大事なような。
そういうのさておき③で考えると、④なような。。。
あと、武士っぽさ、武士道?みたいなものって、
人を動かす装置として、すごーく不思議な構築物だと思う。
なんとかとハサミは使いよう。。^^;
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やっぱ鍋島閑叟の佐賀を知っておかないかん、と思い読んだ一冊。
しかし買ってびっくり、表題作「アームストロング砲」を含む、幕末を舞台にした短編集でした。
ということで表題作は字数が足りず、あまり読み応えは感じなかった。その他の話はちょこちょこと新撰組がでてきたりして、それぞれ十分面白った。
佐賀藩については、葉隠、軍事産業、国内鎖国という、興味をそそるもので、今後ぜひ何か一冊読もうと奮い立ちました。
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表題の『アームストロング大』が良い。かなり労力を費やしたのに、その威力の為、たった12発で終わったアームストロング砲。なんとも云えず、司馬遼ぽい。
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佐賀鍋島藩の産業革命。発狂者を出すほど激烈に推し進め、見よう見まねでアームストロング砲を内製。砲は12発打ったのみ、大きな歴史の波は沈黙のまま過ぎる。11.1.29
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司馬遼太郎先生の短編集。 幕末のお話ばかりです。 表題作の「アームストロング砲(肥前・佐賀藩)」も好きですが、個人的には「倉敷の若旦那(第二奇兵隊隊長・大橋敬之助)」が好きかな。 ・・・情熱だけでは英雄にはなれないというか。