【感想・ネタバレ】新装版 アームストロング砲のレビュー

あらすじ

幕末随一の文明藩、佐賀藩の鍋島閑叟(かんそう)は、若い秀才たちに極端な勉学を強いた。近習・秀島藤之助は、世界最新の高性能大砲の製造を命じられ、頭脳の限り努力する。酷使された才能は斃(たお)れたが、完成したアームストロング砲は、彰義隊を壊滅させ、新時代を開いた。風雲の中に躍動する男達を描く、傑作9編を収録。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

以前読んでいた人斬り以蔵と違い全ての短編が幕末時期の話
割と話の内容も暗い結末が多いのも特徴

薩摩浄瑠璃党
今で煽り魔の様な人間が主人公の話
会津と薩摩が同盟を結んでいた事をいい事に新撰組をコケにしまくるが、最後は哀れにも殺される話である
血風録でも薩摩の話があったが、当時の薩摩藩士は小賢しい狡猾な人間がおおかったのであろうか司馬の作品ではそういう藩士が多い印象

倉敷の若旦那
正義感が強過ぎた為か幕府の役人にも長州志士にも目をつけられ逆賊として非業の死を遂げた男の話
当時書かれたのは赤軍派が暴れ回っていた世情だからか行き過ぎた正義の果てと復讐がどのような顛末を迎えるかを詳細に描いている話でもある

五条陣屋
役人とのつてがなく手代になれなかった芳蔵が乾十郎として変名し天誅組へと変貌する話
当時の身分との差から幕府に対する鬱屈した劣等感と復讐心から志士になる話は幕末にはよくある事だがこれはかなり極端な事例
最終的には幼馴染の主人公である佑次郎も自害させるに影響力を増す程であるからか如何に当時はそれが弊害となり鬱屈とした復讐心となったかがわかる話である

壬生狂言の夜
新撰組を舞台にしたサスペンス仕立ての話
大夫殿坂でもそうだが司馬遼太郎は幕末を舞台にしてサスペンス小説を描くのも得意と見られる
一転も二転もする展開に時代小説ながら本格的なサスペンスものを読んでいる気にさえなる話である

侠客万助珍談
侠客の親分がふとしたきっかけで治安部隊として名をあげ大阪の新撰組として名を馳せる話
新撰組のような政治指針がない為か新政府軍に反感を買わず新政府軍をも商売に取り入るという佐幕側の人間としては珍しい生き方をする
暗い話が続いていたので緩和話としては丁度いい話

斬ってはみたが
おそらくこの短編集の中で最も地味な主人公
これとて歴史に名をはせることをしないながらもふとした喧嘩で剣術の名を馳せた男の話
偶然というか運命というかいつ歯車が狂うのかがおかしくない話と言える

大夫殿坂
人斬り以蔵にも収録された作品
読んだ当初は幕末の話でありがらもサスペンスのものとしての読物として良作と感銘受けた作品であった
あと玉出のお滝という変態プレイも場違いな程にインパクトがあり異様に印象に残った

理心流異聞
沖田総司が主人公の剣客作品
漫画るろうに剣心を彷彿させるような立ち合いがあり、面を針金で守っている描写はおそらく志々雄への防具にインスピレーションを得た内容だと思われる
これらの事実を考慮すると和月氏はかなり司馬に心酔していたのではないかと思ったりもする

アームストロング砲
仕事の為に命を削るいつの時代でも似たようなケースがあるような話
この作品では秀島は発狂したらしいが今の時代にあっては神経症と認定される事項でもあり、当時はハードな仕事量で(今でも)精神疾患を患ったら命取りになってしまうそんな話でもあった
犠牲があって成り立つものがあるが、結末を考えるとその犠牲も無駄となり得て無情な感情になる

0
2026年01月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「愚人なら愚人のままがよい。愚人で国を憂えて妄動すれば、その災害ははかり知れぬ」

「おれは幼少のころから人の不正を憎むことはなはだしく、そのため他人とも無用の争いを重ねてきた。これほどまでに正義を貫いてきたおれを、ひとが邪心を抱いてだますわけがない」
「若旦那のいいところでございますな」
藤吉は、悲しげにいった。
「しかし、御苦労のない育ちでございますからな。人の心がおわかりになれませぬ」

田舎の仕立屋が、乾のような秀才を生むことが子への罪なのである。ときにそれがどのような社会悪を生まないともかぎらない。

人間の現象は、おもわぬ要素が入りくみあって、瞬間という作品をつくる。

(間違っていた。剣はやはり自得する以外にあるまい)
沖田は、はじめてそう決意した。

これらの産業開発のために藩の秀才を選抜して、英語、数学、物理、化学、機械学をまなばせ、かれらに極端な勉学を強いた。
「勉学は合戦とおもえ」
と、閑叟は秀才たちに訓示した。

「これからの世界は英語国民が主役になりましょう」
と口数すくなくいった。閑叟はその一言で蘭学をやめ、藩の洋学を英学にきりかえた。

秀島は、だまっていた。かれは沈黙をもておおるとを威圧した。おおるとは気味がわるくなったのか、秀島に近寄らなくなり、田中儀右衛門のそばにのみ付いて歩くようになった。

0
2013年03月07日

「歴史・時代」ランキング