【感想・ネタバレ】新装版 アームストロング砲のレビュー

あらすじ

幕末随一の文明藩、佐賀藩の鍋島閑叟(かんそう)は、若い秀才たちに極端な勉学を強いた。近習・秀島藤之助は、世界最新の高性能大砲の製造を命じられ、頭脳の限り努力する。酷使された才能は斃(たお)れたが、完成したアームストロング砲は、彰義隊を壊滅させ、新時代を開いた。風雲の中に躍動する男達を描く、傑作9編を収録。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「愚人なら愚人のままがよい。愚人で国を憂えて妄動すれば、その災害ははかり知れぬ」

「おれは幼少のころから人の不正を憎むことはなはだしく、そのため他人とも無用の争いを重ねてきた。これほどまでに正義を貫いてきたおれを、ひとが邪心を抱いてだますわけがない」
「若旦那のいいところでございますな」
藤吉は、悲しげにいった。
「しかし、御苦労のない育ちでございますからな。人の心がおわかりになれませぬ」

田舎の仕立屋が、乾のような秀才を生むことが子への罪なのである。ときにそれがどのような社会悪を生まないともかぎらない。

人間の現象は、おもわぬ要素が入りくみあって、瞬間という作品をつくる。

(間違っていた。剣はやはり自得する以外にあるまい)
沖田は、はじめてそう決意した。

これらの産業開発のために藩の秀才を選抜して、英語、数学、物理、化学、機械学をまなばせ、かれらに極端な勉学を強いた。
「勉学は合戦とおもえ」
と、閑叟は秀才たちに訓示した。

「これからの世界は英語国民が主役になりましょう」
と口数すくなくいった。閑叟はその一言で蘭学をやめ、藩の洋学を英学にきりかえた。

秀島は、だまっていた。かれは沈黙をもておおるとを威圧した。おおるとは気味がわるくなったのか、秀島に近寄らなくなり、田中儀右衛門のそばにのみ付いて歩くようになった。

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2013年03月07日

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