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開明論者であり、封建制度の崩壊を見通しながら、継之助が長岡藩をひきいて官軍と戦ったという矛盾した行動は、長岡藩士として生きなければならないという強烈な自己規律によって武士道に生きたからであった。西郷・大久保や勝海舟らのような大衆の英雄の蔭にあって、一般にはあまり知られていない幕末の英傑、維新史上最も壮烈な北越戦争に散った最後の武士の生涯を描く力作長編。
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「峠 最後のサムライ」
2022年6月17日公開 出演:役所広司、松たか子、田中泯
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1~3件目 / 3件
※期間限定無料版、予約作品はカートに入りません
Posted by ブクログ
江戸を脱出してから北越戦争に投じて、激戦の中で被弾による戦傷死までを辿る。 継之助は誰よりも時代の流れを見通し、可能な限りの戦備も整えたが、歴史の皮肉はその継之助が幕藩時代の譜代大名家の士分に生まれたことだろう。全て見通しているものの、長岡藩執政という立場に全てを規定されてしまう。武装中立するとい...続きを読むう立場も元々無理筋ではあったが、裏で会津藩が自分側に引き入れようと策を練り(基本的に失敗続きの会津藩が自分と長岡藩が裏取引しているとの印象を官軍に抱かせる謀略だけは成功)、検察官的性格の官軍軍監岩村精一郎に塩対応をされ戦う決意を決めてしまう。 軍備もあって戦術眼もあったからこそ彼我に多くの戦死者を出す戦いとなるが、結局、戦略的には負けており、最後はそうなってしまった。藩の立場で美学を追求するとこういうことになってしまう。残るは大量の戦傷者、戦災、そして多くの住民の生命・財産の毀損である。この美学と損失の関係は後の日本軍にも通ずるところがある。 司馬遼太郎は後書きにて、侍とは何かということを考えたとあるが、陽明学に基づく美学は個人としては完結し美しいが、全体を考えて動かないといけないと思う。 非常に侍とは、美学とは、藩の枠とは、政治の役割とは、戦略眼とは、と様々考えさせられる良著だった。
幕末の時代。 誰もが、長いものに巻かれ、右往左往していた時代に、これだけの自己規律と信念を持ち、ブレずに生きた男がいた。 そのことが衝撃だったなぁ。 思想や自己規律、信念が、ここまで生き様を描くことができる。それが人間が、他の動物とは一線を画す生き物である、ことの証左だとも思う。 武士って、スゴ...続きを読むイや。
誰よりも早く洋式を取り入れた継之助。 一方、志や思考・思想は誰よりも武士だった継之助。特にこの下巻ではその色が濃くなる。 継之助は完璧主義でもなければ適当主義でもない人なのだろうと思う。あえていうなら最適主義といった人物。 複数の方が書いているが、幕末や明治維新の時代、学校の勉強ベースや歴史の書...続きを読む籍ベースだと、殆どといってよいほど、倒幕側の目線、あるいは幕府側の目線で書かれている。それがこの『峠』では長岡がとった『中立の立場』として描かれており、同じ時代でも全く違った世界を知ることが出来る。 峠の主人公である河合継之助、同じ時代を生きた坂本竜馬、うつけと言われた信長、皆若い頃は総じて周囲から『変わり者』と思われる人間だったと思う。つまり天才とはそういう者だ!
北越戦争、こんな歴史があったとは。 戊辰戦争、無血開城以降は函館までほぼ素通りしてたけど、こんな人が長岡にいたんですね。 結果的に批判されるのはやむなしとしても、その粋は美しいし、結果については運の巡り合わせにもよるのかなと思う。
以前読んだ戊辰戦争関連の書籍で強烈なインパクトを残した、河井継之助を主人公に据えた名作 彼の壮大な夢、長岡藩の武装中立に向けて藩屋敷を売り払ったり、為替で儲けたり、ガトリング砲を買ったりとまさに破天荒な男 誰よりも封建体制の崩壊を分かっていながらも、長岡藩士として必死に生きた河井がカッコいい またそ...続きを読むの影で、作中には出てこないが民に恨まれていたのもまた事実 河井継之助について、もっともっと知りたくなりました 幸い夏に長岡に行く予定があるので記念館に行こうかな
この時代に米の差益を発見し、儲けたお金で軍備を整ええた天才。先見の眼やがありながら、境遇に恵まれず北越戦争で亡くなってしまった。 この時に亡くならず、日本のために活躍してくれていたなら…。と思わずにいられない。
下巻は戦争を避けるべく動いてきたが、小千谷談判が決裂、北越戦争へといった流れ。会津の立場もあるとは言え、小千谷談判を崩すために長岡藩と一緒に暴れたように見せたという件が印象に残った。談判が成功していても継之助の思うように展開したかは別であるが。いずれにしても時代や立場が違えば活躍したかもしれない人物...続きを読むだけに勿体無く思えた。
河井継之助は評価が難しい人物であると思う。 彼の政治のスタンスとしては、本書の中で官軍にも東軍にも味方しないという風に書かれていた。 それが結果的に初動の遅れとなり長岡藩の敗因に繋がったことは否めない。 しかし河井はあくまで戦争はしないに越したことはないという理想を強く保持したこと、幕府や武士が今後...続きを読むは衰退する世の中で(外国との貿易を含めて)長岡を単独で活発化させることを望んでいたこと、などを構想していた。そのプロセスを上巻から読んで頭に入っていると河井のクライマックスが多少理解できるだろう。 せめて戊辰戦争が彼が生きているうちに起こらなければ全然別の展開になっただろう。確実に長岡の未来を変えていたと思う。彼は、長岡に収まる器ではなかったのだと思う。 あと些細は点では、長岡で官軍との戦争中に奥羽から軍が全く来なかったのが不思議に思った。奥羽越列藩同盟を結ぶ関係である割には軽薄ではないか。会津藩はどこよりも働き者だとも思う。
【2022年の読書振り返り】 自分の愉しみとして10作選びます。 ■実書籍■誰がために鐘は鳴る(ヘミングウェイ) ■実書籍■ドクトル・ジバゴ(パステルナーク) この2作が頭一つ抜けて圧巻でした。パチパチ。 ■実書籍■ロバート・キャパ写真集 正直、「誰がために鐘は鳴...続きを読むる」「ちょっとピンぼけ ローバト・キャパ自伝」との3点セットの味わいなんですが、やっぱりこの人の写真は魅力が尽きないなと思いました。 これは岩波文庫が素敵な仕事をしていくれていると思いました。 ■実書籍■マノン・レスコー(プレヴォ) ■実書籍■郵便配達は二度ベルを鳴らす(ケイン) 今年は海外古典がマイブームだった気がします。光文社古典新訳文庫、素晴らしいですね。 ●電子書籍●街道をゆく・オホーツク街道(司馬遼太郎) 今更な司馬遼太郎さんなんですが…。面白いものは面白い。 数十年ぶり再読の「峠」、「播磨灘物語」、それから「人間の集団について」「街道をゆく・陸奥のみち」も併せて、脱帽ものでした。 ■実書籍■すみだ川(永井荷風) やはり数十年ぶりの再読なんですが、今回は復刻シリーズで旧かなを堪能。 打ち震えるくらいの快楽でした。旧かなマニアなので…。 ■実書籍■「細雪」とその時代(小林信彦) 小林信彦さんの新作を愉しむというのが歳月を考えると感無量。 そして「細雪ファン」としてはこれまた鳥肌モノ。 関西が懐かしくなりました。 ●電子書籍●人生が変わる55のジャズ名盤入門(鈴木良雄) 失礼ながら大きな期待なく読んだんですが、鮮烈に愉しみました。 数年ぶりに「猛烈にジャズが聴きたいっ!」と思わせてくれました。 現役のジャズ巨匠、それも日本人の、という視点がこれほど興味深いとは。 名盤入門なんですけど、鈴木良雄さんの半自伝という楽しみですね。 ●電子書籍●ジャック・リーチャー・シリーズ(リー・チャイルド) 村上春樹さんが「このシリーズは好き」と言っていただけで読んでみたんですが、 いろいろ突っ込みどころも満載だけどとにかく楽しめてしまいました。 「奪還」「パーソナル」「宿敵」「ミッドナイトライン」「葬られた勲章」の5作。 敢えてひとつなら「パーソナル」がラストまで楽しめて印象的。 # 以上で10作になります。 上記で言及していない、次点みたいな心残りを挙げると ・新宿鮫Ⅻ 黒石(大沢在昌) なんだかんだ、また全作再読してまった挙句の新作は痺れました。 ・世界の歴史23・ロシアの革命(上山春平) このシリーズは好きなんですが、特にこれは夢中になって読みました。 かなりエンタメでのめりこめました。 ・ヨギ・ガンジーの妖術(泡坂妻夫) とぼけた味わいとひねった仕掛け。脱力感溢れるキャラクター世界が秀逸。 あたりでしょうか。「失敗の本質」もこれまで何度も読み切れなかった(読み始めるタイミングが無かった)んですが、面白かったですね。 来年も、愉しみです。
映画公開までに読み終えたかったのですが、公開2週間たってやっと読み終えました。 地元の話なので、地理的なことがよく分かるし、幕末に活躍した全国の偉人の動きもつながって、10代の時に読んどくべきだったなぁと思いました。 司馬遼太郎作品はあんまり読んだことがないので分からないのですが(『梟の城』くらい...続きを読む)、時折作者の解説文みたいのが入るのが理解を深めて面白かったです。 ただ、地元では長岡を焼け野原にしたヤバい奴っていう評価を、子供の頃に自分のジジババ世代に聞いたのですが、そういう表現は本文には出て来なかったです。 その辺も含めて調べてみたいので、改めて河井継之助記念館に行って調べてみようかと思います。 北越戊辰戦争がどうして起こったのか。 この小説を読むと、地元の郷土学習で分からなかった部分が補完されるようで、フィクションの部分もあるでしょうが、幕末という特殊な時代背景と長岡の置かれた立ち位置、何より河井継之助の武士としてという考え方が複数重なった上に、情報伝達がうまく行かない時代背景や相手側の心情などまでが悪い方に進んでいく様子がよく分かります。 戦争をギリギリまで避ける方法(やり方はどうあれ)を探る事は、後の同じ長岡の偉人、山本五十六にも通じていて、郷土史をもう一度学び直そうかなと思い始めています。 幕末の混乱期は、色んな視点の本があると思いますが、官軍側、幕府側を行ったり来たりして読むとより理解が深まるのかなと思いました。
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