司馬遼太郎のレビュー一覧
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現在の国際情勢にもつながるロシアという国の原型を学ぶことができました。ロシア社会の始まりが、十三世紀のはじめのチンギス・カンの襲撃などの外敵におびえざるをえない状況からはじまっているとう解釈は、なるほどと思いましたし、非常に面白かったです。今回、あらためてですが、遊牧民の強さ(と残虐さ)を再認識できました。そして、なぜ彼らが強かったのかの知見も深まりました。元寇でモンゴル(南宋)の襲撃を防いだ鎌倉武士団は、本当に強かったと思います。ただ、冷静に考えて、日本が島国であったことも撃退できた大きな要因だったんだなと思いました。もし、日本が陸続きで、主戦力がモンゴルの騎馬部隊だったとして、どちらの弓が
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▼全4巻併せた感想です。
「山内一豊の妻(千代)」と、山内一豊のお話。司馬遼太郎さんの長編で唯一、女性が主人公のもの。恐らく15年以上ぶりの再読。気軽に楽しみました。
▼千代が主人公、として作ろうとしているのだけど、結局は夫の山内一豊が主人公のような印象。司馬さんはやっぱり基本、戦闘、戦争、戦術、戦略が好き。言ってみればジェンダー性よりそっちが好きなので(笑)。
いやそれでも千代と言うキャラクターも魅力的に描かれてはいるんですけれど。ただそんなには、しつこく、深く、粘着質に、「千代を描く」ことに執着してません。テンポよく、省略の妙でぐいぐい進みます。そのあたりは技術的に目がくらむ旨さ。
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『国盗り物語』(司馬遼太郎)
1. この本を一言で表すと?
常識と権威を破壊し、自らの才覚と情熱だけを武器に時代を切り拓く「変革者の生き方」を学ぶための物語。
2. この本から得られる3つの核心的学び
学び①:過去の成功体験は、未来の足枷になる
本書で引用される「負けた戦法をくりかえす軍人」のように、人間や組織は一度成功した方法に固執しがちです。しかし、時代や環境は常に変化しています。過去のやり方が通用しなくなったとき、それに固執するのは敗北への道です。真の勝者とは、プライドや前例を捨て、大胆にやり方を変える「戦術転換」を断行できる者です。
学び②:常識を疑い、本質だけを追求する
油 -
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戊辰戦争は西軍が優勢のまま、ついに越後にも恭順か抗戦かという決断が迫られる。その中で武装中立という、あくまで長岡藩を独立させつつ西軍と東軍の橋渡し役を担うべく奔走する河井継之助は、やがて自らの運命を悟るようになる。
題名の「峠」とは、実際の戦場となった榎峠のことを指すとともに、幕末から維新へと向かう日本社会にとっての転換点でもあることを示している。とくに北越戦争および会津戦争は、必ずしも優勢ではなかった西軍がその後の維新へと向かうための重要な戦略的転換点であり、ここでの勝利が決定的だった。
継之助にとって不幸だったのは、西軍との交渉役が岩村精一郎だったことだろう。歴史にタラレバは禁物だが、 -
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ついに戊辰戦争が開始される中編。長岡藩では緊急事態下で河井継之助を家老に任じて、幕府と朝廷の様子を探るべく藩主自ら大阪・京都に直接赴くことを決意する。長岡藩を含めた幕府方の大軍が徳川慶喜のいる大阪城周辺に集結するなかで、ついに鳥羽伏見の戦いが勃発するのだった。
徹底的なリアリストとして、藩には緊縮財政を迫りつつそこで得た金で最新鋭の武器を西洋から仕入れる継之助。プロイセンという列強のなかでは後発の国で、自らも成り上がろうとするスネルからガトリング砲など強力な武器を次々に購入し長岡に運び入れていく。
恐らくは著者の創作だろうが、河井継之助と福沢諭吉の対話はお互いがリアリストでありながら、戦争 -
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河井継之助はいわゆる敗軍の将であり、戊辰戦争時には小藩を率いて官軍に抵抗し一目置かれた存在である。その継之助が何者でもない、自分探しのような旅に出るのがこの上編となる。
江戸に遊学して古賀謹一郎の私塾に学び、備中松山へ山田方谷に会いに行き、長崎や横浜に逗留して海外情勢を読むといった行動をする継之助。彼はすでに幕府は倒れるであろう見通しを持っており、開国や尊王の不可逆な流れは避けられないと悟る。司馬史観における幕末アナザーストーリーとして、どこまでが史実かは不明だが、まるで坂本竜馬である。
しかし彼の立場はあくまで徳川譜代大名の家臣であり、佐幕と体制維持の圧力を公私にわたって受け続けることと -
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稀代の軍師黒田官兵衛一代記の最終巻。官兵衛の性格は一見すると軍師らしからぬけど、こういう人でないと策も上手くいかないというのは説得力がある。毛利元就も同タイプだったのかもしれない。その毛利元就の息子2人が凡庸な孫の輝元を支えるのは美談。高松城の水責め中に本能寺の変が起こり秀吉が始動する訳だが官兵衛の一言は正直過ぎて失言に近い気もする。それで警戒されている訳だから確かに正直な人だったのだろう。
太閤記もそうだったけど本作も後半は駆け抜けるようなテンポになっている。如水となってからが短い印象だ。
関ヶ原の時の不穏か行動も息子長政の東軍への功績で露と消える訳だがこれは段取り不足で長政の名前を落とすに -
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ネタバレ司馬遼太郎の数多くの中・短編の中でも秀逸した作品の一つだと思う。
本書で書かれているのは、幕末の動乱期を舞台にした勝者・敗者の双方を取り上げているが、いずれも歴史に翻弄された人々を描いている。
表題以外に、岩倉具視の策士として歴史に大いなる影響を与えた玉松操を描いた「加茂の水」、日本史上最高の軍事家大村益次郎の非凡な生涯に触れた「鬼謀の人」(「花神」の別バージョンといえる)、長岡藩の天才的軍師河合継之助の悲劇を描く「英雄児」(「峠」の別バージョンといえる)、最後に幕末の異端児で、これも身分制ゆえに悲惨な生涯を送った岡田以蔵を描いた「人切り以蔵」が収録されており、いずれも読みごたえがある。
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秀吉については主君の織田家を没落させる(信孝とか殺してる)ところから考えようによっては明智光秀以上の悪党なのだが、本作の秀吉は基本的に陽性なのでそういったところを感じさせない。信長からめちゃくちゃ褒められてグッと感動する場面があるけど現実の秀吉もまさか信長がはともかく後継者の長男も一緒に死ぬとは思わなかっただろうからこういった感情もフィクションとは言い切れない。
さすが司馬遼太郎と思うのは本作の終わらせ方。ある意味ラスボス(江戸幕府を作った)たる徳川家康との小牧長久手の戦を終盤に持ってきている。秀吉の負の面ともいうべき晩年の話を大胆にカットする事で『太閤記』として解釈したところはエンタメの登る