司馬遼太郎のレビュー一覧

  • ロシアについて 北方の原形

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    現在の国際情勢にもつながるロシアという国の原型を学ぶことができました。ロシア社会の始まりが、十三世紀のはじめのチンギス・カンの襲撃などの外敵におびえざるをえない状況からはじまっているとう解釈は、なるほどと思いましたし、非常に面白かったです。今回、あらためてですが、遊牧民の強さ(と残虐さ)を再認識できました。そして、なぜ彼らが強かったのかの知見も深まりました。元寇でモンゴル(南宋)の襲撃を防いだ鎌倉武士団は、本当に強かったと思います。ただ、冷静に考えて、日本が島国であったことも撃退できた大きな要因だったんだなと思いました。もし、日本が陸続きで、主戦力がモンゴルの騎馬部隊だったとして、どちらの弓が

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    2025年07月06日
  • 功名が辻(一)

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    ▼全4巻併せた感想です。
    「山内一豊の妻(千代)」と、山内一豊のお話。司馬遼太郎さんの長編で唯一、女性が主人公のもの。恐らく15年以上ぶりの再読。気軽に楽しみました。

    ▼千代が主人公、として作ろうとしているのだけど、結局は夫の山内一豊が主人公のような印象。司馬さんはやっぱり基本、戦闘、戦争、戦術、戦略が好き。言ってみればジェンダー性よりそっちが好きなので(笑)。
    いやそれでも千代と言うキャラクターも魅力的に描かれてはいるんですけれど。ただそんなには、しつこく、深く、粘着質に、「千代を描く」ことに執着してません。テンポよく、省略の妙でぐいぐい進みます。そのあたりは技術的に目がくらむ旨さ。

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    2025年07月06日
  • 竜馬がゆく(一)

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    久しぶりに読み返してみた。
    坂本竜馬が生まれてから江戸の剣術道場で免許皆伝を取るまでの青春時代。

    その人柄に憧れたら若い頃を思い出す。

    特にクライマックス。
    竜馬と桂小五郎との剣術試合は息を呑む展開。

    剣道習いたくやった。

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    2025年07月02日
  • 国盗り物語(一)

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    『国盗り物語』(司馬遼太郎)

    1. この本を一言で表すと?

    常識と権威を破壊し、自らの才覚と情熱だけを武器に時代を切り拓く「変革者の生き方」を学ぶための物語。

    2. この本から得られる3つの核心的学び

    学び①:過去の成功体験は、未来の足枷になる
    本書で引用される「負けた戦法をくりかえす軍人」のように、人間や組織は一度成功した方法に固執しがちです。しかし、時代や環境は常に変化しています。過去のやり方が通用しなくなったとき、それに固執するのは敗北への道です。真の勝者とは、プライドや前例を捨て、大胆にやり方を変える「戦術転換」を断行できる者です。

    学び②:常識を疑い、本質だけを追求する

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    2025年06月27日
  • 峠(下)

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    戊辰戦争は西軍が優勢のまま、ついに越後にも恭順か抗戦かという決断が迫られる。その中で武装中立という、あくまで長岡藩を独立させつつ西軍と東軍の橋渡し役を担うべく奔走する河井継之助は、やがて自らの運命を悟るようになる。

    題名の「峠」とは、実際の戦場となった榎峠のことを指すとともに、幕末から維新へと向かう日本社会にとっての転換点でもあることを示している。とくに北越戦争および会津戦争は、必ずしも優勢ではなかった西軍がその後の維新へと向かうための重要な戦略的転換点であり、ここでの勝利が決定的だった。

    継之助にとって不幸だったのは、西軍との交渉役が岩村精一郎だったことだろう。歴史にタラレバは禁物だが、

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    2025年06月25日
  • 世に棲む日日(四)

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    後半は少し単調な感じが続くが、一貫して明治維新に繋がるきっかけになるような2人の人生は短くも情熱に溢れるストーリーだった。

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    2025年06月24日
  • 峠(中)

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    ついに戊辰戦争が開始される中編。長岡藩では緊急事態下で河井継之助を家老に任じて、幕府と朝廷の様子を探るべく藩主自ら大阪・京都に直接赴くことを決意する。長岡藩を含めた幕府方の大軍が徳川慶喜のいる大阪城周辺に集結するなかで、ついに鳥羽伏見の戦いが勃発するのだった。

    徹底的なリアリストとして、藩には緊縮財政を迫りつつそこで得た金で最新鋭の武器を西洋から仕入れる継之助。プロイセンという列強のなかでは後発の国で、自らも成り上がろうとするスネルからガトリング砲など強力な武器を次々に購入し長岡に運び入れていく。

    恐らくは著者の創作だろうが、河井継之助と福沢諭吉の対話はお互いがリアリストでありながら、戦争

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    2025年06月21日
  • 街道をゆく 39

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    今回司馬さんはニューヨークへ。ニューヨーク散歩と言いつつハリス散歩でありドナルド・キーン散歩という内容になってます。ドナルド・キーンさんが登場するということもあり、今までに無く最近のことを話題にしている感覚があります。 それにしてもキーンさんが日本学に留まってくれたのは日本文学にとって大きなことだったなと、改めて思います。キーンさんがいなければ、源氏物語の世界的評価もノーベル文学賞も、数十年ほど遅れていたんじゃ無いかと。

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    2025年06月16日
  • 坂の上の雲(一)

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    この時代の言語や知識が少なかったため、読むのに時間を要した。現代の学問があるのはこの時代の人々が築き上げてきてくれたのだと感じた。本書を読み進めていくにあたって、秋山兄弟と正岡子規の生き様はどうであったのか、時代の流れと紐付けながらじっくりと読み進めていきたい。

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    2025年06月15日
  • 峠(上)

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    河井継之助はいわゆる敗軍の将であり、戊辰戦争時には小藩を率いて官軍に抵抗し一目置かれた存在である。その継之助が何者でもない、自分探しのような旅に出るのがこの上編となる。

    江戸に遊学して古賀謹一郎の私塾に学び、備中松山へ山田方谷に会いに行き、長崎や横浜に逗留して海外情勢を読むといった行動をする継之助。彼はすでに幕府は倒れるであろう見通しを持っており、開国や尊王の不可逆な流れは避けられないと悟る。司馬史観における幕末アナザーストーリーとして、どこまでが史実かは不明だが、まるで坂本竜馬である。

    しかし彼の立場はあくまで徳川譜代大名の家臣であり、佐幕と体制維持の圧力を公私にわたって受け続けることと

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    2025年06月14日
  • 新装版 播磨灘物語(4)

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    稀代の軍師黒田官兵衛一代記の最終巻。官兵衛の性格は一見すると軍師らしからぬけど、こういう人でないと策も上手くいかないというのは説得力がある。毛利元就も同タイプだったのかもしれない。その毛利元就の息子2人が凡庸な孫の輝元を支えるのは美談。高松城の水責め中に本能寺の変が起こり秀吉が始動する訳だが官兵衛の一言は正直過ぎて失言に近い気もする。それで警戒されている訳だから確かに正直な人だったのだろう。
    太閤記もそうだったけど本作も後半は駆け抜けるようなテンポになっている。如水となってからが短い印象だ。
    関ヶ原の時の不穏か行動も息子長政の東軍への功績で露と消える訳だがこれは段取り不足で長政の名前を落とすに

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    2025年06月11日
  • 新装版 王城の護衛者

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    ネタバレ

    司馬遼太郎の数多くの中・短編の中でも秀逸した作品の一つだと思う。
    本書で書かれているのは、幕末の動乱期を舞台にした勝者・敗者の双方を取り上げているが、いずれも歴史に翻弄された人々を描いている。

    表題以外に、岩倉具視の策士として歴史に大いなる影響を与えた玉松操を描いた「加茂の水」、日本史上最高の軍事家大村益次郎の非凡な生涯に触れた「鬼謀の人」(「花神」の別バージョンといえる)、長岡藩の天才的軍師河合継之助の悲劇を描く「英雄児」(「峠」の別バージョンといえる)、最後に幕末の異端児で、これも身分制ゆえに悲惨な生涯を送った岡田以蔵を描いた「人切り以蔵」が収録されており、いずれも読みごたえがある。

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    2025年06月10日
  • 新装版 王城の護衛者

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    長年の積読をようやく消化できた!幕末を生きた人物で名前は聞いたことはあるが、詳しく知らなかった人物の話で初めて知ることも多かった。司馬遼太郎さんの文章はあまり入ってこないことが多いのだが、大村益次郎の話は興味深くさらさら読めた。

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    2025年06月08日
  • ひとびとの跫音 下

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    上巻に引き続き、正岡忠三郎をめぐるひとびとの人生が、実際の証言や体験、記録、そして作者特有の比喩によって、それぞれの人となりを含めて、実に生き生きと現出させられている。

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    2025年06月07日
  • 新装版 播磨灘物語(3)

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    荒木村重の説得に赴くも旧主小寺藤兵衛の奸計により牢獄にぶち込まれた黒田官兵衛。暗く孤独な環境で発狂せずに生き延びたところはさすがと言うべきだろう。
    本作で特筆すべきは竹中半兵衛。織田信長が官兵衛は裏切り者と判断され官兵衛の子ども(後の黒田長政)を殺すよう指令があっても自身の判断で匿うという真に勇気があり友情が現れた行動が感動的。並の軍師なら同僚とはいえ有能な軍師を排除しようとしても不思議では無い。仮に半兵衛が何の功績も無い武将だとしてもこの事件が真実だとしたらやはり凄い人物といえよう。

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    2025年06月07日
  • 竜馬がゆく 1

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    長編44、短編156、エッセイは数えきれない。昭和を代表する大作家。史上の人物に思いを馳せ、独自の史観で物語を創造する。読者に抱かせるロマン。その影響力は計り知れない。多くの人が史実と信じてしまう。意識的に名前の漢字を変えたとしても。…2500万部を超える大ヒット作品のコミカライズ。ヒーローの誕生。早逝する母。姉に世話を焼かせた幼少期。剣術を磨き、強くなる。家老の娘を密かに恋慕する。江戸へ発つまでの第一巻。…小説は創られるもの。題材には作者を搔き立てる何かがある。歴史の道を歩く。脇に外れて夢をみてみる。

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    2025年06月03日
  • 義経(下)

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    源義経の強さは弱さでもある。報連相の大切さ。上司の背景の理解の大切さに気づかさせれる。
    義経の最期はとても哀しい。
    韓信を彷彿とさせる。
    敵がいるうちは華。敵を倒した後には味方との闘い。世の中の複雑さに気づける。

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    2025年06月03日
  • 新史 太閤記(下)

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    秀吉については主君の織田家を没落させる(信孝とか殺してる)ところから考えようによっては明智光秀以上の悪党なのだが、本作の秀吉は基本的に陽性なのでそういったところを感じさせない。信長からめちゃくちゃ褒められてグッと感動する場面があるけど現実の秀吉もまさか信長がはともかく後継者の長男も一緒に死ぬとは思わなかっただろうからこういった感情もフィクションとは言い切れない。
    さすが司馬遼太郎と思うのは本作の終わらせ方。ある意味ラスボス(江戸幕府を作った)たる徳川家康との小牧長久手の戦を終盤に持ってきている。秀吉の負の面ともいうべき晩年の話を大胆にカットする事で『太閤記』として解釈したところはエンタメの登る

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    2025年06月02日
  • 新史 太閤記(上)

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    歴史小説の大家による太閤記。多分当時で地頭が1番良い人。徒手空拳から大成功を収めた人となると北条早雲、斎藤道三辺りが有名だが早雲は良い家柄の人で道三は親子2代の話なので本当の無名から成り上がったのはこの人のみとなる。
    商人の発想で武士の世界に入り信長に殴られながらも真意を読み取りその時に出せる最善の行動を取るという小説とはいえ恐るべき人物である。ただ陽気なだけでなく心の暗部も描写されているのは良かった。山田風太郎先生の『妖説太閤記』と異なり王道的な雰囲気だが単なる礼賛記にしていないのは共通しているように思う。

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    2025年06月02日
  • 功名が辻(四)

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    実直で自惚れることのない、伊右衛門の姿は人生の指針になると感じていた。関ヶ原の合戦前の小山軍議において、伊右衛門が自分の人生を振り返る場面がある。
    「よく生きてきたものだ。運が良かった。ワシには知恵がないが、千代達の助けを借り、場数を踏む中で動じない心を作り上げた。」と、
    かくありたいと思った。
    一方で、土佐入国後の種崎浜事件に失望し、読むのをやめようかとも思った。反乱分子となりえる領民のリーダー格を相撲大会と偽り集め、楽しみに集まった70余名を全員虐殺したのだ。
    失望の一方で、凡夫たる人間の両側面を見た気がする。

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    2025年06月01日