司馬遼太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
新選組血風録を読み終えて感じたのは、短編集でありながら一つ一つの物語の密度が高く、まるで映画のように場面が浮かぶ作品だということである。話ごとに描かれる人物や状況は異なるが、どの物語にも共通して「組織の中で生きる人間の在り方」が描かれているように感じた。
特に印象に残ったのは沖田総司の恋である。この話は大きな出来事が起こるわけではないが、静かな感情の積み重ねが読後に強い余韻を残した。沖田総司は天才剣士としてではなく、一人の人間として描かれており、言葉にしきれない想いや、どうにもならない状況の中での感情が伝わってくる。決して好きな人物というわけではないが、司馬遼太郎の描く沖田には静かなかっこよさがあり、最も印象に残った。
また本作を通して感じたのは、「優しさやまっすぐさだけでは生きていくことが難しい世界がある」ということである。胡沙笛を吹く武士では組織に馴染めない人物の孤独が描かれ、前髪の惚三郎では純粋さが危うさへと変わっていく様子に人間の怖さを感じた。さらに油小路の決闘では正しさ同士が衝突する激しさが描かれ、どの立場にも一理があるからこそ悲劇が生まれることが印象的であった。
一方で、鴨川銭取話や虎徹のように思わず笑ってしまう話もあり、重い内容の中にも人間らしさやユーモアが描かれている点も魅力である。また、菊一文字のように静かな余韻を残す話もあり、作品全体に奥行きを感じた。
本作は、新選組を単純に英雄として描くのではなく、人間の弱さや矛盾、そして組織の中での生きづらさまで丁寧に描いている。そのため読んでいて苦しさを感じる場面も多いが、それでもなお一つ一つの物語が強く心に残り、非常に面白い作品であった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいわずと知れた「新選組 土方歳三」を描いた作品。司馬遼太郎の代表作のひとつだ。
この本で土方人気が爆上がりしたといっても過言ではないだろう。
欲がなく、無口で、ただひたすらに武士道を貫く。武州のバラガキと言われた男が、荒くれ者の集団をまとめ上げ、最強の戦闘軍団に導いてゆく。
その潔さ、ブレない心、彼の行く手は常に前進あるのみなのだ。
もうかっこえー!としかいいようがないではないか。
新撰組鬼の副長は掟に背くことを良しとせず、背いたものは徹底的に斬る。
戦いのときは勘冴え、敵を攻略するときは地形・位置・敵の状況を瞬時に把握、戦うために生まれ落ちた彼は軍神そのもの。
彼を取り巻くキャラクター、近藤勇、沖田総司、斎藤一、永倉新八、敵役 七里剣之助 そして恋人お雪
彼らは大きな時代の波の中で生き、そして去ってゆく。
箱館での最期、負けを良しとせず、前を向き、死を覚悟で敵陣に向かい颯爽と駆け抜ける姿を想像しながら読み終えた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ司馬遼太郎の作品を初めて読んだ。臨場感のある語り口で、長編ではあるが一気に読み進めてしまい、非常に面白かった。ここまで詳細に描くにはかなり詳細な調査が必要だっただろうと感じ、このような形で坂本竜馬の生き様を知ることができるのは非常にありがたいと思う。
竜馬の凄さはいくつもあげられるだろうが
抜きに出た視座の高さが印象に残る。大きなスケールで物事を捉えて方針を打ち出す、世界の中の日本という視点で今なすべきことを考え行動している。緻密に計画した上で、実行に移すタイミングを適切に読む力、外国の知見を学び日本に適切な形で取り入れる力、人の長所を見抜き適切に任務を任せる力、交渉力、様々なスキルを兼ね備えており、かつ、自身がこの世で成し遂げるべき天命を認識できていたからこと、このような偉業が成し遂げられたのだろう。今この世に坂本竜馬が生きていたら、何を思い、何を成し遂げようとしていただろうかと考えてみたりした。
非常に面白かった。司馬遼太郎の別の作品にも興味をもった。 -
Posted by ブクログ
人物評がやや続く感もあるが、人となりを描くこと自体が著者の主旨であると思うから、その点は仕方ないとも思う。実際、家康の人となりとその影響はよく分かり、家康個人の人間性、あるいはその元にある三河勢の人間性が、江戸時代を通じて現代日本の性質にも色濃く影響を与えていることを実感させられた。
泣かぬなら〜の歌の三英傑の例えは、流石に非常に長い期間の読みに耐えているだけはあり、秀逸極まりないと思う。家康の、鳴くまで待とう、だけやや例えのクオリティーが落ちている気もしなくはないが。
上巻に続き、歴史が進んでいくフェーズは抜群に面白い。関ヶ原の戦いや大坂の役は別本があるので本紙ではほとんど全く触れられておらず、そちらの本も読みたくなった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレオーディブルで本作を見つけたので、懐かしさを感じながら、再読(聴読)を開始した。当初のワクワク感がよみがえってきた。当時、レビューを書けていなかったので、この機会に追記しておこうと思う。
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鼻たれで泣き虫だった坂本龍馬(竜馬)が、みるみる頼もしい青年に成長していくシーンが次々映像のように浮かび上がってくる。また、竜馬のあの何とも言えない大らかさ、豪快さが、どうして育まれたのかを想像しながら読むのも楽しい。
もともと弱虫のぱっとしない少年が、ゆくは維新の英雄の一人となるには、様々な要因があったと思うが、やはり幼少期の乙女姉さんの存在は大きいなと感じた。
日根野道場で剣術を学ぶが、必ず放課後、乙女姉さんのスパルタトレーニングで鍛えられた。そうして、小栗流目録をとるが、それは竜馬にとって大きな自信になったのではないか。剣術の上達もさながら、この姉弟の関係(特に乙女の竜馬に対する強い愛情)が、大らかな竜馬の基礎を作ったように感じられる。
そして、江戸へ。郷士の竜馬は、自費での遊学。入門した千葉道場が、また竜馬に完全フィットしたように思う。千葉道場の「北辰一刀流」には、「型」や「秘伝」にこだわるのではなく、合理性を追究した剣であり、北辰(北極星)の如く揺るがず、一刀で(一撃で)勝負を決めるという精神がある。
第一巻で登場する、竜馬の剣での戦いのシーンを見ていると、一つは相手を吹っ飛ばすような豪快な「突き」の一撃が印象的なのと、変幻自在というか、勝つための合理性が感じられるのも印象的だった。
この巻では、長州の桂小五郎との出会いが全体の物語の伏線として重要だろう。そして、二人が試合で剣を戦わせるシーンは、手に汗握るハイライトであった。
桂小五郎の流派は、「神道無念流」。竜馬は初めての出会いの時に、命拾いをしたときから、桂小五郎の剣には尊敬の念すらもっており、到底自分の相手ではないと考えていた。その小五郎との勝負のシーンが本巻最後にやってくる。
「神道無念流」は、相手に息をつがせぬ激しい攻撃の連続が印象的で、とくに小五郎の緻密な性格も加わり、一瞬の隙も見つけることのできないような相手であった。その完璧な小五郎に隙を与える竜馬の戦い方には、自由、柔軟、合理性、そういうものが凝縮されていたかのように感じた。今後の、竜馬の生き方と通ずるものがあるように感じられる。