司馬遼太郎のレビュー一覧
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ネタバレちょうど坂の上の雲を読んでおり乃木将軍の人となりに
興味を持ったということと、中学の時に国語の教師が明治帝の崩御の際に
殉死した軍人がいたということとその時の描写を授業で語っていたのを
意外と強烈に覚えていたので乃木大将がなぜ殉死(しかも奥さんを伴って)
へと向かったのかを知りたくて読んでみました。
ただ、司馬遼太郎は一貫して乃木希典という人物に批判的なので
坂の上の雲と殉死しか読んでいないのでは司馬フィルターを通してしか
乃木希典という人物を捕らえていないことにはなるのですが
この本自体は様々な人の証言や状況証拠から経緯を追っており
読み応えがありました。
陽明学の流れを組んでの殉死だとは -
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牢人達が大坂城に集いだすところから、冬の陣が終わって和議が成るまでの話。
上巻に続き政治的な人々の動きが中心に描かれている。
誰がどういうつもりで行動したかが丁寧に書かれており、それらの上で事態が動いて行ったのだというのが分かる。
戦のシーンは映像では見せ場として派手に演出されるが、本作ではむしろさらっと描写されている印象。が、その戦の成り行きもまた、一人一人が様々に考え動いたという視点から見せてくれる。
上巻で主人公役をしていた小幡勘兵衛は、流石に有名な牢人・大名達の前では出番を減らしていた。
意外にも牢人集の中で比較的出番の多かった真田幸村や後藤又兵衛ですら、中心的になるような描き方はさ -
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ネタバレ時刻が、移った。
会議はまとまりがなく、だらだらとつづいている。
継之助はもう、議事の進行に興味をうしない、柱にもたれ、煙管のやにをとったり、ふかしたりしている。
そのうち会津藩の秋月悌次郎がやってきて、
「どうもあれだな、これはまとまらない」
と、小声でこぼした。
継之助はぷっと一服吹き、
「まとまらないんじゃないんだ。どの藩もはじめから意見などもっていないのだ」
といった。
たしかに内実はそうらしい。しかし会津藩としてはどうしても抗戦へまとめてゆきたいという願望がある。
「そのように言われちゃ、実も蓋もない。かれらはこのように集まってきている。集まってきているということ自体、 -
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ネタバレ顔を少しあげ、谷の向こうの天を見つづけている。吉沢の存在を無視していた。この男の知的宗旨である陽明学の学癖のせいか、つねに他人を無視し、自分の心をのみ対話の相手にえらぶ。たとえば陽明学にあっては、山中の賊は破りやすく心中の賊はやぶりがたし、という。継之助はたとえ山中で賊に出遭うことがあっても、賊の出現によって反応するわが心のうごきのみを注視し、ついでその心の命ずるところに耳を傾け、即座にその命令に従い、身を行動に移す。賊という客体そのものは、継之助にあっては単なる自然物にすぎない。
吉沢の存在も、自然物である。いわば、そのあたりの樹木や岩とかわらない。
眼前に難路がある。これも、継之助の -
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2巻の筋は、なんと西郷の征韓論をめぐり逡巡する人物達を描くのみで少しも進んでいない。故にあまり楽しめる内容ではないが、それでも興味をもって読み進める。
作者が、物語というより、維新後に活躍した人物像をその行動を元に推察した歴史と人物研究の書という体です。
歴史を動かした人物とて、思想の微妙な違いでの好悪により派閥が出来、暗殺等手荒で確実な方法を望んだり、武力で脅す強硬派や温厚で協和を好み時間をかけて和をなす穏健派が出来、今の政治情勢と何ら変わらないものが根底にあると思う。
作者の緻密な取材とそれを元に人物像をその背景と照らし合わせて作り上げ、表現していく粘り強さにあらためて敬服する。
以下
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ネタバレ 購入済み
長編にならなかった伊達政宗
司馬遼太郎が短編の筆を折ったのは、作家デビューして10年が過ぎたころ-その後3編の例外はある-、同じころに「街道をゆく」が始まる。『馬上少年過ぐ』に収められた7編のうちの4編はそうした昭和43年から45年に書かれた。残りの3編は、同じ新潮社から以前に出た『鬼謀の人』からの転載である。
短編集の表題となった『馬上少年過ぐ』は隻眼の武将伊達政宗の晩年の漢詩の第一句から取られた。司馬は政宗を詞藻の豊かな武人と言いながら、その凄絶な生い立ちを語っている。それは24歳の政宗が実弟の小次郎を刺殺するところで途切れ、死の前年の歌の「千々に心のくだけぬるかな」に寓意があるとして締めくくった。
ところが、司 -
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歴史は倫理ではなく感情の結果として成るという形容のままに、維新前後に現れた天才達の心理描写を深く描いている。
坂の上の雲でも描かれた郷土意識なくして明治時代は語れないようです。
主な登場人物を整理して読むと理解しやすい。
〈備前佐賀〉
江藤新平
大隈重信
大木
〈薩摩〉
大久保利通(日本最大の策士)
東郷平八郎
島津斉彬
島津久光(保守主義)
川路利良(警視総監)
〈公卿〉
岩倉具視
三条実美(さねとみ)、新国家の首相
〈土佐〉
板垣退助
坂本龍馬(既に死せる)
〈長州〉
木戸孝允(たかよし、桂小五郎)
井上馨(かおる)
山県有朋
大村益次郎(首相、暗殺)
高杉晋作(既に死せる)
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【あらすじ】
明治維新とともに出発した新しい政府は、内外に深刻な問題を抱え、絶えず分裂の危機を孕んでいた。
明治6年、長い間くすぶり続けていた不満が爆発した。
西郷隆盛が主唱した「征韓論」は、国の存亡を賭けた抗争にまで沸騰してゆく。
征韓論から、西南戦争の終結まで新生日本を根底から揺さぶった、激動の時代を描く長編小説全10冊。
【内容まとめ】
1.西郷隆盛・大久保利通の出生からではなく、明治維新後の物語
2.薩摩隼人という現代日本人とは一線を画す民族の詳細
3.薩摩隼人は「得たいが知れない」!!
【感想】
日本史はとても面白い。
いつの時代も魅力的だが、やっぱり個人的に特に好きなのは、 -
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ネタバレ京都を出発するとき、京における長州代表の広沢兵助が、
「西郷にはくれぐれも気をつけよ」
と、注意したが、蔵六はいっこうに表情も変えず、返事もせず、ひどく鈍感であった。広沢のいうところでは、西郷の衆望は巨大であり、一人をもって一敵国をなすほどである。西郷自身は稀世の高士であるにしても、そのまわりにあつまっているのは愚かな物知らずばかりで、江戸へゆけばそういう愚物どもに気をつけよ、といったわけであったが、しかし蔵六は鈍感であった。蔵六にいわせれば、
「衆望を得る人物」
という種類の存在が、頭から理解できないところがあり、それどころか、そういう存在は一種のゴマカシです、としかおもっていない。さらに