司馬遼太郎のレビュー一覧
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ネタバレ遂に読み終わった。司馬遼太郎作品「項羽と劉邦」最高の軍師である韓信の背水の陣から始まった下巻。武の才もなく、知略もないが圧倒的なほどの徳と義を持った劉邦の部下たちがまた今回も活躍する。特に目立ったのがやはり韓信。彼は本当に劉邦にしてみれば都合のいい部下であり、韓信に少しでもエゴがあれば劉邦は滅んでいたと思う。さらに張良や蕭何、彼らも最後まで劉邦を見捨てず、奔走した。劉邦は項羽に相対する度に弱気になり、弱音を吐き、リーダーとしてどうなんだと感じるところはあるが愛されるべく才を持っためずらしき英雄なんだなと。麻生さんが言っていたことがわかった。一方項羽は、圧倒的武力を誇りながら次第に弱っていき、最
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ネタバレ劉邦の元にたくさんの優秀な人材が現れる。
項羽にあまり重用されず劉邦の元に行き大仕事をなす韓信。劉邦の右腕として、様々な戦略を考える天才軍師張良。また、誰彼構わず官位をくれる劉邦を頼りに属することになる陳平など。魅力的な人物ばかりが登場した。
一方項羽は自分の親族にしか良い官位は与えず、亜父と慕っていた范増をも陳平の策に溺れ手放してしまう。いつでも弱音を吐いたり、すぐ意見が変わる劉邦だが、そんな男だからこそと仲間になる人たちがいて、リーダーシップとは面白いなとより感じた。
まだまだ項羽の勢力は衰えていないのでここからどう劉邦が天下を取るのか、しかし、だんだんと心が離れていく項羽兵。方向性の違う -
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"司馬遼太郎さんの本。乃木希典さんは、日露戦争の英雄として記憶していた。靖国神社脇にある遊就館の展示イメージが強烈に印象に残っている。(乃木希典大将は戦死者ではないので、靖国神社に御霊はない。)
本作品では、軍事としての能力が著しく欠けており、家系、人脈、人柄から陸軍大将という地位にあり、日清戦争時に第三軍司令官として旅順、203高地へ赴任したとある。結果的に多くの戦死者を出すことになる難攻不落の要塞攻略に、正面突破の命令しか見いだせなかった無能な軍人として描かれている。
歴史は語る人により、見方が大きく変わるものである。多くの書物を読むべき理由のひとつがここにある。" -
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司馬遼太郎短編集
☆英雄児
・・・河井継ノ助の生涯を描く。『峠』のダイジェスト版のようなもの。
☆慶応長崎事件
・・・幕末、長崎で起きて英国人殺傷事件。海援隊の菅野、佐々木に嫌疑がかけられて、龍馬があわてるという筋。
☆喧嘩草雲
・・・幕末もの。けんかっ早い田崎草雲と絵師の話。絵師であり、剣術使いでもある主人公。様々な挫折を経て、足利藩の責任者となって、官軍に味方して闘うことに。
「自分は何者か」ということを追求し、迷い続けた男の話。
☆馬上少年過ぐ
・・・東北の雄、伊達政宗を描く。母に疎まれた少年時代の話は悲しい。この物語の中で目をひくのは、父・輝宗だろう。政宗を後継者と決めつつも。家内で反 -
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「坂の上の雲」の主要人物として登場する乃木希典のその後を描いたスピンオフ作品。
司馬遼太郎による軍人、乃木の評価は著しく低い。「坂の上の雲」でも本小説でも、日露戦争の対旅順要塞での無策ぶりの描写は痛烈だ。
そもそも乃木という人は、軍に求められるのは戦略や戦術ではなく精神主義と考え、軍司令官として自身の失敗を「自死」で片付けようとする傾向にあった。そんな人間は軍を含めて、組織の管理者としては無責任すぎて、不適切だ。が、外部の国民や天皇からすれば、彼の死を恐れない部分が軍人としての潔さ、カッコよさに見えた。
そして、乃木は夫婦そろって明治天皇の後を追って殉死する。日露戦争では2人の息子を亡く -
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高杉晋作をはじめとする長州志士達がいよいよ歴史の表舞台へと登場する。幕末の雄藩として歴史を飾った長州藩であるが、その内情は事なかれ主義に代表される官僚主義出会った。吉田松陰や高杉晋作などは例外であり、意外ではあるがやはり長州とて日本人の民族的な特質を例外無く持ち会わせていたという事だ。そして、その特質は太平洋戦争へと引き継がれる。
司馬遼太郎の小説で、おりに触れて出てくるこの流れは本書でも同様であった。歴史を通して日本人といものを探り、そしてどうしてあの悲惨な太平洋戦争へと突入していったのか、それは止められなかったのか、ということが著者のライフワークであったのであろう。 -
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吉田松陰は育みという扱いで萩に戻され、松下村塾で細々と後進の指導をするが、そうしながら奇を持つ者を探すことが目的であった。しかし、安政の大獄で江戸へと再び呼び戻され、軽信する癖ありと自身が言ったように、取り調べの際に、言わなくていい事まで話してしまい刑は大事となり、処刑される。そこまで読み終わったタイミングでたまたま人形町のスタバにいた不肖は、その先を読み急がずに、伝馬町の十賜公園へと直行し、松蔭処刑の場所まで足を運んで冥福を祈った。
そして、後半、物語の主役は高杉晋作へと交代する。松蔭の意思を次いだ晋作は、幕府の視察団の一員として上海へ渡る。あの日本を震撼させた黒船と同様の蒸気船が、無数に -
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幕末の風雲児の一人、高杉晋作がその28年という短い人生を突っ走り、結核で死に付する。最後に残した句は、「おもしろき、こともなき世をおもしろく」だった。「苦と楽を差し引きすれば、浮き世の値僅か三銭」と言った彼は、人生をその三銭の差し引き黒字で死んでいったのであろう。浮き世に未練が無い事が、その日暮らしで命知らずの大胆な行動を可能足らしめたのであろう。また、それは師の吉田松陰による、だれもがその人生に春夏秋冬があり、それは人生の長さできまるものではないという教えが由来になっているのかもしれない。
革命においては、まず第一段階として吉田松陰のような思想家がまず現れそして断罪される。その後、その意思 -
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貧乏寺の小僧からのし上がり、ついに美濃を奪取した斎藤道三。隣国の尾張でうつけと評判であった織田信長が、その評判とは裏腹に非凡な才能をもつことを見抜く。自らの娘である、濃姫を信長に嫁がせ、同盟関係を結ぶことで美濃の安全保障上の懸念を取り除く。しかし、血の繋がらない長男の義竜の反乱によって、最期を迎え、また道三の家臣であった明智光秀も牢人となって各地を放浪することとなる。一方、道三の天下を制するという野望は、信長によって引き継がれる事となり、当時最もそれに近かった今川義元を桶狭間にて奇襲を持って討ち取るのである。
光秀は放浪の上、自らも天下に関わる大仕事に関わる野望を抱く。それを実現する手段とし