司馬遼太郎のレビュー一覧
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大坂での坂本龍馬謁見、そして新撰組のと対峙から始まる下巻。
読み始めて間もなく主人公、天堂晋助は架空の人物だと気づ始めてからは歴史上の人物と多く関わりつつも歴史に関わらない行動をしているのがひどく気になりながら読み進めることとなった。
とはいえ、幕末の長州藩には血気あふれた人物が有名無名含め多数排出された時勢であり、伝えられていないドラマが多数あるのてはと想像する。
加えて、長州藩には有名な人斬りがおらず、土佐の岡田以蔵や薩摩の中村半次郎を模して晋助を作出したのかもしれない。その人斬りたちはほぼ登場しないが。
ネットで天堂晋助を調べると、NHKの大河ドラマ「花神」にも粟屋菊絵とともに登場し、戊辰戦争で戦死ていることに驚く。菊絵や妹のその後があまり語られないのが多少気になる。 -
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ネタバレ2018今やってる大河ドラマ「西郷どん」での松田翔太演じる徳川慶喜、いや徳川慶喜演じる松田翔太がすごくいいので、徳川慶喜に興味を持ち、一体どんな人物だったのだろう、とこの本を読んでみた。・・今回はせごどんにあまり魅力を感じないので慶喜に目が行っている。
徳川慶喜といえば、中学か小学の歴史の教科書で、章の扉絵に「徳川慶喜は主だった大名を集めて大政奉還をしました。家康が全ての大名を集めたのと違いますね」というような事が載っていたのが一番の印象。・・読んでみれば集めたのは大名ではなく在京の陪臣だった。
司馬遼太郎のこの小説は、将軍になるまでの記述は特に慶喜の人となりを浮かび上がらせるために、史資料を基に司馬氏が俯瞰者となって語る、という印象が強い。しかし、二条城での大政奉還以後は、特に慶喜の心の動きが強く伝わってきた。非常に聡明な慶喜だが、大政奉還はしても、それ以後の歴史の動きは予想外だったのではないか。
明治になってから謹慎を解かれ静岡に移ると数え33歳。以後は趣味に生き、多くを語らず、大正2年11月、77歳で死んだ。葬儀には旧大名の当主たち3百余人がことごとく参列し、特に諸外国の使臣が多く参列した、とあり、「慶喜の死は、江戸を一挙に遠い過去のものにした。この日以来、慶喜は江戸を懐かしむひとびとの感傷のなかに生きはじめた。」という最後ではなにか胸がいっぱいになってしまった。 -
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ネタバレ医者であり、軍師でもあった村田増六(大村益次郎)
暗殺者、岡田以蔵
銘品なる茶碗を割る、織部正
徳川3百年のむなしさをブリキトース砲で見出す中書新次郎
長明寺の住持観海によるインパクトある命名に恥じない活躍をした豪傑、塙団右衛門
兄の仇を追い新選組の志士と会い打つ、井沢斧八郎
井上門多の恩人である隠れ志士、所郁太郎
後藤又兵衛の幼馴染である商人、後藤柿又兵衛
短編ながら歴史上の人物やそれに深くかかわる人物をまとめる短編集で、とても読み応えがあるし文書にも工夫がみられる。斧八郎については初めは時代を伏せて展開していくところが妙です。
作者の作品で多く出てくる人々であり、読んで相乗効果的な楽しみがあります。短編故の気安さもあり、司馬作品を知らない人にもおすすめです。 -
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西郷一行が宮崎に逃げ延びたところから西南戦争集結と大久保利通、川路利良の末路までの最終巻。
新聞の連載物であるが故に繰り返されるキーエピソードや、作者が調べ上げた話の本筋とかけ離れた人物描写が多すぎて物語としてのテンポが非常に悪い。
解説の方も述べているが、歴史書として扱うなら作者の類推と史実を区別した解説本がなければと思う。
ただ、読者の殆どはやはり読み物として手に取るだろうし、自分もその類であるからもう少し簡素であって欲しい。
ただ、維新後の真の革命である10年を描く本作は、近代日本を形作る重要な年月であり、西郷という虚像を取り巻く群像劇として見ることで人間の本質を垣間見ることもできる。
本巻だけでも印象に残る人物を列挙する。
人たらしの才能のみで君臨し、取り巻きに翻弄され続け、人を見る目がない西郷隆盛。
西郷と城山で散る同士たち、すなわち
桐野利秋
村田新八
別府晋介
辺見十郎太
西南戦争での薩摩側の良心で、生き延びて読み手のスクイとなる野村忍助。
熊本の自由民権運動者、宮崎八郎
官軍側では、
内務卿大久保利通
慎重過ぎる戦略により戦争を無用に長引かせた臆病な官軍総督、山県有朋
西郷暗殺の刺客を送った大警視川路利良
薩摩出身の海軍総師川村純義
西南戦争の最中に病で没した木戸孝允
西郷の人となりをここまで深く掘り下げた人はこれまでなかったようだが、そういう言う意味でも価値ある小説である。
廃藩置県、地租改正などにより国民の新政府に対する不満が蔓延し、その暴発を薩摩藩が担い、その敗戦をもって革命が区切りを迎えるという激動の時代がよく理解出来た。 -
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ネタバレ大坂冬の陣後の休戦状態から、大坂夏の陣の終わりまで。
誰がどういう理由でその役に付くことになったのか、どうしてこうなるに至ったのかがなど広く細かく描かれている。
小さな点を積み重ねていき、大局が出来ていくのだなと実感できる。
その分というか全体的に盛り上げるべきところ、熱を入れて読みたくなるであろう所をあえて外して、淡々と簡素に進めてある。
特に大坂方の武将勢については家康に比べ描写がかなりあっさりしている。心情風景などに深入りすることがあまりない。最期の奮闘というのも薄味。
彼らの個人個人の想いや行動を読みたいと思っていると、肩透かしを食らうと思う。
その中でだが体感では後藤又兵衛が一番濃厚に描かれ、次点が真田幸村だったかと思う。
真田はどうも他に短編が出ているようなので、そちらで補完してくれということかもしれない。
あくまで全体的に同じ熱量で描写しているという体だと思う。
それがこの作品の作風にもなっていて、熱狂しているはずの最後の大戦をどこか冷えた感覚で読むことが出来る。物語を俯瞰しているという気にさせてくれるのだ。
秀頼の最期について、実際は毛利勝永が秀頼の介錯をしたのだが、今作では違う形になっていた。
それはそれで寂しい雰囲気が漂っていて悪くないのだが、そこの描写に期待していたので個人的には残念。
有名所はこの後どうなったという点に触れられているのだが、最後の見せ所を失った毛利はその説明もなく。少々不憫…。
作中で「古今にない」とか「史上類を見ない」というような表現が頻出するのだが、本当にそうなのか?誇大では…と疑問が。真偽のほどは分からない。
上巻で大物風を吹かせて主役格の動きをした小幡勘兵衛は、当然後藤や真田のような活躍を見せることも無く、名を馳せることも無く、すっかり小さな男になってしまった。
作中で半生を無駄にしたというようなことが書かれていたが、本当にそうだなと。そしてこの程度の事を考え、実行した有象無象が多くいた時代なんだろうなとも。
身の丈に合わない自信や成り上がりをこの時代に夢見た男の代表として、彼は描かれたんだろうと思う。
この点現代にも通じる部分があるように思えて、少し考えさせられる。 -
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NHKの吉田直哉氏が退職の制作のためにと、司馬遼太郎に持ち込んだ「モンゴロイド家の人々」という企画が発展して「太郎の国の物語」というタイトルになって、NHKでの「幻の放映」と言われる司馬遼太郎が出演した貴重な作品となった。
それが出版され、タイトルも「明治という国家(上下)」になった。
司馬遼太郎は「いまさら、テレビという人前に出るなどは、自分の節制のゆるみ―老化である―としかおもえないが、しかし少年(*吉田直哉氏のこと)には抗しがたかった」と恥じて(実際は照れ?)いる。
内容は明治という時代を、「江戸時代からの遺産」「青写真なしの新国家」「廃藩置県―第2の革命」「勝海舟」「サムライの終焉あるいは武士の反乱」「自由と憲法」等々、多方面から分析しているので、一概には纏めにくいが、明治維新というのは、本当に想像を絶するというか、めちゃくちゃな革命と思われるが、世界史的にも流血の少ない形で成功したのは、何故だろうかと改めて考えさせられる。
常に手元に置いて読み返したい一冊である。
余談ではあるが、放送されたものはDVDになっていて、今や3万円というプレミアムが付いている。一度見たいと思っているが、二の足を踏んでいる状態が続いている。 -
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私学党の決起による西南戦争勃発からその激戦を経て薩摩軍の宮崎地方への潰走までの第9巻。西南戦争の生々しい経緯が様々な資料を元に描かれていてまさに歴史資料の感かある。
桐野、篠原、桐野等幹部の無能、と言うよりは薩摩隼人気質と、西郷の沈黙が事態を悪化させていく。村田新八や永山弥一郎のような逸材を含む多数の民を犠牲にしながら。西郷は薩摩隼人が死にゆく原因を自ら作っていることになんの呵責もなかったのか。その存在だけが薩摩軍の一部幹部大いなる価値を生み出すだけである意味において大罪人とも考える。銅像建立までの経緯に興味が湧く。
不謹慎だけど、戦争描写は政治的駆け引きと心理に比べて読み応えがあります。