司馬遼太郎のレビュー一覧
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全6巻の序章。嘉兵衛が淡路を出て兵庫の叔父の廻船問屋に入り、江戸へ樽廻船に乗り、船出の一歩を踏み出すところを描く。江戸時代の村の閉鎖性、同じ字でも集落が異なれば外の人として扱い、厳しいルールがあったことに、大変さを思う。そんな中、生まれた村では暮らしていけない嘉兵衛、そのため隣村の親戚の所で働く。ここで、閉鎖性に苦しみながらも負けずに生きる姿が雄々しい。その嘉兵衛にとって、村を飛び出し兵庫へ行った後、海の男達の人を受け入れる度量や、お互いを信頼しあい、同じ人として遇してくれることにとても感銘をうけたことは想像に難くない。そしてその海の男達を惹きつける嘉兵衛の人柄が素晴らしい。天性のものか。ある
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ネタバレ「愚人なら愚人のままがよい。愚人で国を憂えて妄動すれば、その災害ははかり知れぬ」
「おれは幼少のころから人の不正を憎むことはなはだしく、そのため他人とも無用の争いを重ねてきた。これほどまでに正義を貫いてきたおれを、ひとが邪心を抱いてだますわけがない」
「若旦那のいいところでございますな」
藤吉は、悲しげにいった。
「しかし、御苦労のない育ちでございますからな。人の心がおわかりになれませぬ」
田舎の仕立屋が、乾のような秀才を生むことが子への罪なのである。ときにそれがどのような社会悪を生まないともかぎらない。
人間の現象は、おもわぬ要素が入りくみあって、瞬間という作品をつくる。
(間違って -
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高校生の頃に読んだ本。35年ほど前か。
最近、天地明察で保科正之が登場していたり、NHK大河ドラマ「八重の桜」で幕末の会津を見るにつけ、読み返したくなった。
松平容保に京都守護代を押し付けた松平春嶽は結局官軍につき、将軍慶喜は敵前逃亡。薩摩は会津と組み、長州を京都から追い落とすが、後に長州と同盟。会津だけが貧乏籤を引く。
容保は京都方に嘆願書を何度も送ったにもかかわらず、官軍の討伐を受け、会津は女性、子供に至るまで奮戦し、敗北。その後も長州から会津は非情な扱いを受け続ける。
孝明帝に対しても容保は忠節を尽くし、帝も容保を頼みとされたことは歴史の皮肉というもの。この短編を読み返し、改めて歴史 -
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明治維新時の日本において、近代的司法制度の創設を一手に担った鬼才・江藤新平の伝記。肥前佐賀藩に生まれ、佐幕を是とする藩風の中、命がけで勤皇を主張する。倒幕後の新政府における江藤の活躍がこの小説の主題。
薩長が牛耳る政府にあって、江藤はもう一度乱を起こし自らが政府の実権を握ろうとしていた。「正義」だけが彼の全てであり、いっさいの腐敗を許さない性格だった。
政府に機構を創るという仕事を誰よりも高い能力でこなした江藤の凄まじいまでの仕事力。彼の暗躍する姿がよく読みとれる。江藤に限らずこの時代の男達は本当に仕事に対して誠実であり命がけだと感じた。大学生の時に一度読んだ本だが当時より深く理解できた -
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ネタバレ「戦争は天才、政治は痴呆」と言われた源義経の生涯を描く。
義経には日本人が好きな要素が詰まっている。義経はいくら頼朝に敵意をむき出しにされ、反逆者扱いされても、あくまで兄が自分を理解してくれるということを信じ抜いたことが、民衆の心の琴線に触れ同情を買った。本来一番の功労者として讃え称せられるべき立場であったにも関わらず、逆に「悪」として処刑された。本当の悪とは何なのだどうと言う言葉で締めくくられる。
兄に対する一途で向う見ずな感情や、政治のいろはの分からない、また理解しようとしない義経の少年っぽさ、それに似つかない、それまでの日本史にはあり得なかった戦術で平家を倒した天才的実力、また端正な