司馬遼太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
高田屋嘉兵衛が国後島の沖合で拿捕されて、ロシア領であるカムチャッカ半島へ連行される。ディアナ号での航海の間、そしてカムチャッカ半島で過ごす間に、リコルド少佐(艦長)と心を通わせる様が丁寧に描かれ、とても清々しく、文化や言葉を超えて友情を育んだこの二人をとても羨ましく思った。さらに、友情だけでなく、それぞれロシア、日本という、国同士の架け橋になろうと奮闘する様も素晴らしい。
お互いに言葉を知らなくても意思疎通できていくことは、私自身も丁度行った海外旅行で感じた。偶然、夜行バスで隣になった現地のおじさんとお互いにほとんど言葉は分からないが、少しの単語を理解して、楽しく話すことができた。単語や身振り手振り、顔の様子をみて、相手の話したいことを感じ取ろうとすれば、会話できるのだと思った。
ただ、日常会話ではなく、高度な外交的な話までできるほど交流できたリコルドと嘉兵衛は、私とは比べ物にならないほど、感受性に優れて人を理解するすべを知っていたのだと思う。見習いたい。
また、嘉兵衛はリコルド少佐とはこころを通い合わせたものの、その部下であるルゥンダコフ中尉は日本人に悪意を持っていた。この人のことについて書いた文は、この心持ちを私自身も持ちたいと思った。その一節を引用する。
人生の不自由の一つは、自分の監督者を自分で選べないことである。監督者が、識見なく、視野せまく、狭量でかつ小心であるということは、被監督者の日常を暗くし、ついには気が萎え、体まで弱るものだが、かといって相手に非があるわけでないために、これを憎むわけにもゆかない。
「災難と思え」と、嘉兵衛は、その配下たちにも言いきかせてきた。
本書のクライマックスは、リコルドと嘉兵衛の別れであるが、嘉兵衛が日本に戻ったときの奉行所からの扱いよりも、ディアナ号での扱いのほうがよいという矛盾に憤りを覚えた(当時の制度としては仕方ないとはいえ)。ディアナ号は水夫までが嘉兵衛を「タイショウ」と呼び、歓迎してくれることに、嘉兵衛はいつも胸が一杯になっただろう。もし、今の世の中に生きていたら、様々な国の人々との架け橋になったのではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
乃木希典。日露戦争で苦闘したこの第三軍司令官、陸軍大将は、輝ける英雄として称えられた。戦後は伯爵となり、学習院院長、軍事参議官、宮内省御用掛など数多くの栄誉を一身に受けた彼が明治帝の崩御に殉じて、その妻とともにみずからの命を断ったのはなぜか。〝軍神〟の内面に迫って、人間像を浮き彫りにした問題作。
”坂の上の雲“のサイドストーリーと言う印象で読み進めていった。坂の上の雲を読んでいる時は、第三軍に対して何をやっているんだと腹がたった。
この本を読んで、乃木希典という人は軍人としては能力は無かったかもしれないが、日本の武士道を体現したことで水師営での見事な会見を行い、日本国の評価を高めることができた。これは乃木希典だからこそ出来たことであろう。
明治天皇との信頼関係が強いことは知っていたが、昭和天皇と関わりが深かったことは新鮮な驚きだった。