司馬遼太郎のレビュー一覧
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ネタバレ兵庫でひとかどの海の男として認められた嘉兵衛さんは、創意工夫と度胸のある行動力で、ついに若くして自分の船を作るまでになりました。
江戸幕府もここにきて制度のひずみが顕著になり、農村での自給自足主義の建前の裏で各種商業が発達し、貨幣経済が確実に浸透してきて、商品や原料を運ぶ運送業の重要性もアップ。
ここでいちかばちかの大勝負をかける男気のあった人が、のちに大きな財を築き上げたんだね。
でも、嘉兵衛さんの努力と根性を読んでたら、これだけやらなきゃダメなんだなぁ…って思った。
生半可な気持ちじゃかえって地獄へ一直線。
それと、運もなければ話にならない。
人生って大変だけど、頑張ってみたいと思わせれく -
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ネタバレ本書は天皇、統帥権、仏教、神道、儒学など我が国にまつわるテーマとした短編コラム(1986年~1996年)をまとめたもので、日本人や日本をかたち作っている何かを探す意味で興味深い。
<印象深かった内容>
【第4巻】
(日本人の二十世紀)
・我が国の為政者は手の内(特に弱点)を明かさない-不正直は国を滅ぼすほどの力がある
・日露戦争の時は武士の気分がまだ残っており、軍人も外交官も武士的なリアリズムや職人的な合理主義があった(故に海軍、陸軍、外交においてロシアに一矢報いることができた)
・知識人に軍事的教養がないことが、第二次世界大戦に繋がる軍部の戦略を批判することもなく、軍部の気分に乗る -
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主人公の天堂晋助は架空の人物と。おそらくモデルもない。一子伝承の二天一流の継承者という。土の岡田以蔵、薩の田中新兵衛、肥後の川上彦斎(げんさい)、長の天堂晋助で人斬り四人男だなと龍馬に述回させている。
周りは司馬さん馴染みの実在千両役者の総覧騒乱。主人公が架空で自由であるから、物語はそれは自由自在だ。高杉、桂、龍馬、西郷、伊藤俊輔、井上聞多、勝海舟、近藤勇、土方歳三、小栗上野介、さらには剣祖としての宮本武蔵。
面白くないはずがない。虚構の中で実在役者に与える台詞に、司馬さんのそれぞれを主人公とした物語には書けなかった、推量の部分での本音がずけりと現れている様な。 -
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ネタバレこの作品は司馬遼太郎さんが月刊誌などで談話されたものがいくつも紹介されている。
「中央と地方」では現代社会、現代人の中央文化に危機を感じ、薄っぺらい主体性の無さを嘆いている。
かつて坂東武者達が縁者を頼りに京に行き、あってもなくても変わらぬような官位を欲しがり、そしてそれを故郷で権威として振りかざした。
だが次第に戦国大名のような力を持ったものが各地に台頭すると地方ごとに文化が生まれ、江戸期にはさらにそれが顕著に現れてくる。
だが明治維新でそれは崩壊し、約300年間培われた地方文化は薄れ、東京こそ正しいというような風潮を特に若者が抱いているのが現代かもしれない。
我々は坂東武者に戻ってしま -
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桜田門外の変から始まり、幕末の暗殺事件の連作になっている。歴史小説は要所に若かりし頃の偉人が出てくるから面白いが、本作はあまり知られていない人間が多く描かれている。
「土佐の夜雨」「逃げの小五郎」「死んでも死なぬ」の3編がなかなか面白かった。「死んでも死なぬ」には、小心者の伊藤俊輔(博文)が登場する。
「最後の攘夷志士」では、志士たちが倒幕のために攘夷思想を利用された末路で、少し切ない。
幕末小説を読んでいて面白いのは、のちの子爵だの男爵だのとカッコ付で書いてあったり、剣の腕はなんたら流の目録だのと紹介されるのがちんぷんかんぷんで、果たして凄いかどうかなかなか汲みきれないところ(笑)