司馬遼太郎のレビュー一覧

  • この国のかたち(六)

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    「明治の脾弱な国力で、この一戦(日露戦争の日本海海戦)のために国力を越えた大海軍を、もたざるをえなかった。問題は、それほどの規模の海軍を、その後も維持したことである。」

    撤退戦略から目を背けない文化がある国だったら、歴史も将来も大きく変わっているだろうに、とつくづく思う。

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    2014年12月18日
  • 韃靼疾風録 (下)

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    非常に素敵。
    わくわくして読めた。が、予備知識がなく読むと大変なのかもしれないと頭をよぎる。司馬遼太郎100冊読むとわくわくして読めます。
    特に呉三桂が門を開けろと言った瞬間と
    清軍が横から突撃する描写。

    よかった。

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    2015年07月15日
  • この国のかたち(四)

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    『日本の通弊というのは、為政者が手の内ーとくに弱点ーを国民に明かす修辞というか、さらにいえば勇気に乏しいことですね。この傾向は、ずっとのちまでつづきます。』
    『陸軍省や海軍省の省益がそれ(弱点を明かすこと)をさせなかったのでしょうな。官吏としての職業的利害と職業的面子が、しだいに自分の足もとから現実感覚をうしなわせ、精神主義に陥って行ったのでしょう。物事が合理的に考えられなくなる。』

    選挙前に読むと、なんか痛い。

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    2014年12月05日
  • この国のかたち(三)

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    最後の6巻まで読んでから書こうと思ったけど我慢できず。
    『船の船尾を艫(とも)という。船の船尾にむかってまっすぐに背後から吹いてくる風のことを”真艫(まとも)というのである。』
    シーカヤックという小舟と言えど、船乗りなので、こういう言葉の成り立ちは気になりますね。
    ちなみに小舟だと真艫=追い風への対処が一番難しい。
    なるほど、「マトモに漕げない」。
    綺麗にまとまりました!

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    2014年12月01日
  • 胡蝶の夢(四)

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    激動の時代に大いなる功績を残した人物の足跡を辿る。松本良順がそうした幕末小説のテンプレートに沿ったキャラクターとするならば、伊之助は独特の立ち位置に存在する男だ。目をみはる栄達をしたわけではないし、書き連ねられるのは、社交性に著しく欠けるため相手を苛立たせるというエピソードばかり。そんな伊之助も、歴史のうねりの中で、何がしかの役割を果たしている。作中で痛快なことを成し遂げるわけではないが、何だか自分の周りにももしかしたらいそうに思えて、伊之助のくだりになると少し和んだ気にさせられた。
    司馬遼太郎も、書き進めるに従って伊之助に最も感情移入したのかもしれない。『国盗物語』で一番人間味を感じたのが、

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    2014年11月30日
  • 翔ぶが如く(四)

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    ネタバレ

    グダグダの台湾出兵。第二次大戦の軍部の暴走はこの時に倣っているようだ。歴史に学ばないとこうなるのだ。


     台湾出兵は秀吉の頃とあまり変わらない海外遠征で、つくづく征韓論は時期尚早だったとわかる。


     学校の教科書だと、台湾出兵なんて2行程度で、薩摩士族への申し訳程度の出兵だとしか書いてない。もちろん興味もわかない。こんなにもグダグダだったなんて、この本を読まなければ一生知ることはなかっただろう。サンクス。


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    p28 佐賀の乱は大久保の餌食になった
     江藤新平の起こした佐賀の乱は、政府の根幹を揺るがすどころか、却って政府の結束を強めることになった。この乱のために、臨時的に明治

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    2014年11月20日
  • 菜の花の沖(一)

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    ネタバレ

    「童心を去るとは、どうやら社会の縦横の関係のなかでの自分の位置を思いさだめ、分際をまもり、身を慎み、いわば分別くさくなれということらしいが、嘉兵衛のなかでの大人はそういうものではなく、自分の世界をつくりだす者といったことのようだ。」

    淡路島の村で生まれた主人公。縄張り意識が強く、よそ者を強く排除する田舎の風習。それは今も変わらない。その中で、周囲から村八分にされ、ついには村を抜ける。兵庫で船乗りとして力をつけていく姿が力強い。

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    2014年11月13日
  • 新装版 播磨灘物語(3)

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    荒木村重による囚われの身から毛利攻めまでを描いたもの。
    信長には謀反と判断され官兵衛の息子を殺すよう言われた竹中半兵衛。しかし実際は殺さず生かしておくのだけど、このくだりがとても好き。
    なかなかNHKに追いつかない・・

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    2014年11月07日
  • 項羽と劉邦(中)

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    この巻では、あの「鴻門の会」の場面がある。
    項伯と張良との「侠」をいいことに、劉邦が項伯と義兄弟になりたがる場面、実に項伯が迷惑そうなのが笑える。
    でも、この場面、有名だからか、意外とさらりと終った感がある。

    張良と劉邦の関係、項羽と氾増の関係もとても興味深い。
    リーダーとブレーンは、人種が違うということなのだろうか。

    後半は韓信、蕭何、陳平などが登場。
    多士済々で・・・覚悟はしていたが、覚えるのは大変。
    よくぞまあ、司馬さんはこれらの人たちの個性を書き分けられたものだと感嘆する。

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    2014年11月01日
  • 菜の花の沖(四)

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    2014.10.26
    領土という概念。東洋というか、中国文化は人心掌握が、占領の決めてとなった。主観的で相対的。一方、西洋は、土地の支配が決めて。客観的で絶対的。ロシアと日本の千島領土は、明治初期に決められたが、こうした、文化、意識の違いがあったのだ。ましてや、嘉兵衛の時代に、領土意識などないであろう。

    嘉兵衛が幕府へと足を入れて行く。

    蝦夷の民によりよい生活を与えるという、使命感が、嘉兵衛の人生をどう変えるのか。

    そして、貨幣経済の発展も興味深い。

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    2014年10月26日
  • この国のかたち(六)

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    …巨星、堕つ。1996年2月12日、十年間続いた『文藝春秋』の巻頭随筆「この国のかたち」は、筆者の死をもって未完のまま終わることになった。…

    電車に乗って「さぁ最後の完だぞ!」と本書を手にとった瞬間に飛び込んできた文字列。裏表紙に記載されていた。とてもショックだった。司馬さんが亡くなられていたのは知っていたが、この本が絶筆になっていたとは…とても悲しくなった。呆然とした。なぜだか…

    1996年2月といえばわたしが役人を辞めて一年ほどフラフラして退職金を使い果たしてやっと仕事を始めた頃であった。それから18年。全く何をやっていたのか?ただ、生きてきた。ずいぶん思い悩んだが、まぁそれでよかった

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    2014年10月11日
  • この国のかたち(五)

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    神道や宋学についてまとめて書いてある。なので思想というものについて考えさせられた。
    宋学は宋の時代漢民族が自分は文明人(華)で、北方の異民族(蛮)に圧倒されて屈折した気分を何とか晴らしたいと考えだされた考えだったようだ。ものの考え方としては悪くはないだろう。どうせ考えるのなら気分が良くなるように考えたらいいと思うからだ。しかし、実態に合わない考え方をすると虚しい空論になる。頭の中だけが満足して生活は苦しくなる一方だから、当然滅びる。

    思想というものは気分から始まるのかもしれない。生きづらいと感じている気分をどうにかこうにか「いやこれでいいじゃないか!」にひっくり返すためになされる大変な営為な

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    2014年10月08日
  • 翔ぶが如く(二)

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    ネタバレ

    征韓論前夜の一部始終の歴史物語。西郷隆盛がモンモンモンモン…悶々悶々悶々悶々…ひとりで…。


     魚釣りに出かけてる。

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    p20  尺度は人の業
     人間の相克は、利害にもよる。しかし尺寸にもよる。人間の不幸は、人によって尺度の大小異なっていることである。

    p22  西郷の尺度
     西郷は征韓論という言葉を使ったことはない。遣韓論という言葉を常用した。あくまで西郷は使節として話し合いに行く。ただ、和解は無理な協議だから、自分の死を以て日本の、ひいてはアジアのために列強に対抗するアジアの連携を達成しようと考えていた。

    p24  西郷は好戦的か嫌戦的か
     「誰が戦を好むものか」⇔「道

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    2014年10月07日
  • この国のかたち(四)

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    司馬さんは日露戦争に勝ったあたりから日本人がリアリズムを失って地に足がつかなくなり、幻想に縋って生き延びようとし始めたから、国が滅んだとおっしゃる。しかも、夏目漱石は「三四郎」なかで三十有余年前にそれを予言していたと…

    わたしが、社会に出て悩んだことの一つに、自分の給料や仕事のリアリティーを感じるのが難しいということがあった。「こんなんで生きていていいのだろうか?」ずっとそう思っていて、今でもそう考えることがある。もしかすると、いまでもほとんどの日本人は幻想に縋って生きているのではないだろうか。リアリティーは脳が創るものだから、それも当たり前といえば当たり前かもしれないけど…あまりにも浮つい

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    2014年10月04日
  • この国のかたち(三)

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    どんどん面白くなっている。とまらない!もっともっとと読みたくなる。
    多分、司馬さんの文章を読み慣れてきたせいだとは思う。しかし、それにしてもわたしはものを知らない。特に字を識らない…とは言いながらもズンズン読んでいこう!

    昔の偉い人がたくさん出てくる。偉い人ってほんっとすごい!例えば東京帝国大学の土木工学の初代日本人教授だった古市公威という方なんかはとんでもない勢いで勉強されたみたいである。留学先のフランスでそのあまりの勉強ぶりに下宿の女主人があきれて、“公威、体をこわしますよ”と忠告すると、「わたしが一日休めば、日本は一日遅れるのです。」と言ったそうである。全開フルスロットルで生きていたの

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    2014年10月02日
  • この国のかたち(四)

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     歴史的事実の本質とは何か、明治維新など・・・一般的な解釈を検証しつつ司馬遼太郎の独特な視点で示してくれる。

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    2014年10月01日
  • この国のかたち(二)

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    やはり、読後に中身が思い出せないが読んでいる時は大変興味深い。どこかに残っているといいな。
    あっ!フランシスコ・ザビエルがバスク人だったというのを今思い出した。そんなことも書いてある本。
    そういう意味では縦横無尽が鍛えられる本でしょう。達人は融通無碍か?凡人には縋る縁が捉えられず記憶に留められない。係留できる私の脳内の体系が狭すぎるため。

    Mahalo

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    2014年09月28日
  • この国のかたち(一)

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    安倍内閣の内閣改造、ネット上に飛び交うヘイトスピーチ。この国はどうなっているのか?政権内部あるいはネット上のごく一部の現象だろうとは思うが、かなりうんざりして幻滅している。司馬さんは終戦の時に参謀本部が滅ぼしたこの国の愚かさにうんざりし、昔はそうじゃなかった。こんな愚かしさを生み出したものは何だったのかを知りたいと思ったと書かれている。
    今の私の気分にとてもマッチした、そういう考え方をしなければやりきれなくなるこの状況に読むべきであろう本のような気がする。全6巻。文字が大きいし行間もわりとあるので恐らく読めるだろう。
    この本を知ったのは、内田樹さんが中小企業の社長さんが読むべき本として推奨され

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    2014年09月28日
  • 街道をゆく 40

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    50年間日本に実行支配されたにも関わらず、台湾には親日家が多いのは何故なのか。という素朴な疑問があり手に取った一冊。

    大きな歴史的な流れはもちろん、ミクロな視点で台湾の歴史が、人々の言葉を通して語られているのが印象的だった。

    面白いのは、この紀行文が連載された当時、台湾はまさに歴史的な局面を迎えていたことで、巻末の当時の国家元首李登輝氏との対談もとても興味深い内容だった。

    司馬さんが、好意的な印象で綴る人物像は、読んでいて気持ちが良い。

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    2014年09月28日
  • 菜の花の沖(一)

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    2014.9.27
    高田屋嘉兵衛。爽やかな主人公。権力で圧迫感のある陸とは異なる、自由な海。権力構造から抜け出し、自由な海を舞台に、嘉兵衛が成長していく。
    司馬遼太郎が描写する青年の恋模様は、秀逸だね。淡い青春という感じがします。

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    2014年09月27日