司馬遼太郎のレビュー一覧
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全十巻を読み終えた。
実をいうと今回は初読ではなく再読である。
日本の歴史の中でも最大の転換となった明治維新を成した傑人たち、そしてその当人たちが意識せずに起こした維新の幕引きとなる西南戦争を描いた、この「翔ぶが如く」。
この作品は「小説」というだけではあらわし切れないものがあると感じている。史実、そして登場人物の機微、著者の所感と探究心。いってみれば「小説」でもあり「随筆」でもあり「歴史書」でもあるのではないかと感じてしまう。
このあたりが司馬さんの描いた「翔ぶが如く」のスケール大きさ、また、ちょうど良い細やかさなのだろう。
西郷隆盛、大久保利通、その他の登場人物の「己の正義」に心がつき動か -
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在野の不平分子を考慮した事実上大義のない征台を実施する。
しかし撤兵するためには、この征台を義のあったものと清国側に認めさせ、しかも派兵のための賠償金を清国側から出させるという力技をもってして外交に臨んだ大久保は、ある程度満足のいくかたちで終結させた。力技を建前上だけでも成功裡に導いた執拗さと周到さは見事といってよいだろう。
この明治がはじまって十年と経たない頃は、果たして維新の本来の目的は何だったのだろうかとも思わせられる時代だ。
国家が大きく動こうとするとき、大きく進歩しようとするときの舵取りは後の時代になってみないと正解は分からないのかも知れない。いや、もしかすると後の時代になっても分か -
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人生に目的を持とう。目的のために生きよう。
斎藤道三、織田信長の生き方からこんなに学ぶものがあるとは思わなかった。過去から学び、そして実行すること。
乞食になっても、将来に望みをもって生きる
自ら考え、工夫する。戦術転換をしたものが必ず勝つ
野望があるためだ。男の男たる所以は、野望の有無だ。
人の世は明日がわからない。というが、こういう、わけのわかったようなわからぬような、その実、生きるためになんの足しにもならない詠嘆思想はない。あす、何が来るか、ということは、理詰めで考え抜けばわかることだ
小九郎の人生には目的がある。目的があってこその人生だと思っている。生きる意味とは、その目的 -
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ネタバレ有能なリーダーと無能なリーダー、そんな対照的な二人の闘いの物語・中盤戦。
上巻では影も形もなかったですが、張良という人がいきなり登場します。
彼は劉邦を天下人に至らしめた名軍師で、楚漢では項羽と劉邦に次ぐ魅力的な人物であります。
この張良には、超大国を滅ぼしてしまった伝説の英雄・太公望呂尚の兵術書を謎の老人から授かったという、なんともドラマチックな伝説があります。
そのため、彼の戦術は呂尚に非常によく似ている、ということが、本書でも指摘されています。
宮城谷昌光さんの「太公望」という作品を読むとよく分かりますが、太公望はまさしく「準備の人」です。
戦ってから勝つのではなく、勝ってから戦う -
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「雑賀の舟鉄砲」
手柄をあげたら 極楽浄土に行けるという無欲な話。
宗教と若き城主夫妻。そのために死ねるか?
鶴がもってくる ホシサカナが 壁の味がする。
「女は遊べ物語」
手柄に対してお金のことをいうと 浅ましく思われる日本の風潮。
嫁が 浪費家で そのために一生懸念 手柄をあげようとする。
涙ぐましい話だが、嫁は 側女も手配してくれるとは。
秀吉の評価のしかたが良いなぁ。
「壁女守り」
家康の3人の女を お守りする オトコの話。
ふーむ。女とはじつに大変な生き物だ。
それをしみじみと感じさせる。
「雨おんな」
おなん。関ヶ原の闘いの前にであった
二人のサムライ。運は 武芸の差ではない