司馬遼太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
未だ箱根にたどりつかず、舞台は駿府と丸子。
義忠の子どもはまだ幼く、遠縁の今川新五郎範満が駿府城に居座って実質的に駿河の支配者となっている。
彼の後見は関東公方の扇谷上杉家。
今川の嫡子であり、伊勢家の血を引く竜王丸を守るため、早雲は駿河に行く…のだが、これが11年間も守備一辺倒なわけです。
竜王丸の命が奪われないよう、丸子の館に住まわせ警護する。
自分は江戸や鎌倉からの兵を駿河に入れないよう沼津の城に住み、関東各地の情報収集に余念がない。
生まれの良さだけで土地を治めることができない世の中になりつつある。
早雲はそれを見極め、急速に力をつけ始めた国人、地侍、そして農民を大切にするように竜王丸を教育する。
のはいいけれど、やはり対外的にはもっとパフォーマンスを見せた方がよいのではないかとじりじりする。
この時代の礼法を仕切る名家、今川家と伊勢家の血を引いた子なのだから、いくら弱体化しているとはいえ、正統性を強く訴えたら天皇のお墨付きくらいはもらえたのではないだろうか。
ましてやその後、早雲は小笠原家の娘を妻にするのである。
この三家が後ろ盾になれば、結構勝ち目はあったと思うんだけどなあ。
史実だからしょうがないか。
早雲の弓で敵の大将を斃し、無事竜王丸が守護として立つところでこの巻は了。
箱根は遠いなあ。
というか、今のところ早雲は竜王丸改め氏親を立てることに腐心して、自分が前面に出ることが考えていない。
でも後北条家はその後今川家と並ぶ戦国大名になるんだよね。
どこでどう道が分かれたのか。それとも繋がったままだったのか。
次が気になる。気になる。
この巻で気に入っているのは、太田道灌と早雲の交流。
互いを認め合いながら、敵味方でいる。
敵味方なのに礼を尽くして清廉な付き合いをしていた二人だが、私心のない道灌の器の大きさを恐れた主家が道灌を弑する。
正直なだけでは生き残れないのだよね。
そう意味で早雲はしたたか。 -
Posted by ブクログ
いつ始まったのかもわからない、なぜ始まったのかもわからない応仁の乱に翻弄される京の人々。
天皇の側近、伊勢氏の屋敷の片隅に小屋を建て、鞍作りで細々と暮らしを立てている新九郎。
彼の立身出世物語のはずなのだが、10年ほどの歳が流れて、今のところまだ出世はしておらず、箱根にもたどりついていない。
上巻の主役は応仁の乱だったかもしれない。
今川家の嫡子を生んだ妹の千萱に呼ばれ、駿府へと向かうところで次巻に続く。
頭が切れ、肝が据わっているけれども、所詮本家本流にはなれない身分。
欲を持たず、目立つことなく、ひょうひょうと生きる新九郎の内心の思いは、本人にもわからない。
そんな彼がどうやって歴史の表舞台に躍り出てくるのか。
続きが楽しみ。 -
Posted by ブクログ
この巻では、「神道」、「鉄」について多くが書かれている。
古のこの国の人々は、自分たちが生きていく、また生活していく上で「自分たちを生かしてくれるもの」、即ち、大地や空、山や川、海などの自然こそが最も尊い存在である事実を感じ、奉って来たのだろう。
神道は、その思想を興した者を崇めるわけでなく、また本尊といった物なども無い。
自分たちを生かしてくれる自然、そして、その自然が実らせる豊かさこそ、唯一崇高なものだということなのだろうか。
そして、「鉄」であるが、「鉄」が出現したこと、精錬技術の向上が、生活と文化、農や工などの労働に対しても、大きな進歩の一役を担ったことは言うまでもない。