司馬遼太郎のレビュー一覧
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竜馬小説の傑作
坂本竜馬の物語として、これほどの傑作小説はないであろう。幕末時代に竜馬のような異端者がいなければ、今の日本の形は大きく様変わりしていたかもしれない。一人の男としてこれだけの働きをやってのけただけの活力や行動力は常々見習いたい。
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船乗り高田屋嘉兵衛が幼少の頃から話は始まる。当時の船事情、江戸の文化を細かく描写、成長・成功していく主人公を追うのは楽しい。途中、4巻、5巻では「 高田屋嘉兵衛」が殆ど出てこなくなり、ロシア事情、当時の日本との交流が書かれる。そして最終巻でゴローニンの話。結局著者は「ゴローニン事件」を扱いたかったのだなと分かる。
他の作品より物語性が弱く、その代わり時代背景・文化事情が多く語られている点では違いを感じる。(私も物語らない4巻、巻は読むのが辛かった)
一代で繁栄を築いた男の強さを感じる。
【学】
要するに生産性の面での江戸の能力の低さが菱垣廻船を発達させた。江戸初期から中期にかけて菱垣廻船 -
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1961年に発表された小説だそうです。2016年現在から振り返ると、なんと55年前...。
歴史小説、時代小説、司馬遼太郎さんは、古くならなくてトクですね。
文庫本1冊、500頁くらいの小説。
主人公は長宗我部盛親さん、という人です。
戦国時代に、四国の覇者となった長宗我部元親という人がいまして、その人の跡取り。息子さんです。
ざっくり言うと、関ヶ原の直前に独裁者だった親父さんが亡くなってしまいまして、若くして土佐一国の領主になりました。
だけど、お家騒動をばたばたしているうちに、関ヶ原の戦いで家康側に着くチャンスを逃してしまい。
消去法でなんとなく石田三成一派に参加。
戦闘に参加できないま -
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司馬遼太郎さんの連作短編集。数十年ぶり?の再読。
題名通り「豊臣家の人々」。
〇秀吉の甥~豊臣秀次
〇秀吉の妻の甥~小早川秀秋
〇秀吉の養子~宇喜田秀家
〇秀吉の妻~北政所
〇秀吉の弟~豊臣秀長
〇秀吉の妹~旭姫
〇秀吉の養子(家康の実子)~結城秀康
〇秀吉の養子(天皇の弟)~八条宮
〇秀吉の側室&息子~淀殿・その子
という構成になっています。
司馬遼太郎さんは、とても読み易く面白い歴史小説を書く人ですが、わけても秀吉はお気に入りです。
「新史太閤記」を読むと、天下統一寸前くらいまでの秀吉が活き活きと描かれています。
その上で「功名が辻」とか、秀吉の死までの流れは良く判ります。
更に、「 -
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久し振りに読んだ司馬遼太郎。
北条早雲はどうやらすごい人らしい、ということで以前から読んでみたかったので。
伊勢家の末流として京の中枢近くで応仁の乱を経験した新九郎(早雲)は、足利政権や支配層に対し、諦めと絶望感を抱いていた。
その早雲が目指した国の形とは――。
最近、読みやすいイマドキ歴史小説を読むことが多かったので、ちょいちょい差し挟んでくる時代背景の説明が、まだるっこしい。
全3巻あるこの小説も、解説部分を切り詰めれば、きっと上下2巻くらいでおさまるのではないかと思われます。
が、結局、それらの背景説明が、読み手の想像力の助けとなり、物語に厚みと説得力を持たせるということがわかって -
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ネタバレ龍野藩の家祖、脇坂安治のことを知るために収録の「貂の皮」を再読。当時豊臣秀吉の家臣であった安治が丹波で400年続く名門で、丹波の赤鬼と恐れられた赤井直正の護る黒井城へ、降城の使者として単身乗り込む。説得は失敗するが、直正が安治の勇気に感じて、奇瑞をもたらす家宝の雌の貂の皮を贈る。しかし貂の皮は雌雄あったため、安治が雄も所望すると、力づくということになり、翌朝、貂の皮の指物をした直正が城門を開いて討って出た…。
非常におもしろい作品。でも黒井城の地元の資料では直正は病死となっています。司馬遼太郎のねた本は江戸時代に脇坂家が安治の宣伝として作成したようです。しかしその後安治は大名となり、子孫も -
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ネタバレ・幕末の長岡藩で非凡の才を発揮しつつも時勢を見極められずに散った河井継之助を描いた「英雄児」
・英国人殺害事件に関与した海援隊隊士菅野覚兵衛と佐々木栄を中心に幕末の日英関係を描いた「慶応長崎事件」
・江戸末期から明治初期を生きた、非凡の才を持った血気盛んな絵師、田崎草雲の生涯「喧嘩草雲」
・奥州の覇者正宗が歴史に残した足跡を、彼の持つ非凡な詩歌の才と共に描いた「馬上少年過ぐ」
・一介の町医者の身から伊予宇和島の命運を握るまでに栄達し、数奇な人生を送った山田重庵を描いた「重庵の転々」
・大阪の陣の後に武士になることを嘱望した大須賀満左衛門の奮闘を描く「城の怪」
・賤ヶ岳七本槍の武将として武名を轟 -
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ネタバレ「藩の天地は俗論が満ちている」と、晋作は言い、いきなり「やるかね」と、言った。人を説得するにしても、晋作という男は鳥の声ほどの短さでしか言わない。あとは相手の目をじっと見、その精神から立ちのぼる気のうごきをみるだけである。
山県は、天性、農民のように自重ずきで、軽快な行動力をもっていない。かんじんの軍略の才も二流で、志士であるために多少は必要な教養も歌学のほかになく、さらに歴史像をみる目も聴衆の未来を洞察するような目もなかった。ただ一つ、かれは人事の才があった。自分の隊内権力を安定させるための配慮はじつにみごとであり、この才があるがために隊士も自然この軍監こそ奇兵隊秩序の中心だとおもうように -
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ネタバレ信長には、稀有な性格がある。人間を機能としてしか見ないことだ。織田軍団を強化し、他国を掠め、ついには天下を取る、という利ぎすました剣の尖のようにするどいこの「目的」のためにかれは親類縁者、家来のすべてを凝集しようとしていた。かれら――といっても、彼等の肉体を信長は凝集しようとしているのではない。かれらの門地でもない。かれらの血統でもない。かれらの父の名声でもない。信長にとってはそういう「属性」はなんの意味もなかった。
機能である。
その男は何が出来るか、どれほど出来るか、という能力だけで部下を使い、抜擢し、ときには除外し、ひどいばあいは追放したり殺したりした。すさまじい人事である。