司馬遼太郎のレビュー一覧

  • 花神(上)

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    ネタバレ

    「しかし私は先刻、自分で名乗っております」
    「それは間違っている」
    と奥山静寂はいった。
    「自分で名乗ったからといって、私は信用しない。私の目で人相風体を見、これならたしかに洪庵先生のいわれり村田蔵六にちがいないと推量がついたうえで当人にたしかめてみるのだ。それが物事の窮理(科学)というものである」

    「お前さんも頓狂な男だな」
    敬作は、蔵六の人柄が、一見したところまったくちがっていることにちかごろ気づきはじめていた。敬作は
    「頓狂」
    ということばがすきで、ふだんしきりにつかっている。オッチョコチョイというほどの意味だろうが、敬作の妙なところは、親に孝、君に忠という倫理綱目と同列くらいの美徳に

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    2019年12月27日
  • 竜馬がゆく(四)

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    司馬遼太郎の長編時代小説の4巻目

    竜馬は勝海舟とともに着実に海軍学校の立ち上げを進めていく。一方で、武市半平太は土佐藩を裏で操っていたが、長州藩の京都での失脚を機についに山内容堂に動きを抑え込まれてしまう。4巻の1番の読みどころであろう、武市らの処刑は本当に切なくて、無念だと感じた。

    夢が進み続ける者と夢がついえる者、失脚し再起を図る者と色々な人物・組織の変化が読み取れる今作であった。

    主人公の竜馬は、天命に全うすべく自分がすべきことを着実にこなしており、その姿は脚色があるといえ立派だなと思う。また、色恋ともいえる、さな子やお田鶴様、おりょうとの関係の深まりも別の緊張を与えてくれる。

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    2020年05月17日
  • 坂の上の雲(五)

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    ネタバレ

    組織内部の争いにエネルギーを取られたり、
    必要な情報を入手しなかったり、
    強すぎる先入観で判断したり、
    それが勝敗につながっている。

    しかし今より厳しい自然環境で、設備も限られ、情報入手もかなり困難な時代ならしょうがない判断だったのだろうかとも思う。

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    2022年02月13日
  • 坂の上の雲(四)

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    ネタバレ

    世の中の状況を常に収集し、冷静な判断をしていく事が重要。成功に慢心せず常に新しい世の中の動向を役立てて行かないと置いていかれる。

    日露戦争の中身がこれほどまでの犠牲を払っていた事は知らなかった。歴史の中の一つ一つの出来事に様々な背景がある事を改めて感じた。

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    2022年02月13日
  • 竜馬がゆく(三)

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    ネタバレ

    司馬遼太郎の長編時代小説の3巻目

    今作で歴史上で最重要人物ともいえる勝海舟,おりょうと出会うことになる.勝海舟との出会いをきっかけに龍馬が急速に商船会社を作っていくシナリオへ足を進めている一方で,薩長土はそれぞれ討幕のために過激化していくのが対照的だった.特に武市半平太との亀裂というか思想の違いが色濃くなってきているのがある意味歴史の明暗を分けているのかと感じさせられた.

    3巻はかなり話の脱線というか逸話の挿入が多かった.確かに面白いけど多少展開の悪さが否めない.だが,一貫して表現の多様性は保っていてどんどんと読み進められつつ情景が容易に浮かび上がる仕上がりになっていた.

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    2020年04月29日
  • 新装版 最後の伊賀者

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    恐らくいずれも初期の(梟の城の頃の)作品でしょうね。当然ながら、再読(何回目でしょうか)です。
    名前のように最初の三篇がこの時代に流行った忍者物。いささか古臭さ(荒唐無稽さ)は感じさせますが、なかなかです。「外法仏」は密教の修法を題材にした作品で、ある意味忍者物に通じるものがあります。「天明の絵師」「蘆雪を殺す」「けろりの道頓」はいずれも実在の人物をベースにした歴史物です。
    何れにせよ、司馬史観などという物が入らない、純粋な物語としての面白さを目指した作品です。若さゆえの粗さもありますが、後期の長大な作品のような説教臭さがない分、読みやすい作品です。

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    2017年10月30日
  • 竜馬がゆく(二)

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    ネタバレ

    司馬遼太郎の長編時代小説の2巻目

    剣術から政治に関心を持ち出した時代を描いている.
    特に井伊直弼や吉田東洋といった幕府の人間が次々と倒れていき,時代の変化を物語っていた.
    水原播磨介の護衛から竜馬の思想が剣術から国を動かす思いへ少しずつシフトしていったのが面白かった.また,思想の変化から生涯の別れを告げる人が出てきたのも時代性を感じ,切なく思えた.竜馬の親族が竜馬の脱藩のために後に命を落とすことになることも憐れみを感じた.

    司馬遼太郎が歴史小説を書くにあたり史実とか文献を入念にリサーチして書き上げていることに改めて思った.所々作者の解説を見ながらなるほどと当時の情景が頭の中で広がった.その

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    2020年03月21日
  • 世に棲む日日(三)

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    ネタバレ

    長州藩や高杉晋作が色々な出来事を経るたびに攘夷・佐幕・開国と立場がコロコロ変わっていくのが興味深い。また奇兵隊を作った高杉晋作が、自分のために奇兵隊を使わず、他の人間に運用を任せていたという点も興味深い。幕末を経て近代の日本の国家ができるまで、色々な人間が関わるため、日本の細かい歴史を知る点では非常に興味深く読むことが出来た。攘夷・佐幕・開国と揺れに揺れた長州藩が、最終巻でどうなっていくのか?。引き続き読んでいきたいと思う。

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    2017年10月11日
  • 義経(下)

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    義仲の滅亡から一ノ谷、矢島、壇ノ浦の戦いを経て義経の滅亡までを描く下巻。義経の戦における才能と裏腹に政治的才能も情勢を見極める事ができる家臣もなく、やがて落ちぶれていく過程が上手く描かれている。物語のきっかけとなる政治家の行家とうまく折り合えばと考えるが、それにしても歴史というものは際どい所で成り立っているものか。
    終盤はかなり急ぎ足で締めくくっており、その後の頼朝の状況や義経の敗走のエピソード、安宅の関での弁慶との勧進帳の逸話も触れることなし。弁慶は出会いこそ劇的に描かれているが活躍の場があまりなく残念。
    法王のあまりの俗人的なところは宮内庁あたりから文句が出そうな描かれ方で、ある意味人間臭

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    2017年10月09日
  • 街道をゆく 2

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    暫く前に読んだ台湾紀行に続いてのこのシリーズ。今から約45年も前、もちろん軍事政権だった時代に韓国に渡って様々な人たちなち触れながらも冷静に文化を見つめる眼差しの温和だけれども眼光の鋭さにはドキドキする。

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    2017年09月30日
  • 功名が辻(三)

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    ネタバレ

    秀吉の晩年と、その後狡猾に動く家康の話。
    日本史ほんとに知らないから、たまに知ってる名前が出てくると「うわぁっ」となる(笑)
    板垣退助キター!みたいな(笑)

    秀吉の晩年は、なんとも切ない。天下を取ると人は変わるんだなー。
    にしても、家康の堅実さよ。小者っぽいのにその後あの江戸幕府を作るんだから、人って、歴史って面白い。

    一豊と千代の夫婦愛にもほっこりしつつ、最終巻に参ります。

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    2017年09月26日
  • 世に棲む日日(二)

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    ネタバレ

    松下村塾の頭吉田松陰から幕末攘夷運動の先駆けとなった高杉晋作へと主役が交代する。松陰は理詰めで攘夷論を唱えたのに対し、晋作は外(外国)を見て、徳川幕府の倒幕、攘夷を決意する。また晋作は戦いを起こし新しい秩序を作ろうとする俗にいう「破壊者」なのかなと読んでいて感じた。この辺は封建制から近代にどのようにして移り変わったのか自分の中でとても興味深い所である。引き続き、物語の続きを読んでいきたいと思う。

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    2017年09月23日
  • 功名が辻(二)

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    ネタバレ

    第二巻。
    前半は戦の場面が多くてちょっと食傷気味だけど、秀吉が暴君へと変化する後半は怒涛の展開。
    ほんっと日本史全然知らないから秀吉の後継者をめぐってこんな争いがあったとはなーと興味深く読んでいました。

    そして家康の狡猾さよ。
    秀吉と家康とのやり取りがなかなかの見物。歴史の教科書だとここまで細かくはわからないもんなぁ。
    時代小説の真髄を見た気がする。

    そんな血生臭い世界での伊右衛門と千代とのやり取りが何ともほっこり。
    もちろんほっこりできないシーンもあるんだけど、なんだかんだ言いながら仲良し夫婦だなぁとホッとできる。

    時間では豊臣から徳川に政権が変わるのかな? 引き続き歴史の勉強込で楽し

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    2017年09月14日
  • 新装版 俄 浪華遊侠伝(下)

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    この位、破天荒でないと歴史に名
    が残らないのだろうなぁ。いつ死んでもおかしくない生き方。数人分の人生を送ったとしか言いようがない。そこで、名士、奇人と出会うのだろう。

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    2017年09月12日
  • 義経(上)

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    今から約1000年前の時代ではあるが大方史実に則ったものなのでしょう。もやもやした歴史知識が明確になり、相変わらず司馬作品は読後の充実感があります。平安から鎌倉時代は激乱の時代だったのですね。皇室も含めとても節操なく、道徳心や法律が育っていない時代ならではの展開に驚きます。司馬の作品は人物のセリフはすごく簡素に、心情はすごく深く描くもので、とても気に入っています。思慮ある弁慶の下巻での活躍が楽しみです。

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    2017年09月09日
  • 新装版 俄 浪華遊侠伝(上)

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    破天荒で、いつ死んでもおかしくない。でも、愛嬌があり、憎めない。こんなキャラが、歴史に名を残す幕末期。面白い。

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    2017年09月09日
  • 手掘り日本史

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    タイトルに惹かれ購入。「手掘り」とは史実の根底に流れる思想に左右されず、歴史をフラットにみる目。であればこそ、著者の歴史小説は面白いのだと再確認。「竜馬がゆく」「義経」をわくわくしながら読んだが、改めて読み直すと新たな発見があるかもしれない。残念ながら聞き手の評論家の問い掛けは、策士策に溺れると言うか舞い上がり過ぎなリードとなっていて辟易。そんな問い掛けに判りやすく答える司馬氏は流石だった。

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    2017年08月29日
  • 城塞(上)

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    どのようにして大坂の陣に至るのか、という経緯をじっくり描いている。
    次巻の冒頭から真田信繁などが大坂から声を掛けられてとなるので、それまでの話になる。
    この巻では有名な五人衆などは影も形もない。
    前哨戦も前哨戦なので話は静かに進んでいく。家康方の緻密な政治工作や、豊臣方の道理に依った若干現実離れした考え方など、互いのスタンスの違いがよく描かれている。
    派手な動きや人物が出ないので、小幡官兵衛が実質主人公として物語らしく動き、家康サイドと豊臣サイドの思惑の間を行き来する。
    この官兵衛、どことなく国盗り物語の道三とキャラが被っている(笑)本人の才覚と大胆さと女を使って、情報収集・工作という役割。

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    2017年08月22日
  • 世に棲む日日(二)

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    上海行きの幕府の人選が謎だ。「菜の花の沖」での蝦夷経営の時と随分違う印象。
    高杉晋作が革命思想に目覚めていく様が面白い。

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    2017年08月06日
  • ビジネスエリートの新論語

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    良書。
    司馬遼太郎の意外な作品。だけど、司馬遼太郎らしい作品。歴史上の名書を知らなければ書けない。

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    2017年07月24日