司馬遼太郎のレビュー一覧
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NHKの吉田直哉氏が退職の制作のためにと、司馬遼太郎に持ち込んだ「モンゴロイド家の人々」という企画が発展して「太郎の国の物語」というタイトルになって、NHKでの「幻の放映」と言われる司馬遼太郎が出演した貴重な作品となった。
それが出版され、タイトルも「明治という国家(上下)」になった。
司馬遼太郎は「いまさら、テレビという人前に出るなどは、自分の節制のゆるみ―老化である―としかおもえないが、しかし少年(*吉田直哉氏のこと)には抗しがたかった」と恥じて(実際は照れ?)いる。
内容は明治という時代を、「江戸時代からの遺産」「青写真なしの新国家」「廃藩置県―第2の革命」「勝海舟」「サムライの終 -
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私学党の決起による西南戦争勃発からその激戦を経て薩摩軍の宮崎地方への潰走までの第9巻。西南戦争の生々しい経緯が様々な資料を元に描かれていてまさに歴史資料の感かある。
桐野、篠原、桐野等幹部の無能、と言うよりは薩摩隼人気質と、西郷の沈黙が事態を悪化させていく。村田新八や永山弥一郎のような逸材を含む多数の民を犠牲にしながら。西郷は薩摩隼人が死にゆく原因を自ら作っていることになんの呵責もなかったのか。その存在だけが薩摩軍の一部幹部大いなる価値を生み出すだけである意味において大罪人とも考える。銅像建立までの経緯に興味が湧く。
不謹慎だけど、戦争描写は政治的駆け引きと心理に比べて読み応えがあります。 -
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いよいよとと言うかようやくと言うか、西南戦争が勃発し、高瀬での第三次開戦までの第8巻。相変わらず小説の体は成しているが、作者の歴史研究の成果物的な様相が濃いです。決起に至った群衆心理がわかりやすく描かれています。
そしてこの巻以前の、やや退屈な登場人物の心理描写中心の展開から一転し、興味をそそる開戦の展開に。
しかしながら薩軍の幹部達は人間的魅力が乏しい上、愚策を展開してしまい、読み進める上で虚しいものを感じる。戦いの結末を知りつつなのでことさらなのかも。薩軍目線ではなく官軍目線で読みたくなりますね。
西郷隆盛と言う人物は愚物として描かれており、銅像まで立てら皆が尊敬する人物とはかけ離れて不思 -
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神風連熊本鎮台襲撃、萩の前原一誠決起から、西南戦争に向けて西郷が動くまでの第7巻。
変わらず進行が遅く途中余談が過ぎるところもあり間延び感は否めないが、その当時の空気感や、人物の心理をを細かく描写しており歴史資料としてとても貴重たと思われる。特に筆者が登場人物の子孫に直接取材した内容を織り交ぜ、執筆時点でしか得られない内容となっており、そういう意味でもとても貴重な一遍と感じる。西郷は、事象の原因的な存在で描くと前の巻で筆者が書いていたが、維新後の西郷は自分が思考し行動することを本当に止めてしまっているようで、西郷という人物感が大きく変わってしまいます。西郷が血気盛んな薩摩隼人を重用したのが西南 -
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とにかく長く、特に原文表記の箇所などは流し読みしてしまった所も多い。それでも読み終わってみると、維新後10年の激動の余韻の一部に触れられた感がある。
日本史の授業において、西郷隆盛や西南戦争については、その歴史的意義とは裏腹にそこまで大きくは取り上げられない。それは、当時の人々にとっての西郷隆盛という人物の持つ神話性や、薩摩藩固有の価値観、西郷と大久保の個人的感情など、幾多の事物が絡み合って勃発した西南戦争に至るまでの過程を語るのは困難の極みであることの表れなのだろう。
武士の時代と近代国家の血生臭いぶつかり合いを丁寧に描き切った巨作。 -
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大久保利通が北京に談判に行くところから宮崎八郎が評論新聞社に入社するまでの第5巻。相変わらず進行が遅く娯楽読み物というより歴史教科書といった体です。
前半の大久保外交は交渉力が凄いですね。ことを優位にすすめるには多弁にならず我慢する駆け引きも大事なのかな。胆力がかなり必要で常人には出来かねるでしょうけど。
宮崎八郎の話は余談かと思って読み進めるとルソーの民役論と中江兆民に繋がるのでもはや新展開の様相で、西郷隆盛は出番なし。
専制政治、共和制政治、元老院、三権分立と、終盤は政治の勉強モードとなりしんどく感じられたが、読後感は知的好奇心を満たして悪くないです。 -
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美濃の蝮・斎藤道三が義理の息子・義龍のクーデターの前に倒れ物語の主役は信長・光秀へ。
かつて野望のために利用した土岐家の血そして自らが築き上げた軍勢と対峙し散っていった道三の姿に乱世の梟雄としての意地と風雅を愛したこの男ならではの美学を感じずにはいられない。
その革新性とリアリズムは後継者と見定めた娘婿・織田信長へと、教養と知性の深さは幼少期より薫陶した明智光秀へと受け継がれていく。
桶狭間の戦い、美濃の攻略と覇道を進む信長、放浪の身から室町幕府の再興を志す光秀。
道三の相反する個性を体現した二人がどのように交わり、ぶつかり、「本能寺の変」に繋がっていくのか。
私事だが以前住んでいた場所の近く -
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美濃において国主・土岐頼芸の信頼を得て着実に力を高めていく庄九郎。腐敗と内紛、侵略の危機を見事に乗りこなしついには国を「盗る」。
前巻は才気と切れ味で活路を見出す印象のあった庄九郎が洞察力と胆力を身に付け、周到に狡猾に美濃を飲み込んでいく。まさしく「蝮」の道三そのもの。
ライバル・織田信秀との知恵比べやこれまでの常識を覆す自由市場の建設。充実の時を迎えながらも「天下」の野望を達成するには残り時間がないことを自覚する庄九郎にこれまで見られなかった弱さが見え隠れし哀愁ある姿がなんとも切ない。
その野望と理想を受け継ぎ体現するのがしのぎを削った信秀の子・信長というのがまた歴史の皮肉でありロマン。 -
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幕末の4大名(土佐の山内容堂・薩摩の島津久光・肥前の鍋島閑叟、そして、宇和島の伊達宗城)をとりあげているが、一番面白かった大名は科学かぶれで傑出した頭脳を持つ肥前の妖怪でした(明治維新後数年で亡くなったのはほんと勿体ない)。伊達の黒船の主役は下賤の平民嘉蔵ですが、司馬遼太郎の作品は平民を描かせた方が史実の拘束を受けないぶん自由度が高く面白いです。
他方、きつね馬は島津久光の無能ぶりを書いているので、今後、西郷隆盛と大久保利通は大河ドラマでえらい苦労させられるんだろうなあと思い溜息ひとつ。酔って候は以前大河ドラマの龍馬伝を見てたので新発見もなく特に普通な感じ -
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真田幸村登場から、大阪冬の陣、そして夏の陣に差し掛かるまでの中巻。この巻から読み始めてもあまり違和感なく楽しめそう。
作者が豊臣方の目線で描いていることを差し引いても、家康の上方への謀略とそれに伴う“むごい仕打ち”が凄まじい。既に寿命がつきかけている年齢に達しているとはいえ、跡取りのため、近親のため、徳川100年のための執念。悪名間違いなしの騙し行為を知り、家康を悪い意味で思いを新たにしました。
物語の中で唯一中立的な思考で登場する曲者、小幡勘兵衛の思考も読者目線で興味深いし、幸村の痛快な知略、後藤又兵衛の大らかな言動も人生訓となりそう。
豊臣方の淀殿始め女史共の不甲斐なさと、それぞれの人物像 -
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ネタバレ長曾我部元親について改めて知ろうと思い再読しました。最初に読んだのが文春文庫の旧版第9刷、1980年の学生時代でした。今更ながら司馬遼太郎は冒頭から面白い!岐阜城下で一番の美人とうわさの菜々が、土佐の元親に輿入れする話は笑ってしまいます。菜々は後に明智光秀の重臣となる斎藤利三の娘(史実は利三の兄、石谷頼辰の義理の妹らしいですが)として生まれ、信長がまだ天下布武に遠く、元親も土佐一国すら切り取り途中の時期に、遠交近攻策の政略結婚に嬉々として嫁ぎます。隣家の光秀が縁談を持ち込み、信長も菜々に立派な嫁入り仕度を指示し、秀吉も祝賀に訪問と役者が揃います。
司馬遼太郎はいつもの様に、長曾我部氏や本拠