司馬遼太郎のレビュー一覧
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何度目かの再読。維新から明治新政府=近代国家成立と、安易に捉えがちだが、西郷の西南戦争ひとつを取っても内戦とは言え新政府は死力を尽くした上の薄氷勝利。廃刀令や版籍奉還・廃藩置県で武士階級を取っ払い、富国強兵の名の下、「中央集権国家」の樹立を目指し、近代国家の象徴とも言うべき「大日本帝国憲法発布」まで、維新から僅か22年。260年間の鎖国から目覚めて以降、にわかに外国語を学び会得した付け焼刃のコミュニケーションで他国の政治・経済・憲法・法律を学び、憲法という国家運営の支柱を創出した。僕はこの一連の行為に日本人として強い誇りを持つ。ゆえに改革を謳う政治家とついつい比較してしまう。時代変われど改革の
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p.45 高杉の自己評価を受けて
「ちょうど酒をまだ入れていない瓢箪のようで、尻の据わりもわるく、またしめくくりも無い。いうならば、江戸っ子がいういわゆるゴロツキ野郎なるものか」と、おもしろおかしく自分を嘲っているが、かといって自己嫌悪でもなく、虚無思想の徒でもなく、また絶望という気分に自己愛の甘美さを見出す男でもなかった。かれには元来、絶望という感覚がなかった。なかったのは、天成なのか、または現実を大肯定する儒教によってその精神を形成していたからか、それとも前途に絶望を感ずるのは知恵のないあほうがみずから掘るおとし穴だと思っていたのか、どうやら後者らしい。かれの当時、絶望という日本語がなかっ -
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ネタバレ大坂の冬の陣・夏の陣を、戦が始まるきっかけから大坂城落城まで描いた歴史小説。
2016年大河ドラマ「真田丸」の予習として読んだ。
主人公は小幡勘兵衛という牢人で、後に軍学者となる人物。彼は、戦の表舞台には立っていないが、徳川方の間諜として豊臣方に入り込んでいた人物であるため、両者を行き来しつつ狂言回しとして物語を進めていく。でも、途中で時々、全く登場しなくなり、誰が主人公だっけ?となることも。司馬小説ではよくあることだけど(いわゆる「余談だが現象」)。
たまに勘兵衛が、恋人お夏のために豊臣方に肩入れして徳川を裏切りそうになり、その場面だけはグッとくるものがあるのだけど、最終的には打算と私利私 -
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ネタバレ大坂の冬の陣・夏の陣を、戦が始まるきっかけから大坂城落城まで描いた歴史小説。
2016年大河ドラマ「真田丸」の予習として読んだ。
主人公は小幡勘兵衛という牢人で、後に軍学者となる人物。彼は、戦の表舞台には立っていないが、徳川方の間諜として豊臣方に入り込んでいた人物であるため、両者を行き来しつつ狂言回しとして物語を進めていく。でも、途中で時々、全く登場しなくなり、誰が主人公だっけ?となることも。司馬小説ではよくあることだけど(いわゆる「余談だが現象」)。
たまに勘兵衛が、恋人お夏のために豊臣方に肩入れして徳川を裏切りそうになり、その場面だけはグッとくるものがあるのだけど、最終的には打算と私利私 -
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司馬遼太郎が昭和30年に出したサラリーマンについてのエッセイ。当時は福田定一という本名名義だったとか。歴史上の名言を一言上げた後、サラリーマンに関する考察を述べる形式の前半が主。後半に自身が新聞記者になるまでの経緯を同僚・先輩に絡めての話を掲載。後に日本史を中心にした歴史小説の大家になった人だが、出てくる名言はむしろ西洋の名句か当時の近現代のそれらばかり。彼の教養がいかに凄いか驚かされる。またさらにサラリーマンに関する諸考察は2017年現在においても思い当たるものばかりで全く色褪せない。短い彼のサラリーマン生活は苦悩であり、そこから出てきたものだという。そう。サラリーマンは実力のそれより運か運
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司馬遼太郎さんの、エッセイ集。
電子書籍で読んだのですが、まず不満があって。それぞれの文章の初出がどこにも明記されていない。
まあ、良いのですけど、やっぱり良くない。気持ち悪い。明記して欲しいなあ、と思います。
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僕は司馬遼太郎さんは好きなので。
エッセイや旅行記や対談本なども、基本、好きです。
そんなにハズレがありません。
その代わり、もう随分読んでいるので。新鮮味は特にありません。
それでも時折、司馬遼太郎さんの文章というか、言葉が読みたくなります。
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いろいろな文章が入っていますが、まあ、いちばん印象に残るのは、
司馬さん自身が第二次大戦の末期に陸軍兵、それも戦車の下士官とし -
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西南戦争の終結から、翌年の大久保利通さんの暗殺まで。
大久保さんが殺された翌年に大久保さんの犬だった川路利良(警察にとってはエラい人)も病死していました。
司馬さんの本は小説というよりも研究論文なので、とてもお勉強になりました。
ちゃんと反対意見なども載せているから、それほど偏っているとも思わない。
ただ、この本を読んで西郷隆盛さんって人がますますわからなくなったよ。
確かに討幕のときは大きな仕事をしたんだろうけれど、その後は同郷の仲間ばかりを依怙贔屓して、目の前の自分や仲間に関わる問題にのみ異常にのめり込んで、全体を見ることができない人って感じ。
なんだかんだで大久保さんを筆頭とする元