司馬遼太郎のレビュー一覧
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ネタバレ京都を出発するとき、京における長州代表の広沢兵助が、
「西郷にはくれぐれも気をつけよ」
と、注意したが、蔵六はいっこうに表情も変えず、返事もせず、ひどく鈍感であった。広沢のいうところでは、西郷の衆望は巨大であり、一人をもって一敵国をなすほどである。西郷自身は稀世の高士であるにしても、そのまわりにあつまっているのは愚かな物知らずばかりで、江戸へゆけばそういう愚物どもに気をつけよ、といったわけであったが、しかし蔵六は鈍感であった。蔵六にいわせれば、
「衆望を得る人物」
という種類の存在が、頭から理解できないところがあり、それどころか、そういう存在は一種のゴマカシです、としかおもっていない。さらに -
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ネタバレ「しかし私は先刻、自分で名乗っております」
「それは間違っている」
と奥山静寂はいった。
「自分で名乗ったからといって、私は信用しない。私の目で人相風体を見、これならたしかに洪庵先生のいわれり村田蔵六にちがいないと推量がついたうえで当人にたしかめてみるのだ。それが物事の窮理(科学)というものである」
「お前さんも頓狂な男だな」
敬作は、蔵六の人柄が、一見したところまったくちがっていることにちかごろ気づきはじめていた。敬作は
「頓狂」
ということばがすきで、ふだんしきりにつかっている。オッチョコチョイというほどの意味だろうが、敬作の妙なところは、親に孝、君に忠という倫理綱目と同列くらいの美徳に -
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司馬遼太郎の長編時代小説の4巻目
竜馬は勝海舟とともに着実に海軍学校の立ち上げを進めていく。一方で、武市半平太は土佐藩を裏で操っていたが、長州藩の京都での失脚を機についに山内容堂に動きを抑え込まれてしまう。4巻の1番の読みどころであろう、武市らの処刑は本当に切なくて、無念だと感じた。
夢が進み続ける者と夢がついえる者、失脚し再起を図る者と色々な人物・組織の変化が読み取れる今作であった。
主人公の竜馬は、天命に全うすべく自分がすべきことを着実にこなしており、その姿は脚色があるといえ立派だなと思う。また、色恋ともいえる、さな子やお田鶴様、おりょうとの関係の深まりも別の緊張を与えてくれる。
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恐らくいずれも初期の(梟の城の頃の)作品でしょうね。当然ながら、再読(何回目でしょうか)です。
名前のように最初の三篇がこの時代に流行った忍者物。いささか古臭さ(荒唐無稽さ)は感じさせますが、なかなかです。「外法仏」は密教の修法を題材にした作品で、ある意味忍者物に通じるものがあります。「天明の絵師」「蘆雪を殺す」「けろりの道頓」はいずれも実在の人物をベースにした歴史物です。
何れにせよ、司馬史観などという物が入らない、純粋な物語としての面白さを目指した作品です。若さゆえの粗さもありますが、後期の長大な作品のような説教臭さがない分、読みやすい作品です。
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義仲の滅亡から一ノ谷、矢島、壇ノ浦の戦いを経て義経の滅亡までを描く下巻。義経の戦における才能と裏腹に政治的才能も情勢を見極める事ができる家臣もなく、やがて落ちぶれていく過程が上手く描かれている。物語のきっかけとなる政治家の行家とうまく折り合えばと考えるが、それにしても歴史というものは際どい所で成り立っているものか。
終盤はかなり急ぎ足で締めくくっており、その後の頼朝の状況や義経の敗走のエピソード、安宅の関での弁慶との勧進帳の逸話も触れることなし。弁慶は出会いこそ劇的に描かれているが活躍の場があまりなく残念。
法王のあまりの俗人的なところは宮内庁あたりから文句が出そうな描かれ方で、ある意味人間臭 -
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ネタバレ第二巻。
前半は戦の場面が多くてちょっと食傷気味だけど、秀吉が暴君へと変化する後半は怒涛の展開。
ほんっと日本史全然知らないから秀吉の後継者をめぐってこんな争いがあったとはなーと興味深く読んでいました。
そして家康の狡猾さよ。
秀吉と家康とのやり取りがなかなかの見物。歴史の教科書だとここまで細かくはわからないもんなぁ。
時代小説の真髄を見た気がする。
そんな血生臭い世界での伊右衛門と千代とのやり取りが何ともほっこり。
もちろんほっこりできないシーンもあるんだけど、なんだかんだ言いながら仲良し夫婦だなぁとホッとできる。
時間では豊臣から徳川に政権が変わるのかな? 引き続き歴史の勉強込で楽し -
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どのようにして大坂の陣に至るのか、という経緯をじっくり描いている。
次巻の冒頭から真田信繁などが大坂から声を掛けられてとなるので、それまでの話になる。
この巻では有名な五人衆などは影も形もない。
前哨戦も前哨戦なので話は静かに進んでいく。家康方の緻密な政治工作や、豊臣方の道理に依った若干現実離れした考え方など、互いのスタンスの違いがよく描かれている。
派手な動きや人物が出ないので、小幡官兵衛が実質主人公として物語らしく動き、家康サイドと豊臣サイドの思惑の間を行き来する。
この官兵衛、どことなく国盗り物語の道三とキャラが被っている(笑)本人の才覚と大胆さと女を使って、情報収集・工作という役割。
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毛利攻めから、信長の死そして秀吉の「中国大返し」、さらに豊臣の天下統一へと続くこの巻。
秀吉を画布として自分の絵を描いてみようと思い、それを成し遂げた黒田官兵衛の一大叙事詩も、ここに終わる。
欲得とか栄達欲とかいうものを持ち合わさない、戦国期には稀有な存在でありながら、晩年、関ヶ原の戦いに乗じて、天下を狙おうとする。その可能性が潰えたら、元の隠居に戻る、その滑稽ともいえるあざやかな進退。秀吉の天下を形作った張本人であるにもかかわらず、時代の点景でしかない官兵衛。
司馬は、あとがきで書いている。
「友人をもつなら、こういう男を持ちたい」
共感できる言葉だと思う。