谷崎潤一郎のレビュー一覧
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ネタバレ谷崎潤一郎の作品の中でもミステリ系のものを集めた一冊。
以下特に好きだったものについて。
『秘密』
ありきたりな刺激では満足できなくなった男が女装して出歩いたりしているうちに、過去に関係があった女とたまたま出会い、道中目隠しをしたままで逢瀬を重ねるが…
途中までの情熱とラストの呆気なさがとてもよかった。
『途上』
乱歩も好きだったという作品。
プロバビリティーの犯罪。探偵が歩きながらする会話の中でじわじわ追い詰めていく様が好き。
『私』
学生寮で盗難が頻発し、主人公の「私」がどうも疑われているようだが…
嘘はつかずにうまくミスリードさせているところと、人間や人生の不可解さがよく現れてい -
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上中下一気に読んだ。
人の矛盾を孕んだ細やかな思考の流れを
心地よいリズムで悠長に書きつけてあって
日記を読んでいるような
それでいて全て主語は三人称(主に次女の幸子)
独特な中毒性のある、素敵な文章で読み始めたら止まらなかった
雪子の見合いに始まり、
雪子の結婚で終わる
およそ五年?ほどの歳月を描いたストーリー
人を着ているもの、体型肌艶、話し方雰囲気などで色々と考察する視点は
SNSなどないし情報も少ない上で、
結婚はもちろん人付き合いが生きる術となる時代に
どれだけ重要視されていたのか思い知ったし
その視点に今も学ぶことが多いと感じた
板倉のことを若くて丈夫なのにどこか幸薄い相のあ -
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わぁい!
きれいな本! きれいな本!
と思わず手にとってしまいました。
たぶん、二人の稚児という作品は、挿し絵のない活字だけの本で何回か目にしています。
作品への印象はかなり違います。
実をいうと、登場する二人の稚児を一方は、世俗で成功し、一方は努力して信仰において成就したのだと、文字のみで読んだときにそう読んだのですが、どうも、そのようではないのではないか。
そもそも、ふたりは身分に隔たりがある。
こんな例って、他に何かあったろうか、と思ったら、そういえば、モーツアルトの歌劇「
魔笛」では、王子のパミーノ(?)と鳥刺しのパパゲーノの対照的な結末があり、そこでは高貴とおもわれる夜の女王の娘のパ -
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「谷崎潤一郎」といえば、明治・大正・昭和の三つの時代に活躍した、『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』などの代表作で知られる、文化勲章も受けた日本を代表する文豪のひとりでしたね。(1965年に鬼籍に入られています)
本書『谷崎潤一郎 犯罪小説集』には、以下の4作品が収録されています。
・柳湯の事件(1918年)
・途上(1920年)
・私(1921年)
・白昼鬼語(1918年)
本書を読んだことで、いわゆる「文豪」と呼ばれた作家たちとミステリー(犯罪小説、推理小説、探偵小説)作品の関係を調べていくと、非常に興味深いことが多く、そういう点でも、本と読書の魅力を改めて感じることが出来ました。
谷崎潤 -
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谷崎潤一郎が実は推理小説、ミステリーらしきものをいくつもしたためており、しかもそれがどれも秀逸らしい、と知り手に取った一冊。
収録されている4篇ともキャリアの序盤、100年と少し前に書かれたもので、やたらと"気違い"などという言葉が登場し、マイノリティやハンディキャッパー、あるいは女性に対する差別が顕在的かつ余りに露骨だなあ…と、今となっては半ば呆れてしまうところはあるが、読んでいるうちに我知らず、その時代に生きているかのような錯覚に陥る。
それほどまでに、作品が持つ見えざる膂力は凄まじく、つまり、文章の美しさ、完成度が際立っている。
プロットの方も、江戸川乱歩が文壇に現れ -
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ページ数が少ないと言う意味では読みやすいと言えるけど、句読点が省略されている点では読みにくいと言える。自分は慣れない文章のリズムに苦戦して結構時間がかかった。
話自体は至ってシンプル。
心理描写も少なく物足りなさを感じるほど簡潔。
言われるほどの良さが分からなかったなと思い巻末の解説を見ると、春琴抄のその簡潔さに究極の美を感じる人が多いよう。
「百の心理解剖だの性格描写だの会話や場面だの、そんなものがなんだとの感じが強く湧いてくる」と谷崎潤一郎は苦悩したという。
昔は(今も少し)結末を有耶無耶にして「あとは皆様のご想像にお任せします……」というような投げかけの物語が大嫌いだった。もやもやす -
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ネタバレ目次
・病蓐の幻想
・ハッサン・カンの妖術
・小さな王国
・白昼鬼語
・美食倶楽部
・或る調書の一節―対話
・友田と松永の話
・青塚氏の話
それほど谷崎潤一郎作品を読んできたわけではないけれど、明らかにこれは今まで読んできた谷崎とは全然違う。
耽美というよりあからさまに変態寄りだったり、悪夢のような話だったり、なんだろうちょっと大衆的。
読みやすい文章も相まって、「これ、菊池寛じゃないよな」と表紙を確認すること数度。(切り口はまったく菊池寛ではありません)
おどろおどろしい作品もあるのだけれど、からりと乾いた文体がどうも日本っぽくない。
どちらかというとポーとかスティーヴンソン。
もしかし -
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なかなかおもしろい。
エッセイ集であり、表題にある「陰翳礼賛」をきっかけに「適切」とはなにかを探るエッセイが並ぶ。
「陰翳礼讃」は文字通り「暗さ」についてのエッセイ。
日本の建物は以前は暗くて、それがよかったのだという。
古い料亭で、電気を使わずに、薄暗い灯りの中で食事をするのがよいという。
日本の場合、器や、食べ物そのものが、手元もよく見えないような明るさの中で楽しむようにできているだそうだ。
西洋はなんでも明るくしてしまう。そして、日本もその影響を受けて、当の西洋人が驚くくらいになんでも明るくしてしまった、と嘆く。
西洋人が明るさを好むかどうかという話については、聖書において神が天と
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