谷崎潤一郎のレビュー一覧
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下巻になり、雪子と妙子の運命がそれぞれの方向に極まってくるスピード感と盛り上がりはさすが。
どこか突き放した描き方になっていくところが面白くもあった。
貞之助の手紙が何度も出てくるが、(当然作者の谷崎が書いたものであるのだが)縁談を断るのも、お願いするのも、待ってもらうのも、相手を気遣い、その上で、複雑な自分の立場をうまく相手に伝える、最上のお手本のような仕上がり。
おお、うまい書き方だなあと何度も感心した。
この小説の蘆屋の家の空気にすっぽり入ってしまっていたらしく、読み終わってみると、ああ、もうこの人たちと会えないのか、とさみしくなった。
長編小説の良さはこういうところにある。 -
Posted by ブクログ
作家の千倉磊吉(ちくら らいきち)が昭和10年に50歳で二度目の妻の讃子と所帯を持ってから、戦後の昭和30年代まで、たくさんの女中さんたちが千倉家で暮らした。
前の職場で、あるじに手篭めにされそうになって逃げてきた子などもいたが、磊吉はそんなことはせず、女中たちにも美味しいものを食べさせ、妻の讃子も、困っている者があればすぐに雇った。
そういう家風(?)のせいか、女中さんたちは存分すぎるほどにに個性を発揮する。
さほど厚い本ではないけれど、「女の一生」を何冊も読んだ気分になる。まさに、女の博覧会のよう。そのリアルな描き方はさすがに谷崎ではあるけれど、視線は働く若い女性に対するエールにあふれてい -
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Posted by ブクログ
昭和初期に書かれた、日本における光の意味を教えてくれる本。
ほどほどのあかりで、見るべきではないものはそのままに。
当時の光の増大に対する違和感は、現代で言うところの、情報量の増大と似ていると思った。
西洋人は闇を排除し隅々まで明るく照らし、光による闇の討伐を目指した。一方で、日本人は闇と共存し、ある意味、一体化していた。
しかし、日本人は、親しい闇を、西洋文明の流入により、追いやった。
見るべきではないものを突きつけられ、どう対処すべきか、悩まされる。実は、悩む必要などなく、対処すべき事でもない。それとは、ずっと前から無意識に共存してきたのである。
鎖国によって生じた文明の遅延に対する劣等感 -
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再読。
5、6年ぶりに読んだ。
前読んだ時はなんだこのクレイジーな話はっていうおもしろさを感じた気がするけど、自分自身色んな恋愛をして、色んな恋愛を見てきて感じ方が変わった。
愛情には色々な形があって色々な価値観がある。今でこそ「多様性」という言葉が多用されてる(この言葉についても色々と思うところはあるけど、いまはとりあえず置いておいて、、)けど、まさに世間に囚われない夫婦の在り方について書かれている。
何よりすごいのは谷崎がこの話を1920年代に書いてること。当時はかなり受け入れられなかったのでは?
ナオミは譲治というパトロンがいて初めて輝くのであり、譲治と住まう帰るべきアトリエがあって初 -
Posted by ブクログ
真珠のような美しい人魚と、両親を亡くし全てを手に入れ人生の楽しみを見失った美しい貴公子の少し切ない大人のお伽噺。
由緒ある格式高い家門、若く美しい容姿、国中の美味い酒、彼に身を寄せる美しい女達。
目も眩むような報酬を求め、様々な人間が貢物を持って行くが彼が気に入ることはなかった。
貴公子は豊富な知識で口が達者な商人たちの贋作までも見抜いていくが、そんな中で珍しく一人の異質なオランダ人に大層釘付けになる。
人の目を惹きつけるオランダ人は、貴公子に大変珍しい美しい人魚を連れてきた。
たくさんの人がこの人魚を欲しがったが、対価がかなり高額なためもうあなたしか手に入れることはできないだろう。