谷崎潤一郎のレビュー一覧
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初めての谷崎潤一郎作品。猫と生きたことがある人には、たまらない。リリーちゃんが文字の上で生きていた。こんなに短い文章なのに、リリーちゃんと共に生きたようだった。心が荒んだ時、猫に慰められたこと。時折五月蝿く鳴く猫が鬱陶しいと思ったこと。猫が見当たらず寂しいと思ったこと。何度も感じた想いが蘇る。これは庄造と福子と品子の物語ではなく、リリーちゃんを魅せてくれる一冊。ヒトという生物に飼い慣らされたフリをしてくれていて、猫は素直じゃないから可愛いだとか、猫は嬉しいと喉を鳴らすのだと判ったような顔をされながら、実はヒトを飼い慣らしているという、恐ろしくも愛らしい獣を描いた至極の一冊。
とにかく、猫に会いたいと思う。触れたくなる。触れていたあの瞬間を思い出す。
触れたいと思うと触れられず、きっと来ないと諦めると、ふとそばに寄って来る。彼女たちは宇宙が与えた、小さく恐ろしい悪魔。ああ、永遠に人間は、この悪魔の虜なのだろうと心底感じた。
それに終わり方が秀逸だった。結局は、猫を描く気しかないというわかりやすさに妙に心奪われた。
未だに死んでしまった飼い猫を忘れられない私の、記憶を呼び起こすツールをもう一つ見つけてしまった。 -
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『刺青』4
毎回表紙を見てキュンとさせられる
ページをめくりキュンとさせられる
『乙女の本棚』シリーズにはキュンしかありません(〃ω〃)
本作も美しいイラストに、色鮮やかな着物、そして、蜘蛛の刺青
凄い!惹き込まれる〜(ノ´∀`*)
これで、『乙女の本棚』は6冊目が読み終わりました
で、改めて思いました
文豪たちの作品は難解!
『乙女の本棚』シリーズで読むことで理解できるかもって思ってましたけどムリ!
アタシにはムリ!(ヾノ・∀・`)
やっぱり難しいものは難しい!
なので、、、
宣誓!
アタシ、1Qオネェはこれからも『乙女の本棚』シリーズは内容をそっちのけでイラストを楽しむことをここに誓います!
★の評価はイラストの評価ですわ♡ -
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本線から逸れても長くても優雅におかしく読んでいられる。郷愁、風光明媚。朝ドラでやってほしい!
無理矢理の見合いをさせる「女ギャング」、コマシャクレなど今風のおかしな表現が面白い。
タイトルから雪子が主人公を予想するが、ほぼ終始幸子の目線で語られ、夫婦共々妹想い、東京の本家は少し遠く疎み感じられる。と思ったら、幸子は谷崎の松子夫人、幸子妙子はその三姉妹がモデルらしい!(貞之助は谷崎となる)
関西の地名がたくさん出てくるので雰囲気も伝わり、谷崎が土地を愛していたことが分かる。
妙子の回復に亡くなった場合の世間体だけ気にした鶴子の手紙も酷いが、妙子の好き勝手も大概酷い。
大垣での上階級との見合い、蛍狩、断られ破談、妙子と奥畑の復縁、本家からの反対による妙子の一人暮らし、雪子の再度の見合い、無愛想による破談、妙子の赤痢、妙子が奥畑を唆し金だけ使わせている、別に三好というバーテンの男、妙子の回復、貞之助幸子の奈良富士の旅行、井谷のアメリカ行きに伴う雪子の華族との見合い、妙子の三好との妊娠発覚、ロシア人ドイツ人の近況、貞之助の尽力による雪子の結婚、妙子の死産(板倉や奥畑の呪い?)、まさかの雪子の下痢終わり! -
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上流階級、関西の四姉妹。
思ったより読みやすいが、「、」で延々続く口述や心情を言い切るのには慣れないといけない。
関西にいる間は姉妹仲良さに微笑ましかったが、体面の為何度も見合い、雪子まで東京へ行くなど約90年前の上流階級はここまでしきたりが多いかと驚く。雪子は結果良いように利用されてる。
谷崎は戦時中休載されても自費出版でも書き続け、モデルは夫人夫婦とのこと。(解説)
末妹の妙子は男と駆け落ちし新聞にまで載ったが今も関係は続き姉の雪子の結婚待ち。
雪子の見合い(破談)、京都でのお花見、妙子の人形手芸の生徒のロシア人家族との交流、一番上の姉本家鶴子の東京行き、体面で雪子も東京へ、幸子の子悦子の神経衰弱、幸子の流産、雪子の見合い(破談)など。 -
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谷崎さん、すいません!あなたは変態かと思って敬遠してましたが、天才でした!
・刺青
清吉という腕の良い刺青師がいた。彼の願いは、輝くように美しい肌を持つ女性を見つけ、その肌に自らの魂を刻み込むことだった。
そしてついに、彼は16、17歳の理想の女と出会う。彼女を睡眠薬で眠らせた清吉は、背中に女郎蜘蛛の刺青を彫った。
目を覚ました彼女は、自分の背中に刻まれた刺青に感激する。清吉もまた、願いが叶ったことで満足した。
嘘でしょ!え?って思いますが、一件落着である。
・秘密
秘密めいたこと、そこにはスリルに近い感覚があるのかもしれない。女装して街を歩く。気付かれているのか、いないのか。その緊張感がたまらなく、また気付かれないようにするための技も魅力の一部なのだろう。しかし、決して秘密を知られてはならない。明かしてはならない。
台無しになってしまったじゃないか!
・少年
「泥棒ごっこをしよう。」そんな他愛もない遊びから、サディズムやマゾヒズムといった性癖が開花し芽生えることがあるのだろう。あくまでも内に秘めていたのかもしれない。
また両者はどちらの気質も持ち合わせているが、大抵の場合、どちらかが主となるようだ。そして、その延長線上にはスカトロジーの世界が広がっているのかもしれない。
自分にはそうした嗜好はなく、理解しがたいし、気持ち悪さも抱くのだが、同時にどこか変態的なものへの興味や魅力に惹かれてしまうところがある。
変態たるや!自分の変態指数が低くて一安心!
・悪魔、続悪魔
強迫観念に囚われ、死を恐れ、神経症に悩む男、佐伯。
ある日、彼は下宿先の娘が鼻をかんだハンカチに、人間の歓楽世界の裏側に潜む秘密の楽園のようなものを見出し、次第に神経症を克服しかける。
しかし、それは一時的なものであり、根本的な解決には至らなかった。
死の恐怖を乗り越えるには、むしろ死に接近するしかないのではないか?と考えた佐伯は…
“殺される”という極限の境地に踏み込むことこそ、行き過ぎた先にある究極の解放だとしても!死んだら何もかもゲームオーバーなんだって!
・神童
瀬川春之助は誰もが認める神童だった。
将来は聖人となり、多くの人の魂を救いたい。そんな思いを抱き、春之助は学問に励んでいた。しかし、父は木綿問屋に30年間勤める一番番頭ではあったものの、大学まで進学させる財力はなかった。
それを不憫に思った校長が店主に口利きし、春之助は書生として下宿できることになった。
神童、天才、そうもてはやされ、自分でもそう信じていたが、それは同時にストレスでありプレッシャーでもあった。時には食欲が暴走し、時には店主の息子を叱責したり、いじめたりもした。勉強に集中できず、成績を心配することもあったが、それでも首席の座を譲ることはなかった。
そんなある日、自分の青白い肌を見たとき、あまりにも不健康に見え、運動を始めてみることにした。しかし、まったくできなかった。体育の授業では教師に馬鹿にされ、同級生たちに笑われる始末。さらに追い打ちをかけるように、顔にはニキビが次々とでき始めた。
ちょうどそのまえに、自分の顔の醜さに打ちひしがれたばかりだったのに、ニキビはそれを一層際立たせた。神童であり、天才であり、誰もが将来を有望視していた。自分でもそう信じていた。
しかし、ニキビはその誇りを打ち砕き、鋭敏で聡明な頭脳の輝きをも曇らせた。次第に倦怠感が募り、疲労が重なり、堕落という影が忍び寄る。
しかしある日、使いに出た先で芸者や半玉のあまりの美しさを目にし、彼は戦慄した。
*ここから抜粋
己は子供の時分に己惚れていたような純潔無垢な人間ではない。己は決して自分の中に宗教家的、もしくは哲学者的の素質を持っている人間ではない。己がそのような性格に見えたのは、とにかく一種の天才があって外の子供よりも凡べての方面に理解が著しく発達していた結果に過ぎない。己は禅僧のような枯淡な禁欲生活を送るにはあんまり意地が弱過ぎる。あんまり感性が鋭過ぎる。恐らく己は霊魂の不滅を説くよりも、人間の美を歌うために生まれて来た男に違いない。己はいまだに自分を凡人だと思うことは出来ぬ。己はどうしても天才を持っているような気がする。己が自分の本当の使命を自覚して、人間界の美を讃え、宴楽を歌えば、己の天才は真実の光を発揮するのだ」
そう思った時、春之助の前途には再び光明が輝き出したようであった。彼は明くる日から哲学の書類を我慢して通読するような愚かな真似をやめにした。彼は十一歳の小児の頃の趣味に返って、詩と芸術とに没頭すべく決心した。
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何だか初期の江戸川乱歩を読んでるような感覚に陥ったので情報整理。谷崎の生年が1886年で乱歩が1894年。収録されている作品は乱歩デビューの1923年より前の1918年から21年に発表されている。
僕は浅学で知らなかったけど、裏表紙の紹介文によると、収録されている4編は日本における犯罪小説の原点となった作品だそうです。
『柳湯の事件』
ちょっと古い探偵小説のような入りなんだけど、段々と話が怪しくなってきて、現と幻の境目が混沌としてくる。さすが谷崎潤一郎(笑)。後半は探偵小説というよりも怪奇小説です。ぬらぬらのてんこ盛り。
『途上』
これまたちょっと古い探偵小説のような入り。執拗に触感を書き表した前作とは異なり理詰めの言葉で語られる完全犯罪計画。谷崎が様々な形態を試していたことを示す作品。明智小五郎(江戸川乱歩)もD坂で本作を称賛しています。
『私』
これもまた前2作と異なる形式。解説によると谷崎のお気に入りの作品の一つだったみたい。ストーリーよりも、表記スタイルが重要な作品。
『白昼鬼語』
「ちょっと人殺し見に行こうぜ」って感じのカジュアルなイカれっぷりにワクワクが止まりません。一番おもしろかったです。 -
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有名な話なのであらすじは知っていたのだが、読んでみると面白くて。話の展開が上手くて、若奥様の語りが魅力的。
巻末の中村光夫の解説には「変態性欲」の話で、約十年後に書かれた『細雪』に比べると劣るみたいなことが書いてあって身も蓋もないが、いやいや大したものだと思った。『細雪』読んでないので比べられないけど。
「変態性欲」なんて書かれるとエロ本みたいだが、エロ本と違うのは「行為」は書かれていないところである。それを書かずにここまで異様な盛り上がりが描けるのはすごいと言うしかない。何度も映像化されて、エロ的に消費されがちな設定ではあるが、映像と文学は違うのである。
映像で描ききれないのは、語り手と作者の距離、一歩引いて見た時の人間の愚かさである。
光子は悪魔的なファムファタルというより、どこか自己肯定感の低い人間のように感じる。だからいつでも自分を賞賛してくれる人を求める。命をかけて自分を好きでいてくれる人がいて、はじめて生きている喜びを感じる。そのせいで綿貫のような人物につけ入れられてしまう。光子が観音の格好をした自分を鏡にうつしてうっとりするシーンがあるが、この美しさをちゃんと認めてくれたのが園子である。しかし光子が園子にしろ、孝太郎にしろ、本気で愛していたとは思えない。
美貌で、裕福な家の娘で、良い縁談(つまり金も地位もある人物からの求婚)が次々に来る、傍目にはなんの不自由もない光子がどうしてこうなっちゃったかと考えてみると、もちろん谷崎はそれを意識していたとは思えないが、社会の圧力だったのではないか。美人であっても、望めるのは結婚だけである。結婚してしまえば、園子同様特にすべきこともなく(家事は使用人がする)、習い事をするか浮気するくらいが関の山。子どもを産むことは今よりあからさまに強制された時代である。(園子が輸入した英語の本で避妊を工夫しているのが印象的。)何も面白くない。わくわくもウキウキもドキドキもなし。それが死ぬまで続く。夫も最初は優しくてもしばらくすれば妾を囲ったりする。(当時の金と地位のある男はそうだった。)そんな人生、光子のような女性にはつまらなすぎる。
光子は現在ならビジネスで才能を開花させたかもしれない。あるいはモデルや俳優となって自由に生きたかも。
当時としては彼女の死は避けられなかった。本当は園子と孝太郎も一緒に死んで欲しかったんだよね。
語り手として園子を残したわけだけど、最後ちょっと違っていたらもっと良かったかもしれないと思った。文豪に対して無礼ではあるが。 -
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谷崎の瘋癲老人日記、久々に読み返す。
瘋癲老人日記といえば、棟方志功の挿絵。
今回は、しりあがり寿さんの挿絵での新装版。
ここ二、三十年の漫画は、ほとんど存じ上げておらず、しりあがりさんのも読んだことはない。
但し、京都での「ドラえもん展」で、しりあがりさんのシュールなドラえもん動画は観ており、すごぶる面白かった。
思わず、Tシャツも買ってしまった。。。
で、しりあがりさんの瘋癲老人日記の挿絵。
この奇妙さと滑稽さが表裏一体な、ひとりのジイさんの物語にピタっとハマっている。
※棟方志功の挿絵だと、棟方しか浮かんでこない....
何回読んでも、このカタカタ文章、これがなんか怖いよね。
谷崎って、文体における視覚的な実験、こういうのも狙った作家なのかしら?
大体、「卍」でも全編関西弁のオンナのひとり語り。あんな異様な文体の小説、他にあるんだろうか?
主人公、卯木督助。77歳。
このひとりのジイさんの日記が延々と綴られていくのが、この小説。
冒頭、歌舞伎の話が出てきて、
その昔十五世羽左衛門の助六を観たと語っている。
意休が(おそらく)七世中車で、揚巻が五世歌右衛門という垂涎の顔ぶれ。
なんとも羨ましいかぎりである。。。
文庫の帯に、"老人の性を極上のエンタメにした"って書いてあって、それは確かにそのとおりだと思う。
谷崎って、やっぱり偉大。
なんか諸々の意味も含めて。。。
巻末の窪美澄さんの解説もすばらしいです。
谷崎は、何度読んでも飽きません.... -
Posted by ブクログ
表題の「刺青」や「少年」などはまさに谷崎氏らしいエロティックな作品ですが、「母を恋うる記」は凄まじく綺麗な風景描写が心に残りました。作者でなければ書くことのできない美しい表現を用いて風景が描かれており、そこに感動しながら読んでいるとお決まりの?谷崎氏らしい人物描写も登場し、短い話ですがたいへん読み応えがあり、大好きです。ぜひ読んで欲しい作品です。
ただ、「異端者の悲しみ」や「二人の稚児」は途中までは面白いのですがオチが突然すぎてあまり脈絡なく感じたのが残念でした。(解説を読んで作者がなぜ書いたのかは納得はしました。)
しかし「母を恋うる記」がよすぎてこれだけでこの本は買いだ!となりました。
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