谷崎潤一郎のレビュー一覧
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被虐趣味という言葉で称されることが多い本ストーリーだが、今日の関係性でいえば、そこまで逸脱した関係性と思えない…というのが正直な感想だった。
どちらかというと…伝聞調で記される2人の間の出来事には、主観や心の機微が意識的に記載を避けられている。そのため、あまり直情的に訴えるものがないのではないか。一方で、伝聞調による行間があるからこそ、色々な経験を積んだ人には感ぜられるものが多い…甘酸っぱかったり、苦々しかったり、憧れたり…描写されていない2人の行間を人によりさまざまに味わうことができる。ここが本書の良書たる所以であり、今日に至るまで愛される作品となってる理由なのではないか。 -
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春琴抄がとても良かったので、谷崎文学に触れたくて、書影が妖しく美しい本作を手に取った。
古風な関西弁の一人語り。セリフが、改行無しで羅列される独特の文章。
な、な、何だ?これは?面食らう。こんな文体、有りなの?谷崎文学の2作目として選んだのは失敗だったかな、と思いきや、中盤から不可思議な展開に目が離せなくなってしまった。
人妻園子と美しく魅力的な娘、光子。惹かれ合うが、光子には男が居た。
園子の語りでいろいろな事が明かされていく。
女同士、光子への止まらない愛。
園子、光子、光子の男綿貫、そして…。
美しい光子に狂わされていく。
人間関係が絡み合い、正に卍(まんじ)となった時、表題とのシンクロに唸った。そして、この時代(昭和5年)に倒錯した歪な性をここまで赤裸々に描き切った谷崎のぶっ飛び具合に驚嘆した。
園子が自分達夫婦の寝室で光子の裸を見せて欲しいと懇願する場面が淫らで耽美的。強く印象に残る。
古き良き関西弁の独特な響きとリズム感が柔らかくて心地良い。その味わいを感じる事ができた今回ほど自分が関西人で良かったと思った事はない。
卍は、功徳円満を意味する梵語。追いかけ合うように縦横に乱れるさまを卍巴という。(本書p269註解より)
この文字の印象に淫靡な意味合いが加味されたのは本作、谷崎のせいだと気づいた。 -
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ネタバレ◾︎刺青
耽美派と言われてイメージする作風そのもので,知識人のいう「純文学の味わい」とはかくなるかという印象を受けた.
あるファッションモデルが服を着ることで魂をインストールするといった旨のことをどこかで書いていた気がするが,そういった描写をこんなにも艶かしく描けるものかと.
◾︎少年
個人的に最も谷崎らしいといった感想.
各々の描写は汚く,眉を顰めざるを得ないところが多々あるものの,流麗な文体ゆえに何故か美しさも感じる.生々しいのに,一枚薄布が張ってあるような感覚.
秀逸だと思うのは,最後に少年の姉が関係内に置いて覇権をとり,宛ら女王の振る舞いになり,少年らを蹂躙するシーンがあるのだが,直接的な性描写は用いられていないにも関わらず,艶かしく極めて性的.
「フェティシズム」とは耽美派を語る上で外せないキーワードだが,この独特な趣向こそフェティシズムそのものだと実感する.
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▼かなり以前に読んだんですがその時に感想を書き忘れたもの。だいぶ忘れていますが。
▼平安時代、初老の中級貴族?が、歳の差婚の若妻を、権力者の藤原ナントカさんに、奪われるんです。でこの若妻は当然評判の美人である。初老貴族は屈辱に震えます。悔しい。惨め。この若妻との間に子供がいて、これがのちの少将滋幹なんです。つまり少将滋幹にとって、幼年期にそんな形で生き別れになっちゃった、お母さん。少将滋幹の母。
▼この顛末と、母恋の思い。これが実に心理劇で映画「羅生門」の如きサスペンスフル。な、だけではなくて。それに加えてなんだか禁断な恥ずかしさ。身悶えするほどの気はづかしさ。そしてなんだかエグくて儚くて人肌で美しい。つまりは谷崎なんです。
▼どうやら本作は翻訳などされているという意では谷崎の代表作だそうです。まあ、海外受けしやすそうですが(短いし)。圧倒的におもしろいのだけど、個人的谷崎ベスト3には入らないかなあ・・・。って何がベスト3なんだろう。「細雪」「猫と庄造」「台所太平記」な気もするが・・・いや「春琴抄」・・・「痴人の愛」・・・「卍」・・・そもそも未読の作品も(谷崎前期中心に)まだまだあるし・・・うーん。 -
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初版は中央公論社、1963年。「夢の浮橋」が後の潺湲亭のオモテ側を美しく描いた作品とすれば、こちらはその舞台裏とも言うべき小説。大所帯だった谷崎家の暮らしを支えた女中さんたちの「活躍」が列伝風に書き込まれる。
ほんとうに久しぶりの再読だったが、谷崎が女中部屋を「鹿児島県人会」と呼ぶほど、鹿児島からの娘たちが次々とやってきていた、という話はやはり興味深い。高峰秀子の付き人の一人が谷崎家からの紹介だったことも記憶しておきたい。
後の潺湲亭は住宅としては決して大きいとは言えないものだったから、最大で7人の家族と5〜6人の女中さんがいたというからには、相当に賑やかな家だったのだろう。「なぜそんなエピソードを知っているのか?」と思わせるほど、微に入り細にわたって彼女たちの「生態」(?)が綴られるあたり、『細雪』の創作ノートにも通じる谷崎の観察力、耳の鋭さが存分に発揮されている。
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当時の風習や時代背景の雰囲気を感じることが出来る素敵な作品です。
内容は3女の雪子の縁談についての話なのですが破談ばかりで上手くいかないという内容です。
御大家であった昔の格式に囚われて縁談が破断したり、自分の家柄に合う人を探すばかり周りが呆れてしまう。
義兄が進めた婚約を断ってしまい、仕事関係でギクシャクさせ、兄はその後婚約の話をしなくなったりなど。
縁談は今では馴染みがないので読んでいて複雑なのだなと感じることが出来ました。
また民俗学的な興味深い話も多かったです
・丙午は関東では忌み嫌われる。迷信が多い
・未年では関西は嫌われる。縁遠いなど
・興信所→ 企業や個人の信用や所在、行動等について調査を行う民間の機関である
主に縁談の相手を調べてもらうことが多い。今で言う探偵な感じです。
・結婚の縁談の下調べでも学校の成績表みる。しかも欠席日数まで。
・季節外れに雛人形を飾ると女の子は縁遠くなる
・東京は流行物ではなく自分に似合う服を着る
これは全然当時の風習とかと関係ないのですが
いけている花がまさかのケシの花だったのが驚きでした。
ケシの花はアヘンの原料です。
「その花見てたら花の中に吸い込まれそうになる」
と、当時から思われてるほど感じる何かがあったんだと思います。
流産した幸子の表現には感嘆しました。
「妻の眼の中にある涙の玉が大きく膨らんで、破れて、頬に伝わる」
幸子の言葉選びも未だにその出来事が尾を引いてるのだと分かる表現でした。
「今雪子のお腹の中にある思いがどう云うことであるのか、明かに読めるのであった」
「ライラックや小手毬の花がもう直ぐ咲き揃うのを見届けるまでは滞在していられますように」
今の姿が当時の人にとっては感動を得たのかもしれません。本は現代よりも身近な存在だったのだろうと思いました。
また、題名が細雪ってとこに何故なのかを全ての作品を読み終わるまでに気づけるようになりたいと思いました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ乙女の本棚シリーズから、谷崎潤一郎さんと夜汽車さんのコラボ作品「刺青」です。夜汽車さんのイラストは、息をのむような甘美な世界を醸し出してくれます。
凄腕の刺青師清吉には、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を彫りこむという夢があった…。なかなか、理想とする女性が見つからず悶々としていたが、ようやくその女性が現れた…。その女性を眠らせ、背中に蜘蛛の刺青を彫りこんでしまうのだが…激しい痛みに耐え抜いた女性は、清吉が求めた真の強さと美しさを身に纏ったのだった…。「お前さんの命を貰った代りに、私はさぞ美しくなったろうねえ」
なんともいえない妖艶な世界でした…。刺青についてこれまであんまり知る機会もなかったこともあって、興味深く読めました。でも最大の見せ場というか、読ませ場か…は、作中の女性の豹変ぶりですね!美しくなりたいという思いは留まる所を知らないようです。
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