谷崎潤一郎のレビュー一覧
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細雪。読んでよかった。
最後まで読んで、ただ仲の良い姉妹というだけでなく、小さなことから事件に至るまで様々な場面での会話や行動を通じて、良いところもそうでないところも知って、イヤだなと思うこともあったけれど、それも全部ひっくるめて彼女たちが好きで、鶴子、幸子、雪子、妙子、みんな幸せになってほしいなぁと心から思う。まるで、古くからの友人みたいな感覚。まだまだ読んでいたいし、時代としてはこれから戦争で大変なことになっていくはずだから彼女たちがとても心配。小説だからこれで終わりなんだけれど、ずっと彼女たちがコロンバンでお茶をしたり、手紙のやりとりをしたり、お花見をしたり、変わらずいきいきと生き続け -
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4姉妹が話す言葉は関西弁の中でも船場言葉と呼ばれるものらしい。品があって優雅で本当に素敵な言葉だ〜憧れる〜
身近な人が死んだり被災したり、かなり辛い出来事が立て続けに起きるのだけど、それに対して登場人物たちが悲しみ苦しむ様子がやけにあっさり書かれているのが印象的だった。花見に着て行く着物を選ぶシーンには3.4ページ使うのに笑
上流階級とはいえ当時の庶民たちの、何が起きても生活の営みを停滞させない覚悟のようなものが感ぜられて良かった。
個人の意思よりも家の繁栄と存続が優先されて、何かと窮屈なことも多かっただろう時代を、明るく朗らかに、かつ強かに生きた4姉妹の姿には勇気づけられるものがあった。 -
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「諸君はまたそう云う大きな建物の、奥の奥の部屋へ行くと、もう全く外の光が届かなくなった暗がりの中にある金襖や金屏風が、幾間を隔てた遠い遠い庭の明かりの穂先を捉えて、ぽうっと夢のように照り返しているのを見たことはないか。その照り返しは、夕暮れの地平線のように、あたりの闇へ実に弱々しい金色の明かりを投げかけているのであるが、私は黄金と云うものがあれほど沈痛な美しさを見せる時はないと思う」
-陰翳礼賛、谷崎潤一郎
日本家屋のわびさびを美しい文章で語っている。
私の家、私の食器、私の服、なんだかそこに欠けている美を意識せずにはいられなくなった。 -
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あとがきを読んで知ったんだけれど「刺青」は処女作ということで、才能が「開花」してますね。
谷崎には「開花」という言葉が相応しいように思える。
あまり谷崎文学に触れてこなかったけれど、彼の小説の見方がぐっと変わりました。
最初に有名な「痴人の愛」を手に取ったのですが、沼に落とされた感と、またこれから谷崎文学に触れたいという方がいたら私はこの本を薦めたいです。
妖しくも艶めかしい内容ですが、それを上回る描写力。
沈美の作家とも言われていますが、圧倒的存在感と真逆の少しふわふわした感じが良い按配で詰め込まれている、気品高いお重の中の風変わりなお菓子と言ったところ。
甘くて妖艶。
少し苦い。 -
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随筆的小説と称される「吉野葛」。和歌か俳句を一篇の小説にしたような、わび・さびのある珠玉の短篇。大和の吉野の地に伝わる歴史伝説と、友人津村の「親の在所が恋しゅうて」という心もちが織り重なって綴られる。葛の葉、熟柿、蔦、櫨、山漆……秋の吉野は偲ばれる母の双眸。「春琴抄」を発表する前の作品。
豊臣秀吉の側室である茶々の母であり、織田信長の妹、お市の烏孫公主を、「めくら」の三味線ひきが語る「盲人物語」。按摩ついでに語ったものなのか、ひらがな多めで記されており、寥々とした唄のように染み入った。
この盲人、しわしわの爺やと思いきや、32歳ということが終わりころ判明。人生50年の時代だもんね。
お市 -
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語注が少なくて読むのに少し手こずったけど、面白くってどんどん読みました。
『少年』はたしか古屋兎丸先生のコミカライズがあった気がします。光子ちゃんがこれまた嗜虐的で妖しい魅力のある女の子なんですわ。登場人物の年齢が皆まだ幼いという点も、個人的には刺さる部分があったりします。
『幇間』に登場する三平はまさしくprofessionalで、よくぞ収録してくれた! と勝手に快哉を叫んでいました(笑)。
『麒麟』は、言わずと知れた孔子が登場する『論語』での一篇を、谷崎なりに解釈した作品。これぞ魔性の女! 愉悦に浸りながら囚人の惨憺たる様相を眺める南子夫人の獰猛な美しさを孕んだ瞳は、ものすごい誘惑だっ -
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あらすじ
1936年(昭和11年)秋から1941年(昭和16年)
春までの大阪の旧家を舞台に、4姉妹の日常生活の悲喜こもごもを綴った作品。阪神間モダニズム時代の阪神間の生活文化を描いた作品としても知られ、全編の会話が船場言葉で書かれている。上流の大阪人の生活を描き絢爛でありながら、それゆえに第二次世界大戦前の崩壊寸前の滅びの美を内包し、挽歌的な切なさをも醸し出している。作品の主な舞台は職住分離が進んだため住居のある阪神間(職場は船場)であるが、大阪(船場)文化の崩壊過程を描いている。
感想
没落商家の四姉妹、ある人からフランス語で発行された本をよんで描写が良かったと言われ日本語版を読んでみた。 -
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インテリアや照明に携わる職業の方々に幅広く読まれている本書。日本家屋についてだけではなく、すぐれた日本人論としても読める珠玉の一冊。
日本人が好む美しさとは、省略の美であるということ。空白を持って画面を構成する日本画もそうであるし、無駄な言葉や描写のない小津安二郎、北野武の映画も実に日本的な美と言える。宮崎駿さんが「アニメーションは三歩あるいて十歩あるいたように見せなければ意味がない」というような主旨のことを何処かて語っておられたが、それも日本の美なんだなあと強く思った。また、世界で評価されているのはまさにそれら省略の美そのものなのだ。
その点では若者の流行言葉の略語なども日本独自の文化な -
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ネタバレ「細雪」回顧によりますと、谷崎潤一郎はこの作品を書き始めたのは太平洋戦争の勃発した翌年、昭和十七年であり、書き終わるまで六年かかったそうです。
また「細雪」には源氏物語の影響があるのではと人に聞かれたそうです。
最初の三年は熱海で書き、次に岡山県、平和になってから京都と熱海で書かれたそうです。
長かったから肉体的に疲れたそうです。
三十三歳になる三女の雪子の姿かたちの描写が美しいと思いました。映画では吉永小百合さんが演じられたそうです。
でも、今の時代なら、お姉さんやお嬢さんでも、まだ通る年齢ですがこの作品の時代では年増とよばれるのですね。
雪子の左の眼の縁にあるシミが何度も問題にされますが -
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ネタバレ四女の妙子の出番が多い巻でした。
妙子は奥畑という「船場の坊」と駆け落ちしようとしたことがありますが、今度は阪神間に記録的な水害が起こり、川の氾濫で今にも溺れ死にそうなところに駆けつけてくれた、板倉という丁稚上がりの写真家と恋仲になります。
そして妙子は今までやっていた人形作りをやめて、洋裁の道に進み、洋行してあちらで手に職をつけたいと望むようになります。
幸子らは反対して、欧州の動乱により洋行は中止になります。
そして、板倉は耳の病気が元で細菌が体に回り、片脚を切断され、しばらくして亡くなってしまいます。
神戸の鮨屋の「与兵」に幸子、夫の貞之助、雪子、妙子で食事にいく場面の新鮮なお鮨の -
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随分前から積読してあった本です。
何度も途中で挫折してこれは大人になったら面白さがわかる本なのか(十分大人なんですが)と思ったら『世界は文学でできている』で楊逸さんが中高生にお薦めしていたので、慌てて読んでみました。
読んでいるうちに、だんだん面白くなってきて、読むスピードが上がっていきました。
『細雪』というタイトルですが、雪の降る場面はどこにもないそうです。
昭和十年代の大阪船場に古いのれんを誇る蒔岡家の四人姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子、そして幸子の娘の悦子の五人の女性の物語です。
大変雅やかな文章です。
三女の雪子は姉妹のうちで一番美人ですが、縁談がまとまらず、三十歳を過ぎ独身で、幸
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