谷崎潤一郎のレビュー一覧
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知人にすすめられて。ずっと読みたいと思っていたものの、長らく積読になっていたので消化できて良い機会だった。
句読点のすくない文章は読みにくいなんてことは全く無く、無駄が削ぎ落とされていて張り詰めた高揚感をもたらしてくれた。
盲目の鵙屋琴(春琴)と、彼女に献身的に仕える温井佐助。
二人の主従関係は周囲の人間の理解からは遥か手の届かないところにあって、でもその倒錯した愛はたまらないほど耽美でため息がもれる。ただ二人だけのための二人きりですべてが満たされ完結する世界。
わりに私も己の観念のみで人を愛せるタイプなので、春琴の身に起きた悲劇を追うように全盲となってからの佐助の胸中は痛切に感じた。
こん -
Posted by ブクログ
上巻の雪子のお見合い、中巻の妙子の恋愛、その二つがより大きく激しいものとなって描き出された最終巻。
これまで家格が下の者とばかりお見合いし、断ってばかりいた雪子側が、冒頭で格上の家との顔合わせで初めて逆の立場に。
当の雪子よりも、姉妹の内で主だってそれを差配した次女幸子が落ち込む。
それから間を置かず、進歩的な末妹妙子が破滅的な恋愛と病とに陥る。
その嵐を蒔岡一家一族で乗り越えてゆく様に深い人情味が見えた。
最後の最後でやっと纏まりそうな雪子の縁談が、また妙子のせいで壊されそうになるのがもどかしかったけれど、その妙子も小さくはない報いを受け、長くも短く感じられた三姉妹の物語は結ばれる。
血の繋 -
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上流の家系に生まれた4姉妹の物語。
上から鶴子、幸子、雪子、妙子で、主に次女の幸子視点で語られる。
三女の雪子が齢30にしていまだ未婚であり、家族のつてで縁談(お見合い?)を組んではいるものの、なかなかまとまらずにいる。
雪子は無事に嫁げるのか?が物語の主軸でしょうか?
雪子は家族や姪っ子とは快活に話せるのだが、一歩外へ出てしまうと、他人と話す時に必ずしどろもどろになってしまう。本文には買いてないけどコミュ障である。
自分の意見を積極的に言うタイプではなく本当はいやなのに我慢して何も言わない、と言うシーンが多かった(そのせいで家族との意思疎通にたまに齟齬がでる。)
自分は性別は違いますが、 -
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鶴子、幸子、雪子、妙子
の4姉妹の話
格式高い家柄だった蒔岡家が衰退していく中でのドタバタ劇
みたいな
雪子の子どもの頃まではある程度豪華な暮らしができていたけど妙子はその暮らしを知らないという背景がある
題名から雪子メインかなと思いきや、案外妙子が1番話題になっていたような
あと、幸子の夫の貞之助視点で語られる場面が意外と多かった
印象に残る場面はたくさんあった
・ロシア人との食事で、ロシア人に呼ばれて行ったのに、家族全員で待っていないし、料理も出てこないのを蒔岡家の人達は日にちを間違えたと思う場面
・幸子が流産して、その日を思い出して涙する場面
・幸子と貞之助が2人で旅行に行った際の -
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序盤は、文字間隔や背景の色などで読みにくいのが気になった。
でもこの文章も装丁の内であって、文章だけちゃんと読みたい人は普通の小説を読めば良い訳だから、と自分に言い聞かせながらページをめくっていく内に、マツオヒロミさんの絵にすっかり魅了されてしまった。
これは絵本の域を超えていると思う。漫画、小説、映画など、一つの作品を味わうのに色々なジャンルがあるけれど、まだ名前のない新たなジャンルを体験しているのではないかという気がした。
お話の方はすごく谷崎らしいのだけれど、今まで主人公を谷崎の顔で想像してしまっていたのがこのイラストに挿し変わるだけで、こんなに世界が変わるのか、と思ってしまった。
素 -
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この話の始まりは、色好みの平中こと兵衛佐平定文の色ごとからなる。
時の左大臣は、政敵菅原道真を追い落とした藤原時平(通称しへい)。時平は年老いた叔父国経の若く美貌の北の方に目を付け、自分のものにしようとしていた。かの北の方は、かつて平中も国経の目を盗み忍んだ相手だ。
時平は、国経を持ち上げ追い込み、ついには「我が宝」と呼ぶその北の方を堂々と連れ去ってしまう。
その様子を平中は苦々しく思っていた。平中は色を好むが、相手につれなくされれば燃え上がり、泣き真似が読まれていたり相手の汚物を手に入れようなどとユーモラスかつ粋な恋の駆け引きを楽しむ。そんな彼にとって、見せつけるようにしてその妻を奪うという -
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ネタバレ谷崎潤一郎のフェティシズムをテーマにした短編集。
時には残酷に時にはマゾになる登場人物たちが魅力的。
この作品を読んでいるとサドとマゾは表裏一体なのだなと思わせられる。
そして、女性の体の「そんなところまでみているのか」と逆に感心させられてしまうほどの執拗な描写は谷崎のこだわりを感じさせられる。
やらしいのにやらしく感じさせないのが素晴らしい。
特に、「富美子の足」などは足の描写だけでよく、こんなにもページをさけたな!と思えるほど
谷崎が足フェチを炸裂させている。
登場する女性たちもみんな無自覚小悪魔といった感じで「ふーん、なるほど谷崎はこんなタイプが好きなのか」
とニヤリとしながら -
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猫リリーと庄造と品子(前妻)と福子(後妻)。それに庄造の母おりんが絡むのだが、猫の動きの描写が実に素晴らしい。隷属を好まずしかし愛玩される猫の振る舞いの数々、愛猫家にはたまらない一冊であろう。甲斐性なしの庄造の愛情が人間の妻よりもはるかに猫にばっかり向いていることを、2人のおんなそれぞれが嫉妬したため、前婚も後婚もうまくいっていないのだが、それでもなお猫に振り回される庄造と、そして嫌っていたはずなのにいつの間にか猫を大好きになってしまった前妻と、相変わらず癇癪もちで夫に厳しくあたる後妻の、それぞれが織りなす関西弁がユーモラス。
登場人物に谷崎特有の色気は全くなく、専ら猫に色気が集中している -
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ネタバレ昼ドラのように人間関係がめちゃくちゃドロドロしていて抜群におもしろい。唯一マトモそうに見えた柿内幸太郎すら、なんと最終的には徳光光子と関係をもつに至る。とにかく、登場人物の誰ひとりとしてマトモな者はおらず、全員が異常者である。しかし、本作の真に恐ろしい部分は、その登場人物が展開する愛憎劇それ自体ではなく、果たしていったいなにが真相であるのかよくわからないところである。ラスト・シーンで園子の独白によって明かされるところによれば、園子と幸太郎と光子は3人で心中を試み、園子だけが生き延びたという。しかし、そこに至るまでの過程において、まるでオセロのように、セクションごとに展開が一転また一転とすぐに変
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Posted by ブクログ
細雪を読んでいる間中、ずっと不思議だったのですが、どうして、延々とひとつの家庭の毎日を眺めるだけなのがこんなに面白いのでしょうか。さすが文豪。
上巻のときに、もしや…と思っていたことが本当になりました。4人姉妹(といっても長女はほとんど出てきませんが)の中だったら妙子が結構好きだなーと思ってたのですが、前言撤回です。身内にさえ秘密主義というか、腹黒いというか、どこか信用のおけない感じが苦手です。
逆に、上巻ではなにを考えているのか全然だった雪子が、中巻だと少しだけその心理を吐露してくれて、意外と男前だなという印象に。
妙子は、自称サバサバ系というか、内心がすごくドロドロしているのが苦手な
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