谷崎潤一郎のレビュー一覧
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ネタバレ解説によると、新しい思想、文化の出現、私生活での千代夫人をめぐるトラブルなど、谷崎にとって大正期(関東大震災まで)は試行錯誤の時期だった。
理想の芸術の実現を目指す「金色の死」、撮った覚えのない映画にまつわる「人面疽」、学級を支配する生徒についての政治的な「小さな王国」、6ページに及ぶ足の描写にあっけにとられる美脚賛歌「富美子の足」、探偵との会話によって次第に真相が明らかになる「途上」など、いろいろなタイプの作品が収録されているが、どれも後の作品に通じる要素を含んでいる。(一見まじめに思える人物が、急に変貌する(正体を現す)というのもそのひとつ) -
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ネタバレ下巻は、雪子の二度の見合いと、妙子の赤痢と妊娠と死産が中心。控えめな雪子と行動的な妙子が対照的に描かれ、幸子はそれぞれに頭を悩ませる。子爵の一族に嫁いでいく雪子と、バーテンダーと夫婦生活を始める妙子の結末も対照的。
大垣の親戚家族との蛍狩りのシーンが幻想的。
見合いの世話をする井谷、丹生の両夫人の会話がテンポよく、見合い相手の橋寺、御牧との掛け合いも面白い。
巻末の回顧では、刻々と変わる時勢のなか、自動車や列車の料金や芝居の場所や演目、映画のタイトル、大水害の様子などを調査し、あらかじめ時系列にあらすじをまとめ、だいたい予定どおりにいったと書いている。また、頽廃的な面が書ききれなかったが -
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ネタバレ大阪の商家・蒔岡家の四姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子の人間模様を描いた小説。日中戦争勃発前後の時代ながら、時局の影もほとんど感じさせず、幸子は二人の妹の結婚に頭を悩ませつつも、のんびりとした日々を送っている。
長い小説ではあるが、なにかと事件が起きるので飽きずに読める。ときに可笑しく、ときに感傷的なホームドラマ。
また、(上流社会のものではあるが)当時の風習や価値観などがうかがえるのが興味深い。昔の人はのんびりしていたらしい。見合いの前に興信所に頼んでかなり詳しく相手方の身元を調べていたり、引っ越しの見送りに百人近く人が来ているのに驚いた。新潮文庫の注釈が詳しいのも良い。
「何しろ本家の連 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大学生の時にロシアに10日ほど行ったことがあるんだけど、現地のロシア人学生に「とても興味深かったわ」と言われた思い出がある。当時はあまり読書に熱心でなく谷崎潤一郎も知らなかったので「へ、へえ~そうなんだ(愛想笑い)」としか返せなかった。ハチャメチャに悔やまれる。日本人がいかに闇の中で美を見いだして来たか。具体的な例をあげながら書かれているんだけど、ずっと納得しかなかった。なぜ畳の上に座っていると心安らぐのか。なぜタイル張りのトイレがちょっと落ち着かないのか。心のどこかで感じ取っていた美的感覚を全部言語化してくれていてとてもスッキリする。特に衝撃だったのが、私は今まで金の屏風や金閣や大阪城を見な
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