谷崎潤一郎のレビュー一覧
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ネタバレ谷崎潤一郎の作品の中でもミステリ系のものを集めた一冊。
以下特に好きだったものについて。
『秘密』
ありきたりな刺激では満足できなくなった男が女装して出歩いたりしているうちに、過去に関係があった女とたまたま出会い、道中目隠しをしたままで逢瀬を重ねるが…
途中までの情熱とラストの呆気なさがとてもよかった。
『途上』
乱歩も好きだったという作品。
プロバビリティーの犯罪。探偵が歩きながらする会話の中でじわじわ追い詰めていく様が好き。
『私』
学生寮で盗難が頻発し、主人公の「私」がどうも疑われているようだが…
嘘はつかずにうまくミスリードさせているところと、人間や人生の不可解さがよく現れているところが好き。
『白昼鬼語』
たまたま拾った暗号文が殺人の計画を話し合うもので、犯行時刻に目印のある家に行き、覗き穴から覗いてみると本当に殺人が行われていて…という話。
なかなかショッキングなオチかとおもいきや…という感じで最後まで楽しめた。
『柳湯の事件』
これが一番好きだった。
一緒に暮らしている女を半死の目に合わせて家を出てきた男が、たまたま入った柳湯の湯船の中に、なにかぬるぬるぶよぶよしたものを触って…という、幻想とミステリが融合したような話で面白かった。
『日本に於けるクリップン事件』
これはクリップン事件は本当の事件で、日本での事件は谷崎の創作ということだよね?
マゾに関する考察も納得がいくものだったし、ラストゾッとする感じもあり、面白かった。 -
Posted by ブクログ
上中下一気に読んだ。
人の矛盾を孕んだ細やかな思考の流れを
心地よいリズムで悠長に書きつけてあって
日記を読んでいるような
それでいて全て主語は三人称(主に次女の幸子)
独特な中毒性のある、素敵な文章で読み始めたら止まらなかった
雪子の見合いに始まり、
雪子の結婚で終わる
およそ五年?ほどの歳月を描いたストーリー
人を着ているもの、体型肌艶、話し方雰囲気などで色々と考察する視点は
SNSなどないし情報も少ない上で、
結婚はもちろん人付き合いが生きる術となる時代に
どれだけ重要視されていたのか思い知ったし
その視点に今も学ぶことが多いと感じた
板倉のことを若くて丈夫なのにどこか幸薄い相のある男だと思うから助からない気がすると言った幸子とそれに僕もそう思うと言った貞之助には、
そういう直感でみてOKなんだと驚いた笑
だけど、そういった幸子の勘は稀に外れることもあって
それがまたリアルで好ましいなと思った。(妙子の死など)
でもそれ自体は外れていても、その時感じた感覚のような
事象ではない何かは的を得ていたりするのかもしれないけど。それもすごい。
四姉妹のこと
鶴子は一生懸命だし素直だしとても好感が持てる
実は子供らしい一面や他の姉妹を恨めしがっている筋があるところなど
主に幸子の視点から全て暴かれていて愛おしい
(実際はこんなもんではないかもしれないが雪子があんまり慕っていない
ところからも感性はそんなに豊かでないのだろうと思う)
だけど一番蒔岡全盛期の恩恵を受けて育っているのに没落してゆくという
悲劇的な局面にあって、柔軟に生きていけて時にはプライドも捨てられるという
同じ女として立派な人だと思う
幸子は四姉妹の中で一番平和で幸運なんではないかと思えるけれども
この繊細さと優しさでもって生きていくのが実は一番しんどい人だと思う
当たり前だけどこの姉妹にこの人がいなければ成り立たないなあ
雪子、小さくて儚くてそれでいて芯が強くて潔白
あとがきでは聖母として描かれているような記述があったけれど
個人的にはなんと肝が据わって図太いというか、すごいなと思っていた
私だったら誰でもいいからとにかくもらってもらわなければと焦る
自己肯定感でいったら姉妹中で一等賞と思われる
でもそこがすごく素敵だと思った
雪子を見習わないといけない
飄々としていて格好いい友達になりたい女性
妙子、本当の本当はどういうことを考えていたのか最後までわからない
でも私はこの人が一番可哀想だと思った
薪岡といっても栄華は一度も味わっていないし母の記憶もほぼないし
上の三人は一般の中にあれば「世間知らずのお人形さん」で、
綺麗でお金持ちで悩みとかないやろうと思われる存在だと思うが
妙子もそういう目を持って姉妹を眺めることができる人だと思う
谷崎潤一郎の設定の秀逸さがすごい
奥畑との関係性もすごくリアルというか複雑で良かった
一点、妙子がみんなの前で舞を踊った発表会のとき、
近くの舞妓も踊りに来ていてその一人と
稽古というか降りの確認をしたいといって二人きりになっていたところ
あれは絶対に奥畑の女で一騎打ちしたんだと思っている
ゾクゾクした
戦後の方が生きやすい人なんだと思う
きっと幸せになってほしい
全体にみて、
この第二次世界大戦目前の空気感が、
現代の空気感と似ているという生き証人方の意見を
実感するところが多くてゾッとして憂鬱になった
とても参考になった
個人的には、
日常生活において現実的なこととは別に
目に見えない直感のようなものを大切にした生活ぶりが
すごく腑におちたし、こうあっていいんだと安心した
私も人に対する直感とか、出来事に対する香りのようなもの
そんなものをもっと現実に作用する一つの事象として
生活に織り交ぜて生きていきたい
人に対する返事のし方など、
気を使いすぎるくらいでちょうど良く
矛盾する気持ちだってきちんと人に伝えられるということ
文章の大切さなどを改めて知らされた
今思えば、そんな中にも現代的にテキパキした人(井谷とか)もいて
本当に多彩で面白いキャラクターばかりの小説だなあと思う
永遠に読んでいられそうだし読んでいたけど
そこから何を得るのかといえば何なのかわからない
サザエさんとかちびまる子のような
谷崎潤一郎もしんどいやろうしこの辺で。 -
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わぁい!
きれいな本! きれいな本!
と思わず手にとってしまいました。
たぶん、二人の稚児という作品は、挿し絵のない活字だけの本で何回か目にしています。
作品への印象はかなり違います。
実をいうと、登場する二人の稚児を一方は、世俗で成功し、一方は努力して信仰において成就したのだと、文字のみで読んだときにそう読んだのですが、どうも、そのようではないのではないか。
そもそも、ふたりは身分に隔たりがある。
こんな例って、他に何かあったろうか、と思ったら、そういえば、モーツアルトの歌劇「
魔笛」では、王子のパミーノ(?)と鳥刺しのパパゲーノの対照的な結末があり、そこでは高貴とおもわれる夜の女王の娘のパミーナ(?)と王子のパミーノが試練の末に結ばれ、いささか大衆的で子沢山のイメージでパパゲーナがパパゲーノと結ばれるというような対照的な結末がしくまれていたのでした。魔笛では、太陽を思わせる父王が、夜の女王を滅ぼし、大団円をむかえるのですが、かなり意図的に対照的にえがかれている感じがします。
登場人物の属性が、実は最初から設定にあつて各々の結末であるような用意周到さが、オペラの楽しさとは別にあるようです。
そう思った時に二人の稚児の作家は誰に向けて書いたのだろう、と実をいうと思いました。
発表された当時、この作品がどのようなかたちで、人の目に触れたのか。
稚児の二人の稚児の行く末に違いを考えたのはなぜなのか。
当時、小説はどんな風に読まれていたのだろう。
それを知ってどうというわけでもないのだろうけれど、かたちを変えて何度も目にする理由はたぶん作品に力があるからなのだと思います。
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「谷崎潤一郎」といえば、明治・大正・昭和の三つの時代に活躍した、『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』などの代表作で知られる、文化勲章も受けた日本を代表する文豪のひとりでしたね。(1965年に鬼籍に入られています)
本書『谷崎潤一郎 犯罪小説集』には、以下の4作品が収録されています。
・柳湯の事件(1918年)
・途上(1920年)
・私(1921年)
・白昼鬼語(1918年)
本書を読んだことで、いわゆる「文豪」と呼ばれた作家たちとミステリー(犯罪小説、推理小説、探偵小説)作品の関係を調べていくと、非常に興味深いことが多く、そういう点でも、本と読書の魅力を改めて感じることが出来ました。
谷崎潤一郎と本書収録作品のみについていえば、
・日本で最初の本格探偵小説といわれる江戸川乱歩の『二銭銅貨』が雑誌「新青年」に掲載されたのは1922年であり、上記の4作品全てがそれ以前に書かれていたということ。
・クリスティーの代表作の一つの有名なトリックが、その5年前に『私』で使用されていたこと。
(そのクリスティー作品を私は読んでいましたので、トリック自体の衝撃はそこまで大きくはなかったのですが)
の事実には、驚きと共に、谷崎潤一郎という文豪の才能を認識させられました。
収録作品の感想としては、やはり『途上』が最も面白く読めました。
(探偵と会社員の二人だけの会話で構成され、追い詰められていく会社員の感情が恐怖へと移り変わっていく様子が見事に描かれており、秀抜だと思います。)
「やはり」と書いたのは、20年以上も前に『日本文芸推理12選&ONE:エラリークイーン編』を読み、その中に収録されていたからです。
その当時に感じたプロバビリィティーの犯罪(わずかな可能性も、あらゆる機会を利用することによって、ついに必然に変わってしまうのか?:クイーン)の面白さと衝撃を今回も味わえました。 -
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谷崎潤一郎が実は推理小説、ミステリーらしきものをいくつもしたためており、しかもそれがどれも秀逸らしい、と知り手に取った一冊。
収録されている4篇ともキャリアの序盤、100年と少し前に書かれたもので、やたらと"気違い"などという言葉が登場し、マイノリティやハンディキャッパー、あるいは女性に対する差別が顕在的かつ余りに露骨だなあ…と、今となっては半ば呆れてしまうところはあるが、読んでいるうちに我知らず、その時代に生きているかのような錯覚に陥る。
それほどまでに、作品が持つ見えざる膂力は凄まじく、つまり、文章の美しさ、完成度が際立っている。
プロットの方も、江戸川乱歩が文壇に現れる前の当時では、まだ誰も日本語で読んだことがなかったであろう、革新的かつ実験的なミステリーの構築が試みられており、こんな一面もあったのか、と素直に感嘆する。
そこに、人間の醜い業とも言えるフェティシズムや、退廃的な印象すら醸し出す耽美主義といった要素が不可分に絡みついてくるところが、いかにも"らしい"ところであり、期待を外すことはない。 -
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ネタバレ目次
・病蓐の幻想
・ハッサン・カンの妖術
・小さな王国
・白昼鬼語
・美食倶楽部
・或る調書の一節―対話
・友田と松永の話
・青塚氏の話
それほど谷崎潤一郎作品を読んできたわけではないけれど、明らかにこれは今まで読んできた谷崎とは全然違う。
耽美というよりあからさまに変態寄りだったり、悪夢のような話だったり、なんだろうちょっと大衆的。
読みやすい文章も相まって、「これ、菊池寛じゃないよな」と表紙を確認すること数度。(切り口はまったく菊池寛ではありません)
おどろおどろしい作品もあるのだけれど、からりと乾いた文体がどうも日本っぽくない。
どちらかというとポーとかスティーヴンソン。
もしかしたらマーク・トウェインもお好きだったでしょうか。
”どうも日本人はくだらないセンチメンタリズムに囚われるんで、芝居でも活動でも湿っぽいものが多いんだけれど”(青塚氏の話)
意識的にドライに書いたのでしょうね。
もう少しウェットになって闇が増えると江戸川乱歩になる。
『美食倶楽部』を読みたくてこの本を借りたはずなんだけど、一番無理だったのが『美食倶楽部』でした。
全然おいしそうじゃないし、何なら気持ち悪い。
海原雄山に「こんなものが美食といえるか!この馬鹿者が!」と怒鳴りつけてほしい。
思わず笑っちゃったのが『或る調書の一節』。
人を殺してもろくに反省もしない男、奥さんが「心を入れ替えて真っ当になってくれ」と泣くたびに自分は救われるような気がする、という。
他に愛人がいるのだけど、奥さんに泣かれると、自分もつい泣いてしまう。
だけど、取調官に「では奥さんを愛しているのか」と聞かれると「愛していない」と、「泣いてくれるなんてかわいいひとではないか」と言われると「顔がかわいくないので、「かわいくありません」と、実に正直にお答えなさる。
これが真面目に行われている会話だと思うと、妙な可笑しみを感ぜざるを得ない。
『友田と松永の話』は、絶対スティーヴンソンだわ。 -
Posted by ブクログ
なかなかおもしろい。
エッセイ集であり、表題にある「陰翳礼賛」をきっかけに「適切」とはなにかを探るエッセイが並ぶ。
「陰翳礼讃」は文字通り「暗さ」についてのエッセイ。
日本の建物は以前は暗くて、それがよかったのだという。
古い料亭で、電気を使わずに、薄暗い灯りの中で食事をするのがよいという。
日本の場合、器や、食べ物そのものが、手元もよく見えないような明るさの中で楽しむようにできているだそうだ。
西洋はなんでも明るくしてしまう。そして、日本もその影響を受けて、当の西洋人が驚くくらいになんでも明るくしてしまった、と嘆く。
西洋人が明るさを好むかどうかという話については、聖書において神が天と地を作られて、そのあとで「光あれ」と言われたという描写があるし、ギリシャ神話でもプロメテウスが人間のために火を盗む。そう考えると、西洋人は明るいのが好きなのかな、と思う。
他のエッセイでは、口語体や「のである調」と命名した文体のことなども語られている。また、西洋の文章はなんでも説明するから、それを翻訳するとやたらと事細かくていけないという。日本語には向かないそうだ。
建物の陰翳にも通じるものがあって、すべてをさらけ出すのは美しくないということなのだろう。
文体へのこだわり、もしくは敏感さといったものは、さすがだ。このくらいのこだわりがあるからこそ、超絶技巧的な句読点の使い方をしている「春琴抄」のような作品が書けるのだろう。
ただ、平安時代の文章も口語体であり、当時の人は実際にああいう文章と同じ口調で話していたのだろうと書いてあるくだりは、ちょっと首をかしげた。
人づきあいについても、もはやあまり交友関係を広げたくないと語る。
大阪の暑さや、それに適した生活のことなども。
角川ソフィア文庫で読んだのだが、「解説」がおもしろい。
本作で「陰翳」への礼賛を熱っぽく語りながら、実際には谷崎は明るい間取りの家を建てたりもしていて、かならずしも本書に即した生活を送っていたわけではないようだ。種明かしを見ているようで、最後まで楽しめた。 -
Posted by ブクログ
先日鑑賞した作品に『刺青』が引用されており、「そう言えば谷崎潤一郎は読んだことがなかったな」と手にとってみた。
知識としてどういう作風かは知っていたつもりだったけれども、想像以上に耽美な世界観だった。サディズムとマゾヒズムがふんだんに織り込まれている。情景としてはおぞましいはずの場面も、滑らかな筆致でするすると飲み込まされてしまう。なんというか、ずるい文体だ。個人的には『秘密』が好き。
『異端者の悲しみ』だけはすっきりしない読み心地でもやもやしたが、解説によると自伝的な作品であったとか。そういう見方をすると、確かに受け取る印象は変わってくる。
谷崎潤一郎、女性と母親像とに物凄い思い入れがあることは全編通して強く認識した。他も読んでみるかなあ。
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