あらすじ
猫に嫉妬する妻と元妻、そして女より猫がかわいくてたまらない男が繰り広げる軽妙な心理コメディの傑作。安井曾太郎の挿画収載。同時併録は美女とペルシャ猫への愛を高らかにうたう未完の小品「ドリス」。
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Posted by ブクログ
このタイトルなら、絶対前に読んでる!
でも、猫と、猫好きな飼い主と妻と元妻が猫を巡って一騒動~という、ざっくりした記憶しかなかったので、再読してみました。
これがめちゃ面白い!
笑える心理コメディになってます。
離婚して再婚したばかりの庄造。
元妻の品子から、今の妻の福子の所へ、「猫のリリーをくれ、それだけしか望まないから」という手紙が来る。
庄造の猫バカっぷりにイライラし始めていた福子は、猫を品子に渡すように迫ります。
福子も可愛がっているようだったのに?態度の急変に戸惑い、あたふたと逃げ腰の庄造。
人当たりは良いが、気が弱くて、怠け者な庄造です。
品子はしっかり者だけど、姑と折り合いが悪く、4年で追い出されてしまった。
姑は、親戚の若くて財産がついている福子に目を付けて、息子が福子とくっつくように事を運んだのでした。
リリーは、これがまたとても綺麗で賢い猫で、既に10歳。妻二人よりも長い仲で、ベタベタなのですね~(笑)
庄造は、抵抗むなしく猫を品子の元へやったものの、心配でたまらず、しまいには恋しくて一目でいいから見たいとこっそり出かける始末。
品子の方にも、色々な思惑があって、好きでもなかった猫の引き取りを望んだのでしたが。
飼い始めたら、当初は上手く行かなくて奮闘。逃げられたりしたのに、色々あって、可愛くてたまらなくなってしまう。
ついには、こんな可愛い生き物の良さを感じていなかったなんて、情の薄い女だったから結婚も上手く行かなかったのだと、反省までするのでありますよ。
リリーの方も、理由はどうあれ自分を捨てた庄造よりも目の前の品子に心を開いていくようになったのね~。リアル!
猫愛に目覚めた品子さん、幸せを手にしましたね(笑)
「蓼喰う虫」に比べると、かなり軽いです。
夫婦の揉め事を扱っているのは同じなので、3回結婚した実体験がモデルかと読み始めましたが、主人公や再婚した妻の人間像が違う気がする…
2回目の離婚の後に書かれているのですが。
谷崎潤一郎の末妹・須恵が、福子のモデルのようです。夫や、姑も、そっくりらしい。
ただ、離婚する時の心境や、猫に思い出が絡みついてしまうことなど、心理面の細やかさは体験が反映している所も大いにあると思われます。
まあ大作ではないし、登場人物がすごく好きでもないから、★は4つかな…と思ったけど~
猫好きとしてはわかりすぎる描写が、捨て置けない気がして来ましてね。
すぐまた読み返したところ、猫小説としては素晴らしいかも!と思うに至りました。
猫というのは、本能が割りと残っていて、人間から見ると、気まぐれに見えたり、神秘的に感じられたりもする。
それが気になって、よくわからないのに惹かれてしまう所もある生き物。
でも、人と愛情の交流が可能な生き物の筆頭に近いのではないかと。気が合えば、ラブラブになれますからね~!
それが近年の猫ブームの本質ではないかしらね。
谷崎潤一郎が描くと、綺麗な雌猫の女らしさが光るのもありますが。
これ誇張ではなく、雌猫の愛情の示しかたには、色気も、ありますよ。動きのしなやかな優美さ、は雄にも備わっているけど。
男女のゴタゴタというより、人と猫の愛が深まっていく関係を、この時代に、ここまでありありと描ききってる!という点で、★5つ並みに好ましいと。見直した次第です(笑)
Posted by ブクログ
猫リリーと庄造と品子(前妻)と福子(後妻)。それに庄造の母おりんが絡むのだが、猫の動きの描写が実に素晴らしい。隷属を好まずしかし愛玩される猫の振る舞いの数々、愛猫家にはたまらない一冊であろう。甲斐性なしの庄造の愛情が人間の妻よりもはるかに猫にばっかり向いていることを、2人のおんなそれぞれが嫉妬したため、前婚も後婚もうまくいっていないのだが、それでもなお猫に振り回される庄造と、そして嫌っていたはずなのにいつの間にか猫を大好きになってしまった前妻と、相変わらず癇癪もちで夫に厳しくあたる後妻の、それぞれが織りなす関西弁がユーモラス。
登場人物に谷崎特有の色気は全くなく、専ら猫に色気が集中しているこの筆力。なおタイトルは登場人物の序列をあらわしているとのことだが、それなら猫>福子>品子>庄造かな。これから1時間ドラマつくるならこういう傑作をとりあげなくちゃ。なお未完のドリスも収録されてたがこれは駄作でした。
Posted by ブクログ
完全な犬派で猫に興味の「き」の字もない人間でも、この小説に書かれている猫の愛嬌が悶絶してしまうぐらい伝わってくる。自分に心の相棒がいる人間には心苦しいほど訴えて来る物語だと思う。
Posted by ブクログ
猫が家族な人、家族にしたいけどできない人…もうとにかく猫が好きな人!みんな読むべし!猫の描写がたまらん!猫とのやり取りがたまらん!これは猫が大好きで猫をよーく観察している、そして猫を愛でている人にしか書けない本だ。心当たりがあり過ぎるセリフにクスクスどころか、大笑い。いつの時代もどこの家も同じことしてるんだなぁ。個人的に飼い猫の名前がリリーなのが我が家のリリーと重ねて読めて更に面白かった。元は打算があったにせよ、最後に品子がリリーに傾倒していくのが、これぞ猫の持つ魔力のような魅力なんだよな…と。意外と知られてない作品のようで残念。書店にて「猫」に関する本の特集をしていた中から見つけた。こういった本屋さんの企画には大いに賛成!今までもそんな中で良作に出会えたことしばしば…。
Posted by ブクログ
谷崎作品で描かれる女性たちはみな美しい。谷崎自身が憧れる強さを持った女性たち。この作品に登場する先妻と後妻はどちらも大人の女性としてのしたたかさがある。また庄造の弱さが際立つのはその母の強さも感じられるからだろう。庄造を取り巻く3人の女に対して、リリーというメス猫も女として描かれているのではないか。読んでるうちに、『痴人の愛』のナオミを思わせる自由な女の虜になっている男と重なった。
Posted by ブクログ
30歳マザコン・ニートの男が、追い出した元妻に飼っていた猫を譲ったものの、元妻と結婚する前から飼っていた猫で思い出もいっぱいあるし、歳とった猫だし、虐待されていたりしないかと気をもんでウジウジし、その挙句、元妻の留守宅に入り込んで猫の様子を見ると猫は「あんた誰?」という反応。という猫文学。
Posted by ブクログ
おもしろすぎる。これが80年近くも前に書かれた小説とは信じられない。猫を妹かなにかに変えれば、そのままライトノヴェルとしてじゅうぶん通用するのではないだろうか。しかし、さすがに谷崎作品であるだけあって、ただエンターテインメント性に優れているのみならず、きちんと人間の深層心理も巧みに描き出している。とくに、リヽーを手放すのに難色を示しつづけ、ついにいなくなったあとも、その様子が気になって仕方がなくなり、前妻のもとまでわざわざ逢いに行く庄造という男は、最高に滑稽だし、いっぽうで、なにかに依存せずにはいられないというその性格は、かならずしも喜劇一辺倒ではない気もする。私自身はネコ好きではないが、この感情はむしろよく理解できるし、こういうどうしようもなさは、誰しもが多少なりとも持ち合わせているものだ。人間の心の闇といってしまっては大袈裟だが、そういう特殊ではない普遍的な感情を、あえて極端に戯画化して描いたのではないか。そんな気もする。とにかく、やはり大谷崎は凄いと思った。
Posted by ブクログ
15年くらい前に読んで、猫を溺愛する男を取り合う女たち……程度の認識になっていたのを再読。覚えていた倍以上は猫猫猫だった。リリーの気持ちが何もわからないからこそ惹かれるのだろうか。だいぶ猫びいきというか、人間は愚かな部分もどうしようもない部分も多めに描かれている。