谷崎潤一郎のレビュー一覧
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蘆刈・吉野葛の系譜の作品で大好きだった。中世の色好みな男と周辺の解説のような顔で始まって、北の方という一人の美しい女をめぐる男達それぞれに焦点が当たりずれていき、少将滋幹が登場するのは大分あと。御簾の影に暗闇色の霧のように立ちこめていた北の方を時平が劇的に引きずり出したあと再び彼女は姿が朧気になり物語から遠ざかった掻き消えたかのように見えるが・・・。最後まで北の方は月の暈のような女性だった。彼女の意志は見えずそれとは関係なく男達は彼女を扱い、興亡を繰り返す。彼女に自由意志はないけど、彼女を真に自由に扱えた男もいない。筆もこちらも一番盛り上がる北の方の奪取場面、鼻をつまみたくなるおかしいおまる事
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Posted by ブクログ
ネタバレ美しい。
谷崎ならではの色彩豊かな美しい文章表現や魅力的な女性キャラは健在で、そのうえで狂気的ではありつつも恋の真理が描かれていた。
相手の見ている世界を知りたいと願うのが恋で、同じ世界を見ることができたのであれば、盲目になったことなど災いどころか幸福であるという佐助の考え方は真理ではないか。
文中の「佐助は今こそげかいの眼を失った代りに内界の目が開けたのを知り嗚呼此れが本当にお師匠様の住んでいらっしゃる世界なのだ此れで漸うお師匠様と同じ世界に住むことが出来たと思った」「誰しも眼が潰れることは不仕合せだと思うであろうが自分は盲目になってからそう云う感情を味わったことがない 寧ろ反対に此の世 -
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文体が関西の言葉で書かれていて最初読みづらいなと思ってたけど読んでうちにリズムが出てきてそれが心地良くなってきたのは不思議。
題名でもある卍が淫婦である光子を中心に綿貫、園子、園子の夫が絡み合う情事を表している。全てを従えたい園子に翻弄される3人だが文体も相待ってドロドロした人間関係がわかりやすかった。同性である園子のことを妊娠したと嘘ついてまで自分の虜にする光子の執念がすごい。綿貫の男でありながら幼児期のおたふく感染で不具者になり女性のようにねちっこい性格が谷崎文学の象徴みたい。最後光子、園子、園子の夫が心中を図るも園子だけ生き残るのがなんとも残酷。 -
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今更、自分ごときがどうこう言う作品でないのは重々承知ですが、個人的備忘録を兼ねて。
「主人と奉公人」「師匠と弟子」そして「視覚障害者と介助者」の歪んだ愛。
主人であり師匠であり視覚障害者である春琴は、最大の自慢であり、自信の源泉である美貌をとある事件によって失うことになる。
奉公人であり弟子であり介助者である佐助は、春琴が見られまいとするその変わり果てた姿を、生涯目にしないことを決意する。
二人の育んできた歪んだ愛は、二人の手によってさらに歪まされることにより、ついに完成するのである。
一般的な恋愛とはあまりにもかけ離れた愛の姿。
そのどうしようもなく歪んだ愛が感動を誘う。