あらすじ
仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり……。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが……。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。
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乱歩が谷崎を日本のエドガー・アラン・ポーと高く評価したのも納得。『私』が書かれたのがクリスティの『アクロイド殺人事件』の5年前というから驚き。まさしく日本のミステリー小説の先駆者と言っていい。
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期待以上の面白さ!谷崎文学らしい艶かしさもあるし、ミステリー要素もばっちり体験できる。うーん、好きだ。
全作品魅力的だけど、しいて一番を選ぶなら『私』かな。
一言で言ってしまえは、読者=私=…なところにトリック要素があるんだけどそのプロットがさらに狂気を醸し出してる。昭和の文学だけど、文章も読みやすいし。次は長編に再チャレンジしようかな。。
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谷崎潤一郎、おもしろい!
一気に引き込まれてしまいました。
短編4作品。秀作揃いに唸らされます。
大正時代の風情が趣深い。
オススメの一冊です。
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乱歩に影響を与えたと言うのがなんとなくわかる
すべての作品に谷崎潤一郎の持つ「癖(へき)」みたいなの(語彙力がないからこう言う表現しか出来ないのが歯痒い)がちゃんとあって良かった
いつの作品を読んでも情景が思い描けて美しく、耽美でわくわくさせてくれる。
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何だか初期の江戸川乱歩を読んでるような感覚に陥ったので情報整理。谷崎の生年が1886年で乱歩が1894年。収録されている作品は乱歩デビューの1923年より前の1918年から21年に発表されている。
僕は浅学で知らなかったけど、裏表紙の紹介文によると、収録されている4編は日本における犯罪小説の原点となった作品だそうです。
『柳湯の事件』
ちょっと古い探偵小説のような入りなんだけど、段々と話が怪しくなってきて、現と幻の境目が混沌としてくる。さすが谷崎潤一郎(笑)。後半は探偵小説というよりも怪奇小説です。ぬらぬらのてんこ盛り。
『途上』
これまたちょっと古い探偵小説のような入り。執拗に触感を書き表した前作とは異なり理詰めの言葉で語られる完全犯罪計画。谷崎が様々な形態を試していたことを示す作品。明智小五郎(江戸川乱歩)もD坂で本作を称賛しています。
『私』
これもまた前2作と異なる形式。解説によると谷崎のお気に入りの作品の一つだったみたい。ストーリーよりも、表記スタイルが重要な作品。
『白昼鬼語』
「ちょっと人殺し見に行こうぜ」って感じのカジュアルなイカれっぷりにワクワクが止まりません。一番おもしろかったです。
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「谷崎潤一郎」といえば、明治・大正・昭和の三つの時代に活躍した、『痴人の愛』『春琴抄』『細雪』などの代表作で知られる、文化勲章も受けた日本を代表する文豪のひとりでしたね。(1965年に鬼籍に入られています)
本書『谷崎潤一郎 犯罪小説集』には、以下の4作品が収録されています。
・柳湯の事件(1918年)
・途上(1920年)
・私(1921年)
・白昼鬼語(1918年)
本書を読んだことで、いわゆる「文豪」と呼ばれた作家たちとミステリー(犯罪小説、推理小説、探偵小説)作品の関係を調べていくと、非常に興味深いことが多く、そういう点でも、本と読書の魅力を改めて感じることが出来ました。
谷崎潤一郎と本書収録作品のみについていえば、
・日本で最初の本格探偵小説といわれる江戸川乱歩の『二銭銅貨』が雑誌「新青年」に掲載されたのは1922年であり、上記の4作品全てがそれ以前に書かれていたということ。
・クリスティーの代表作の一つの有名なトリックが、その5年前に『私』で使用されていたこと。
(そのクリスティー作品を私は読んでいましたので、トリック自体の衝撃はそこまで大きくはなかったのですが)
の事実には、驚きと共に、谷崎潤一郎という文豪の才能を認識させられました。
収録作品の感想としては、やはり『途上』が最も面白く読めました。
(探偵と会社員の二人だけの会話で構成され、追い詰められていく会社員の感情が恐怖へと移り変わっていく様子が見事に描かれており、秀抜だと思います。)
「やはり」と書いたのは、20年以上も前に『日本文芸推理12選&ONE:エラリークイーン編』を読み、その中に収録されていたからです。
その当時に感じたプロバビリィティーの犯罪(わずかな可能性も、あらゆる機会を利用することによって、ついに必然に変わってしまうのか?:クイーン)の面白さと衝撃を今回も味わえました。
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谷崎潤一郎が実は推理小説、ミステリーらしきものをいくつもしたためており、しかもそれがどれも秀逸らしい、と知り手に取った一冊。
収録されている4篇ともキャリアの序盤、100年と少し前に書かれたもので、やたらと"気違い"などという言葉が登場し、マイノリティやハンディキャッパー、あるいは女性に対する差別が顕在的かつ余りに露骨だなあ…と、今となっては半ば呆れてしまうところはあるが、読んでいるうちに我知らず、その時代に生きているかのような錯覚に陥る。
それほどまでに、作品が持つ見えざる膂力は凄まじく、つまり、文章の美しさ、完成度が際立っている。
プロットの方も、江戸川乱歩が文壇に現れる前の当時では、まだ誰も日本語で読んだことがなかったであろう、革新的かつ実験的なミステリーの構築が試みられており、こんな一面もあったのか、と素直に感嘆する。
そこに、人間の醜い業とも言えるフェティシズムや、退廃的な印象すら醸し出す耽美主義といった要素が不可分に絡みついてくるところが、いかにも"らしい"ところであり、期待を外すことはない。
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文豪が書いた犯罪小説集。プロパビリティの犯罪を扱った「途上」、信用できない語り手を扱った「私」といった、後の探偵小説に繋がる作品という形で面白かった。
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江戸川乱歩にも影響を与えた谷崎潤一郎の文学作品。
何年も前から書かれているはずなのに恐ろしいほど読みやすい、なぜこんな文章が書けてしまうのか。ミステリ、謎、推理が大好きな人もそうでない人も平等に人権を与えてしまう谷崎潤一郎が1番すごいです。
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江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」での会話で谷崎潤一郎の「途上」を完全犯罪と言っていたので見てみたがほんとに偶然に偶然を重ねた必然的な事件で驚いた。
こんな執念深さをもつことに恐怖すら感じた。
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高校生の時に読んだ「富美子の足」に
衝撃を受けて以来、久しぶりに谷崎潤一郎作品を読んだ。
(メインタイトルの「白昼鬼語」は
そんなオチ?と思ってちょっと消化不良...)
とにかく女性の描き方に並々ならぬ作者の拘りを感じる。
女の滑らかさ、白さ、美しさ、など
人一倍女性に執着してたんだろうなと改めて思った。
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収録作は「柳湯の事件」「途上」「私」「白昼鬼語」の4作品。女性が出てくると怪しくて美しい世界観に一気に引き摺り込まれる感じがする。
「白昼鬼語」が4作品の中で1番長くて読み応えがあった。オチが予想外でびっくり。
犯罪小説として1番面白かったのは「途上」。探偵がある男を追い詰めていく様が痛快だった。
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江戸川乱歩「D坂の殺人事件」で紹介されている谷崎潤一郎「途上」1920年T9年発表。こうすれば相手を殺しうるかも知れない或いは殺し得ないかも知れないそれはその時の運命に任せるプロバビリティー犯罪物としての日本初。ある会社員が私立探偵に前妻の死についていろいろと聴かれる2人だけの会話小説なのに谷崎潤一郎の文章になると凄いことに。
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これが書かれたのが100年も前だなんて。
谷崎潤一郎は、ミステリもいけるのだ、さすが大谷崎…!
さて。谷崎潤一郎と言えば、耽美とか悪魔主義とか…あとは女性の美しさを余す所なく表現するとか…まぁちょっと変態っぽさもある。あと足フェチ。
そういうイメージを取っ払って読んで欲しい。偉そうに言うけど、ちゃんとミステリ。謎解き要素もある。
4つの短編が収録されているが、どれを読んでも読者は各話の主人公と同じように、謎解きの世界に巻き込まれていくが……ちゃんと谷崎潤一郎の作品だ。
と言うのは、先に述べた谷崎作品のイメージが、がっっっつり入っているのだ。
女の悪魔的な美しさ。そして痛めつけられた女の独特の艶かしさ…そう言ったものを充分に味わうことが出来る。
他にフェティシズム小説集、マゾヒズム小説集が刊行されているが…一番読みやすいのは、この犯罪小説集ではないだろうか。
フェティシズム小説集もマゾヒズム小説集も、どちらも読んだし好きなのだが…かなりマニアックだと感じた。
フェティシズム小説集にはデビュー作の刺青も入っているし、冨美子の足も入っているしお勧めなのだが…読みやすさからいくと、これが一番良いと思う。
ミステリとして読んでも非常に良かった。
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短編アンソロジーである。谷崎潤一郎の耽美性が満ち満ちている。『柳湯の事件』、『白昼鬼語』が特に好きだ。読者はもてあそばれて、魅せられる。読む前は実在の犯罪をもとに書かれた作品だと感じてたが、そうではなかった。潤一郎ワールドが甘美に展開されていた。纓子にくるおしい思いを遂げてしまった園村はさすが潤ちゃんである。『痴人の愛』のナオミを思い起こした。「犯罪小説」の話から脱線してしまった。
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谷崎の小説を読むのは、これが初めてだ。一般には、『細雪』『痴人の愛』『春琴抄』あたりから入り、氏独特の耽美的な、官能的な、あるいは変態的な世界を楽しむのだろう。そしてその世界は、谷崎をもってすれば、わざわざ「犯罪」という要素などなくとも、純文学の世界で十分描くことができる。
この本を手にしたのは、したがって、読み手である自分が単に「ミステリーが好き」ということにのみ由来する。が、読んでみて損はなかった。
解説で渡部直己も言及しているが、最初に感じたのは、いずれの物語も(本書には四編の話が収録されている)実にポー的であるということだった。筆名をE・A・ポーからとった江戸川乱歩に大きな影響を与えたというのも、むべなるかな。ミステリー小説の祖といわれる乱歩に先駆けて、谷崎がミステリー小説をものしていた、というのも新たな発見だった。
これらの小説が書かれたのは、大正年間のことであり、舞台は東京ではあるが、当然今の東京とは風景そのものが異なる。犯罪現場を壁に開いた木のふし穴から覗くというのは、現代の常識では思いつかないが、「ふし穴」から「覗く」という行為そのものにも谷崎特有のマゾヒズム的変態性が見てとれるように思う。その意味で、たまさか出会った谷崎の犯罪文学集ではあったが、読んでみて、これほど「谷崎文学入門」に相応しい小説もないのではないかという気がした。
なぜなら「犯罪」というテーマを前提としているがゆえに、そこにいくらかのフェチズムや耽美浪漫といった要素は多かれ少なかれ含まれるという共通認識は、これをテーマとする物語を読む者の共通認識としてあるだろう。この、共通認識のおかげで、読み手は谷崎のアクの強い世界に足をとられることなく、程よい谷崎の変態っぷりを楽しむことができるからである。
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短編集。以前半分ほど読んで放置していたような気がする。
女性の描写が破滅的ですごく良い。後半半分ほどを占める「白昼鬼語」がやはり最も読んでいて面白かった。理想の美女に殺されるのも悪くないと思ってしまった。
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江戸川乱歩に影響を与えたものがあるときいてはじめて谷崎潤一郎を読んでみました。
女性関係のものが多いと思っていたので推理小説もあったとは…。
素人探偵と助手のような関係のコンビが出てきたり、読者を騙したり焦らせたりするような話があったりとミステリの基礎みたいなものが詰め込まれてました。
文章も巧みで読みやすかったです。
でもやはり谷崎がえがきたかったのはミステリではなくて女の人がメインだったんじゃないかなという感じがしました。耽美。
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これは面白い短編集でした! 「柳湯の事件」、「途上」、「私」、「白昼鬼語」の4編収録。ここまでガチでミステリ書いてくれてるとは思わなかったよ。
「白昼鬼語」が良いですね。「柳湯の事件」で全面に出してきたヌラヌラフェチを封印して、謎の女の妖艶さとそれに惹かれる男の駆け引きに振り回される友人の私、という構図。谷崎作品の中でポーの黄金虫や、ホームズ、ワトソンなんて単語が出てくる作品があるとは。乱歩が谷崎ファンだったのも納得でした。
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「柳湯の事件」 「途上」 「私」 「白昼鬼語」
「私」ラストの部分の犯人の独白が案外考えさせられるというか、共感できるというか、ここで突かれると思ってなかった「私」を突かれたようで感動のような、真逆の不快のようなそんな気持ちになった。
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かなり昔の小説なのに、現代の小説に劣らずむしろ他よりも価値が高く個性溢れたミステリーでした。
江戸川乱歩などの小説家に影響を与えたというのがよくわかる作品でした。
短編が4つなので、読みやすいですし、どれも個性的なのがいいです
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短篇4作。現代仮名遣いになっているので読みやすい。純文学のイメージだったので意外な面白さ。
「柳湯の事件」は幻想風味もあるがドロドロした感触が伝わってくる。
「途上」探偵がじわじわと追い詰めていく様子がスリリング。
「私」は信用出来ない語り手。アクロイドより前に書かれたというから驚いた。
「白昼鬼語」は探偵と助手ものの趣きがあって面白かった。美女の描写にとても力が入っている。
オチはそうか、となるけれど興味をそそられる謎が散りばめられている。
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なんか乱歩っぽいなと思ったら、乱歩が感銘を受けた作家なんですね。 登場人物の心理描写が秀逸で、文章もとても美しくて一気読みでした。 他にも小説集があるようなので読んでみたいと思います。
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四編収録されている中編集。谷崎潤一郎は「細雪」ぐらいしかちゃんと読んだ事はなかったのでこういう犯罪小説を書いていたのを知って読んでみた。全体的にミステリというよりも犯罪小説といった方がいいのは確か。だいぶ昔の犯罪小説というだけあって犯罪小説としては容易にオチがわかるものばかりだったが、それでもその筆力によって現代の読者でもぐいぐいと先を読ませてくれる話はやはり大作家といえると思う。気に入ったのは一番現在のミステリに近い「途上」かな。
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乱歩が影響を受けたというだけある、倒錯した世界。
だけども、筋立てとしてはどれも無理がありすぎる。。。
一番面白かったのは「私」。
あの展開、あの瞬間は小説ならではのスピード感。
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推理小説4編。推理小説を読む楽しみの一つは思い込みを打ち砕かれることにある。大概それは物事への認識に対するものだけれど、本書が面白いのは読み手の感情に対してなされることにある。特に「白昼鬼語」の読後感は今までに無いものだった。
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意外? 谷崎のミステリ小説!
なるほど、気持ち悪い(褒め言葉)。私の谷崎理解は何か歪んでいるような気もしますが、なかなかに谷崎っぽく、面白く読みました。
谷崎が犯罪小説集ときいて、フェチか、と思っていましたが、その悪魔的な魅力。乱歩が影響されたのもわかる。というか、日本のミステリ初期の傑作と言っていい。もっと知られてもいい。私が無学なだけかもしれないけど。ミステリ好きよ、谷崎がいるぞ!
「柳湯の事件」冒頭は乱歩かと思った。推理小説にありがちな滑り出しではあったけど。でも、途中の触覚の描写がさすが谷崎。ごめん、そのフェチはわからない。
「途上」いわゆる谷崎らしさは薄めで、これを単独で読んだら、誰の作品か考えてしまうかも。起承転結の結があざやか。さすが、と言えるミステリ。
「私」犯人=語り手なんだけど、犯人に同調するわけではなく、突き放した気持ちで眺めてしまい。でも、わかっていても、このパターンとしてはひきつける力があって、一気に読み切った。
「白昼鬼語」ハラハラするし、理解できないし、のぞき見のエロスとはさすが谷崎。まあ、本人が幸せならばいいじゃない、という、いつもの私の谷崎感想になってしまいますが、これも強烈な作品でした。