あらすじ
仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり……。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが……。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。
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Posted by ブクログ
乱歩に影響を与えたと言うのがなんとなくわかる
すべての作品に谷崎潤一郎の持つ「癖(へき)」みたいなの(語彙力がないからこう言う表現しか出来ないのが歯痒い)がちゃんとあって良かった
いつの作品を読んでも情景が思い描けて美しく、耽美でわくわくさせてくれる。
Posted by ブクログ
これが書かれたのが100年も前だなんて。
谷崎潤一郎は、ミステリもいけるのだ、さすが大谷崎…!
さて。谷崎潤一郎と言えば、耽美とか悪魔主義とか…あとは女性の美しさを余す所なく表現するとか…まぁちょっと変態っぽさもある。あと足フェチ。
そういうイメージを取っ払って読んで欲しい。偉そうに言うけど、ちゃんとミステリ。謎解き要素もある。
4つの短編が収録されているが、どれを読んでも読者は各話の主人公と同じように、謎解きの世界に巻き込まれていくが……ちゃんと谷崎潤一郎の作品だ。
と言うのは、先に述べた谷崎作品のイメージが、がっっっつり入っているのだ。
女の悪魔的な美しさ。そして痛めつけられた女の独特の艶かしさ…そう言ったものを充分に味わうことが出来る。
他にフェティシズム小説集、マゾヒズム小説集が刊行されているが…一番読みやすいのは、この犯罪小説集ではないだろうか。
フェティシズム小説集もマゾヒズム小説集も、どちらも読んだし好きなのだが…かなりマニアックだと感じた。
フェティシズム小説集にはデビュー作の刺青も入っているし、冨美子の足も入っているしお勧めなのだが…読みやすさからいくと、これが一番良いと思う。
ミステリとして読んでも非常に良かった。
Posted by ブクログ
短編アンソロジーである。谷崎潤一郎の耽美性が満ち満ちている。『柳湯の事件』、『白昼鬼語』が特に好きだ。読者はもてあそばれて、魅せられる。読む前は実在の犯罪をもとに書かれた作品だと感じてたが、そうではなかった。潤一郎ワールドが甘美に展開されていた。纓子にくるおしい思いを遂げてしまった園村はさすが潤ちゃんである。『痴人の愛』のナオミを思い起こした。「犯罪小説」の話から脱線してしまった。
Posted by ブクログ
短篇4作。現代仮名遣いになっているので読みやすい。純文学のイメージだったので意外な面白さ。
「柳湯の事件」は幻想風味もあるがドロドロした感触が伝わってくる。
「途上」探偵がじわじわと追い詰めていく様子がスリリング。
「私」は信用出来ない語り手。アクロイドより前に書かれたというから驚いた。
「白昼鬼語」は探偵と助手ものの趣きがあって面白かった。美女の描写にとても力が入っている。
オチはそうか、となるけれど興味をそそられる謎が散りばめられている。
Posted by ブクログ
意外? 谷崎のミステリ小説!
なるほど、気持ち悪い(褒め言葉)。私の谷崎理解は何か歪んでいるような気もしますが、なかなかに谷崎っぽく、面白く読みました。
谷崎が犯罪小説集ときいて、フェチか、と思っていましたが、その悪魔的な魅力。乱歩が影響されたのもわかる。というか、日本のミステリ初期の傑作と言っていい。もっと知られてもいい。私が無学なだけかもしれないけど。ミステリ好きよ、谷崎がいるぞ!
「柳湯の事件」冒頭は乱歩かと思った。推理小説にありがちな滑り出しではあったけど。でも、途中の触覚の描写がさすが谷崎。ごめん、そのフェチはわからない。
「途上」いわゆる谷崎らしさは薄めで、これを単独で読んだら、誰の作品か考えてしまうかも。起承転結の結があざやか。さすが、と言えるミステリ。
「私」犯人=語り手なんだけど、犯人に同調するわけではなく、突き放した気持ちで眺めてしまい。でも、わかっていても、このパターンとしてはひきつける力があって、一気に読み切った。
「白昼鬼語」ハラハラするし、理解できないし、のぞき見のエロスとはさすが谷崎。まあ、本人が幸せならばいいじゃない、という、いつもの私の谷崎感想になってしまいますが、これも強烈な作品でした。