小池真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1991(平成3)年刊。
ホラーではないサスペンス小説。ペストと、女性キャスターを狙う変態ストーカーの犯罪との2つが絡むストーリー。
コロナ禍を経験した現在から見れば、ここでのペストには「勢い」が足りなく、犠牲者が少ないのが、パニック小説としては物足りなく感じられてしまう。
一方ストーカーの変態心理については、ステレオタイプな理解しか語られず凡庸な感じがする。
例の淡々とした特徴の無い文体で語られていくのは良いが、時として地の文で特定の世界観・人間観が織り込まれてくると、その浅さが気になってしまう。
とはいえ、面白い小説ではあって、水準には達していると思う。ちゃんと伏線が回収されて -
ネタバレ
オチがない。
聞いたことのある本だったので手に取りました。
日常と非日常の交差、生と死の交差、序盤から色々な伏線が散りばめられており、ドキドキしながら少しずつ読み進め、後半、怪異が本格的に顔を出し始めてから一気に読み終えました。
文章が上手いので面白い…といえば面白いのですが、あれだけ大風呂敷を広げながら、意味ありげに出てきた前妻の位牌も、火葬場や墓地も、打ち捨てられた町おこしの計画やトンネルも、何一つ伏線が拾われないまま、いつの間にか物語が終わりました。
正直、仕事をやり切らないままに放っていかれたようなこの読後感にはかなり不満。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ短編でも長編でも、小池氏の物語の主人公は比較的中年層の人物が多いのだが、本作品の主人公は25歳の現役大学院生である「珠」。その点でも新鮮味があって楽しめたし、珠の当て所なく街を歩く描写やカロリーオーバーになってることに気付きながらも食事を進める姿には、当時大学生だった自分自身と重なるところがあり、個人的には親近感を覚えた。
物語は安定の小池節が炸裂し、日常風景に潜む心理サスペンスに見事に惹きつけられた。
中盤の展開は、ページをめくる手を止められないほど夢中で読み進められたが、その分期待が大きくなり過ぎてしまったのか、ラストはやや消化不良に感じた。
馴染みある鉄道会社の名前が出てきた為、 -
匿名
購入済みどの話しも、「えっここで終わっちゃうの??」と
言った感じで、中途半端に終わってるような感じでした。話しとしては面白いと言えば面白いけど、
中途半端な終わりに感じるので読んだ後もあまり
内容覚えてないです。
話しの中では「緋色の窓」が良かったですが、
これも「なぜ?」と思う物を特に回収しないで
終わるので、それも全部異形のモノの仕業って
ことなんでしょうか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ学生運動や粛清などは出会うこともなく、当時の空気感なども全く想像できない世代です。程度の差はあれ若者全てが学生運動になんらか関係を持つ時代らしい、くらいの認識しかありませんが、松本沙織は受動的とはいえ相当奥深くまで入り込んだ数少ない若者だったのかと思っています。
学生運動よりはやっぱり恋愛小説だと思いたい。沙織の学生運動への関わり方も恋愛が主軸だし、秋津吾郎との関係も結局は恋愛だし、独特な恋愛の形を描くための土台として学生運動を極めて丁寧に忠実に描くことで、時代の異様さが異様な恋愛の形にリアリティを添えるよう意図されているのではないか。なにより、美しく惹かれる表題が恋愛小説だと位置付けている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【収録作品】 囚われて/同窓の女/路地裏の家/姥捨ての街/天使の棲む家/花火/鍵老人/危険な食卓
異常に嫉妬深い夫の束縛を受ける妻、美貌で実業家としても成功したが恋人と不穏な秘密を共有している女性、可愛がってくれた近所の女性の秘密を知る少女、殺人を犯し自首する決心がつかないまま街をうろつく男、ケガをして入院している間に思い入れのある古い家電を断りもなく一新した嫁に不満を抱きつつ口に出さない姑、崇拝していた従姉のつまらない浮気を知った女子大生、家族から疎外された孤独な老人、健康至上主義の妻と離婚することになった節制嫌いの夫。
読後感はよくない。何がいやといって、ありそうなことやいそうな人が -
Posted by ブクログ
長い間、川久保家での出来事に心を囚われているけれど、何処までいっても雅代は傍観者以上にはなれないのが虚しいです。一時は確かに桃子の共犯者ではあったけれど、川久保家を離れた事で桃子は独りで戦わなくてはならなくなったから…負けてしまったのかもしれないし。
悟郎も千夏も、桃子を単純に考えてたのかもしれません。子どもだから愛情を持って接していればそのうち、みたいに。でも、桃子に向けてると思ってる愛情も独りよがりで、桃子がララべったりになるのもわかります。。
起こるべくして起こった悲劇。桃子が背負うには重すぎたけど。。心理描写が丁寧でどきどきしました。