【感想・ネタバレ】二重生活のレビュー

あらすじ

大学院生の珠は、大学時代のゼミで知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「何の目的もない、知らない人の尾行」の実行を思い立ち、近所に暮らす男性、石坂の後をつける。そこで石坂の不倫現場を目撃し、他人の秘密に魅了された珠は、対象者の観察を繰り返す。しかし尾行は徐々に、珠自身の実存と恋人との関係をも脅かしてゆき――。渦巻く男女の感情を、スリリングな展開で濃密に描き出す蠱惑のサスペンス。 解説・野崎歓

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Posted by ブクログ

映画がよかったので原作に興味を持った。
尾行をめぐる一連の流れは映画とほぼ同じだが原作には桃子という女優が登場する。彼女と卓也の関係を疑う主人公の姿は、尾行対象者である石坂と妻、恋人の三角関係と二重写しになる。他人の秘密を覗き見るうちに自分の周囲の秘密に意識的になっていく。映画だと意味がわからなかったタイトルの意味はこれか、と合点がいった。

一方で、主人公が第二の対象者として教授を尾行するのは映画オリジナル。このエピソードのおかげで彼の孤独が浮き彫りになったと思う。原作、映画、どちらにもそれぞれのよさがある。

終盤、見る側にいた主人公が見られる側に回る、という展開はどちらも同じ。原作は恋人に、映画では教授に?

大層に聞こえる「文学的・哲学的尾行」を石坂が、生活に困らない娘の道楽的な物言いで見下すのは作品のバランスがとれていてよかった。俺にはその面白さがわからない行為だったが(自分も小学生の頃に友だちと、通りすがりの誰かを事件か何かの関係者に見立てて尾行するという探偵ごっこをした記憶はあるが)主人公は取り憑かれたか覚醒したかのようでラストは性懲りもなくまたやるのだろうことが暗示される。

石坂にせよ卓也にせよ、主人公があれこれ妄想するより現実はずっと陳腐だった、というのがいい。

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2024年07月07日

Posted by ブクログ

この作家さんの作品はスルスル読めてしまう。適度にハラハラさせられて面白かった。
「文学的・哲学的尾行」については、下卑た好奇心を美化させただけのようにわたしは思ってしまい、理解できなかった。また、それを崇高な行為のように考えているような主人公に幼さを感じた。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

題材と、風景描写と、文体がとても好きだった。
フランス文学には明るくなさすぎるけど、篠原教授が優しく教えてくれる(?)のですごく腑に落ちた。この教授ちょっとネジが外れてて良い。

主人公視点で物語が進む中、彼氏などに対する認知がどんどん歪んでいってるのが地の文から伝わってきて良かった。この主人公は普通に頭がおかしい大学院生だと私は思うが、尾行が白熱してくるとこちらも興奮してきて、あれ私にもそんな異常性が...?なんて思って新鮮だった。尾行はしません。

読み終えた率直な感想は「ひまで良いなあ」だった。

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2024年03月16日

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「文学的・哲学的尾行」の物語。
この話を読んで、実際に全く知らない人を、
ただただ尾行する楽しさは確かにありそうだなと感じた。
人の生活の一部を安全な場所で覗き見ることは
好奇心をそそられ、若干の優越感を得られると思う。

「結局のところ、人は秘密が好きなのだ。
彼が失いたくないのは、特定の誰か、ではなく、秘密そのものなのではないだろうか。」

このフレーズは、秘密を抱えた人間は誰しも少しは考えることではないかと思った。

秘密を抱えている人間は相手に対して猜疑心を持ちやすくなったり、
尾行相手と自分の取り巻く環境の共通点を見出すと、自分は同じルートを辿っているのではないかと不安にかられるという点は、納得できるものがありました。

結末がどうなるかハラハラして最後まで一気に読めました。
人間の知りたいという好奇心をついた興味深い作品でした。

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2021年12月01日

Posted by ブクログ

「文学的・哲学的尾行」の話。
いつも冷静で、取り乱さずありたいと願いそれを実践する珠だけど、本当は人並みに?それ以上に?いつも不安で、秘密の裏にある真実が気になって。
ありもしない妄想をもくもくと膨らませてしまうの、めちゃ気持ちわかる

210206

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2021年02月07日

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全作品読んでいる小池真理子さんの長編小説です。

大学院生・白石珠が講義の中でジャン・ボードリヤールの書籍のある一文に魅了される。
それをきっかけに「文学的・哲学的尾行」が始まりそのターゲットとして近所に住む50代男性石坂、その不倫相手が選ばれる。

かつて読んだ事がない斬新な内容で、派手な盛り上がりはないけれど登場人物の描写が丁寧で最後まで興味深く読み進める事が出来ました。

今までの小池さんの作品とは毛色が違い面白く読み応えがありました。

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2021年01月27日

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小説としても面白いし、東京の知っている場所が舞台なのでより臨場感を持って読めた。
ともすれば特殊な感情と受け止められがちなストーカー行為について、人間の本質的な欲求という側面からの研究として紐解くような感覚が導入となるが、徐々に研究だけにとどまらない感情が芽生えていってしまう話。

自分がコントロールできなくなっていく描写がリアル。

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2019年03月12日

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赤の他人を尾行するという、常識ではなかなか考えられない行動だけど、思わぬ発見がありどんどんはまってしまう主人公。
私もちょっとやってみたくなったけど…誰を!?

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2017年11月12日

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何の目的もなく、ただ尾行する行為。それによってもたらされる興奮や満たされる好奇心、とても分かる気がする。

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2017年10月22日

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他人の生活を知りたいと思うのは、誰もが持っている感情だと思う。
どんなに深く知ろうとしたって、所詮他人の気持ちはわからない。恋人や親だって、本当はどんな人なのか知ることは難しい。
私に見せている表情と、本来の姿は実は全く違うのかもしれない。
私だってそうだ。自分が振舞っている行動は、本来の私とは少し違う。
だからこそ、客観的に見てほしい。客観的に人をみてみたい。
あなたの人生は充実してるのか

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2017年06月25日

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斬新だった!
ミステリーはそれほど読まないんだけど、多分、言い切って大丈夫。斬新だった。

若干、ニート気味の珠が、大学院の授業の題材となった作品に大きすぎる影響を受けて、近所の平和そうな家庭の旦那を尾行する話。

誰も亡くならないし、誰も怪我しない。
そして、物語が始まる前と大きく状況も異ならない
なのに、先が気になって気になって仕方なかった。

結局、誰にでも悩みがあって、それと闘いながら生きているんだねってこともサブタイトルかと思われる。

それにしてもこの本はやばいね。甘美な文学的尾行の罠にはまりそう。

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2023年03月02日

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文学的・哲学的尾行をすることで、他人の秘密、他人の孤独を知り、自分自身の孤独に気づく。
大学院生、白石珠の試みはなかなかおもしろいとは思うけど、自分が尾行されたら……

映画では、女優の三ツ木桃子は登場せず、卓也と珠の関係に焦点を当てていたし、篠原教授の孤独にも触れていた。
原作と映画の両方を見るとよい作品です。

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2016年11月10日

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文学的・哲学的尾行を実現する女子大学院生。
他人の秘密を知ることで自分の中にも変化が起こるのかということも興味深い。

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2025年08月02日

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思い付きで赤の他人を尾行し不倫現場を目撃してしまう学生
これは文学的哲学的尾行だと銘打って、
他人の秘密を知る快楽から抜け出せなくなっていく 

尾行されているのにも気づかずに、、、

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2025年06月06日

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映画を先に見てしまった。それぞれの良さがあった。卓との関係をはじめ、原作ではより珠が中心となっていた気がする。
客観的に自身を分析しつつも感情的になる珠は人間らしかった。文学的哲学的尾行をしなければ退屈で、ずっと続けていくんだろうな。秘密、刺激が欲しくなる点は共感できたけれど、尾行は怖くてできないや。珠も前を向いて卓みたいに何か人生に目標を持った方がいいよ...なんて思ってしまった。以上、かなり的外れな感想。

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2024年10月02日

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尾行についてはワクワクとさせられ、これからどんな展開になっちゃうんだろう?と思ったけど、そう面白いことは起きないのが現実ですね。
刹那的な珠のことが心配になった。

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2024年09月27日

Posted by ブクログ

映画と本の両方を比べてみた。
個人的には本のストーリーのほうが好みだ。映画は事件をつくり過ぎていて、終わり方も暗く悲しい感じがした。小池真理子さんの短編集の贅肉を読んで、面白くて、映画化されてる本作を読んでみた。ちょっとまどろっこしい表現と感じるところもあったが、表現力は流石だと思う。
最後の終わり方には★5つけたい。

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2023年06月12日

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哲学的・文学的尾行をやってみたら…と好奇心で動く珠に共感できず、なんかずっと気持ち悪さが付き纏っていました。

ずっと下手くそな尾行をしているのに悦に入ってるし、その上タクを疑いまくりなのがキモいな〜と思いました。でも結局タクとも仲良くやっていけそうだし、石坂とも和解?しちゃって…いいの?こんなに赦されまくって良いのかしら?とちょっとモヤモヤ。

篠原教授と珠が2人きりで尾行について話す時「恭しく箱に並べられていないところがいいですね。チョコレートというものは、こんなふうにぎゅうぎゅうに、乱暴に詰めこまれているほうが、〜」というチョコのくだりはそうそう!と思いました(笑)

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2023年05月10日

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ネタバレ

 短編でも長編でも、小池氏の物語の主人公は比較的中年層の人物が多いのだが、本作品の主人公は25歳の現役大学院生である「珠」。その点でも新鮮味があって楽しめたし、珠の当て所なく街を歩く描写やカロリーオーバーになってることに気付きながらも食事を進める姿には、当時大学生だった自分自身と重なるところがあり、個人的には親近感を覚えた。
 物語は安定の小池節が炸裂し、日常風景に潜む心理サスペンスに見事に惹きつけられた。
 中盤の展開は、ページをめくる手を止められないほど夢中で読み進められたが、その分期待が大きくなり過ぎてしまったのか、ラストはやや消化不良に感じた。
 馴染みある鉄道会社の名前が出てきた為、本当にすぐそこで起こっているかのようなリアリティさがあり楽しめたし、フランス文学にも興味が湧いた。

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2022年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他人の生活を尾行によって覗き込むような感覚がいつの間にか、そこに心を置いてしまって自分と重なる部分に注目置いてしまう

この本の中で卓也だけ秘密を持たないように書かれているけど、
誰しもが秘密を抱えて過ごす中で卓也も同様ではないかと思った
卓也の言葉に安堵する珠も表面だけ見えてる

私自身疑い深いからか、珠を自分に置き換えて考えても尾行の終始、自分から相手が見えて観察している限り相手から自分も筒抜けだと思う、から上手く誤魔化せたと表現してる珠は間抜けに思えたし思慮浅いと思った

でも、人を疑い深いのは普段から私が周りに対して何かしら秘密を抱えて過ごしているからで
相手にも自分自身同様に見えていない部分があるのでは?と考えるからだと思う


珠の行動は奇妙だと思ったし、もし私の生活に詮索入れる人が居れば、石坂同様に気味が悪い人物だと考えるけど
一目入った他人の生活を詮索してしまうことが私にもあるし、SNSで流れてきた他人の私情を知ることもあるから
結局は私も一緒かなと思った、

考え浅い私にとって考え込んでは、難しい、、


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2021年02月12日

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大学院生の珠は「理由なき尾行」を実行するが、その過程で対象者の秘密を知ってしまう。
映画を見てから原作を読んだ。
映画よりずっと面白い!
確かにこの小説には極悪人は出てこない(不倫の是非は置いといて)ので、いまいちパンチがないと思うかもしれないが、尾行が下手くそな珠が尾行するというだけでドキドキ面白い。
人の秘密を知ってしまったり、恋人に対して疑心暗鬼になったり、ともすれば暗く落ち込みそうなネタなのに、読んだ後にちょっとホッとする、読後感が良い小説。

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2020年08月20日

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あっと言う間に読んでしまった。
尾行する行為から自分の生活とリンクして今まで疑いもしなかった浮気を、信じられなくなった彼。
どんどん深みにはまる前に尾行がバレてしまいそこで終了となる。

珠の心理的な描写に引きずりこまれる感じ。

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2020年04月02日

Posted by ブクログ

見知らぬ人の後をつける。主人公は文学的哲学的行動だが、自分の中にはこんな闇があるなあ、と思い起こしてしまった。
なにも解決することなくストーリーは終り。こういう小説がいやでミステリーしか読まなかったけど、最近はミステリー以外も面白いと思うようになってきた。

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2019年05月06日

Posted by ブクログ

見知らぬ他人を尾行し、その人間の人生を理解する「文学的・哲学的尾行」。それに魅せられた大学院生の物語。
彼女の行動は常軌を逸しているし、他人に理解されない。でも、そこに潜むとてつもない魅力は感じられた。
そもそも、映画や文学、漫画といった物語は他人の人生(架空であっても)をもっと知りたいという欲求で成り立っている。本作では尾行を自分の境遇と重ね合わせたというミスを犯した。だが、その欲求をうまく活かした物語だった。これといった盛り上がりも事件も起きない話にのめり込んでしまったのは、私がその欲求を刺激されたってことなのだろう。

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2019年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

門脇 麦の主演映画を観たくて読みました・・

が、最終的に丸く収まる感じが『まあ人生こんなもんだよな』と。

主人公と尾行対象者が遂に対面してしまう、非常にスリリングなシーンの後に、何とも言えない雰囲気と距離感のなか、ワインバーで過ごすシーンが何だか滑稽で、でもなんか理解できるような気もしてよかったです。アルコールの入った2人が肉体関係にならないところが、非現実的というか、ああお互いキチンと冷静なんだなと、それもまた良かった。
(映画ではこのシーンが酔った主人公が『論文書かせて』迫り、ホテルに雪崩れ込み、自分の心は空っぽだと自己開示しはじめるという展開で非常に興醒めでした。)

文学的哲学的尾行、という新しい視点での作品だなと読む前は思っていたけれど、人間が秘密を持つこととか、誰かに対する相乗効果的な猜疑心だとか、書いてある描写と内容は別に真新しいわけでもなくて、尾行をして知れることもまあその程度なもんか、つまり人生ってそんなもんだよな、という感想です。

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2017年11月06日

Posted by ブクログ

ソフィ・カルの「何の目的もない、知らない人の尾行」に興味を持っている珠。
ある日、それを近所の石坂という既婚男性にて実行。
そこには愛人との不倫現場があった。
他人の秘密を知り、珠は尾行を止められなくなる。
しかし、それは同棲相手の卓也への気持ちへも変化をもたらす。
何の目的があるわけでもないのに他人を尾行する。そのスリルが珠を変えていくのか?

2017.10.21

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2017年10月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画を見てから原作を読んだ。
卒論提出してないし石坂とホテルに行ってないし桃子さんって誰やねん!ってなった。原作より映画の篠原先生の尾行の話の方がおもしろかったなー。

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2017年09月24日

Posted by ブクログ

面白かったです。教授の授業での言葉に惹かれ、近所の男性に対して文学的・哲学的尾行を始めた珠。男性の秘密を知ってしまうのですが、それに連れて同棲相手に対しても不信を募らせていくのが怖いです。尾行していることを対象に知られてしまうところはハラハラしました。モラトリアムを享受している珠に共感は全く出来ませんでしたが、元の生活に戻った珠が生きていくことに倦怠感を持ってしまったのが印象に残ります。この作品に流れてるのはこれなんじゃないかと思いました。厭世観と、倦怠感。人の感情の移り変わりをまざまざと見せ付けられました。映画も観たいです。

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2017年08月27日

Posted by ブクログ

大学院生の珠は、大学時代のゼミで知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「何の目的もない、知らない人の尾行」の実行を思い立ち、近所に暮らす男性、石坂の後をつける。
そこで石坂の不倫現場を目撃し、他人の秘密に魅了された珠は、対象者の観察を繰り返すようになる。
しかし尾行は徐々に、珠自身の恋人との関係をも脅かしていく。

何気なく始めた行動が、自分自身の状況にも影響を与える。この物語の場合は、不倫をしている男を尾行することにより、生々しいその現場を目にしてしまい、結果自分の恋人の女性関係をも疑ってしまうことになる。
尾行までの極端な行動ではなくても、そういうことって案外転がってるのかも、と考えたりした。
他人の行動やら経験やらを見ているうちに、いつの間にか自分に重ね合わせて考えてしまう。頭の片隅にその考えが入り込んでしまうと、なかなかそれを排除することが出来なくなる。
この物語の主人公・珠は、自己洗脳みたいな状態に陥ってしまったのだ、と思う。

サスペンス要素もあるからあまり書けないけれど、ちょっと都合が良すぎる展開かな、と思える点もいくつかあった。
“尾行”というのが自分にとって現実的ではないせいもあるかも知れないし、実際やったことがないから分からない感覚もあるけれど、そんな風に展開することってあるだろうか?と。

何かの調査等ではない、目的のない“哲学的尾行”。実際見知らぬ誰かを尾行してみたら…と考えたら、少し面白そうだと思ってしまった。
人には誰しも少なからず秘密がある。行く先、会う人、知られたくないこともある。

既に映画化している作品だけれど、石坂の役が長谷川博己って合ってるかも、と思った。デキる男に見せかけてちょっと抜けてるところもあり、何だかんだ優しくて最後の詰めが甘いところが。

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2017年05月06日

Posted by ブクログ

崇高な思想に見せかけた、暇で経済的に苦労していない未成熟な内省しない大学院生の自己中心的な趣味の話。読み物としては面白い。もっと世の中の役に立つ生き方をしてください。自分ばかりでウンザリ。

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2017年04月09日

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