感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
短編でも長編でも、小池氏の物語の主人公は比較的中年層の人物が多いのだが、本作品の主人公は25歳の現役大学院生である「珠」。その点でも新鮮味があって楽しめたし、珠の当て所なく街を歩く描写やカロリーオーバーになってることに気付きながらも食事を進める姿には、当時大学生だった自分自身と重なるところがあり、個人的には親近感を覚えた。
物語は安定の小池節が炸裂し、日常風景に潜む心理サスペンスに見事に惹きつけられた。
中盤の展開は、ページをめくる手を止められないほど夢中で読み進められたが、その分期待が大きくなり過ぎてしまったのか、ラストはやや消化不良に感じた。
馴染みある鉄道会社の名前が出てきた為、本当にすぐそこで起こっているかのようなリアリティさがあり楽しめたし、フランス文学にも興味が湧いた。
Posted by ブクログ
他人の生活を尾行によって覗き込むような感覚がいつの間にか、そこに心を置いてしまって自分と重なる部分に注目置いてしまう
この本の中で卓也だけ秘密を持たないように書かれているけど、
誰しもが秘密を抱えて過ごす中で卓也も同様ではないかと思った
卓也の言葉に安堵する珠も表面だけ見えてる
私自身疑い深いからか、珠を自分に置き換えて考えても尾行の終始、自分から相手が見えて観察している限り相手から自分も筒抜けだと思う、から上手く誤魔化せたと表現してる珠は間抜けに思えたし思慮浅いと思った
でも、人を疑い深いのは普段から私が周りに対して何かしら秘密を抱えて過ごしているからで
相手にも自分自身同様に見えていない部分があるのでは?と考えるからだと思う
珠の行動は奇妙だと思ったし、もし私の生活に詮索入れる人が居れば、石坂同様に気味が悪い人物だと考えるけど
一目入った他人の生活を詮索してしまうことが私にもあるし、SNSで流れてきた他人の私情を知ることもあるから
結局は私も一緒かなと思った、
考え浅い私にとって考え込んでは、難しい、、
Posted by ブクログ
門脇 麦の主演映画を観たくて読みました・・
が、最終的に丸く収まる感じが『まあ人生こんなもんだよな』と。
主人公と尾行対象者が遂に対面してしまう、非常にスリリングなシーンの後に、何とも言えない雰囲気と距離感のなか、ワインバーで過ごすシーンが何だか滑稽で、でもなんか理解できるような気もしてよかったです。アルコールの入った2人が肉体関係にならないところが、非現実的というか、ああお互いキチンと冷静なんだなと、それもまた良かった。
(映画ではこのシーンが酔った主人公が『論文書かせて』迫り、ホテルに雪崩れ込み、自分の心は空っぽだと自己開示しはじめるという展開で非常に興醒めでした。)
文学的哲学的尾行、という新しい視点での作品だなと読む前は思っていたけれど、人間が秘密を持つこととか、誰かに対する相乗効果的な猜疑心だとか、書いてある描写と内容は別に真新しいわけでもなくて、尾行をして知れることもまあその程度なもんか、つまり人生ってそんなもんだよな、という感想です。