小池真理子のレビュー一覧

  • 懐かしい家 小池真理子怪奇幻想傑作選1

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    ホラー作品の路線は大別すると、絶叫系のテンションの高いホラーか、秘めやかに忍びよるような静かなホラーに分かれると思うのですが、この『懐かしい家』に収録されている短編たちは概ね後者の印象。怖さ・不気味さの中にどこか格式高さというか、上品な怖さや哀しさ、憂いや寂しさを感じた気がします。

    ピアノ教室の先生である語り手と、老婆とその孫を描いた「ミミ」
    夫と別居し、かつて住んでいた家に一人暮らしすることになる女性を描いた表題作の「懐かしい家」
    設定は違えど、生者と死者の距離が曖昧になり、そして生死の概念を超えた人の孤独を浮き彫りにします。

    周囲の人間が死に瀕した時にだけ現れる蛇口。その蛇口が見えてしまう男を描いた「蛇口」は、描写の不気味さが見事だったなあ。この蛇口をひねると流れてくる水は、その人間が死ぬか、それとも生き延びるか教えてくれるのですが、蛇口から流れる水の描写の不気味さがたまらない……。

    タクシーに乗った人物をどこかへ連れて行ってしまう「車影」
    ふとした瞬間に生に疲れ、死に誘い込まれそうになる怖さを、一つの物語として上手く昇華されていると感じました。語り手の涙が話に、また一つ情緒を与えてくれているように思います。

    「くちづけ」は夏目漱石の『夢十夜』を読んだときのようなイメージ。物語のイメージはところどころでしか掴めないのですが、そのイメージと繊細で美しい文章にわけが分からないながらも引き込まれます。
    そして語り手の目覚めと共にその夢の儚い美しさと、人を愛してしまったゆえの哀しさの対比が心に残る。
    この短編集の中でも特に短い短編なのですが、美しくも切ない幻想的なイメージが、強く印象に残りました。

    別段派手な話という感じではないのですが、いずれの短編も切り取り方、見せ方、そして文章の技巧が光った短編集だったと思います。

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    2020年06月04日
  • ノスタルジア 〈新装版〉

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    私の読書の楽しみは、筋を楽しむよりも、物語のディテールを味わいたくて読む。

    この作家もディテールが好きで読んでいる。

    うーん。繭子と千春はお互いのことを見下してる。
    主人公の繭子の目線での姉の千春の描写は、馬鹿にしているみたい。
    読んでいくと、繭子も千春も何か欠けているのか、どちらかに異常に偏っているだけなのか、人物としてどちらにも共感は出来なかった。
    共感はする必要は全くないが、なんというか、好きになれなかった。

    繭子の不倫に共感できず、千春の繭子への異常な関心も分からない。

    繭子は妻子ある男性(親子ほどの歳の差、22歳)との不倫について軽蔑する千春について、

    年上との恋愛があるとは想像もできないのだ、と千春のことを言うが、

    妻子ある男性との不倫についての言及が全くない。
    そこ大事ではないだろうか?
    または、知っているけど、触れたくないのか?

    そもそも、雅之、俊之との関係も、繭子は不倫関係にあるとは言っていないのだ。

    雅之についてもだ。歳の離れた女性、ましてや友人の娘で子供のことから知っている女性に手を出す心理が分からない。

    この本の主題は、不倫や浮気にはない。
    ないけど、なぜ罪悪感なく不倫が出来るのか意味が分からなくて、最後までこだわってしまい、モヤモヤの残る読後感しかなかった。

    こう言うことをする人は、理性がない者なのだろうか。

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    2020年05月24日
  • 妖し

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    十人の人気作家が作る、妖しげな世界。

    「ANNIVERSARY」は言葉の持つ明るい世界とは異なる、なんだか奇妙な、悲しい世界だ。
    世界がループするのだ。
    ちょうど今読み返している『D.Gray-man』にも、繰り返される日々の話が出てきていた。
    この漫画について語るのはまた別の機会として、とにかく元の世界においてきた子供のことが気になってしまう。
    愛する者との離別を考えると、胸が苦しくなる。

    『李果を食む」は、私が感じ取ったおぞましさは二つあった。
    どちらだ。
    どっちなんだ。
    いや、どちらでも構わないだろう。
    もうすぐ、スモモの季節。
    あの甘酸っぱいすももを、私はこの話を思い出さずに食べられるだろうか?

    「かぐわしきひと」「喪中の客」はどちらも気味の悪さで際立つ。
    前者は自分の思い込みに騙され、そして、終わりの凄惨さに胃液が上がってくる。
    後者は、自分の見ている世界が本当に正しいのか、わからなくなる。
    それにしても、あの客人は一体なぜきたのだろう?
    そちらの方が、より、恐ろしい。

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    2020年05月16日
  • 二重生活

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    あっと言う間に読んでしまった。
    尾行する行為から自分の生活とリンクして今まで疑いもしなかった浮気を、信じられなくなった彼。
    どんどん深みにはまる前に尾行がバレてしまいそこで終了となる。

    珠の心理的な描写に引きずりこまれる感じ。

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    2020年04月02日
  • 狂王の庭

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    予備知識なく、表紙がキレイだなぁと思い手に取った1冊。
    不倫に全く興味はなく、そこに関しては何も感想はなし。
    大変そうだなぁ、としか。

    しかし物語の中に出てくる豪華な個人庭があるのなら、
    是非行ってみたい。

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    2020年02月15日
  • 妖し

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    【怪異】をテーマに描く奇譚小説。
    アンソロジーシリーズ。
    この面子だし、と思って読み始めたのが
    間違いだった…

    想像のはるか上の上をゆく怖さだった…
    夜、部屋で一人で読んでいられないページが
    何度もあった。

    大好きな米澤穂信の
    「わたしキャベンディッシュ」も、
    あーー、これが伏線でこうなる感じかぁ
    のんきに思っていたあたし。
    伏線は伏線でも回収先が違っていて
    安定の穂信のぞわぞわ感。

    乾ルカの「かぐわしいひと」なんか
    ここから先は、もう読めない……と
    次の日に
    持ち越したくらいなのに
    その怖さに上塗りされるように
    壊れていく人間の怖さがくる。
    えーーー??そっちーーー??!みたいな…

    そんな中、
    なんとも言えない感情と思いに溺れたのが
    窪美澄の「真珠星スピカ」
    母と娘、父と娘。
    このそれぞれの【2人きりの時間】には
    切なさとやりきれなさ、
    それに希望が詰まってる。

    まだ読んだことがない作家さんも多かった。
    少しずつ読んでみたい。

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    2021年05月30日
  • 会いたかった人

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     表題作含め6編を収めた短編集。
     いずれの作品も人間の思い込みというか固定観念というか、そういった深層心理を巧みに利用した作品。表題作のように、なんとなく展開が読める作品はあるが、ストーリー展開以上に心理的に追い詰められた人間の心理描写が面白い。むしろ、そうした心理変化を追っていくことが面白いように思う。追い詰められた時の人間の脆さのようなものが垣間見られる作品集。好みの問題はあるが、どれも甲乙つけがたい作品がそろっているといった印象を受ける。

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    2020年02月01日
  • 妖し

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    気持ち悪い話が多かった。は?何?と思っても読み返さないほうがよかった…。皆さんお上手なので気持ち悪さが絶妙。

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    2020年01月26日
  • 妖し

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    評価は三ツ星半と言ったところか。
    タイトルどおり「妖し」を共通テーマとした異なる作者による短編集であり、それぞれに異なる趣きの作品からなっており、飽きることなく読み終えることが出来た。

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    2020年01月04日
  • 妖し

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    表題「妖し」のような統一感はあまり感じない。
    「真珠星スピカ」「李果を食む」「フクライ駅から」が良かったかな。特に「フクライ」の終盤に雪崩れ込むような展開のスピード感がなかなかよい。朱川湊人氏の作品は読んだことがないので、今度読んでみたい。

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    2019年12月27日
  • 恋

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    直木賞受賞作。
    連合赤軍が浅間山荘事件を起こした1972年、大学生の布美子は、助教授の信太郎と妻の雛子との優雅で奔放な魅力に心を奪われていた。
    軽井沢を舞台に繰り広げられる愛憎劇。
    なるほど、これが「恋」であり、タイトルの表すものなのかと、唸らされた。

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    2019年11月16日
  • 恋

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    直木賞だけあって文章力はあってそれなりに面白い。けど、どうしても退廃的な世界観、とってつけたようなノンフィクション作家への告白とラストの片瀬夫妻のシーンは共感できなかった。

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    2019年10月02日
  • モンローが死んだ日

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    文学記念館、軽井沢近郊や猫などが、人物や心理描写に凄くピッタリ合っていて、情景が浮かんでくる。それぞれの孤独や苦しみを抱えた大人の恋物語。
    【2019.08】

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    2019年08月23日
  • 蜜月

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    ネタバレ

    なにげない日常を過ごす6人の平凡な女たち。
    彼女たちの共通点は天才画家の辻堂環と親密やそれに近い関係を経験したことである。夭逝した環の報に接した彼女たち。それぞれがかつて環と過ごした日々が三人称で語られる。奔放でバイセクシュアルでもある環は彼女たちを翻弄し、貪欲に飲み込んでゆく。海のように。寿命を縮めたのは無邪気なあまたの恋のせいであろうか。

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    2019年07月17日
  • 愛するということ

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    表紙通りの大人の恋愛でした。不倫からの別れ。忘れられない気持ちをどうしたらいいのか、どうしたら忘れられるのか…辛く切ない恋愛でしたが、バイトの菜穂子や柿村さん人との関わりで少しずつ変わっていく様子は勉強になりました。やっぱり行動を起こさないと変わっていけないものなのかも。

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    2019年06月24日
  • 贅肉 新装版

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    短編がいくつか収録されているが、それぞれ趣が異なるのがよい。そして贅肉が一番面白い。全部読んで、贅肉だけもう一度読み返したくなる。不思議な雰囲気のホラーなのかサスペンスなのか。。。わからんけど癖になる感じ。

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    2019年06月07日
  • 二重生活

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    見知らぬ人の後をつける。主人公は文学的哲学的行動だが、自分の中にはこんな闇があるなあ、と思い起こしてしまった。
    なにも解決することなくストーリーは終り。こういう小説がいやでミステリーしか読まなかったけど、最近はミステリー以外も面白いと思うようになってきた。

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    2019年05月06日
  • ひぐらし荘の女主人 短篇セレクション 官能篇

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    何とく女流作家の本は苦手で、読み終えた結果、やはり好きではないなと。
    ただ、折に触れ、ねっとりとした心理や官能や狂気の世界に触れるのはいい刺激になると思ったので、定期的に敢えて読むようにしようと思う!

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    2019年05月01日
  • モンローが死んだ日

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    抑鬱症状の患者の視点での精神科医との関係という少しイメージしにくい状況で少しずつストーリーが進んでいく。
    ラストの急展開でそれまでの経緯が明らかになるが、やや唐突な感じが否めず自分的にはしっくりと来なかった。

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    2019年04月30日
  • 二重生活

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    見知らぬ他人を尾行し、その人間の人生を理解する「文学的・哲学的尾行」。それに魅せられた大学院生の物語。
    彼女の行動は常軌を逸しているし、他人に理解されない。でも、そこに潜むとてつもない魅力は感じられた。
    そもそも、映画や文学、漫画といった物語は他人の人生(架空であっても)をもっと知りたいという欲求で成り立っている。本作では尾行を自分の境遇と重ね合わせたというミスを犯した。だが、その欲求をうまく活かした物語だった。これといった盛り上がりも事件も起きない話にのめり込んでしまったのは、私がその欲求を刺激されたってことなのだろう。

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    2019年03月02日