小池真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ホラー作品の路線は大別すると、絶叫系のテンションの高いホラーか、秘めやかに忍びよるような静かなホラーに分かれると思うのですが、この『懐かしい家』に収録されている短編たちは概ね後者の印象。怖さ・不気味さの中にどこか格式高さというか、上品な怖さや哀しさ、憂いや寂しさを感じた気がします。
ピアノ教室の先生である語り手と、老婆とその孫を描いた「ミミ」
夫と別居し、かつて住んでいた家に一人暮らしすることになる女性を描いた表題作の「懐かしい家」
設定は違えど、生者と死者の距離が曖昧になり、そして生死の概念を超えた人の孤独を浮き彫りにします。
周囲の人間が死に瀕した時にだけ現れる蛇口。その蛇口が見えてしまう男を描いた「蛇口」は、描写の不気味さが見事だったなあ。この蛇口をひねると流れてくる水は、その人間が死ぬか、それとも生き延びるか教えてくれるのですが、蛇口から流れる水の描写の不気味さがたまらない……。
タクシーに乗った人物をどこかへ連れて行ってしまう「車影」
ふとした瞬間に生に疲れ、死に誘い込まれそうになる怖さを、一つの物語として上手く昇華されていると感じました。語り手の涙が話に、また一つ情緒を与えてくれているように思います。
「くちづけ」は夏目漱石の『夢十夜』を読んだときのようなイメージ。物語のイメージはところどころでしか掴めないのですが、そのイメージと繊細で美しい文章にわけが分からないながらも引き込まれます。
そして語り手の目覚めと共にその夢の儚い美しさと、人を愛してしまったゆえの哀しさの対比が心に残る。
この短編集の中でも特に短い短編なのですが、美しくも切ない幻想的なイメージが、強く印象に残りました。
別段派手な話という感じではないのですが、いずれの短編も切り取り方、見せ方、そして文章の技巧が光った短編集だったと思います。 -
Posted by ブクログ
私の読書の楽しみは、筋を楽しむよりも、物語のディテールを味わいたくて読む。
この作家もディテールが好きで読んでいる。
うーん。繭子と千春はお互いのことを見下してる。
主人公の繭子の目線での姉の千春の描写は、馬鹿にしているみたい。
読んでいくと、繭子も千春も何か欠けているのか、どちらかに異常に偏っているだけなのか、人物としてどちらにも共感は出来なかった。
共感はする必要は全くないが、なんというか、好きになれなかった。
繭子の不倫に共感できず、千春の繭子への異常な関心も分からない。
繭子は妻子ある男性(親子ほどの歳の差、22歳)との不倫について軽蔑する千春について、
年上との恋愛があるとは想像もできないのだ、と千春のことを言うが、
妻子ある男性との不倫についての言及が全くない。
そこ大事ではないだろうか?
または、知っているけど、触れたくないのか?
そもそも、雅之、俊之との関係も、繭子は不倫関係にあるとは言っていないのだ。
雅之についてもだ。歳の離れた女性、ましてや友人の娘で子供のことから知っている女性に手を出す心理が分からない。
この本の主題は、不倫や浮気にはない。
ないけど、なぜ罪悪感なく不倫が出来るのか意味が分からなくて、最後までこだわってしまい、モヤモヤの残る読後感しかなかった。
こう言うことをする人は、理性がない者なのだろうか。
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Posted by ブクログ
十人の人気作家が作る、妖しげな世界。
「ANNIVERSARY」は言葉の持つ明るい世界とは異なる、なんだか奇妙な、悲しい世界だ。
世界がループするのだ。
ちょうど今読み返している『D.Gray-man』にも、繰り返される日々の話が出てきていた。
この漫画について語るのはまた別の機会として、とにかく元の世界においてきた子供のことが気になってしまう。
愛する者との離別を考えると、胸が苦しくなる。
『李果を食む」は、私が感じ取ったおぞましさは二つあった。
どちらだ。
どっちなんだ。
いや、どちらでも構わないだろう。
もうすぐ、スモモの季節。
あの甘酸っぱいすももを、私はこの話を思い出さずに食べられるだろうか?
「かぐわしきひと」「喪中の客」はどちらも気味の悪さで際立つ。
前者は自分の思い込みに騙され、そして、終わりの凄惨さに胃液が上がってくる。
後者は、自分の見ている世界が本当に正しいのか、わからなくなる。
それにしても、あの客人は一体なぜきたのだろう?
そちらの方が、より、恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
【怪異】をテーマに描く奇譚小説。
アンソロジーシリーズ。
この面子だし、と思って読み始めたのが
間違いだった…
想像のはるか上の上をゆく怖さだった…
夜、部屋で一人で読んでいられないページが
何度もあった。
大好きな米澤穂信の
「わたしキャベンディッシュ」も、
あーー、これが伏線でこうなる感じかぁ
のんきに思っていたあたし。
伏線は伏線でも回収先が違っていて
安定の穂信のぞわぞわ感。
乾ルカの「かぐわしいひと」なんか
ここから先は、もう読めない……と
次の日に
持ち越したくらいなのに
その怖さに上塗りされるように
壊れていく人間の怖さがくる。
えーーー??そっちーーー??!みたいな…
そんな中、
なんとも言えない感情と思いに溺れたのが
窪美澄の「真珠星スピカ」
母と娘、父と娘。
このそれぞれの【2人きりの時間】には
切なさとやりきれなさ、
それに希望が詰まってる。
まだ読んだことがない作家さんも多かった。
少しずつ読んでみたい。