あらすじ
三島由紀夫邸を寸分違わず模倣した変奇な館に、運命を手繰り寄せられた男女。図書館司書の青田類子は、妻子ある男との肉欲だけの関係に溺れながら、かつての同級生である美しい青年・正巳に強くひかれてゆく。しかし、二人が肉体の悦びを分かち合うことは決してなかった。正巳は性的不能者だったのだ――。切なくも凄絶な人びとの性、愛、そして死。小池文学が到達した究極の恋愛小説。
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Posted by ブクログ
小池真理子さんの小説は、読んでいてとても心地よく、癒される。上品で、自然に流れる文章に引き込まれ、気付くと物語の世界に自分が居る感覚・・何度も味わっている。大好きな作家さん。
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長い小説で同じような場面と言葉が繰り返されているようでいて、少しずつそれらが変化していく。水が一番低いところへ流れ着いてようやく落ち着きを手に入れるように欠落を抱えた人物たちが、それぞれの思考と行動で生命をたどっていく。
多くの欠落を抱えていれば、一つ一つの欠落はむしろ楽しめたかもしれないのに、完璧さの中の深い欠落に絡み取られる。それは当然のような、もったいないような気がした。
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目眩く性と死…圧倒された世界でした。
類子と正巳と阿佐緒、そして袴田…形の違う欲望でも、それぞれの欲望はとても強かったです。
肉体だけでなく精神のエロス。かなり際どいことも書かれているのですが全く厭らしくないのはさすがです。
正巳が性的不能者じゃなかったら、類子と正巳はここまで感応し合い、高まらなかったのではないか…とも思いました。
静かに狂っていく感じも良かったです。正巳の最後の海での言葉は悲しくなりました。
そして三島由紀夫の豊饒の海を今度こそ読破したくなります。その上で再読したいです。
官能にもみくちゃにされました…すごかったです。
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小池さんワールド。
心から愛した人が性的不能。
なんとなく、死が近づいていることがわかりながらも、2人の心の繋がりを信じたかったなあ。
なんでこんなに、世界に浸れるのか不思議。それくらい引き込まれた。
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再読。
大人の恋愛小説。男と女が一緒にいるには体だけではないってこと。相手が性的不能であっても、精神のエクスタシーが得られればそれでいい。ハッピーエンドであったらもっと嬉しかったけど。そこが小池真理子らしいところなのだけど。
昔、初めて本作を読み深く感銘したのを覚えてる。が、こんなの読んでるの?と官能小説扱いされ、私のことをいやらしい目つきで見た友人。まだまだこいつは稚拙だなと思った。精神的にも肉体的にも。
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初めて読んだ恋愛小説。
良かった。冒頭の主人公が書店で本を買う場面から、のめり込んで読んだ。回想録ぽい進め方が、良かったのだと思う。
ミステリー小説以外で、貪るように読んだ本は初めてだった。
また三島由紀夫との絡みもよく、ラストの余韻の残しかたなど最高だった。
初めて読んだ恋愛小説が、あまりにも良すぎた為に、なかなかこの作品を越える小説がなく、今はすっかり以前のように恋愛小説を読まなくなってしまった。
三島由紀夫の作品は、読んでみたくはなったが。
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三島由紀夫の話題が全編の下敷きになっている。
著者の三島由紀夫に対する、あこがれと一つの回答になっている。
登場人物が、著者の三島由紀夫に対する回答の道具になっているかもしれない。
次々に亡くなっていく知人達。
生き残った主人公の思いが不透明。
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小池さん作品3冊目。回想や手紙、死へ向かう等、他の作品と同じ要素ありでしたが、この作品は魅力的な登場人物が多く、タイトル通り「欲望」とは何か考えさせられました。
三島邸もどきでの再会シーンの楓、書架、南の島での明るさ、ラストの陽の当たる庭、すべて美しい場面でした。フェティシズム等ではなく若者が誰しももつ思慕を描いていているのに薄ぺらくならないのが凄いです。(偏愛ものや禁欲、忍耐系を期待した読書には物足りないかもしれません)
乳児が母親に触れたがるような単純な接触欲、
親しい相手と手を繋いで寝るような信頼•安心感、
母性、父性への憧れ、尊敬、肉体美、フェロモン
妊孕性的な生殖欲、挿入欲、野獣性、友愛、
コレクション的な統制欲、庇護欲、自我、承認、
思想、精神的な繋がりとのバランス...
それらへの感じ方の微妙な男女の違いなどがグラデーションの様に変化して(しない人もいて)、性欲や官能という言葉では収まりきらない欲望とは、生命力であり欲望が激しいほど無や死と隣り合わせでもあると感じるような小説でした。
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インポテンツってそんなに屈辱的なものなのかな。
女だから分かりませんでした。
解説の「この人の文はすっと入ってくる」って言葉、分かるなあって思った。水みたいにするすると読める。あっという間だった。
映画も見てみたいな!
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幻想と現実
そして肉体と精神の乖離…
小池真理子さんの本は独特の世界観があるなぁと思いました。
気だるいような感じもしますが、ダラダラしている訳じゃなく。
精神で結ばれるのってすごく幸せなことなんじゃないかと私は思います。
これを機にもっと小池真理子さんの本を読みたくなりました。
もう一度『恋』を読み返そうかな。
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恋、無伴奏に続き、欲望を読み終えて三部作を読破。
最後の解説にもあったけど、文章がすぅっと入ってきて、ついついゆっくりと読みふけってしまうー、そんな作品でした。
読み始めてからラストまで、とても濃密な時間を過ごした感じ。
三部作のなかでは本作が一番好きかな。
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感想を書くのが難しい。
EDである男性をどう愛するのか、また自分がEDなら女性をどう愛せるのか。なんとかその壁を乗り越えられそうな、でもやっぱり乗り越えられなさそうなもどかしい感じがしました。
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決して叶えられることのない欲望を持つというのが、こんなにも切なく悲しいものだとは。
それなのに正巳に恋焦がれる類子の想いが、中学生の初恋みたいで初々しいとすら思う。
文章が美しく、きめ細やかで、たっぷりと作品の世界に浸ることができた。
Posted by ブクログ
うーん、これは究極の恋愛ドラマよね~。
『欲望』というタイトルからすると、ちょっとエロっぽい響きがあるけど、これはそのエロさがない。
だって、起たない男を軸にしたストーリーなんだよ。
インポな男に恋した『私』こと類子と、インポな男に愛された女・阿佐緒の三角関係。
こう言葉にすると安っぽく感じるけど、これがとーっても重い内容になってるわけです。
しかも、あの大作家・三島由紀夫の本も絡んでくるのでかなり重厚感あります。
女の私からすると「たたない」「セックスできない」って言うことは、読んで字のごとくそんなこととしか意味しないけど、男からすると言葉以上の重みと意味があるらくしくって、それは男でもなんでもないことを意味するらしい。
私は、別にセックスなしでも生きていける人間なので、そういうことについてはよくわからないんだけど、好きな人ができれば、「抱きたい」「抱かれたい」と思うのが普通なのかな~???
男の視点からの恋愛感をじっくり読んでみました~。
ただ、この本、登場人物が少ない上に、中間まで同じような調子の繰り返しでちょっと前半は退屈したけど、後半はだんだん追い上げでくる感じでとてももの悲しい話になってます。
最後、三島の本から楓の葉がヒラリと落ちてくるシーンがとっても印象的でこの本の刹那さを印象してる気がしました。
ただ体を合わせるだけでは恋愛じゃない。セックスをしなくても相手のことを本当に好きなのが本当の恋愛だと、ちょっとわかりました。
体の結びつきよりも心の結びつきこそが本当の本物の恋愛だと思うけれど、それは健全な体を持ってるセックスしたことある私だから言えるのかもしれない。。。。
正巳の悲しさ歯痒さは、たぶん一生私にはわからないのかもしれない。。。。
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すごく意味深長な内容だったと思う。
性と愛と肉体とは切り離して考えることは出来ないのだろうか。観念的には切り離して考えることは出来そうな気がするが、現実的には難しいようにも思える。
一方で、自分の愛を性と言う肉体で表現したくても出来ない正己の苦悩には、現段階で共感できないのが複雑だった。きっと将来読み直すときには、また違う視点で捉えることができると思う、
Posted by ブクログ
事故により性行為が不可能になった、学友を密かに想い、また、他方では奔放な性愛に浸る主人公。
学生時代から、性的象徴だけが目立つ同級生との三角関係も織り交ぜながら、官能小説っていうんだろうな、こういうの。
Posted by ブクログ
事故で性的不能に陥った美しい青年正巳と、彼が昔から欲望の対象としている美貌の女性阿佐緒、その夫の袴田、正巳と阿佐緒の幼なじみの類子。
これは類子の視点で語られる物語です。
類子は正巳を愛し、精神的なエクスタシーを感じながらも既婚者の愛人と肉欲だけの関係を続けます。
最終的に愛人と別れて正巳を一途に愛するように。
うーん、類子が正巳に感じるエロティックさはわからないでもないのですが、既婚者と平気で不倫する気持ちがわからないのでいまいち感情移入出来ず。
阿佐緒も正巳も揃って自殺……
2人ともそれぞれ孤独を抱えているのはわかるけど命を大事にしてくれ……。
そこで終わってたらなんだかなーって感じでしたが、最後の袴田さんとの再開で綺麗にまとまった印象です。三島由紀夫の作品が出てくるので三島好きの人はおっとなるかも。
Posted by ブクログ
「恋」と似た男1女2の微妙なバランス物語か〜、とか
時代背景がいまいちわからんな〜とか
人物像をなぞるのがまどろっこしいな〜とか
色々なことを考えながら最初は読み始めるんだけど、
いつのまにか周囲の音が聞こえなくなり、
読み耽ってしまっていた。
解説にもある通り、
この持続力のある文体の魔力はすごい。
類子は精神のつながりが〜とかやんや語っているけど、結局は満たされている側の人間の発言で、
自死にまで追い詰められてしまった阿佐緒や正巳の渇望・苦悩に対して冒涜なのでは、とか感じてしまった。
なんていうか、関係性や周囲の環境に酔いしれているというか。美化しているというか。
人間は性欲や承認欲求が満たされないと
どこか狂ってしまうんだろうか。
この物語を読んでここに至ってしまった私は俗で浅はかなのか。
なんか色々考えてしまった。
解説のように高尚に考えることはできなかった。
物語は面白かった。第7章あたりからのジェットコースターたまらんかった。
Posted by ブクログ
どこかずっと不穏で危うい美しさがあり、破滅や死の香りもするような、仄暗いお話でした。
健全な恋愛小説でもなく、圧倒的に破滅に突っ走る地獄というほどでもない、動きの少ないながら最後まで楽しめたのは美しい世界観あってこそだと思います。
何回か同じことループしてるだけじゃん、と少し退屈に感じてしまう箇所もありました。
Posted by ブクログ
著者の直木賞受賞作「恋」よりはまだ理解できる内容。だけどやはり、そこまでこじらせなくてもよくない?今ある現実に満足しようよと思ってしまう私にはあまり共感できない。三島由紀夫オマージュという内容だったけど、三島由紀夫もこじらせ系なのか。読んだことないけど。
Posted by ブクログ
小池真理子らしい、濃密な物語。
阿佐緒の奔放さが切ない。能勢と主人公との交わりも、正己の秘密も。ぐいぐいと読ませるけれど、なんだか読後感はどっとくる感じ。
Posted by ブクログ
静かに引き込まれていった。なんというかこういう性的描写もあるのか。と思うような精神のエロスでした。
インポになってしまったイケメンと繰り広げるなんとも複雑な恋愛小説なんだけど、特にどうってことないっちゃ、ない。ものすごい事件もないのに気がつくと周りの音が聞こえなくなるほどに本に取り込まれるような感覚。
なんか、なんかわからないけど、不幸でも幸せでも懐かしくもないのに、なぜか目が離せない展開を繰り広げる主人公たち。
なんだろう。なんだか性的な精神的な不思議な国のアリス感漂う、夢の中のの出来事のようなそんな一冊です。
この人の小説。なんか気になる。
Posted by ブクログ
三島作品は中学のときに何作か読んだのですが、その当時のあたしのできそこないの頭では理解できなかったので、この作品を読んで、もうそろそろ私 ちゃんと三島作品読んでみたいなって思いました。
主人公が過去を思い出しながら 物語を進んでいくのですが、どんな悲しみも時がたてば 思い出になっていくんですよね。
悲しみはずっと悲しみのまま、心に保存していたら 心がパンクしてしまうから、思い出になるように人間はなってるのかな。
Posted by ブクログ
読みきったので一応感想。紳士・エキセントリックな美女・若くガテン系のいい男・語り手女性・そして起こる悲劇、という筋書きと設定で、同著者の『恋』の焼き直しという感じが最後まで拭えず。三島由紀夫を読んでたらもう少し楽しめたのかな?
Posted by ブクログ
美形で知的な性的不能者の熱い恋。その彼に恋する女性。ともに満たされないがゆえにとめどない欲望。そういう葛藤を味わわせてくれる小説。
突拍子もない展開もなく、比較的淡々としてるがしっかり読ませてくれる文章だと思う。
Posted by ブクログ
旅先で泊まった宿にあったから、という理由で手に取った。そういうきっかけがなければ読むことはなかったであろう。ということで、こういう出会いはおもしろい。
しかしまあ~読んだ感想は、1997年って、こんな昔だったけか!?
三島を根底においてるせいもあるのかもだけど、とりあえず出てくるキャラがみんな昭和~。そしてキャラクターが平気で作中未成年飲酒やら、飲酒運転やらしまくる描写が出てくるんだけど、こういうのって今でもあるのかな・・・?
そして話の結末は、やっぱちょっと「ええー」と思った。なんていうのか、自分が道徳的過ぎるだろうが、実際にインポで悩んでる人だって世の中にはたくさんいるだろうに、こういう結末でいいの・・・?て思っちゃう。
まあ、基本的には美意識とか価値観が私とは大幅にずれてる、ということだと思う。うむ、三島もマッチョもあんま趣味じゃねーんだ(笑)
Posted by ブクログ
何だか『レベッカ』を読んでいる様な
『痴人の愛』のナオミを見ている様な感覚に囚われました。
(あくまでも、私の感覚ですので…!)
人と人は色んな繋がり方で繋がる事が出来るのですね。
だけど、やはり大切な人が居なくなってしまうのは淋しいなぁ。。
お話の中で出てくる三島由紀夫。
実は私読んだ事がないんですよねー。
小さい頃、強烈に怖いイメージを持ってしまって、未だに三島由紀夫の本は手に取れず…。
小池真理子の作品は今回初めて読んだのですが
また他の本も探して読んでみよっと。
Posted by ブクログ
51/100
98年 第五回 島清恋愛文学賞受賞作
現在作者は同賞の選考委員をしてますー
表題からして暗めな内容なのですが、なぜかしら全体を通してさわやかな感じ、
文章からくるものなのか、作者の人柄なのか・・どろどろさがまるで伝わらない、
そこを伝えたいわけじゃないんだ、読み手はそこにわくわくするのに(笑
『肩ごしの恋人』 唯川 恵もどちらかというとさわやかな印象を受けたけど、
注:ひょっとしてラストだけ?
こちらは更にさわやかな印象を受けた。