小池真理子のレビュー一覧
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①夢のかたみ
・夢を見ていた、と春恵は思った。馬鹿げた滑稽な夢。老いてゆく女にふさわしい。
愚かしいほどのおめでたい夢。
②静かな妾宅
・「私は今が幸せなのよ。ここでこうやって、ポンコと一緒にいることが幸せなのよ。どこにも行きたくないし、誰とも会いたくない。どうしてわからないの?」と77歳の橋爪にせまる。
「若いうちは誰でも、そんな気持ちになることがある。」橋爪は乾いた指先で素子の額にかかった髪の毛をそっと払いのけた。
「一種のハシカみたいなものだろうね。自分に酔っているだけなんだ。そのうち、素子はわたしから巣立って行く。巣立たなければいけない。わたしのことを哀れに思わないでほしいんだ、素子。わたしは愛している女性には、決して同情されたくない。いい年をしてカッコつけていたいんだよ」
③秋桜の家
・志保は和馬と並んだまま、この男は嘘をついたかのか、それともあの轢き逃げ話は本当だったのか、と考える。今となっては、嘘のようであり、本当のようでもある。どちらでもいいような気もするし、それでは腹の虫が治まらないようなきもする。
だが、わかっていることが一つある。加地は妻の情事を知らずにいた、ということである。だから、和馬の証拠湮滅を手伝ってくれたのである。それだけは確かなようである。
この世には、知る必要のないことが山ほどある。知ったら最後、自分の人生を変えざるを得なくなるような不愉快な出来事に何ひとつ直面しないまま、幸福に生を終えていく人もいる。裕次郎や加地のように。
⑥シャンプーボーイ
・突然の来客があったので、と嘘をついて断ってしまおうかと思ったものの、それも大人げない。そんなことを考えるのは、桂木に何の思いも寄せていない証拠だったが、かといって、無関心なのかというと嘘になる。会って不愉快な男ではなく、むしろ心がなごむ。誘われれば喜んで応じたいと思うし、長い連絡がないと、ふと、どうしたのか、と気になる相手でもある。
だが桂木は、雨の晩、健介に丁寧にシャンプーをしてもらってまで、いそいそと出掛けていくにふさわしい相手ではなかった。桂木は頼子にとって遠い身内のような、抑制を利かせた交流を心がけている。心やさしい隣人のような男でしかなかった。
・この人は、嫉妬にかられているだけなのだ、と頼子は思った。
たった一度寝ただけなのに。これからもまた、寝る可能性がある、という、そのおめでたい想像にしがみつき、子供じみた嫉妬心を煽(アオ)られているだけなのだ。
<感想>
小池真理子氏をよんで女性の考え方が少しでも理解出来ないかと思い、上溝公民館図書で借りた。
男も女も人間という生き物は、育った環境や生まれ持った宿命みたいの複雑に絡みあっていると思うので、いちがいにはその人(男・女)と付き合っていく中でその人に合うやり方で、触れ合っていくしかないと思う。 -
Posted by ブクログ
★3.8って感じかなぁ。
ストーリーは最愛の娘と親友を失った主人公が
人のぬくもりを求めて親友が働いていた超高級娼館で働くお話。
主人公、奈月の
「全ての偶然は必然」
っていう考え方はとても好き。
ドライな物事の捉え方も、強さも好き。
小池真理子らしい、小池真理子による、小説という感じ。
他人の体温がどん底の心を救ってくれる(ような気がする)っていうのは
よく分かる。
主人公は誰にも分かってもらえないだろうって繰り返し主張していたけど、たぶん、そんなことない。
別世界を覗き見たような
でも本当はすごく近くにどこにでもころがっているような
そんな不思議なお話。
ただ、小池真理子を読むと、
歳を重ねることや、女であることが誇らしく思えるから不思議。 -
Posted by ブクログ
「ひぐらし荘の女主人」小池真理子さんの短編小説集です。
20代の頃、ほぼ毎日、一日一冊は本を読んでいました。
その頃よく読んだのが小池真理子さんのミステリー。
この頃の小池真理子さんは恋愛を絡めたミステリーを書く作家さんというイメージでしたが、
その後、官能的な恋愛小説が多くなりましたね。
直木賞を受賞した「恋」は私の中でもっとも好きな小説のひとつです。
「ひぐらし荘の女主人」
主人公の男性は売れない役者。
北鎌倉の古い屋敷に住まう美しい女に惹かれ、日常生活を忘れて夢中になり
最後は犯罪に手を染め、その人生を狂わせていく。
女の、美しい無邪気な笑顔の下に潜む鬼・・・
こんな女になら、人生を狂わされてもいい、と思うものなのでしょうか。
「花ざかりの家」
15年前に自殺を遂げた妻の不倫相手に出くわす夫。
その不倫相手の家に「水仙が見頃だから来て欲しい」と招かれる。
少女のように無邪気だった妻が、その男に関わることで
徐々に女としての潤いを増してくる・・・
その妻の様子から、不倫に気がつきながら見知らぬふりをした夫。
突然の妻の自殺・・・それから15年。
どうして今更、と思いながら、その家に足を運ぶ。
清楚な白い花を咲かせる水仙は、冷たい風に揺られ
可憐というよりもどこか寂しげで弱々しい・・・
あんなくだらない男にひっかかって、たった一度の情事で死を選ぶなどと
愚かしいと思いながらも、改めて、その妻の無垢がいとおしい。
どうして彼女は死を選んだのか。
物語の陰に潜んでいた「女」の存在が最後、突然姿を表します。
「彼なりの美学」
葉子は深夜、渋谷の映画館を出たところで、身なりの良い醜男に声をかけられる・・・
その醜男はとことん女性の美に執着し、葉子に彼なりの美学に基づいた生活をさせ
葉子の美しさを賞賛し続ける。
自分の傍において葉子を飼育するのですが、そこに性的な交わりはありません。
この本の中に性的な描写はほとんどないにも関わらず、
全編に渡って官能的な空気が漂っているのが、
さすが小池真理子さん、というところでしょうか。