あらすじ
学園紛争、デモ、フォーク反戦集会。1960年代、杜の都・仙台。荘厳なバロック音楽の流れる喫茶店で出会い、恋に落ちた野間響子・17歳と堂本渉・21歳。多感で不良っぽい女子高生と男からも女からも愛されるような不思議な雰囲気の大学生の危険で美しい恋。激しい恋をひっそりと見守る渉の特別な友人、関祐之介。三人の微妙な関係が引き起こす忌まわしい事件は、やがて20年後の愛も引き裂いていく。
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Posted by ブクログ
本作は、作者の小池真理子氏が、1960年代に仙台のある女子校に転入し、自身とその時代を下敷きにして書いた物語である(あとがきより)。
実は私の母が、その当時、モデルとなった女子校の生徒で、在学中の小池さんのこともよく覚えていた。ちなみに母は小池さんより2学年下で、学生運動が最も高揚していた時期に入学したという。
作品と合わせると、主人公・野間響子が、制服廃止闘争委員会の委員長になったのが高2生で、母は中3。響子もこの時がいちばん『闘争』として、反戦デモやアジビラ刷りに加わり、その渦中にいたが、渉と祐之介、エマらとの出会いにより、運動から徐々に疎遠になっていく。
高3生の頃には、予備校と学校をサボりながら、渉という若く美しい男性に惹かれ、ある意味、普通の少女として、恋に夢中になって日々を過ごすようになる。
思春期と時代が、響子の何者かである、という自尊心を突き動かしたものの、恋に傾倒するにつれ、何者でもなかった自分を知る倦怠と虚しさ、くすぶった熱情が、余計に渉への恋慕として注がれるようになったのだ。
響子の恋は、残念ながら成就してしまう。そして突然に喪われる。
しかし、この恋を失う過程で、響子にとって、超えられなかったのは性差ではなく、祐之介という人間であり、膨れ上がる憎しみも怒りも、祐之介の「存在」に向かうのだ。
だからこそ、響子は渉と祐之介の結びつき/セクシュアリティを、最後まで胸の裡に納めたのだろうし、20年後もきっかけはありながら、告白はしなかった。そうすることで、彼女はあの熱に浮かされ、唐突に途切れた青春を、過去にしたのだと思う。
蛇足だが、小池さんの卒業から2年後、高3生になった母は生徒会長に就いて、卒業式では答辞を読んだ。学生運動盛んな時代、母の答辞は、事前に教師たちから「検閲」を受けたという。
その青春時代から5年後、母は私を産むのだが、卒業式の写真の少女は、今も口をへの字にして、挑むように私を見ている。母が笑っていない写真は、このたった1枚だけである。
【追記】
映画『無伴奏』も、たいへん良かったです。原作を読んでからの鑑賞をおすすめします。
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恋3部作の1作目。「恋」「欲望」と既読で、第一作が最後になってしまった。3部作の最初にふさわしい、作品。仙台の無伴奏に行ってみたくなる。今はないらしいが・・
Posted by ブクログ
小池真理子作品、初体験。
ノスタルジックなのに感傷的でなく、悲劇なのに重すぎない読後感。
その時代の色に染まり、タバコの香りすら漂ってきそうな小池真理子の骨太な文章力に圧倒されました。
Posted by ブクログ
小池真理子さんの小説で一番好きな本です。
70年代、切なくてノスタルジーに溢れた作品。
事件から20年後、主人公が訪れた仙台の街から無伴奏という
喫茶店は無くなっていて、街の景色は一変していた。
ただ、あの頃の景色、空気、匂いというものが、セピア色の記憶の中に悲しく、甘美でかけがえのないものとしていつまでも残るんだろうな。
そんな世界観が好きです。
Posted by ブクログ
女性側から見た男同士の恋愛ものというのが、私は好きなんだと思います。
男性視点からの作品も好きですが、どうにも自分は女である枠から逃れられないので、女の視点から見た男同士の恋愛への嫌悪・戸惑い・甘美という感情を受ける女性の主人公に、共感と共にリアルさを感じるのだと思います。
時代背景など含め、惹きこまれました!
Posted by ブクログ
今はこの表紙なのかな?
思い出すだけで熱いものが込み上げてきます…
歩さんの言葉の一言一言が、幼稚な私には上手い表現方法が見つけられませんが、とにかく温かく、ウツクシイ
言葉が心に、悪い意味ではなく、突き刺さり、痛くて、辛くて…辛くて…
あぁ、上手い言葉が見つけられない自分に対するもどかしさ…
そう、時に言葉は意味を無くし、思いのみがすべてを語る
適当な言葉が見つけられない自分へのカッコツケな言い訳…
Posted by ブクログ
とても好きで、何度も読んでいるのに、いつも読み始めると呼吸が浅くなってしまう。あのシーンにたどり着くと、胸が締め付けられる。そして渉の手紙で泣いてしまう。
この時代には生まれていないし、知らないのに、とても鮮やかに情景が見えるのは、やっぱり真理子さんの書く文書のが繊細だからだと思う。
ここ数年の作品は好きになれないけれど、「恋」三部作は大好きです。
Posted by ブクログ
自らの青春時代を振り返りつつ、楽しみながら執筆したと言う小池真理子の半自伝的作品「無伴奏」は、彼女が多感な時期を過ごした60年代終わりから70年代初めにかけての何処か張り詰めたような空気がヒシヒシと伝わってくる力作だ。主人公の響子が経験する胸が張り裂けんばかりの出来事には、思わず読んでいるこちら側も心を揺さぶられる。文中では、しばしばミック・ジャガーについて言及されるが、響子の恋人・渉と、彼と同居する友人・祐之介の関係性は、ミックとデヴィッド・ボウイのそれを彷彿とさせた。本編は、「恋」「欲望」と合わせ、著者の「恋愛三部作」と呼ばれるが、あとの二冊も久方ぶりに目を通したくなった
(新潮文庫版にて再読)
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2024/03/14
映画「無伴奏」(2016) DVD鑑賞
【監督】矢崎仁司
【配役】成海璃子(野間響子)
池松壮亮(堂本渉)
斎藤工(関祐之介)
遠藤新菜(高宮エマ)
原作の雰囲気はよく再現されていたものの、粗筋を駆け足で追ったという感じは否めず、響子や渉の苦悩が十分に伝わってきたとは言い難い。主演の成海璃子は響子役にピッタリだったが、渉役の池松壮亮に関しては私のイメージとは若干違う気もした
★★★★★☆☆☆☆☆
Posted by ブクログ
途中から一気読みした。なんと…。
普段呑気にBLを読んでいる身からすると、何だか申し訳ないような気持ちになった。
重いけど、読後感は軽い。面白かった。
Posted by ブクログ
こんなにも胸が苦しくなる小説は久しぶりに読んだ。
映画化され、そのCMでキャストと内容に興味を持ち、まずは原作と思って手に取った初めての小池真理子。
一つひとつの文章が美しく、心理描写が丁寧で読んでいるとするっと響子に入り込める感覚が気持ちよかった。
だからこそ、あの衝撃を響子と同じように感じることが出来たのだと思う。
何となく予感はしていたが、あのようにまざまざと見せつけられるとは。響子の悪魔がここまで影響を与えるとは。
これはただただ単純に愛の物語だと思う。混沌に溢れた世間で、2組の20歳そこそこのカップルが真剣に愛し合い、憎しみ合い、考えた物語だ。だから、この結末はあまりにも苦しく、美しい。
自分はここまで、ひとりの人のことを将来愛せるのだろうか。
Posted by ブクログ
小説自体は25年くらい前のもので、舞台は1960年代後半の仙台。学園紛争やデモなどが激しかった時代の、ひとつの恋とミステリー。
高校生の響子と大学生の渉。そして渉の親友の祐之介と恋人のエマ。四人の想いが交錯して、ある事件が起きる。
小池真理子さんの小説を読むのは思えば初めてで、どうして今まで手に取らなかったのか自分でも不思議。
全編通して美しい。人間の醜さが表れる場面もあるのに、なぜか穢れを感じない。始めに事件を予感させる描写があり進んでいくせいもあるのか、常に死の匂いが漂っていて、どこか物悲しい。
勝ち気な高校生・響子と暗い過去を背負った大学生・渉の恋と一時の出来事を、二十数年後の響子が振り返る形で描かれていて、結果を知ったあとに過去について語る形式だから悲運を予感させる言葉がそこかしこに散りばめられてあるのに、それが何であるのか全く予想がつかなかった。そしてその事件は、個人的には想像もしなかったものだった。
背徳的、というのか。
最後の三分の一はとくに、先が気になって一気に読んだ。
映像化、向いてるかもしれない。
映画を観るつもりはあまりなかったけど、ちょっと気になり始めている。
ミステリの感想は難しいからそこそこに。笑
また読みたい作家さんが増えちゃったなぁ…と、嬉しい悲鳴。
無伴奏というタイトルなのに、しっとりしてて哀しい曲がバックでずっと流れているような物語。「悲愴」を流しながら読みたい。
Posted by ブクログ
映画化されると知り手に取った一冊。
久しぶりの小池真理子さん。
体験していない時代だけども、その焦燥的な時代背景や、登場人物たちそれぞれの想い、ファッション、煙草の煙や、レコードの音までも匂いたつような雰囲気にどっぷりと浸れました。
いつの時代でも変わらないであろう恋愛での苦しみや妬み嫉妬、恋焦がれ翳りある愛もただただ切なく美しく感じました。
映像化されるのが楽しみ。
Posted by ブクログ
渉たちの関係性については読み進めていくうちに、なんとなく想像がついていた。
それでも諦めきれない気持ち、独り占めしたいと切実な想いは共感できた。
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切ない恋愛模様が描かれた作品。登場人物が皆魅力的で、頭の中で実写版の映像を作りたくなる。主人公は若いけれど、大人が読んだらより深く読めると思う。
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何年か前の「CREA」で小出恵介が名作3冊の中のひとつとしてこの作品を取り上げててびっくりしました。女性受けしかしないだろうなーって思ってたので。
その感想の中で、この作品からは煙とかの匂いが立ちこめてるって書いてあって、へーって思いました。正直あたしは最初から最後まで響子視点でしか読んだことなかったから、響子が感じることが全てで、周りの人や物や空気について考えたことも感じたこともなかったんです。
煙草や闘争の煙。確かに彼らと過ごした時間が20年経っても響子の中で燻っている。
渉が響子のことを好きだったのは嘘じゃないと思うんです。響子に対して好きだという感情をもったことと、本能が欲したものが別だっただけ。
渉は祐之介の子供が欲しいと思ったエマと一緒だと思う。
でもエマと響子が被害者であるとは思いません。特に響子は全てを知った上で渉を受け入れていたのだし。
エマは、ただ可哀想な人だと思いました。最期の一瞬でもいいから愛した人の闇が見えたら良い。エマもまた響子のようにその闇を受け入れてくれると思うのです。
その時どういう会話をしたのかは描かれてませんが、もし何も知らないままだとしたら、やはり可哀想過ぎると思うので。
セシルカットが似合うなんて相当美人だよなぁ。一番素直で可愛くて可哀想だったエマ。響子よりむしろ彼女の方が作者の愛情を感じる気がする。
Posted by ブクログ
一生、という二文字が浮かぶ作品。
一生誰にも打ち明けられない過去、一生悔やみ続ける自分の選択、一生忘れられない記憶、一生残る心の傷、一生、一生……
清らかで醜悪な悲劇。誰もが悪党で、誰も悪くない。
Posted by ブクログ
この本を初めて読んだのは確か小学校高学年と時だったと思う。
当時は結末が衝撃で、それしか覚えていなかったけど、あれから10年以上たった今読むと、その衝撃に向かうまでに、細かな記述があったことに気づく
初めて読んだ時、学生運動の記述が多くていやだとも思ったけど、あくまでそれは時代描写のこと
ただ単純に、悲しい恋愛小説だと今は思う
Posted by ブクログ
小池真理子さんの作品を読むのは、「愛するということ」「望みは何と訊かれたら」「恋」に続いて4作目。
ああ、これも面白い。
またもアノ時代なのです(というかこれは「恋」の前に書かれた作品で、「恋」につながっていく作品ということなのですね)。
60年代後半。デモ、学生運動、ストーンズ、バッハ、ビージーズ、煙草、コーヒー、喫茶店。音楽は他にも色々。ラフマニノフとかも。
チャイコフスキーも出てきます。チャイコフスキーは男色で「悲愴」はその悲しみを込めて作られたのだとか。
「無伴奏」という喫茶店は本当に仙台にあったクラシック喫茶だそう。
阿佐ヶ谷の「ヴィオロン」を思い出してしまった。筆談するところとか。
小川洋子さんは「メロディアスライブラリー」で、「カノン」と書いた文字が滲んだところが、この先の展開を暗示させるとおっしゃっていました。
舞台は仙台。主人公の野間響子は、小池さん自身あとがきで書いているように、小池さん自身がモデルです。
渉と響子、裕之介とエマ。
渉を愛し始めた響子。しかし渉には大きな秘密があった……
「恋」で兄と妹という禁断の関係が描かれていましたが、この作品では男同士の愛が描かれています(といってもそれほど詳細に愛し合う様子が描かれるわけではない)。
この先に何かが起こるぞ、何かあるぞ、と思わせる部分が、もっとも読み応えのある小説。滲んだ文字といい、不吉な予兆?が随所にちりばめられているのですね。
いざ、隠されていた事実が明らかになってからは、ああやっぱり…と思わされます。読めました。この関係は。
こんなに壮絶な経験を経ながら、普通に結婚して日常を営んでいる主人公……というのは「望みは何と…」もそうだし、「恋」もそうだなあ。
小池文学はホント読み始めると止まらない。
Posted by ブクログ
響子の心から渉やエマや無伴奏で過ごした若かった日々は決して一生消えないだろう。しかし、20年経った後、無伴奏もなくなり町も変わり、祐之助も勢津子も新しい人生を歩み始めている・・・。そんな中、響子は一人十字架を心に背負いつつ生きていくのだろう。衝撃的なお話。「恋」とはまた違う、心を揺さぶられるものがある作品。(08年4月20−21日)
Posted by ブクログ
恋3部作の第1作。第2部の「恋」を先に読んでしまった私にも充分楽しめた作品。
70年代の若者の混沌を知っている私には、時代背景がスッと入って来てわかりやすかった。響子の心の描き方、渉の仕草や言葉遣いの描き方、私が小池作品を好む理由。
恋を先に読んでしまいそちらのインパクトが強過ぎた故の評価となってしまった。星半分もあればいいのになぁ
Posted by ブクログ
ごくありきたりの物語。と言ってしまったら身もふたもないかな(殺人事件まで起こってるのだから)。結末も予想できてしまうし。
作中の時代にノスタルジックな思いを抱けないと、主人公に共感はできない。
ただ、語り口は良かった。滑らかで。
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この時代を生きてきてはないけど、体験できた気がした。若い頃のこういう恋愛の経験ってトラウマになりそうだけど人として成長もできそうだよなと思いました
Posted by ブクログ
私の定番、テッパン、小池真理子作品。
まだ『恋』を超える作品とは出逢えていない。
この作品は『恋』を含めた三部作、のひとつだそうだけど
途中で渉と祐之介の関係に気づいてしまった・・・
ので、まぁまぁかな。
でも、とにかくこの人の描く濃密な作品世界が好き。
憧れの、接点のない、ずっと年上の大先輩、みたいな存在。
Posted by ブクログ
途中まで真剣に
一文字一文字を追って
読んでいましたが
途中から流し読みになりました。
小池真理子さんの作品は
これで3作品目でしょうか、
少し私には読みづらいです。
同性愛が作品の鍵になっていますが
そこにたどりつくまでが長くて
結局ページをパラパラとめくってしまいました。
作品の題材は個人的にとても
興味のあるもので物語の内容も
嫌いではなかったのですが
一文字一句味わって
読めなかったことが残念です。
Posted by ブクログ
真実が明らかになった瞬間、どこかで気付いていたのに予想以上にショックを受けた自分に驚いた。
繊細で美しい描写によって、物語に酔わされていたからだと思います。
過去の自分の記憶を永遠に封じ込めるラストシーンは読んでいて痛いくらい。
安っぽい恋愛小説にはない気品があり、上質の「切なさ」を味わえる作品です。
Posted by ブクログ
高校生の響子の話。高校生でこんなに大人びていて感受性のゆたかな子がいるのかと思うとちょっと自己嫌悪というか、ガクっときてブルーになる。
うらやましい体験とは言えないが、経験としてはうらやましい。
みんながすごく自分の感情にまっすぐで痛々しいけどうらやましかった。
これに比べると、私は自分の感情をごまかしてばかり。と思ってしまう。
Posted by ブクログ
これを読んだのは高校のとき.
よくわからず,作家の名前だけでこの本を買い,一気に読み上げました.
読んだ後気付いたらぼろぼろ泣いていたのを覚えています.
わたしにとってはかなりの衝撃だった本.
1960年代の仙台.学園戦争やデモが盛んだった中,バロック音楽の流れる喫茶店でひっそりと出会った17歳の響子と21歳の渉. 彼らの恋を見守る渉の友人祐之介とエマ.
彼らの関係は,20年後の人間関係にも影響を与える.
恋愛とは?人を好きになるとは? 異色の恋愛小説です.
Posted by ブクログ
新潮社からも文庫版が出てるようなのですが、読んだ本はこちら、集英社文庫。
ある意味懐かしい、70年安保闘争の時代。文庫本のカバーに書いてあるあらすじ(?)に引かれて読みました。
短い序章と終章が今(1990年頃)、本文が20年程前の回想、と言う形になっています。
高校生の主人公響子の初恋の相手は大学生の渉、渉の同居人の裕之介、裕之介の恋人のエマ。4人の間に起こった、忌まわしい出来事が永遠に4人を引き裂きます。
物語は、40歳になった響子が渉の姉の勢津子に(20年ぶりに?)会いに、仙台に出かける所から始まります。
タイトルの「無伴奏」というのは、20年前の話の中心となるクラシック喫茶の名前です。
忌まわしいでき事がなんなのか、常に気にしながら読むことになります。秘密めいた渉の真実が明かされてびっくり(は、あまりしなかったけど・・)。本編の結末は切なくなります。そして20年後。何も知らない勢津子も、すべてを知っていて何も言わない響子も、表向きは普通に生活している・・。
あの時代にいそうな4人を主人公に、ノスタルジックに浸れる小説だと思います