姜尚中のレビュー一覧
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100年前の夏目漱石やマックス・ ウェーバーなどの慧眼により、現代を的確に表現している。自殺者の多数、逸脱資本主義からの人と人との全般的や不信の構造、直接アクセス型社会からの公共領域の消失、柔らかい全体主義の傾向、宗教に代わった科学の存在、同時に人々の孤独感とともに肥大化する自意識の状態。
「彼らをむやみに自分らしさの探究に駆り立てるものをしっかり見つめ直しておく必要があると思うのです。」引用
前半は読んでいて、現代の病理的な現象を夏目漱石やウェーバー等の作品、表現を引用し論じられている。そのため正直気が滅入りそうだった。
しかし、後半は、そのような世界においてどのように考え、どこに幸福を見 -
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2009年4月から2011年3月まで、NHK日曜美術館の司会をされていた姜尚中氏による美術に関する考察本。
美術はご専門ではなく、政治思想史が専門だが、在日であることからアイデンティティのあり方に悩んでいた時に出会った数々の絵や工芸品にどのようにして惹かれていったのかを語り、作家の心がどこにあったのかを考察した、大変興味深い本。
特に興味を持てたのは、次の美術品に対する考察。
ベラスケスの絵画「女官たち」
宮廷の中央に王女がいて、そのまわりに何人かの女官がかしづいてして、絵筆を持ったベラスケス自身も絵の中にいる。ベラスケス自身の心はどこにあるかというと、隅っこに描かれた矮人(体が小さ -
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放映されたものを鑑賞できなかったため、書籍にて『こころ』を読み解こうと手にとりました。
高校の教科書に『こころ』の一部(ちょうどKが自死する場面の前後)が掲載されていたおかげで、二十年が経過した今でも、「先生」が冷たくなった「K」の頭を抱える場面は強烈に私の中に残っています。全編読むたびに新しい発見があり、今では私の読書歴の中でベスト5に入る愛読書です。
本書では、あらゆる角度から『こころ』を掘り下げてくれています。著者の意見にうなずき共感しながら、ああだから私は『こころ』に惹かれたんだなと納得させられました。また、知らなかった漱石の一面を知ることもでき、大変興味深く読めました。『こころ』を好 -
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まず著者群の面子を見て、少なくとも既知の名前において、それぞれの発信することばを追いかけている人が多いことを確認。演繹的に、その他の著者についても、かけ離れた立場にはないであろうと判断。あわよくば、今後の人生指針になり得る存在と出会えることも期待。前置き長いけど、そんな考えの下、発売前から気にかけていた本書。日本学術会議任命拒否問題についても、どこかでちゃんと読まなきゃと思っていたけど、その欲求も本書で満たされた。中曽根時代から綿々と受け継がれて今に至るってのも、何とも根深くて嫌な感じ。そのあたりまで遡って、ちゃんと勉強しなきゃ。あとは、己でさえままならない自由の取り扱いを、更に次世代に伝える
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素晴らしい。悩みを解決してくれる本ではないが、悩むことを肯定してくれる。
序章,1章 悩みの背景と解決策
情報化社会やグローバリゼーションによって自他の境界が曖昧になり、アイデンティティが不安定なものになっている。
便利になりすぎたせいで1人でも生きていけるようになり、これが孤立化に繋がっている(合理化の副作用)。
結局のところこれらは他人との相互承認でしか解消することはできない。
2〜4章 悩みのタネ(金、知性、青春)
金:金はしゃーない、資本主義だから。金を蔑みながらも金なしでは生きてはいけない。
知性:知性と合理化を混同していないか?科学は生活を豊かにするが、自分の生きるた -
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五木寛之(1932年福岡生まれ、引揚者)と姜尚中(カンサンジュン、1950年熊本生まれ、在日二世)の「憂」「愁」対談です。「漂流者の生きかた」、2020.7発行。いろいろ考えさせられました。今は、明日が分からない時代。そして、あらゆる分野が「鬱(うつ)」の方向に進んでいる。敗戦は国破れて山河あり、東日本大震災は山河破れて国あり。日本国民、自分は生き残った。なぜ彼らは死んだのだろうか。(この本にはないですが、コロナもそうですね)日本国民の在日化(日本人が国を信用しなくなった)が。
平均的な日本人の願いは、健康、カネ、平和に尽きる。これは、言葉を換えれば、最大の不安三つ(健康、カネ、戦争・地震など