あらすじ
情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己否定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか? 本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは?【目次】序章 「いまを生きる」悩み/第一章 「私」とは何者か/第二章 世の中すべて「金」なのか/第三章 「知ってるつもり」じゃないか/第四章 「青春」は美しいか/第五章 「信じる者」は救われるか/第六章 何のために「働く」のか/第七章 「変わらぬ愛」はあるか/第八章 なぜ死んではいけないか/終章 老いて「最強」たれ/関連年表/引用文献一覧/あとがき
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Posted by ブクログ
「何のために働くのか」「変わらぬ愛はあるか」「なぜ死んではいけないか」
昔から考えていた、そして30になっても全然答えはわからない問に、これだ!とまで言わなくてもなんとなく、ああそういうことなのかなと思わせてくれました。例えがわかりやすくて結構刺さりました。
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あおい夜空は星の海よー、人の心は悩みの海よー(アリラン)
苦悩する人間は、役に立つ人間よりも高いところにいる
人間は「自分が自分として生きるために働く」「自分が社会の中で生きていていい」という実感を持つためには、やはり働くしかないのです。
愛とは、そのときどきの相互の問いかけに応えていこうとする意欲のこと。幸せになることが愛の目的ではない。
人は自分の人生に起こる出来事の意味を理解することで生きている。
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素晴らしい。悩みを解決してくれる本ではないが、悩むことを肯定してくれる。
序章,1章 悩みの背景と解決策
情報化社会やグローバリゼーションによって自他の境界が曖昧になり、アイデンティティが不安定なものになっている。
便利になりすぎたせいで1人でも生きていけるようになり、これが孤立化に繋がっている(合理化の副作用)。
結局のところこれらは他人との相互承認でしか解消することはできない。
2〜4章 悩みのタネ(金、知性、青春)
金:金はしゃーない、資本主義だから。金を蔑みながらも金なしでは生きてはいけない。
知性:知性と合理化を混同していないか?科学は生活を豊かにするが、自分の生きるための知識はむしろ減っている。自分の身の回りのことはわからなくなる一方で、入ってくる情報には際限がない。生きる力をつけることと、入る情報を限定すること、が必要では?
青春:青春とは答えのない問題に悩むこと。多くの大人は途中で考えることをやめてしまうが、この悩みを持ち続けることが大事だ。
5〜7章 悩みを解決しうるもの(宗教、職、愛)
宗教:宗教は元は「個人が信じるもの」ではなく「個人の属する共同体が信じているもの」だった。宗教が共同体と結びつくことで個人の相互承認を満たし、悩みに答えを与えることで悩みから守ってくれていた。宗教の力が弱まったことで人々は答えのない問いに悩むようになった。
職:働くことの究極の意味は、他者からのアテンション、承認の眼差しを得ることにある。専門分化によってこの承認欲求が満たされなくなりつつある。
愛:現代では、純愛とマゾ的性愛が求められ、その中間に消耗品的な愛が満ちている、しかしこれは不毛だ。昔は恋愛が不自由だったからこそ恋愛の意味が見えていたが、現代では自由だからこそ恋愛の意味が見えなくなって、極端な愛を求める声が強くなっている。愛とは相互の問いかけに応えていこうとする意欲のことであり、これがある限り愛のありようは変わろうともそれは愛だ。幸せになることが愛の目的ではない。相互承認。
8章,終章 悩みの価値
人は相当の苦悩にも耐えられるが、意味の喪失には耐えられない。その向かうところは死である。自由になりすぎ、慣習が死への抑止力となり得なくなりつつある今、悩み抜くことでしか生きる意味を見いだせない。そしてつながりを求め続けよ。できれば、悩み抜いた上で、悩みを受け入れて横着な心を持てると尚よし。
Posted by ブクログ
夏目漱石とウェーバーの思想の共通点を抜き出して、それらから現代的なエッセンスを抽出すると我々の悩みについての本質的な部分と重なるのではないか、ということを書き綴った本である。
夏目漱石もウェーバーも共に今現在まで読み継がれる名著、古典を残した人物であり、こういった形で現代的なアプローチが出来るんだよ、と示されると改めて古典を読むことの重要性を気づかされる。
Posted by ブクログ
自由に生きることが可能であるゆえの苦しさとどう向き合うべきかを、夏目漱石やウェーバーの思想をたどりながら書き記している本。100年も前に生きていた二人だけれども、戦後の発達しきった社会で生きているという点で現代の私たちと同じだからこそ、通ずる考え方や悩みがあるのがとても興味深かった。
自由だから故の悩みを解決するためにだした作者の結論が、「悩み抜くこと」だというのが、(曖昧な感想ではあるけど)良いなあと思った。情報が溢れ、技術が進歩した社会で生きると、たくさん手段はあるけれど、結局一番自分が納得できて信用できる方法は自分で悩んで結論を出すことなのだなと思った。
15年以上も前に書かれたとは思えないほど、2024年現在を正確に捉えられている内容だったので驚いた。だけどよく考えてみると、細かな技術や価値観は進化しているが、戦後の発達しきった世界で自由に暮らすことが出来るという重要な点が同じであるため、15年前も今もぶつかる悩みは同じなのかもしれない。そして今後も自由な生き方があるが故の悩みを抱える人は多くいるだろうから、この本は今後も色褪せることなく読み継がれていくのだろうなと思った。(とても素敵な本だと思ったのでぜひ読み継がれていってほしい)
Posted by ブクログ
社会経済の猛烈な変化に晒された現代人にも通じる悩みを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで悩みを手放すことなく、真の強さを掴み取る生き方を提唱する。
本書は悩むことを肯定し、「悩んで悩んで、悩み抜け!」と読者を鼓舞する。
こちらの方が、「悩んでいても仕方ないよ」と言われるよりどれだけ救いとなることか。
「自我/金/知性/青春/信仰/働くこと/愛/死/老い」について、「まじめに」悩みぬくことを勧める。
悩める者の一人として、励ましとなる言葉に満ちていました。
Posted by ブクログ
高校の現代文の授業で読まされた記憶。ただ,それから自体がなんとなく面白かったのと,文学作品を時代背景や作者などの観点からの評論?を読んだのが初めてだったので新鮮で面白かった。
Posted by ブクログ
ストレスフルな現代社会を生き抜くためのヒントが満載。何のために生きるのかをマックス・ウェーバーと夏目漱石の書籍を題材に悩みを抱えて生きることの大切さを説いている。
Posted by ブクログ
12年前の本だったけど、現代を息苦しいと思いながら頑張って生きてる人にはちゃんと届いた。
私は無性愛者なので恋愛の項目だけはさっぱり分からなかったが、それ以外は身体に染み入るように理解できて、姜尚中の言葉で心が満たされた。
答えのない悩みを抱えること。
それは決して悪いことではなく、むしろ悩みと向き合い続ける行為そのものが私を強くする。
無理やり答えを探そうとせずに私らしく悩み抜く。
コロナ禍だからこそ普段以上に悩むことが増えて毎日苦しかったりするけど、もうちょっとだけ頑張って悩んでみようかな。
そう前向きに思えるのが嬉しかった。
定期的に読み返したい。
Posted by ブクログ
知り合いの方から頂いた3冊のうちの1冊。
「まじめ」の捉え方や働くのは何故か、という問いに「他人からのアテンション」、社会の中にいる自分を再認識するため、宗教が拠り所になる訳など…非常に興味深い1冊だった。
「若い人には大いに悩んでほしいと思います。そして、悩みつづけて、悩みの果てに突きぬけたら、横着になってほしい。」
最後、身にしみた文章だった。
Posted by ブクログ
生まじめで不器用であった夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、「悩み」を糧として強く生きることを語った本。
生きる上で「悩み」と無関係になることは不可能です。人間だからこそ、悩むといっていいと思います。そして、その悩みを生きる力に変えることができるのも、また人間なのです。
本書は夏目漱石とマックス・ウェーバー、2人の先人の生涯をヒントにして、悩みを糧として力強く生きる考え方を学ぶことができます。
Posted by ブクログ
現在さまざまなメディアで取り上げられ、ベストセラーになっている新書。
姜尚中という先生のことは初めて知った。
「自分が生きている意味を考えたり、人間とは何かを考えたり、人とつながる方法を本気で考えたり、自分と世界の関係を考えてみたりする。」
「いま、…あらゆる仕事がサービス業化しつつあります…(サービス業は)どこかで線を引かないと、限りなく人の人生を背負うことになってしまいます。」
人間というのは、「自分が自分として生きるために働く」のです。「自分が社会の中で生きていていい」という実感を持つためには、やはり働くしかないのです。
「人は一人では生きられない」とよく言います…自我を保持していくためには、やはり他者とのつながりが必要なのです。
「私は(生きていく)意味を確信している人はうつにならないと思っています。だから悩むこと大いにけっこうで、確信できるまで大いに悩んだらいいのです。」
この先生、特に新しいことは言っていないと思う。
しかし、「自分が生きている意味についてしっかり考えてみよう」「悩みつづけて、突き抜けてみよう」という温かいメッセージは、今の若者の心にストレートに響くのだろうと思う。
人はみんな1人では きっと笑えはしない心の底から
Posted by ブクログ
十代の頃ひたすら悩み、生きづらさを感じていたことを思い出した。当時は言語化できずにやきもきしていたが、今考えると社会に呑み込まれ「自我を見失う恐怖」を抱いていたのだとこの本を読んで明確になった。
『意味を確信できないと人は絶望的になる。私が私として生きていく意味を確信したら、心が開いてきた。確信できるまで大いに悩んだらいい。悩むことを経て、怖いものがなくなる。』
悩み続けた時間が無駄でなかったのだと感じられた。
Posted by ブクログ
悩んでていいんだって思えた。
『他人とは浅く無難につながり、できるだけリスクを抱え込まないやうにする、世の中で起きていることにはあまりとらわれず、何事にもこだわりのないように行動する、そんな「要領のいい」若さは、情念のようなものがあらかじめ切り落とされた、あるいは最初から脱色されている青春ではないでしょうか。』
Posted by ブクログ
著者について:姜尚中(カン サンジュン)さんは、田原 総一朗さんが司会を務める「朝まで生テレビ」などにコメンテーターとして出演している方です。他のコメンテーターが熱くなって論点がわからなくなっている状況でも、冷静に問題の本質を明確にしたり、新たな視点を提示したりする気になる存在でした。
本書は、夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。とのこと。久し振りに手ごたえのある本に出会いました。
◆姜尚中さんの心にしみる言葉・・・
「信じる」ということは、「何かを信じる」ということではなく、「自分を信じる」ということになると思います。言うなれば、「一人一宗教」「自分が教祖」なのです。
意識してようといまいと、人は信じるところのものから、ものごとの意味を供給されます。意味をつかめていないと人は生きていけません。
しかし、どれにも納得できないなら、何にも頼らずに、自分の知性だけを信じて、自分自身と徹底抗戦して生きていくしかありません。
ザックリ分けると、世の中には「何も分かっていないのに、何でも分かっているかのように振舞っているいる人」と「かなり分かっているのに、確信が持てなくて逡巡している人」がいますよね。また「哲学などをこねくり回さなくても、人間を把握している人」と「頭でしか人間を理解できない人」がいるような気がします。私は、どちらかというと、あまり分かっていないのに、分かっているかのように振る舞いがちだし、感性で人間を理解できない人なので、止むを得ず時間を浪費して、自分を理解しようとしています(^^;
Posted by ブクログ
深刻なアタマで読むと よく考えることができる。
のんびりしたアタマで読むと すらすら読めるものだ。
読みながら 自分の中に返しながら 問いかけていると
ひどくしんどい本だった。
ずいぶん考えさせられた。
人の悩みは 尽きないもので、煩悩が百八あると言うが
ほんとにそうだと思ったりした。
姜尚中の『悩む力』を読みながら
悩むって いったい どんなことだろう
と考えていた。
言葉の一つ一つが きれいな文章で
私のささくれ立ったこころに 突き刺さってくるのだ。
いまを生きる悩み
私とは何者か?
世の中 すべて金なのか?
知っているつもり
青春は美しいか?
信じるものは救われるか?
何のために働くのか?
変わらぬ愛はあるのか?
なぜ死んではいけないのか?
おいて最強たれ。
いや・・・じつに 悩むことにこと欠かないわけだ。
最後のメッセージが 「横着たれ!」というのであるが、
私は ずいぶん 横着だな と自分ながら あきれていた。
なぜ死んでいけないか?
生きているほうが 絶対 楽しいからだ。
変わらぬ愛はあるのか?
あるよ。好きな人は やはり、ずっと好きなんだよね。
セックスを 好きな人とだけする
と言うのとは違う感じがあるなぁ。
それは 何かのルールに縛られすぎているような気もする。
何のために働くか?
働くほど 楽しいことはないからね。
信じるものは救われるか?
結局 信じることができるのは 自分だけかもしれないが、
私は 宗教を信じたいと思わないが 人を信じたいなぁ。
青春は美しいか?
ふーむ。美しいと言うより 可能性が多いね。
可能性が多いことが 青春の特権だ。
でも 老人になっても 青春はできるとおもう。
いつまでも 春 で会ってもよい。
世の中 すべて金か?
金があったほうが やはりしたいことができることは多い。
でも なくても 生きていけるもんだ。
工夫しながら お金を使うというのは 大切だと思う。
ようするに したいことは何か の方が重要な気がする。
そのために お金を得て、お金を使う。
私とは何者か?
ふーむ。私は私。
私の中には 怪獣がすんでいる。
その怪獣を飼いならしたいと思う私と
怪獣を自由に解き放ちたい 私がいる。
あれ、ずいぶんと自分の中に きちんとした答えがあるものだ。
そのことに ちょっとたじろぐ。
老人になったおかげですね。
Posted by ブクログ
11年ぶりの再読。悩みから逃げずに、悩んで悩んで、そして突き抜けろ。著者のメッセージは11年たった今の世の中でも新鮮な響きを持ちうると感じます。
(2011/10/22)
出自、家庭、仕事、人間関係。生きている限り悩みは尽きないが、それへの対処についてこそ、人それぞれの個性が現れるのではないだろうか。逃げる人、かわす人、他の事柄に目をむけてやり過ごそうとする人。本書では、著者が影響されたという、夏目漱石とマックスウエーバーの、悩みを真正面から受け止め、作家として学者としてそれを乗り越えようとする姿勢を紹介する。
最も気に入ったのが最終章。高齢化社会を迎える日本では、高齢者が悩みを突き抜けないと社会が元気にならない。著者は福沢諭吉の言う「一身二生」を実現するために、これからもまだまだ新しいことに挑戦し、突き抜けた老人になると宣言する。この箇所からは元気をもらえた。
Posted by ブクログ
「悩んだ末に、どうにでもなれと突き抜ける横着者になれ」というメッセージにしびれた。
自分はまだ悩んでもいない。
もっと自分自身と向きあって悩まないと、いつまでたっても自己を持てない子どものままな気がする。
Posted by ブクログ
アイデンティティも時代も国も家庭環境も…。
私はずっと悩み続けてきたし、まだ悩み続ける。
でもそれは決して悪い事ではないし、むしろ糧でしかないと思える。
放棄したり誰かに委ねるのは楽かもしれない。
けれども、と私は思う。
やはりそれは力になるのだ。
Posted by ブクログ
何が悪いのかわからないが、余り頭に入ってこない文章だった。
2人の歴史上の人物の考え方から自我を確立するための方法を探るといった内容。
自分って何だろうと考えるきっかけになりました。
Posted by ブクログ
いま漠然と人生に悩んでいます。
筆者がいうには悩み続ける事が死の抑止になり自分の生に意味を持たせる事ができる、と。
傷つくことを恐れて人との関わりを避けて来ましたが、結局は人と繋がることでしか人生を満たすことはできないのですね。。
Posted by ブクログ
漱石やウェーバーが生きていた近現代でも、2022年現在でもほとんど同じ悩みを抱え、悩んでいる事実が面白い。
私自身、今漠然とした不安や悩みを抱えていて、何かヒントやアドバイスが得られればと思ってこの本を読んだのだが、悩んでいる事を肯定してくれて、漱石やウェーバーも悩んでるよって言ってくれたようで少し嬉しかった。
Posted by ブクログ
自分のなかで重要だと感じた部分をまとめました。
・「個」の時代と言われる現代。人は「自由」であるからこそ悩む。生きることの意味、人生の意味、死ぬことの意味、得る情報など、自分の頭で考え、悩み、選択していかなければならない。
その意味からいうと、規制や規範がある方が楽なのかもしれない
・人間的な悩みを、人間的に悩むことが生きていることの証
・人は皆死ぬ。結局は心の満足度=人生の満足度
・他者との相互承認なしには自我は生まれない。働く意味も同様
・「1人1宗教」。自ら信じるものを見つけ、自我を形成していく
Posted by ブクログ
近代の初めごろに活躍した漱石とウェーバー。2人の生き方を見つめながら、「私」や「お金」、宗教などについて、作者の考えを述べた本。個人的に、ヤスパースの「自分の城を築こうとするものは必ず破滅する」という言葉が刺さった。
Posted by ブクログ
この本がベストセラーになったのは帯の力だなあ、とつくづく思う。
表の帯・・漱石、ウェーバー、遠くのどこかを見るカン先生
裏の帯・・物思いにふけるカン先生
思わず一緒に悩みたくなるじゃありませんか!に力がある。
で、中身はというと、これぞ知性だ!と唸ってしまう。
夏目漱石を読んで、ウェーバーを学んでこんなふうに思索を巡らせることができるだろうか?ブログでこんな文章を読めるだろうか?
Posted by ブクログ
「悩む力」という本書のタイトルに興味を感じ読んでみた。
ふつう、我々は「できるならば悩みたくない」と感じていると思う。悩むような出来事からはできるだけ避けたいと思う。
しかし、著者は「悩むこと」を推奨する・・・というよりも、悩む先に幸福がある。悩むことを喜びとさえとらえようという、ある意味発想の転換を促す本だろうかと思う。
おそらく、在日であることで、子どものころから得体のしれない偏見などと闘いながら、葛藤の人生を歩んでこられ、そうした中で強い母の姿に励ましをもらいながら、様々に悩み、そして自分なりの方向性を見出されてきたことを本書にまとめられたのではないかと思う。
学者としてマックス・ウェーバーを学び、また日本の文学として漱石を読み、そこに自身との共通点を見出し、共感を得、また現代の世相とウェーバーや漱石の時代との共通点もとらえることができたその体験から、「自我」ということ、「お金」のこと、「働く」ということ、「愛」とは、「死」とは、いうような身の回りにある悩みのテーマについて、読者に自分自身で考えてみるきっかけを与えてくれる本ではないかと思う。
私自身も、「悩む先に幸福がある」とい考え方には共感できる。悩みから逃げるのではなく、真正面から悩み、そこから自分の手で自分を確立していくところに幸福があるというメッセージととらえました。
目次
序章 「幸福論」の終わり
第1章 漱石とウェーバーに何を学ぶか
第2章 どうしてこんなに孤独なのか
第3章 漱石が描いた五つの「悩みのタネ」とは
第4章 漱石の予言は当たったか
第5章 ホンモノはどこにあるか
第6章 私たちはやり直せるか
第7章 神は妄想であるか
第8章 生きる根拠を見いだせるか
終章 それが最後の一日でも、幸せは必ずつかみ取れる