あらすじ
情報ネットワークや市場経済圏の拡大にともなう猛烈な変化に対して、多くの人々がストレスを感じている。格差は広がり、自殺者も増加の一途を辿る中、自己否定もできず、楽観的にもなれず、スピリチュアルな世界にも逃げ込めない人たちは、どう生きれば良いのだろうか? 本書では、こうした苦しみを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。現代を代表する政治学者の学識と経験が生んだ珠玉の一冊。生まじめで不器用な心に宿る無限の可能性とは?【目次】序章 「いまを生きる」悩み/第一章 「私」とは何者か/第二章 世の中すべて「金」なのか/第三章 「知ってるつもり」じゃないか/第四章 「青春」は美しいか/第五章 「信じる者」は救われるか/第六章 何のために「働く」のか/第七章 「変わらぬ愛」はあるか/第八章 なぜ死んではいけないか/終章 老いて「最強」たれ/関連年表/引用文献一覧/あとがき
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Posted by ブクログ
夏目漱石とウェーバーの思想の共通点を抜き出して、それらから現代的なエッセンスを抽出すると我々の悩みについての本質的な部分と重なるのではないか、ということを書き綴った本である。
夏目漱石もウェーバーも共に今現在まで読み継がれる名著、古典を残した人物であり、こういった形で現代的なアプローチが出来るんだよ、と示されると改めて古典を読むことの重要性を気づかされる。
Posted by ブクログ
社会経済の猛烈な変化に晒された現代人にも通じる悩みを百年前に直視した夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで悩みを手放すことなく、真の強さを掴み取る生き方を提唱する。
本書は悩むことを肯定し、「悩んで悩んで、悩み抜け!」と読者を鼓舞する。
こちらの方が、「悩んでいても仕方ないよ」と言われるよりどれだけ救いとなることか。
「自我/金/知性/青春/信仰/働くこと/愛/死/老い」について、「まじめに」悩みぬくことを勧める。
悩める者の一人として、励ましとなる言葉に満ちていました。
Posted by ブクログ
知り合いの方から頂いた3冊のうちの1冊。
「まじめ」の捉え方や働くのは何故か、という問いに「他人からのアテンション」、社会の中にいる自分を再認識するため、宗教が拠り所になる訳など…非常に興味深い1冊だった。
「若い人には大いに悩んでほしいと思います。そして、悩みつづけて、悩みの果てに突きぬけたら、横着になってほしい。」
最後、身にしみた文章だった。
Posted by ブクログ
悩んでていいんだって思えた。
『他人とは浅く無難につながり、できるだけリスクを抱え込まないやうにする、世の中で起きていることにはあまりとらわれず、何事にもこだわりのないように行動する、そんな「要領のいい」若さは、情念のようなものがあらかじめ切り落とされた、あるいは最初から脱色されている青春ではないでしょうか。』
Posted by ブクログ
著者について:姜尚中(カン サンジュン)さんは、田原 総一朗さんが司会を務める「朝まで生テレビ」などにコメンテーターとして出演している方です。他のコメンテーターが熱くなって論点がわからなくなっている状況でも、冷静に問題の本質を明確にしたり、新たな視点を提示したりする気になる存在でした。
本書は、夏目漱石とマックス・ウェーバーをヒントに、最後まで「悩み」を手放すことなく真の強さを掴み取る生き方を提唱する。とのこと。久し振りに手ごたえのある本に出会いました。
◆姜尚中さんの心にしみる言葉・・・
「信じる」ということは、「何かを信じる」ということではなく、「自分を信じる」ということになると思います。言うなれば、「一人一宗教」「自分が教祖」なのです。
意識してようといまいと、人は信じるところのものから、ものごとの意味を供給されます。意味をつかめていないと人は生きていけません。
しかし、どれにも納得できないなら、何にも頼らずに、自分の知性だけを信じて、自分自身と徹底抗戦して生きていくしかありません。
ザックリ分けると、世の中には「何も分かっていないのに、何でも分かっているかのように振舞っているいる人」と「かなり分かっているのに、確信が持てなくて逡巡している人」がいますよね。また「哲学などをこねくり回さなくても、人間を把握している人」と「頭でしか人間を理解できない人」がいるような気がします。私は、どちらかというと、あまり分かっていないのに、分かっているかのように振る舞いがちだし、感性で人間を理解できない人なので、止むを得ず時間を浪費して、自分を理解しようとしています(^^;
Posted by ブクログ
自分のなかで重要だと感じた部分をまとめました。
・「個」の時代と言われる現代。人は「自由」であるからこそ悩む。生きることの意味、人生の意味、死ぬことの意味、得る情報など、自分の頭で考え、悩み、選択していかなければならない。
その意味からいうと、規制や規範がある方が楽なのかもしれない
・人間的な悩みを、人間的に悩むことが生きていることの証
・人は皆死ぬ。結局は心の満足度=人生の満足度
・他者との相互承認なしには自我は生まれない。働く意味も同様
・「1人1宗教」。自ら信じるものを見つけ、自我を形成していく
Posted by ブクログ
「悩む力」という本書のタイトルに興味を感じ読んでみた。
ふつう、我々は「できるならば悩みたくない」と感じていると思う。悩むような出来事からはできるだけ避けたいと思う。
しかし、著者は「悩むこと」を推奨する・・・というよりも、悩む先に幸福がある。悩むことを喜びとさえとらえようという、ある意味発想の転換を促す本だろうかと思う。
おそらく、在日であることで、子どものころから得体のしれない偏見などと闘いながら、葛藤の人生を歩んでこられ、そうした中で強い母の姿に励ましをもらいながら、様々に悩み、そして自分なりの方向性を見出されてきたことを本書にまとめられたのではないかと思う。
学者としてマックス・ウェーバーを学び、また日本の文学として漱石を読み、そこに自身との共通点を見出し、共感を得、また現代の世相とウェーバーや漱石の時代との共通点もとらえることができたその体験から、「自我」ということ、「お金」のこと、「働く」ということ、「愛」とは、「死」とは、いうような身の回りにある悩みのテーマについて、読者に自分自身で考えてみるきっかけを与えてくれる本ではないかと思う。
私自身も、「悩む先に幸福がある」とい考え方には共感できる。悩みから逃げるのではなく、真正面から悩み、そこから自分の手で自分を確立していくところに幸福があるというメッセージととらえました。
目次
序章 「幸福論」の終わり
第1章 漱石とウェーバーに何を学ぶか
第2章 どうしてこんなに孤独なのか
第3章 漱石が描いた五つの「悩みのタネ」とは
第4章 漱石の予言は当たったか
第5章 ホンモノはどこにあるか
第6章 私たちはやり直せるか
第7章 神は妄想であるか
第8章 生きる根拠を見いだせるか
終章 それが最後の一日でも、幸せは必ずつかみ取れる